リコー、「GR DIGITAL III」の発表会を開催

~“レンズ交換式”デジタルカメラについても言及

 リコーは27日、新型コンパクトデジタルカメラ「GR DIGITAL III」の発表会を都内で開催した。

 既報の通りGR DIGITAL IIIは、2007年11月に発売した「GR DIGITAL II」の後継モデル。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は8万円前後の見込み。詳細は関連記事を参照いただきたい

GR DIGITAL III発表会の様子

「我々の自信作」と湯浅プレジデント

 冒頭、リコーパーソナルマルチメディアカンパニーの湯浅一弘プレジデントが挨拶した。従来から同社が進めている「キャンディドフォト文化の支援」、「撮影領域の拡大」に加えて新たに、「一眼レフカメラでしかできないと思われている領域」への挑戦を掲げた。「コンパクトデジタルカメラではいい写真は撮れない、と思っているユーザーが多い。一眼レフカメラでしかできないと思いこんでいる領域に踏み込んだカメラを作ろうという思いが強かった。GR DIGITAL IIIにはこの思いを込めている」。

リコーパーソナルマルチメディアカンパニーの湯浅一弘プレジデントGRシリーズの開発コンセプトを継承した

 GR DIGITAL IIIは、画質や携帯性を重視するというこれまでの開発コンセプトを引き継いだ。道具としてのデザインや持つ喜びにこだわった。湯浅氏は、「高級コンパクトデジタルカメラと呼ばれる機種が増えたことで、ユーザーのニーズは一段、二段と高くなっている。これまで頂いた、“さらなる高画質”や、“さらにスピーディーな動作”などの要望をボディを大型化することなく実現した」と胸を張る。

 撮像素子は、1/1.7型有効1,000万画素CCD。湯浅氏は、「CCDメーカーからは、現在1/1.7型で、1,600~1,700万画素も可能と聞いているが、画素数を上げることが本当の高画質化ではない。広いダイナミックレンジや高ISO感度時の画質が重要であり、迷わず1,000万画素CCDを選んだ」と述べた。

 画質面では新画像処理エンジン「GRエンジンIII」を採用。「トータルで格段に画質も向上した。(GR DIGITAL IIIは)我々として自信作と思っている。ぜひ、触れて体験して欲しい」と締めくくった。

これまでのGR DIGITALシリーズのデザインを踏襲した
ビューファインダー「GV-2」を装着したところストロボはポップアップ式

 高級コンパクトデジタルカメラ市場の推移については、「2008年10月以前の世界同時不況が起きる前は、1つの見方として、何か撮りたいものがあるからカメラを買うというより、好きなカメラがあるので買うというユーザーが多く、大きな影響は出ないと予想していた。実際には私の予想よりも多少影響はあったが、国内市場では大きなインパクトは無かった。現時点でも大きなダメージを受けているということはない。一方で、価格の安いデジタルカメラが売れており、高価格品が売れにくくなるという一般論でいえば確かにそうなっているが、高級コンパクトデジタルカメラが“欲しいカメラ”というニーズなので大きな影響は無いと考えている。カメラ、写真に興味を持っている人はここ10年で大きく増えた。そうしたユーザーに高級コンパクトデジタルカメラを選んでもらえる機会は多くなっている。今後もこの市場には十分期待できると思う」(湯浅氏)。

 また、ライバルになると思われる高級コンパクトデジタルカメラやレンズ交換式デジタルカメラの登場については、「高級コンパクトデジタルカメラの機種が増えるのはユーザーへの認知の点でも歓迎すべきこと。その中でGR DIGITAL IIIを選んで欲しい。社内では、それまで携帯電話やコンパクトデジタルカメラでライトに写真を撮影している人が、いきなり一眼レフカメラに飛躍してしまうことを“オーバーシュート”と呼んでいる。実際、写真人口が増えるに従ってそうした層は増えている。ただ、そのようなユーザーに最適なカメラはGR DIGITAL IIIであると信じて疑わない。オーバーシュートであるから、必ず戻ってくる」とGR DIGITAL IIIの優位性を語った。

 湯浅氏は従来からの主張通り、デジタル一眼レフカメラを手がけることは考えに無いとしているが、レンズ交換式デジタルカメラについては、「リコーの考えるコンパクトカメラの範疇であるGRやGXシリーズ程度の大きさにまとまり、かつ画質や操作性も成立するなら将来の方向性としては否定しない」と話した。同様に、現在より大きなサイズのイメージセンサーを搭載することについても、「カメラの完成型が、気軽に持ち運べるGRのような姿になるなら可能性としてはあると思う。ただ、レンズ交換システムも含めて現段階の技術では難しいのではないか」と答えた。

液晶モニターは3型の約92万ドット上面
側面側面

アナログフロントエンドも改善

 続いて、リコーパーソナルマルチメディアカンパニー設計室副室長の福岡宏樹氏がGR DIGITAL IIIの製品解説を行なった。

リコーパーソナルマルチメディアカンパニー設計室副室長の福岡宏樹氏

 新たに搭載した35mm判換算の焦点距離28mm、F1.9のレンズは、英語での大口径レンズの呼び方にならって「“FAST”GRレンズ」と名付け訴求する。レンズ構成は6群8枚で、非球面レンズを2面2枚、特殊低分散レンズを3枚使用した。特殊低分散レンズの採用でコマ収差の低減を図り、非球面レンズの使用で歪曲収差はほぼ目立たないレベルに抑えたとしている。

 反射が特に起きやすい最前面の高曲率レンズを始め、各レンズでコーティングの膜厚を最適化し、反射のさらなる低減を図っている。また、レンズには新マクロ機構を搭載。前群を150μm後退させるフローティングに近い動きで、像面の歪曲低減を実現した。

 なお、手ブレ補正機構については従来より明るいレンズを搭載したことと、ボディの大型化を避けるため採用を見送った。

従来より0.5段明るいF1.9のレンズを搭載した新レンズを「“FAST”GRレンズ」と名付けた
レンズ構成図。マクロ時には前群を後に移動させるMTF曲線
近距離撮影での画質も改善した
開放F値での撮影例ノイズ比較

 撮像素子は、GR DIGITAL IIの1/1.75から1/1.7型になった。進化した微細化プロセス技術と集光技術を従来とほぼ同サイズのセルに収め、感度特性を約1段分アップさせた。AD変換機構を含むアナログフロントエンドは、スイッチング特性を刷新し、高ISO感度時に発生する色つきを改善した。CMOSではなくCCDを採用したのは、これまでのGRシリーズの絵作りを踏襲するためとしている。

 GRエンジンIIIでは、ビット圧縮以前にノイズ低減を施すことで、これまでよりもきめ細かなノイズ処理が可能となった。解像度や彩度を保ったまま、自然なノイズ低減ができるようになったとしている。

液晶モニターの大型化に伴って、ボタンの配置を見直したバッテリーは新たに容量を増した「DB-65」を採用することで、3型液晶モニターになっても従来と同じ撮影可能枚数を確保した。なお、従来の「DB-60」も使用可能
新たに「GR」のロゴが彫込みになった
撮影時の画面メニュー画面
新しくなったアダプターアダプターに同梱の専用フード
専用フードを装着したところこちらも新型になったワイドコンバージョンレンズ「GW-2」
GW-2を装着したところGR DIGITAL IIIと同時発売の速写ケース「GC-4」。ビューファインダー(GV-2)を装着したままカメラを収納できる
GC-4の上カバーを開けたところGC-4装着時の背面
GR DIGITAL IIIのみを収納できる新型ソフトケース「GC-3」。背面にDリングとベルトループを備えるGR DIGITAL II(左)とGR DIGITAL(右)

ライカが宗教、コンタックスが哲学ならGRは「肉体の一部」

GR DIGITAL IIIを持って話す細江英公氏

 会場には、フィルム時代からGRシリーズを使っているという写真家の細江英公氏がゲストで登場。ロダン美術館の彫刻をGRシリーズで撮影した話を披露した。

 細江氏は、GR DIGITAL IIIについて、「穏やかな革命によって内部がデジタル化し、僕にとって理想的なカメラになった」と評価。彫刻の撮影では、彫刻を人物あるいはロダン自身と捉え、敢えて大判カメラを使わずGRシリーズを使用したとのこと。彫刻の裏側に手を伸ばしたり、彫刻の穴の中から撮影するといった手法も採ったとのこと。今まで、こうした撮影は無かったのではないかとしている。

 また、雑誌「光画月間」(光画荘刊)で、師匠の写真家である北野邦雄氏が発表した一文「ライカは宗教、コンタックスは哲学」を引き合いに出し、「これは見事なキャッチフレーズ。カメラというものをこのような言い方で表現したことに驚いた。ではリコーはと考えると『肉体の一部』と言うのが相応しいのではないか」と持論を述べた。「GRシリーズを楽器と考えるとフルートやハーモニカのように人間の部分と直結するものであるような感じだ。カメラも愛用することが重要。GRシリーズは、単純に道具というのではなく、もっと身近な感じがする」(細江氏)。同氏は、それぞれの立場から、“このカメラは何に例えることができるのか”を考えると、カメラが人生にとって身近な物になると締めくくった。

会場には、東京・銀座のフォトギャラリー「RING CUBE」で開催する動物写真家前川貴行氏の写真展「銀座どうぶつ園」の展示模型も用意していた。同展では、動物をほぼ原寸大でプリントして展示する。会期は7月29日~8月31日


(本誌:武石修)

2009/7/27 21:13