アドビ、「Adobe Creative Cloud」「Adobe Touch Apps」説明会を開催


 アドビは18日、「Adobe Creative Cloud」および「Adobe Touch Apps」に関する説明会を都内で開催。今後展開するCSシリーズの本格的なサブスクリプション方式について、そしてクリエイター向けのAndroid用アプリについて紹介した。

 解説したのは、アドビシステムズ株式会社 マーケティング本部の西山正一氏。

アドビシステムズ株式会社 マーケティング本部の西山正一氏

 アドビはCSシリーズの開発サイクルを2年周期に定めていたが、今年は1年周期でのリリースとなった。市場の変化に対応するためで、CS5からCS 5.5へのバージョンアップがそれに相当する。

 しかし、現状ではさらに市場の変化は加速度を増しており、従来のような一定の開発サイクルでは、ニーズに応えられないと判断。サブスクリプション方式を「検討に値する価格」で提供する必要がでてきたという。

 アドビでは、CS5.5におけるサブスクリプション提供をすでに行なっている。CS5.5ファミリーに含まれるソフトそれぞれについて、例えばPhotoshop CS5.5なら、年間プランが5,000円、月々プランが7,000円(いずれも月額料金)。パッケージ版に比べて、大幅に安価であるとのイメージは薄い。

 一方Adobe Creative Cloudでは、「Adobe Creative Suite Master Collection」相当(すべてのCSファミリーをセットにしたパッケージ)を利用可能とした上で、年間利用で個人が月額5,000円、ワークグループが月額7,500円を予定している。ワークグループは法人利用を想定し、個人利用より機能面で上位になるイメージという。

Adobe Creative Cloudで提供されるサービス月額5,000円、または7,500円を予定

 すべてのCSファミリーだけでなく、Adobe Creative Cloudには、CSファミリーに含まれないAdobe Edge、Adobe Muse、Adobe Touch Appsが含まれる。

 さらに、20GBのオンラインストレージも利用可能。Adobe Touch Appsの同期、電子出版サービス(Digital Publishing Suite Single Edition)、Webサイト構築・管理サービス(Business Catalyst)、Max 2011で買収を発表したTypeKit社のフォントなども付属する予定だ。

 加えてAdobe Creative Cloudには、何らかのコミュニティ機能も持たせるという。サポート、フォーラム、アイデアやクリエイティブの共有機能などを検討中とのことだが、現状では多くの部分が未定となっている。

 提供開始時期は、2012年上半期を予定。詳細については後日発表するという。

 Lightroomのサブスクリプションについて質問が及ぶと「現状ではCS Mastar Colectionがベース。基本的にはそこに入っているものが使える」との回答があった。

 西山氏は、Adobe Touch Appsについても紹介した。15日にアドビが公開したAndroid marketで公開したクリエイター向けのアプリ。タブレット製品の特徴を活かし、CSファミリーを補完するような機能を特徴としている。

 15日に公開されたAdobe Touch Appsは、フォトレタッチ「Adobe Photoshop Touch」、ムードボード作成ツールの「Adobe Collage」、プレゼンツール「Adobe Debut」、ベクターグラフィックツール「Adobe Ideas」、カラーテーマ作成ツール「Adobe Kuler」、Webサイトやモバイルアプリのプロトタイプ設計時に役立つ「Adobe Proto」。これに写真共有の「Adobe Carousel」を加えたラインナップとなっている。

Adobe Touch AppのラインナップそのひとつがAdobe Photoshop Touch。タッチ操作で画像を動かしてレイヤー構造を確認できる

 そのうちのひとつ、「Adobe Photoshop Touch」(9.99ドル)は、Photoshopのコア機能をベースに、タッチ操作を取り入れた編集機能が特徴。選択範囲を指で指定できたり、端末のカメラで撮影した画像をレイヤーに取り入れるなど、Photoshopと異なる利便性を有している。フィルタなどの機能は、ほぼPhotoshopと同等の数を備えているという。

 Adobe Touch Appsで作られたデータは、Adobe Creative Cloudでの同期に対応する。Android端末で簡単なプロトタイプを作成し、その後パソコン上のCSファミリーで仕上げるといった用途が考えられる。

 Adobe Photoshop Touchの動作要件は、Android 3.1以上、画面サイズ8.8以上、解像度1,280×800以上。iOS用は2012年早々の提供開始を予定している。

 最後に西山氏は、Flash関連の今後についてプレゼンテーションを行なった。先般の「アドビがモバイルブラウザー向けFlash Playerの開発を終了」との報道を受けたもので、「モバイルブラウザーを対象としたFlash Playerの積極的な開発は行なわない」としつつ、HTML5に資金および人的リソースを拡大するとした。

モバイルブラウザー用Flash Playerの積極的な開発を行なわない理由Flash Platformの今後

「(HTML5に)勝った負けたではなく、FlashはHTMLの補完技術であり、かつてFlashが可能としたことがHTML5でも実現できるようになった」「Flashは普遍性があるためモバイルでも広げたかったが、アップルの考えだと実現は薄い。そうなるとFlashの必要性もなくなってきた」(西山氏)との考え。その一方で、Adobe AIRによるモバイルアプリケーションの開発に注力するという。



(本誌:折本幸治)

2011/11/18 18:44