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【フォトキナ】インタビュー:フラッグシップ「DMC-GH3」を投入するパナソニックの狙い


 パナソニックはフォトキナ2012で、待望されてきたトップエンドモデル「DMC-GH3」を発表した。オールマグネシウム合金ボディに採用するセンサーは、DMC-G5に採用されたセンサーから、さらにリファインした新仕様。新しいローパスフィルタ、新しいエンジン、新しい映像処理アルゴリズムを採用することで、従来のLUMIX Gシリーズとは異なる顧客層を狙う製品に仕上げたという。

 同社はF2.8通しのズームレンズなど、高級レンズとして位置付けられるLUMIX G Xレンズブランドに、「42.5mm F1.2」と「150mm F2.8」という2つの明るい固定焦点レンズを追加。縦位置グリップなどのオプションを充実させ、毎秒240フレームを読み出す高速コントラストAFを採用するなどカメラの基本性能を引き上げることで、より趣味性の高いカメラへと、ミラーレスカメラの領域拡大を狙う。

 フォトキナ会場で、パナソニックAVCネットワークス社ネットワーク事業グループ DSC ビジネスユニット長の北尾一朗氏、開発企画チーム参事の井上義之氏、マーケティング企画チームリーダーの窪田繁雄氏に話を伺い、新製品のコンセプトやLUMIX Gシリーズの今後について話を聞いた。(聞き手:本田雅一)


中央がパナソニックAVCネットワークス社ネットワーク事業グループ DSC ビジネスユニット長の北尾一朗氏。右が開発企画チーム参事の井上義之氏、左がマーケティング企画チームリーダーの窪田繁雄氏


「カメラを操ること」も重視

---- これまでシンプルなラインで構成されていたデザインが、複雑な曲面を組み合わせ、操作スイッチ回りの造形や肩をやや落としたフォルムなど、ずいぶんデザインが変化しています。実際に手に取ると明らかにLUMIX Gなのですが、まったくの別物ですね

「今回は、“マッシブなデザイン”をテーマに開発しました。そこには、単にカッコがいいといった話ではなく、我々の開発意図が強く反映されています。ミラーレス一眼(ノンレフレックスカメラ)には、特に日本において“カメラ女子向け”的なイメージがあると思います。オリンパスさんがPENでそのような展開をしていますし、ソニーもNEXの下位モデルは女性を意識しています。ニコンのNikon 1 Jシリーズもそうでしょう。我々自身も女性層に拡げようと取り組んできました」

「基本的にファインダーのないコンパクトデジタルカメラに近いフォルムの製品は、女性向けの性格が強いのですが、一方で我々が一眼レフらしい形状を持つファインダーを装備したカメラに拘ってきたのもご存知の通りです。その“電子ビューファインダー装備”のミラーレス一眼に、他社からNEX-7、OM-D E-M5といった製品も登場し、男性層からの支持が高まってきています。そこで、上位モデルのGHシリーズも、もっと男っぽいデザインでいこうと考えました。大きなレンズを取り付けても持ちやすいボリューム感のあるグリップなど、小型で携帯性の高いデザインはそのままに、ボリューム感のあるデザインを目指しました」


LUMIX DMC-GH3。ドイツでは12月に1,199ユーロ(ボディのみ)で発売

---- もともと、このところはシリーズ各モデルの性格、位置付けを明確にするよう工夫を重ねてきていましたね。GFシリーズは小型志向をめざし、GXシリーズでファインダーレスの上位を埋めました。一方でファインダー付きのGシリーズは動画撮影機能を強化していましたが、その分、GHシリーズの位置付けが曖昧になっていました。GH3のデザインやスペックの変化は、ミラーレス一眼の市場が変化を投影したものでしょうか?

「市場の変化もありますが、一方でLUMIX Gシリーズそのものが変化してきている方がファクターとしては大きいでしょう。シリーズ開始当初はGシリーズのみで、そこから女性層も伺う形でしたが、GFシリーズの位置づけが明確になったことで、それ以外のシリーズが思い切ったコンセプトを打ち出しやすくなりました。G5の動画機能が本格的なので、従来の動画カメラ的位置付けではなく、思い切り上位に振って静止画、動画ともに、エンスージャストに満足していただける性能を持つフラッグシップの位置付けです。どちらに力入れている……ではなく、静止画、動画ともにシリーズの中でもっとも優れた製品になっています」

「ファインダーに使うディスプレイ、センサーなどは専用のものですし、レリーズ周辺に追加したボタンの機能や配置、それに一気に3ダイヤル構成になった操作性など、あらゆる点で“カメラを操る”ことにフォーカスした設計になっています」


フォトキナ2012では、LUMIX G初の専用縦位置グリップも発表された

---- エンスージャスト向けのレンズ交換式カメラとしては、主に35mmフィルム時代からレンズ交換式カメラをやっているメーカーが、フルサイズセンサー指向を強めてきました。その中にあって、“マイクロフォーサーズの本格派カメラ”はどのような価値を生み出せるでしょう?

「ライカ判フルサイズのセンサーは、マイクロフォーサーズ用センサーの4倍の面積がありますから、そこには特性的な面でさまざまな差が出てくることは確かです。しかし、APS-Cサイズのセンサーと比べた時、システム全体のバランスを考えたときに、システムカメラとして画質で競合できる潜在能力は、これまでもあったと考えています。しかし、潜在能力はあったにも関わらず、それを“可能性”のレベルに押し込めてきていました。ここは我々の反省点です。いくつもの制約の中で、“制約が存在すること”に甘んじてきた」

「しかし、“今現在の技術”を使いこなし、できる限りの能力を引き出すことができれば、十分に写真のプロが作品作りに使ってもらえる製品に、マイクロフォーサーズのカメラもなります。もちろん、我々はまだプロのフィールドにおける経験が少ないのですが、GH3ではかなりいいところに仕上がってきたと考えています。今回、何人かのプロカメラマンに作品取りに使ってもらい、写真集の製作も行ったのは、そうした使い方にマイクロフォーサーズを使う段階に入って来たとのメッセージを伝える意図があります」

---- 具体的には、どのような取り組みをしたのでしょう?

「ローパスフィルタにおける光線分離の方式を変更し、より質感描写に優れたものになっています。解像度感も高くなりました。単純に“薄くした”というものではなく、画像処理エンジンで新しい処理アルゴリズムを搭載し、新設計のセンサーも新ローパスフィルタに最適化しています。さらに、ノイズ管理を見直すことで特性を大幅に向上させ、トータルで高画質になっています。まだ試作段階なので、どこがどうという数字を挙げられませんが、写真として全く違うものに仕上がっています」

「さらにOLEDを用いた高画素のビューファインダー用ディスプレイの採用がありますが、オートフォーカスもセンサーからの毎秒240フレーム読み出しに対応し、従来以上の滑らかで高速、そして正確なオートフォーカスを実現しています」

---- センサーそのものの画素数は、このところ大幅な向上はありませんが、センサーそのもの世代は逐次変わっているということですね?

「毎回、毎回、その時点でもっとも高画質を引き出せるセンサーを使っていかなければ、顧客の期待に応えられないと思っています。これは処理エンジンも同じですね。今回、エンジンはG5と同じものですが、GH3は同じエンジンでも搭載している映像処理アルゴリズムが異なります。これはローパスフィルタとセットで変更したものですが、センサーに関してはG3/GX1の世代から、G5、GH3とそれぞれ異なるバージョンに進化した2世代分進化したものです。特にセンサーのダイナミックレンジが向上し、暗部からハイライトまで滑らかな階調を描けます」

「この大幅な画質向上をなんとか見せたいということで、全紙のプリントをフォトキナで展示するため、8月くらいからアフリカでの撮影を進めてきました」


大口径レンズも続々登場。システム全体での価値を提案

---- 120fpsコントラストAFはパナソニックが先行しましたが、240fpsでのコントラストAFはオリンパスがOM-Dで先陣を切ってます。240fps対応レンズに関して両社の互換はあるのでしょうか?

「マイクロフォーサーズの企画として、最初から240fpsは視野に入れてあったため、レンズとボディの通信プロトコルとしては対応しています。オリンパス製のレンズでも動く“はず”ですが、まだ製品が試作段階なので他社互換の確認まで至っていません。しかし決まりごとには、両社ともきちんと対応しているので動くはずです」

---- 240fps対応レンズと非対応レンズ、既存レンズでもファームアップ可能なものと不可能なものがあると思いますが、これはソフトウェアだけの問題ですか? それともメカニカルな問題(240HzのAF要求に駆動系が対応できないなど)もあるのでしょうか?

「まず、今後発売されるレンズに関して、対応レンズは全部ではありませんが、基本的には240fpsに対応していきます。中にはコンパクト化、薄型化などのために制約を受けるレンズもあります。しかし、たとえばLUMIX G XレンズのF2.8ズームなどはすべて対応します。具体的にはLUMIX G X 12-35mm F2.8 M.E.G.A OISはファームウェアアップデートの準備が整っています。ただ、どの製品がアップデートできるか、過去に遡ってとなるとまだ検証し切れていません。もちろん、可能な限り対応します」

---- マイクロフォーサーズに関しては、フォーマットサイズの小ささや、従来からのライトユーザー向けのイメージも手伝って正当な評価を受けにくいところがあると思います。GH3ではそのあたり、どう意識して“男子のための本格派カメラ”を作ろうとしましたか?

「まずは、撮影された写真を見ていただきたいと思います。数字としてのセンサーサイズや、S/N比などの特性の話、画素数などの話ではなく、どんな写真が撮影できているるのかを見て欲しい。海外も含めて、いろいろなフォトグラファーに撮影してもらい、彼らに満足してもらうことができました。ひとつの大きなポイントは機動性やバリアングルファインダーなど、撮影の自由度です。フルサイズセンサーのカメラを、いわば中判フィルムのカメラとするならば、中判では撮れない世界が35mmにはありました」

「フルサイズセンサーにはフルサイズセンサーの魅力がありますが、プロの作品作りにも使える機能性と画質を備えることで、マイクロフォーサーズシステムならではの魅力を引き出せたと考えています。今回、評価を依頼したフォトグラファーの方々も、機動性と高画質のバランスを高く評価してくれました。行動に制約のある中でレンズをたくさん持って行けることが、防塵防滴仕様のボディと共にフォトジャーナリストをサポートしましたし、自然の中でのマクロ写真の世界では、むしろフォーマットが小さいことが被写界深度の面などで利点となって撮影領域を広げています」

「GH3を通して、フルサイズセンサーとは異なる価値をマイクロフォーサーズのシステム全体で感じてもらえると嬉しく思います」

---- F2.8ズームを筆頭に、今回は42.5mm F1.2、150mm F2.8など、35mmフィルムの世界におけるプロ用レンズを意識したスペックのレンズが、このところ発表相次いでいますが、これはGH3のための準備だったということでしょうか?

「はい。GH3を通じてコンパクトな高画質撮影を楽しんでもらえるよう、レンズの開発計画も合わせてきました。


フォトキナ2012で正式発表されたLUMIX G X VARIO 35-100mm F2.8 POWER O.I.S. 同時に、42.5mm F1.2、150mm F2.8の開発発表もあった

動画機能も強化。72Mbps記録にも対応

---- 一方の動画機能ですが、2Dを強化と言いつつ、プロでも使えるレベルの機能強化を図りましたね。Iフレームのみの動画記録や最高72Mbpsの高ビットレート対応は、SDカードへの記録帯域考えるとギリギリのところでしょう。動画の強化では、特にどのような点に配慮したのでしょう?

「GHシリーズですから、2Dにフォーカスといっても、動画をきちんとこなさなければ許されませんよね。動画撮影に使える一眼としては、業界最高レベルの機能、品位、使いやすさは至上命題です。実はGHシリーズは映画やテレビドラマの製作現場で、かなり使われています。フォーマット的にも使いやすいサイズということがあると思いますが、当然、制作の現場からプロ機材として使うための要望が上がっていました」

「今回の改良点は、たとえばファインダー(あるいはライブビュー)とHDMI出力の同時映像出しに対応させました。シネマトグラファー(カメラマン)がファインダー撮影しつつ、それを外部モニターに映してディレクターや映像監督が見ながら撮影、といったことをこなすためです。このHDMI出力をHD-SDIに変換して扱い、無劣化で記録するといったことももちろんできます」

「記録フォーマットに関しては、AVCHD Progressiveに対応していますが、ビットレートの上限があるのでMOV形式にも対応しています。編集しやすさを考慮してIフレームのみ、IBPフレームの両方で72Mbps記録に対応しました。このほか、ヘッドフォン出力とマイク端子のプラグ系を標準的なミニフォーンプラグに変更し、独立して使えるようにしています。これはヘッドフォンでモニタしながら撮影しつつ、外部マイクを使うためのものです。必要と要望された機能のほとんどは盛り込んでいます」

--- HDMIのスルーアウトが出るのであれば、カラーフォーマットはYUV 4:2:2、4:4:4でも出すことができますか?

「残念ながら、そこは4:2:0出力です。できれば4:2:2にも対応したかったのですが、この点は難しい部分もあり、ご理解いただければと思います。映画製作に十分使えるという意味で、ハリウッドのスタッフにショートムービーを作っていただいています。そのメイキングビデオと、作られた作品をご覧ください。


レンズ固定式マイクロフォーサーズ機の可能性は?

---- 久々にトップエンドモデルが更新されたことで、今後は他シリーズにどんな影響が出るでしょう?

「GF、GX、G、それぞれのキャラクターを、さらに明確にしていくのが、GH3発売後、来年の仕事だと考えています。あらゆる最新の技術とノウハウを盛り込んで、突出した進化を果たしたのがGH3ですから、そこで得られたものは、他シリーズにも盛り込んでいきますからご期待ください」

---- これまでにも何度か伺ってきましたが、このところ大きなセンサーを採用した高画質コンパクト機が人気を博しています。パナソニックもLX7を発売しましたが、マイクロフォーサーズのコンポーネントや技術を活かした固定レンズのコンパクトカメラは考えていませんか?

「是非、取り組んではみたいと感じていますが、実際に何かのプロジェクトがスタートしているわけではありません。同時に開発できるカメラの数は限られていますから、その中でやりくりを考えていかないといけないでしょうね」


日本でも8月23日に発売されたLUMIX DMC-LX7。F1.4-2.3の明るいズームレンズを1/1.7型MOSセンサーと組み合わせたレンズ一体型機

---- 最後にLUMIX GH3に期待している読者にメッセージを

「GH3はマイクロフォーサーズで作ることができる高画質カメラとはどんなものなのか。そのひとつの解だという自信を持っています。今まではできていなかった、マイクロフォーサーズ規格の可能性を極限まで追求した製品です。明るい高画質レンズが生かせる、作品作りのためのよい絵を撮るためのカメラに仕上げました。10月前半には公式サンプル画像を公開できますので、是非、見て欲しいと思います」

「また、撮影時のレスポンス、レリーズラグなども大幅に改善しました。一部のフォトグラファーからは、一眼レフに比べても予想より速くレリーズが落ちると驚いていただけています。これらの点は、また製品が発売するタイミングで、手に取って確かめてもらいたいですね」




(本田雅一)

2012/9/21 16:10