新製品レビュー
パナソニックLUMIX DMC-LF1
ポケットサイズに28-200mmレンズとEVFを凝縮
Reported by 北村智史(2013/9/26 12:08)
DMC-LF1は6月20日に発売された高級タイプのコンパクトカメラで、ライカブランドの7.1倍ズームレンズとEVFを内蔵しているのが特徴だ。また、アート系作風機能の「クリエイティブコントロール」や、スマートフォンなどと連携できるWi-Fi機能などを備えている。本稿執筆時点での大手量販店価格は3万6,800円前後となっている。
薄型ボディに28-200mmレンズとEVFを内蔵
撮像素子には1/1.7型の高感度MOSセンサーを搭載。有効画素数は1,210万画素。画像処理を受け持つ「ヴィーナスエンジン」は新開発のものを採用している。ISO感度の範囲はISO80からISO6400。撮影メニューの「拡張ISO感度」をオンにすると、ISO12800が選択可能となる。
搭載レンズは「ライカDCバリオ・ズミクロン6.0-42.8mm F2-5.9」の光学7.1倍ズームで、35mm判換算の焦点距離は28-200mm相当。レンズシフト式の手ブレ補正機構「パワーO.I.S.」を内蔵している。
開放F値は望遠端こそ平凡な数字だが、広角端はF2と明るく、夕方などの光が乏しいシーンで有利となる。最短撮影距離は通常で50cm(広角端)から80cm(望遠端)、マクロ時には3cm(広角端)まで寄れる(望遠端は変化なし)。「ズームマクロ」時は広角端固定で3倍までのデジタルズームが有効となる。多少、画質は落ちるが、かなりのクローズアップが楽しめる。
LVF(一般にはEVF=電子ビューファインダーのほうがとおりはいいが)はフィールドシーケンシャルカラー方式で、約20.2万ドット相当と、スペックとしては低めといわざるをえない。ファインダー像も小さいし、コントラストもあまり高くなく、しゃっきり感がもっと欲しいと感じる。また、接眼レンズの性能ももうひとつで、目の位置が少しでもズレると見づらくなる。なお、液晶モニターとの自動切り替え機能はなく、接眼部右側のボタンでの手動切り替えとなる。
記録メディアは内蔵メモリー約87MBとSDXC/SDHC/SDメモリーカード。フル画素の12メガ、ファイン画質のJPEGなら4GBのカードで約760枚撮れるが、RAWでの撮影をメインにするなら8GB以上の容量のカードを用意したい。電源は容量950mAhのリチウムイオン充電池で、CIPA基準の撮影可能枚数は約250枚。実写では内蔵ストロボを発光させなかったこともあって静止画を600枚ほど撮れたが、普通にストロボも利用するなら、予備のバッテリーは用意しておいたほうがいいだろう。
自由度の高いボタン割り当てとWi-Fi機能
レンズ基部にあるコントロールリングは、このクラスのコンパクトカメラには多く見られる操作部材で、使い勝手の良し悪しを大きく左右する。本機の場合、初期設定では、インテリジェントオート時はステップズーム、プログラムAE時はISO感度、絞り優先AE時は絞り調整といったふうに、撮影モードによって変化する。
コントロールリングの機能をカスタマイズすることもできる。セットアップメニューの「コントロールリング設定」で、「ステップズーム」「露出補正」「画像横縦比」「ISO感度」「ホワイトバランス」から選択できる。筆者個人としては、「ステップズーム」か「ISO感度」あたりが便利そうに感じた。
背面の「Fn(ファンクション)」ボタンもカスタマイズが可能。こちらもセットアップメニュー「Fnボタン設定」で「AF/AEロック」「ワンショットAF」「測光モード」「オートフォーカスモード」「フォーカスエリア選択」「クオリティ(画質)」「構図ガイド(格子線)」「ヒストグラム表示」から選択できる。個人的には、ここにISO感度やホワイトバランスを割り当てたかったところだが、そのあたりは背面右手側下の「Q.MENU」ボタンから呼び出す「クイックメニュー」がカバーしてくれている。
「クイックメニュー」には「露出補正」「ステップズーム」「画像横縦比」「記録画素数」「ISO感度」「ホワイトバランス」「オートフォーカスモード」「動画画質設定」「モニター輝度」があって、「Q.MENU」ボタンで呼び出したらカーソルキー(十字キー)の左右で項目を選択、コントロールリングまたは背面のコントロールダイヤル(カーソルキーの外周部分のホイール)を回して設定する。撮影時の大半の操作は、カーソルキー(露出補正、フラッシュモード、ドライブモード、マクロ/MF)とクイックメニューだけだいたいこなせる。
Wi-FiやNFC(近距離無線通信)機能も備えている。撮影した画像をパソコンなどに転送したり、スマートフォンからリモート撮影(「Panasonic Image App」アプリが必要)したりも容易に行なえる。リモート撮影時は、ズームやシャッターレリーズだけでなく、露出補正、マクロ切り替え、カラーモードの変更など、機能も多彩で使い勝手がいい。露出補正もできないアプリしか出してくれていないメーカーには、ぜひ見習っていただきたい。
普段使いに心強い1台
高さも奥行きもないスリムなボディにEVFを内蔵したところは本機の特徴のひとつ。背面モニターが見づらくなりやすい晴天の野外や、手ブレを抑えたいシーンなどにファインダーがあるのはありがたい。空間的な制約がきびしいところに詰め込んだ分、性能面では我慢しなくてはならないこともあるが、EVFの性能重視で大きく重くなったら本末転倒な気もしてしまう。
搭載レンズはズームの中間域から望遠端にかけて、画面周辺部の解像が低下するのが気になったものの、広角端の四隅の崩れが少ないし、画面中央部の画質は全域で良好だ。200mm相当の望遠撮影が楽しめて、EVF内蔵で、しかもこのスリムさ。気軽に持ち歩ける普段使いのカメラにはいい選択肢だと思う。
実写サンプル
- ・作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- ・縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・感度
感度の設定範囲は、常用でISO80からISO6400まで。撮影メニューの「拡張ISO感度」をオンにするとISO12800までとなる。ピクセル等倍で見ると、ISO400からノイズが増えはじめ、ISO800になるとノイズ低減処理の悪影響で細かい部分の描写がつぶれがちになる。が、ISO3200でもそれなりにディテールは残っているので、小さなサイズのプリントなら実用的な画質と言える。
※各サンプルのサムネイルは下の画像の青枠部分を等倍で切り出しています。
・画角
光学ズームの範囲は28-200mm相当だが、「I.R超解像」を「iA ZOOM」にして「デジタルズーム」をオンにすると、800mm相当までとなる。
広角端は四隅の崩れがあまりなく、比較的良好な画質。歪曲収差はわずかにタル型だが、デジタルで補正している可能性もある。15mm(70mm相当)から周辺部がふわっとボケはじめ、望遠端の42.8mm(200mm相当)では再び改善される。
作例は「ステップズーム」を使用して「iA ZOOM」と「デジタルズーム」をオンにした状態で撮影しているが、光学の望遠端を超えて2ステップ目ぐらいまでなら、画質劣化はあまり気にせずに使えそうだ。
マクロ時は広角端でレンズ前3cmまで近接できる。ズームマクロ時は広角端固定で3倍までのデジタルズームが可能となる。ピクセル等倍で見ると、いかにもデジタル拡大という画質だが、これだけの接写が気軽に楽しめるのはいい。
・暗部補正
オンにすると感度を上げて白飛びを減らす露出に調整したうえで、暗部の階調を持ち上げて補正するようだ。明暗差が大きなシーンでは役立つだろう。画質面では連写合成のHDRのほうが有利だが、ワンシャッターですむので人物撮影などにも利用できる。
・クリエイティブコントロール
アート系作風機能の「クリエイティブコントロール」は15種類。完全なフルオートモードではなく、露出補正も可能だ。
・動画
動画機能はAVCHDのフルHD。1,920×1,080ピクセル、60i記録で、音声は内蔵マイクによるステレオ仕様だ。
ダウンロードはこちら
・作例