女子のための動きモノ写真教室
ブルーインパルスを撮ろう!実践編

女子のための動きモノ写真教室の最終回は、実際にブルーインパルスを撮るときのポイントを具体的にお教えします。準備編で機材を揃え、撮影設定編でカメラの設定をすれば後は現地に赴いて撮るだけ! とはいっても曲技飛行の第1区分は27課目もあるので初心者でも撮りやすい課目をピックアップしてみました。ブルーインパルスの展示飛行を見たことある方は、ぜひイメージトレーニングしながら読んでみてください。

ダイヤモンド・テイクオフ&ダーティーターン

焦点距離:400mm 1/1,250秒

4つの機体が離陸後に会場正面から後方へ抜ける展示飛行の最初の課目です。低めの高度でカメラに向かって来るので動体予測がしやすく、初心者でも撮りやすいです。また、曲技飛行課目のなかで唯一ライトを光らせているのでとても画になります。ピントは先頭のスモークを出していない機体に合わせましょう。

ロールオン・テイクオフ

焦点距離:400mm 1/1,000秒

ひとつの機体が車輪を出したまま会場を右から左へ回転しながら横切る課目です。流し撮りをするように撮ります。カメラが上下にぶれないようにしっかりと構えてスムーズな動きで機体を追いましょう。

連写で撮影しますが、車輪が写るような機体の向きを意識してシャッターを押します。何も考えずに連写すると、シャッターとシャッターの間にベストショットのタイミングが来てしまいます。自分のカメラがどれくらいの感覚でシャッターが切れるか(連写できるか)の、シャッタータイミングを知っておきましょう。

チェンジ・オーバー・ターン

焦点距離:400mm 1/1,000秒
焦点距離:200mm 1/1,000秒

会場の右側から正面に向かって5機が飛行してきます。この5機が花開くように隊形を変え始めたらすぐに望遠側で連写しましょう。連写が終わったら一息ついて、機体がスモークを出しながら旋回し始めたらレンズを少し広角側にして、手前のスモークと奥の機体が入るように広く写してみましょう。

スモークが手前側にありますが、ピントは奥の機体に合わせます。先頭の機体に合わせられればベストです!

ハーフ・スロー・ロール

焦点距離:400mm 1/1,000秒

2機が会場を右から左へ並走する課目です。2機同時に横転をしながら目の前を通り過ぎるので、背面飛行時や機体の上面をこちらに見せたときがシャッターチャンスです。脇をしめて、左手はレンズをしっかり支えて自分が三脚の軸になったかのように右から左へ行く機体を追いましょう。

機体が正面に来てからピントを合わせたのでは遅いので、こちらに向かって来る間にピントを合わせて、自分の正面に来る前に連写をスタートさせてください。

キューピッド

焦点距離:25mm 1/350秒

会場の正面にふたつの機体で大きなハートを描き、ひとつの機体が左下からそのハートを射抜く矢を描く課目です。ブルーインパルスというとこの課目を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

風のない、天気のいい日はハートは地面から垂直に近い縦方向に描かれるので25mmの画角でも全景を収めることができますが、風の強い日は地面から並行に近い低い高度で描かれるので18mm程度の広角画角でないとフレームアウトしてしまう可能性があります。ここは思い切ってコンパクトデジタルカメラやスマートフォンで撮ってしまうのもありですよ!

デルタ・ループ

焦点距離:400mm 1/1,250秒
焦点距離:400mm 1/1,250秒

6つの機体が密集隊形のまま大きな円を描きます。頂点を超えて下降する機体、回転を終えてこちらに向かって来るところを撮りましょう。どちらのポイントもピントはスモークを出していない先頭の機体に合わせます。

コーク・スクリュー

焦点距離:400mm 1/1,000秒

展示飛行の最後の課目です。背面飛行をする機体の周りをもうひとつの機体がらせんを描きながら正面から飛んでくるので、縦位置で背面飛行している機体にピントを合わせて連写しましょう。回転は3周なので出遅れないように!

構図としては黄金分割の左上の交点に2機が来るようにするとまとまりのある構図になります。

最後に

撮りやすい展示飛行の課目名とポイントをお教えしましたが、いかがでしたか? ひとことで言ってしまえば、ブルーインパルスは展示飛行の課目と順番を覚えてしまえば素敵な写真を撮ることが可能です。

「27種類もある課目を全部なんて覚えられないよ!」という方が多いと思いますが、大丈夫です、展示飛行中は会場にアナウンスが入って、機体がどこから飛んでくるか、どんなアクロバットを見せてくれるかを実況してくれます。ただ、アナウンスを聞き終わってからカメラを構えるのでは遅いので、上記の7つの課目は暗記して、アナウンスの最初の段階で「あ、あれが来るぞ」といち早く察知できるようになるとベストです。

また、ブルーインパルスが飛ぶような航空祭では様々な戦闘機の展示飛行が行われます。ショー当日はぜひ朝から基地に行って撮影してみてください。

主な展示飛行は目の前の滑走路を飛び立ったり滑走路上空を横切って飛びます。重い機材に手と体が負けないように右手はグリップをしっかりと握って、左手はレンズを上からではなく下から支えるようにして持ちましょう。脇をしめて足を開いた基本のスタンスを取ることで重心が中央に来ますので、足腰への負担を軽減することができます。

基地では、エプロンという通常は航空機が駐機する場所でショーを見ることになります。ハイヒールやヒールのあるブーツなどは履いて行かないようにしましょう。ここでは三脚や傘の使用もNGです。雨が降りそうな場合はレインコートを持って行きましょう(雨天時、もしくは雲が多い場合は他の戦闘機は飛んでもブルーインパルスの飛行は中止になる場合があります)。

また、晴れていても風通しがいい場所なので肌寒くなることがありますので、風を通さない上着が1枚あると便利でしょう。もちろん頭上を遮るものもありませんので日除けとして帽子もあると便利です。

航空祭の行われる基地にもよりますが、ブルーシートやミニ椅子の使用が可能な基地、一部区切った区域のみ使用可能な基地、全面使用禁止の基地があります。基地の公式サイトでしっかり調べてから出発しましょう。

なお、少しでも他の人の頭を超えて高い位置で撮りたい気持ちが先走って、脚立を使用禁止エリアで使ったり、ハードタイプのカメラバッグの上に乗って撮影している人も見かけます。しかし、それほど見晴らしは変わらない上にショーを楽しみに来ている他のお客様に迷惑になりますので、撮影場所に合ったマナーを守って楽しく撮影しましょう!

撮影機材:ニコンD4S、ニコンD610、AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR、AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR

(2015/10/14)
(みさき なな)東京都出身。知り合いの写真家の作品撮りにモデルとして関わったことがきっかけで写真に興味が沸き独学で写真の勉強をし、作品を持ち込んだ出版社に編集として入社。2010年独立。現在はカメラ雑誌の編集やWebでのカメラレビュー、写真講座の講師として活動中。「Pentax+」でも記事を連載。 Twitter:@cosaruruブログ:http://misakinana.com