特別企画

オランダ生まれの「イージーカバー」「レンズリム」とは?

高品質シリコンでカメラ&レンズを傷から守る!

ゴールデンウィークも近づいてきた。連休中に楽しいレジャー、あるいは撮影旅行の予定を立てている方も少なくないだろう。「いやいや、うちなんて安近短ですよ! せいぜい近所を散歩するくらい」という方もいるかもしれないが、青い空とまばゆい新緑を見たら、きっとカメラを持ち出したくなるにちがいない。

さて、カメラを提げつつも本格的な撮影目的の外出ではないから、カメラバッグにしまわなくていいよね、という軽装での撮影。あるいは自転車に乗って移動するなどという場合に気をつけたいのが、カメラやレンズに傷がつくこと。強くぶつけることや落とすことはそう多くはないはずで、むしろ、軽い傷をつけることは少なくないかもしれない。あれ、もしかするとそれは筆者だけなのだろうか。いやまさか。

「カメラの傷はカメラマンの勲章だ」という硬派(?)な方はともかくとして、できればカメラやレンズにむだな傷はあまりつけたくないという方に検討してもらいたいのが、カメラボディを包むシリコンカバーである「イージーカバー」と、レンズ先端とピントリング部分にとりつける「レンズリム」。国内では株式会社ジャパンホビーツールが取り扱っている製品だ。

イージーカバーでボディを、レンズリムでレンズを守る!

イージーカバーはカメラの上から覆ってカメラ部分を保護するカバー。

EOS 6D用イージーカバー(近日発売予定)を装着。色はカモフラージュ。

レンズリムはレンズ先端のフィルターねじ枠にねじ込む「レンズバンパー」と、鏡筒部分に巻く「レンズリング」のセットで、レンズを保護するものだ。

レンズリム。レンズ先端につけるレンズバンパー(右)とズームリングなどに巻く「レンズリング」からなる。
レンズバンパーとレンズリングを装着したところ。

いずれも高級シリコン製で、カメラ・レンズをホコリや汚れ、そして衝撃などから保護する。イージーカバーはカメラの機種ごとに、レンズリムはフィルター径に合わせて用意されている。

イージーカバーの対応機種はキヤノンEOS一眼レフ・EOS M用各種とニコン一眼レフ・Nikon 1用各種がある。

色は4種。黒のほか、キヤノン一眼レフ用には赤があり、EOS 5D Mark III(以下、5DMkIII)用にはクリアがある。

また、ニコン用は黒のほかに一眼レフには黄色がある。カモフラージュ柄も一部機種にはある。いずれも液晶保護シールとクリーニングクロスが付属する。

イージーカバー対応機種

    キヤノン
  • EOS 5D Mark III
  • EOS 5D Mark II
  • EOS 6D
  • EOS 7D Mark II
  • EOS 7D
  • EOS 70D
  • EOS 60D
  • EOS 40D/50D
  • EOS Kiss X6i/X7i
  • EOS Kiss X7
  • EOS Kiss X70
  • EOS X50
  • EOS M

※カラーバリエーション
赤:5DMkIII、6D、7DMkII、70D、Kiss X6i/X7i、X7、X70
クリア:5DMkIII
カモフラージュ:5DMkII、7DMkII、70D、X70


    ニコン
  • D4/D4S
  • D810
  • D800/D800E
  • D750
  • D610
  • D600
  • D7100/D7200
  • D5500
  • D5300
  • D5200
  • D3300
  • D3200
  • Nikon 1 S1/S2/J1/J3/J4/V3

※カラーバリエーション
イエロー:上記一眼レフ
カモフラージュ:D4/D4S、D810、D800/D800E、D750、D7100、D5500、D5300、D3300、D3200

一方、レンズリムは黒のほか、レッドとイエローの3色。口径は52mm、58mm、62mm、67mm、72mm、77mmが揃えられている。

カメラやレンズだけではなく、被写体も保護できる

イージーカバーもレンズリムも、ハードなアウトドア環境で使う特殊用途のカバーというよりはむしろ、日常的な使用で傷をつけてしまいそうな場合に役立ちそうだ。

たとえば、ベルトのバックルにカメラを当ててしまったり、夢中で撮影していてしゃがんだときに、地面にカメラをぶつけることは少なくないだろう。

また、2台のカメラを首から提げていた使うヘビーユーザーや建築現場などの業務用途では、注意していてもカメラをぶつけることがあるのではないか。

近日発売予定のEOS 6D用カモフラージュを装着してみる
よく伸びるので装着は簡単
EOS 6D用には、液晶保護シールとクリーニングクロスも付属する
開口部分は内蔵ストロボと外部端子カバー、カードスロット部分と底面くらい

いずれにせよ、屋外での撮影ではカメラに埃や砂、泥がつくことは避けられないが、イージーカバーを装着しておけば、かなり汚れを防ぐことはできるだろう。カバーの汚れは外して水洗いすればいい。

「自衛隊の方に聞いたのですが、航空機のコックピットなどに撮影機材をぶつけることはしたくないというのです。カメラやレンズの保護だけではなく、被写体や周囲を保護するというというのは、なるほどと思いましたね」(同社代表取締役社長の笹部英嗣氏)

一般のユーザーでも、マクロ撮影などで被写体に近づいていってレンズ先端を被写体にぶつけてしまうことは皆無ではないだろう。そう思うと、被写体の保護にもなるかもしれない。さらに、レンズリングはグリップ向上とレンズを置いたときの胴体部保護に役立つだろう。

素材は前述の通りシリコンだ。メモリーカードスロット部分などに開口部分があるので防水とまではいえないが、防滴性はあるといっていいだろう。また、素材のシリコンは通常の使用では劣化しないという。かなり意地悪に用いても、伸びてしまうことや縮んでしまった経験もないとのことだ。

こちらはレンズリム。レンズリングを取り付ける。ここではズームリングに重ねた
その後、レンズ先端にフィルターねじ枠に、レンズバンパーを装着して完成

製品ごとに進む改良

イージーカバーは、オランダのロッテルダムにあるディスカバード社の製品だ。このディスカバード社は、ジュリアン・クウェルダム氏が大学卒業後に銀行から資金を借りて起業した会社。オランダでは、一流大学の卒業者に銀行が起業資金を融資するシステムがある。起業ののちiPhone用のシリコンカバーにヒントを得たクウェルダム氏は、同じく世界市場で需要がありそうなカメラ製品への応用を考えて企画したそうだ。その後、世界中の展示会に出品して販路を拡大し、約8年間で70カ国近い国々で発売している。

笹部氏がイージーカバーに出会ったのは、フォトキナ2010の会場。そして、国内でジャパンホビーツールが発売を開始したのは2011年。当初はカメラにカバーをするということがなかなか受け入れられなかったのが、ここ1年ほどで売れ行きがよくなってきたという。そして、品質も製品ごとに改善されているそうだ。

「型の精度が向上して、シャッターボタンの感触やフィット感が格段によくなりました。初めのころはプロの写真家から『シャッターボタンの感触が変わってしまう』という意見もありましたし、シリコンに埃が付着しやすいとも言われました」(笹部氏)。シャッターボタンに関しては、その部分をくり抜いた製品もある。

キヤノン用には赤があり、ニコン用には黄色があるが、これはディスカバード社がカメラのイメージに合わせて企画したもの。ユーザーの好みも国によってさまざまなようで、日本国内で売れるのはもっぱら黒。男性は圧倒的に黒を好み、女性は赤やカモフラージュを購入するという。

対応機種でいえば、5DMkIII用とKiss用が圧倒的に売れているそうだ。ジャパンホビーツールからの提案で、5DMkIII用のクリアや6D用のカモフラージュ(5月発売予定)もある。その他のメーカーの機種は「できればやりたい」とのことで、まずはOM-D用(機種未定)が検討されている。

EOS 70Dに、赤のイージーカバーと赤のレンズリムを同時につけてみた。カメラとレンズの印象がすっかり変わって楽しめる。

ちなみに国内販売代理店のジャパンホビーツールは、昭和33年の創業。当時は工具の卸販売を行っていた。1970年代の東急ハンズ開業のときも、模型用オリジナル工具などを製作・販売している。その後、1980年代から1990年代のクラシックカメラブームの頃に、カメラ修理用工具がたいへん好評になり、カメラ・写真業界向けに各種用品を取り扱うようになったそうだ。筆者自身もその頃に同社のカメラ修理工具や張り革を東急ハンズで買い求めた記憶がある。

まとめ:気軽なプロテクターとして、楽しく用いたい

筆者が感心したのは、カメラやレンズの保護だけではなく被写体や周囲の保護もできるということ。取材中に聞いた自衛隊員のような経験は筆者にはないが、それでも被写体に撮影機材をぶつけることは避けたい。

思い返せば、カメラバッグ内に乱雑にボディとレンズをしまいこみ、移動中に両者が擦れて傷をつけたこともある。そう思うと、イージーカバーとレンズリムはさまざまな状況で役立ちそうだ。カラーバリエーションもあるので、バッグやストラップとの配色の組み合わせを楽しむのもいいだろう。

制作協力:株式会社ジャパンホビーツール

秋山薫