IKEAの紙製デジタルカメラ「KNAPPA」を試す


 あのIKEA(イケア)がデジタルカメラだって!? しかも紙製の斬新なデザインではないか――。

KNAPPAシャッターボタンはカメラのフロントにある

 実はこれ、世界最大級のデザインイベント「ミラノサローネ2012」のIKEAブースでプレス向けに配布された「KNAPPA」という製品。現地を訪れたジャーナリストの林信行氏(Twitter@nobi)がいち早くTwitterで外観を投稿。その写真で存在を知った方も多いのではないだろうか。これまでに内外のニュース系Webサイトでも、このときの林氏の写真が多く使われている。

 今回デジカメWatchでは、林氏のご厚意によりKNAPPAをお借りすることができた。ここでは簡単ながらレビューをお伝えしたい。なお、林氏のミラノサローネレポートは、こちら(家電Watch)で読むことができる。

 林氏によれば、KNAPPAについてはブースやIKEAのプレスキットでも特に触れられていなかったとのこと。単なるノベルティなのか販売を前提としたものなのかは不明である。IKEAの日本語サイトには記事執筆時点で情報は無かった。

一枚の基板をボール紙で包む

 言わずもがな、IKEAといえば世界最大と言われている家具店だ。日本にも店舗があるので、なじみの人もあるかと思う。KNAPPAも、IKEAの家具のようなクールで素朴な外観が目を引くプロダクトだ。

 林氏によると、現地で受け取ったときには既に組み立てた状態で段ボール製の箱に収まっていたとのこと。パッケージとしてはこれだけで、紙の取扱説明書は入っていない。

パッケージはこのような段ボールだった。電池は含まれていなかったとのこと背面には日本語の説明も

 筆者もカメラを受け取って使い方がわからず、林氏に説明書のありかを尋ねたところ、カメラのメモリーに入っていると教えてもらった。カメラの背面をよく見れば、それと思しきイラストがあったのだが、なぜか気がつかなかった自分が恥ずかしい。

このイラストは、説明書がメモリーに入っていることを示している

 説明書(PDF)は29の言語で書かれており、ちゃんと日本語も含まれている。こうなると発売への期待が否が応にも高まるというものだ。

 このカメラはいわゆるトイカメラであるが、特徴的なのは外装がボール紙という点だろう。それも、1枚のボール紙でカメラを覆う意匠になっているのがおもしろい。塗装もしていない厚紙の風合いがなかなか味わい深いのだ。

今回は林氏が調達したIKEAのバッテリーを入れてみた。バッテリーの色でカメラのデザインも変わるというおもしろさがある。バッテリーは単4電池×2本

 KNAPPAは、1枚のプリント基板にすべてのパーツが付いている“ワンボードカメラ”とでも言うべき代物。もちろん液晶モニターや表示パネルなどは無く、状態を示すのは背面にある1個のLEDのみというシンプルさがIKEAらしいということか。

横から見たところ。基板の厚みは約2mmと厚めで、シャーシという意味もあるのだろう底面。FCCなどの規制にも準拠しているようだ
ネジを外して開いたところ。基板と厚紙は一部が接着されている基板の裏のシートを剥がせば実装部品が見えるのだが、部品まで剥がれそうなのでやめることにした

さっそく撮影してみた

 このカメラのスペックについては、どこにも記述は無いようだ。撮影画像を見ると1,280×960ピクセルなので、123万画素弱ということになる。

 前面にある黒丸のボタンがシャッターボタンになっており、長押しすると電源がすぐに入る。シャッターレリーズの際はこのボタンを“2秒ほど”押す。一般的なカメラのように一瞬だけ押したのではシャッターは切れない。また、撮影直後はメモリーへの書き込みと思われる8秒ほどの待ち時間が発生し、この間は撮影はできない。何ともスローなカメラだ。

フロントの黒丸ボタンが電源を兼ねるシャッターボタン電源を入れると背面のLEDが光る

 ファインダーは素通しで覗く位置によって見える範囲が変わるため、かなりアバウトなフレーミングとなる。ただ、後から画像を見ると思わぬ構図で写っていたりしておもしろかった。

 撮影画像は内蔵メモリーに記録される。外部の記録メディアは使用できない。カメラから出ているUSB端子をパソコンに繋ぐと写真を閲覧できる。このカメラは変わっていて(外観からすでにそうだが)、デジタルカメラの記録規格であるDCFに則っていない。通常あるはずのDCIMフォルダは作られず、メモリーのルートにJPEG画像が貯まっていくようになっている。

 メモリーの容量は15.3MBあるが、画像を消去した直後でも何故か13.4MBが使用済みと出てくる。ところが2MB分ほど撮影しても、使用済みの容量に変化が無い、というよくわからないことになっていた。今回撮影した画像の容量は80~330KB程であった。ちなみに、PDFの説明書は本体の消去ボタンでも消すことはできないが、容量は1.5MBだ。

画像がまったく記録されていない状態の内蔵メモリーの様子。大きな容量を消費している何かがあるらしい

 パソコンから見た場合、KNAPPAのメモリーは書き込み禁止になっているため消去やフォーマットはできない。カメラ本体の削除ボタンで画像を一括して消す仕組みになっている。

パソコンへの接続は本体から飛び出したUSB端子で行なう前面の穴にピンを挿すことで画像を消去できる

 画質については作例をご覧頂きたいが、正にトイカメラのそれである。全体にのっぺりしていて、ディテールは伝わってこない。これを味としてプラスに受け取る人ならおもしろいカメラになるだろう。

レンズ。前玉の直径は1mmほど。フォーカスは固定のようだ

 レンズは単焦点で、35mm判換算で50mm前後だろうか。何しろこのカメラで撮影した画像にはExifデータが付かないので、撮影データが何もわからないのだ。今回撮影した限りでは、周辺光量低下はほとんど見られなかった。なお、撮影画像には自動的に白い枠が付く仕様になっているようだ。

まとめ

 このカメラをデザインしたのは、スウェーデンはストックホルムのエンジニアリング集団「TEENAGE ENGINEERING」のようだ。このページでは“世界で最もチープなカメラ”と紹介している。

 TEENAGE ENGINEERINGといえば、お洒落なシンセサイザー「OP-1」を発売して話題になった。筆者は、KNAPPAを最初に見たときにカセットテープ(コンパクトカセット)の形を思い出した。実際に並べてみると大きさもほぼ同じ。音楽繋がりというわけでも無いだろうが、“KNAPPAのデザインにカセットテープの形が活きていたら”などと妄想が膨らむのもこのカメラの魅力かもしれない。

どことなくカセットテープを思わせる形。大きさも同じくらいだ

 撮影しても楽しいカメラだが、インテリアとして飾っておいても良さそうだ。きっとIKEAの家具でしつらえた空間なら、なお映えることだろう。

 このまま幻のカメラになってしまうのかもしれないが、願わくば商品化を期待したいところ。発売されたら1つ買いますよ、IKEAさん!!

ボール紙を留めているネジを外したら、ストラップも装着できた

実写サンプル

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
  • KNAPPAは、撮影画像にExifデータが記録されません。
KNAPPA / 約224KB / 1,280×960KNAPPA / 約209KB / 960×1,280
KNAPPA / 約332KB / 1,280×960KNAPPA / 約324KB / 1,280×960
KNAPPA / 約300KB / 1,280×960KNAPPA / 約297KB / 1,280×960
KNAPPA / 約125KB / 1,280×960KNAPPA / 約72KB / 960×1,280




(本誌:武石修/機材提供:林信行)

2012/5/18 14:37