新製品レビュー

写ルンです Black and White

手軽さと表現の両方を楽しめる、“モノクロが撮れる”写ルンです

今年7月に40周年を迎えた写ルンですに、新たに「写ルンです Black and White」「写ルンです Active」の2種がラインアップされる。

特に、かつて存在していた「写ルンです Black and White」の再登場はビッグニュース。写ルンですの気軽さで日常をアーティスティックに切り取ることができるほか、現像もカラー現像処理で可能なフィルムを使用することで、町の写真店でも即日現像・プリント・データ化をすることができる。今回は、その気になる描写をレビューする。

30年前に誕生した白黒版が復活!

写ルンですの白黒版の初代モデルは、1996年に発売された「写ルンです Black&White Flash27」。ちょうどこの発売から30年ぶりの復活となる。

ちなみにその翌年にはセピアカラーで撮ることができる「写ルンですスーパースリム セピア Flash 25」が発売されたが、わたしはこれらを相当に愛用していた記憶がある。なんだか白黒やセピアで撮れるのはアーティスティックでクールというイメージがあったのだと思う。

今回の「写ルンです Black and White」も表現を重視した広報展開になっているが、いつの時代もそうなのだろう。

手軽に白黒写真の楽しさを味わうことができる貴重な存在

価格は少し高めに設定

現在、通常の写ルンですの価格は約3,000円。使い続けてきた人からすると高価に感じるが、世の中の物価上昇を見ているとギリギリ範囲内の価格帯という印象。

「写ルンです Black and White」は果たしていくらで販売されるのか。

商品が発表されてから、さまざまな人に「いくらだと思う?」と聞いてみたが、だいたいが「写ルンですと同じでしょ?」という答え。カラーフィルムより白黒フィルムのほうが安価というイメージがあるベテラン勢になると、逆に安くないとおかしいという意見もちらほら。

しかし正解はというと、想定価格で4,300円前後とのこと。正直、少し割高に感じてしまう。この値段を使う価値があるのか。どうしてもそこが判断基準になってくる。

カラー現像処理が可能で手軽

近年、多くの写真店が白黒フィルムの外注先として利用していた老舗ラボは閉業。白黒フィルムの現像先はどうなるのだろう、という不安がよぎる中での本製品の発売告知。頭の中には「?」が浮かんだが、カラーネガと同じC41処理をする特殊なフィルムが使われているとのこと、合点がいった。

イルフォードの「XP2 Super」、かつてのコダック「BW400CN」などと同じだ。つまり、町の写真店でも現像機があれば対応でき、店によっては1時間でネガ現像、データ、プリントにしてくれる。敷居が高く感じられることがある白黒写真を、写ルンですならではの「覗いて撮るだけ」というシンプルな操作で手にすることができるのはうれしい限りだ。

もちろん40周年を機にスタートした富士フイルム公式の現像サービス「写ルンです+」を利用し、コンビニ発送→アプリに画像データが送られてくる、という流れで楽しむことも可能だ。

「写ルンです Black and White」のデザイン

通常の写ルンですも最近デザインがリニューアルされたが、「写ルンです Black and White」はそのパッケージを踏襲しつつクールな黒主体のデザインになっている。本体も同様で、黒を基調に富士フイルムグリーンのラインがあしらわれており、これは相当にスタイリッシュだ。

これをより際立たせてくれるのが、今年8月に発売された純正のハンドストラップ「フジカラーレンズ付フィルム 写ルンです カメラストラップ グリーン」(1,980円)。

富士フイルムグリーンが基調の編み込みデザインで、これがブラックの本体にものすごく映える。何より使い勝手も格段に向上。写ルンですを使っていると、想像するよりもハンドストラップを付けたい、手首にぶらさげて歩きたい、という気持ちになるのだ。

これは贔屓目ではなく、とてもかわいらしいデザイン。ここ2カ月ほどは必ず写ルンですをハンドストラップ付きの状態で携行しているが、「写ルンです使っているんですね」ではなく、「そのストラップかわいいですね」と言われることのほうが確実に多かった。ぜひ。

ひと目で白黒版とわかるパッケージ
本体も黒がベースになっていてスタイリッシュだ
純正のハンドストラップ(別売り)を使うと使い勝手がよくなる

「写ルンです Black and White」の使用感

撮影は写ルンですの気軽さそのままなので本当に楽々。ただ、スマートフォンなどの撮影が主という方は「ちょっと暗かったらフラッシュオン」のクセを付けていただきたい。

日陰でもフラッシュ。室内はもちろんフラッシュ。そしてフラッシュが有効な撮影距離は1~3mで、少し離れてしまうと露出アンダーになるので注意したい。ちょっとおせっかいになるが、フィルム写真=フェードで暗めの写真というのは完全に露出不足の状態なので、そこは勘違いしないようにしたい。

わたしは日常的にフィルムカメラを使っているが、やはり主に使うのは36枚撮りだ。そして写ルンですに関しては、39枚撮ることができる「写ルンです シンプルエース」が長らく主力モデルだっため、27枚というのはかなりあっという間に感じた。

いつでもどこでも、という感覚は大切にしつつも、どこかで選球眼を高めていかないといけない。

いちばん気をつけたいのは、シャッターを切った後にすぐフィルムを巻き上げること。わたしは基本的に巻き上げてしまう派なのだが、何度も誤ってシャッターボタンを押してしまい、貴重な1枚が! となってしまった……。特にバッグやポケットに入れる場合は絶対に巻き上げせずに入れるようにしよう。

気軽ではあるけれども、1シャッター100円以上という緊張感も同居する

「写ルンです Black and White」の描写

今回は2本撮影することができた。それでも54枚(うち、4枚ほどは先のミスでボツ)。さすがに露出的に一か八かというシーンは撮らないようにしたと思うが、それでも想像を遥かに超えてしっかりとした写真を撮ることができた。

太陽光で撮った際のグレーが豊富なやわらかな雰囲気も好ましいし、フラッシュを使ったときのコントラストがしっかりと出る描写の二面性。

レンズはプラスチック製のため、太陽光を向けて構える逆光写真ではどうしてもハレーションが出る。これは弱点であると同時に個性でもあり、「これ、何のカメラで撮ったっけ?」というとき、このハレーションを見て写ルンですで撮った写真とわかることがあるくらいなので良し。

それにしても、白黒写真のどこかその物体を封じ込めているような感覚はやはり得がたいもの。写ルンですの描写の特徴には、通常のカラーよりも白黒のほうが向いているのでは、と思ってしまうくらいファーストインプレッションは好印象だった。

現像データを受け取ったとき、まず目に入った1枚。この陰影!
光と影は「写ルンです Black and White」では追いたくなるシチュエーション
こちらも光と影。出張中も持ち運ぶのが楽々。フィルムならはの粒状感も美しい
プラスチックレンズ特有の放射線状のハレーションも味わいのひとつ
ポートレートはプラスチックレンズのやわらかさが活きる(モデル:道枝幸子)
フラッシュ撮影。コントラストが高まり生々しい描写に
風景写真も順光かつ光量が足りれば優秀に描写する
最短撮影距離は1mだがセルフィーをしてもピントはくる(モデル:道枝幸子)

セピア調のデータ化・プリントも可能

これは正式なアナウンスはされていないし詮索するつもりもないが、現存するC41処理ができるフィルムということは、きっとあのフィルムが使われているのだろうということで、そのフィルムでは比較的知られている裏技であるセピア化にも挑戦してみた。

これはフィルムのベースカラーを活かしたデータ化・プリント方法で、ベースカラーが茶系のため、それを敢えて残してセピア調にするという手法。

今回の現像・データ化は東京・自由が丘の「ポパイカメラ」にお願いしたが、ポパイカメラのようなフィルム現像に特化したショップであれば相談することが可能だ。かなり印象が変わって見えるはず。

ポパイカメラでおこなったセピア調でのデータ化。フィルムベースカラーを活かしている
エモーショナルな雰囲気作りは白黒以上
個人的にはかつてセピアを愛用していたので、この仕上がりを多用したくなる

ハマったときの描写力と速写性

これは常にチャンスがあるたびに書くようにしているのだが、写ルンですは手軽であっても、またプラスチックレンズ搭載であっても、35mmフィルムフルサイズのカメラだ。

そのため、甘くても質感や階調はあるし、ときにはとてもリッチな描写をしてくれる。そして、電源もないし(フラッシュチャージは別)フォーカシングの必要もないため、フィルムを巻き上げておけば全カメラの中でも最速レベルでシャッターが切れるし、威圧感も皆無のためトラブルにもなりづらい。

写ルンですを持ち歩いていたからこそ撮れた、という瞬間が必ず出てくるはずだし、咄嗟の記念撮影などもフィルムで残すことができる。

周辺光量の落ち込みもドラマチック。作品的な写真も撮ることができる
海沿いを飛ぶトンビをサッと撮影。気になった被写体をすぐに捉えられるのは強み
残り1枚だったため、ポパイカメラでスタッフさんを撮影して現像へ。このような記念写真も白黒写真なら味わい深くなる

かつてはフィルムカメラの魅力を伝えるときには、必ず毎日持って、とにかくたくさん日常を残そう、などと言っていた。

でも、27枚撮りで4,000円越えである。少しトーンダウンしてしまうが、特別な1日、遠出する日、または1カ月かけて1本などという気持ちで「写ルンです Black and White」や「写ルンです」で楽しんでみてはどうだろう。

鈴木文彦

フィルム写真専門誌『snap!』を創刊したのち、『フィルムカメラの教科書』『中判カメラの教科書』『チェキit!』『オールドレンズの新しい教科書』『FUJIFILM画質完全読本』など、趣味の写真にまつわるムックや書籍を企画/編集/執筆/撮影。現在、『レンズの時間』『FILM CAMERA LIFE』を定期的に刊行中。