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オリンパス交換レンズ特別レビュー(その5)
M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0
画質良し、ルックス良し…「足で撮る楽しさ」がわかる高性能レンズ
Reported by 曽根原昇(2014/10/20 11:00)
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「M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0」は、35mm判換算で24mm相当の画角をもつ単焦点レンズ。マイクロフォーサーズシステム規格の利点を活かし、F2.0という大口径ながら小型かつ高画質であり、高級感の高いPENやOM-Dシリーズのボディによく合う高品位な金属外装が施されているのが特長だ。
実は本レンズ、オリンパス製マイクロフォーサーズ規格のレンズラインナップとしては、2009年7月に「PEN E-P1」とともに発売された「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8」に続く、第2弾の単焦点レンズである。「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8」の描写も決して侮ることはできないが、どちらかというと携帯性を優先して造られた、いわゆるパンケーキタイプのレンズだ。人気の高まるミラーレス機“PEN”で、「もっと高画質なスナップ撮影を楽しみたい」というユーザーの声に応えて2011年7月に登場した初の本格的・高性能単焦点レンズが、今回紹介するM.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0なのだ。
本稿執筆時点での大手量販店での価格は8万2,000円前後(税込)。本レンズが分類されている「M.ZUIKO PREMIUM」のグレード(高画質単焦点シリーズ)の中でも高目の価格設定であることは、最初の高性能単焦点レンズとして、描写も、操作性も、質感も、一切妥協を許さず設計されていることを物語っている。
被写体の距離感を効果的に表現できる画角
35mm判換算で24mm相当という画角は超広角と考えたほうがよい。換算24mm相当スタートのズームレンズが普及している昨今、24mmが超広角といわれてもピンとこないかもしれないが、立派な超広角レンズだという認識は必要だ。
だた、本レンズの換算24mm相当の画角は、パースのつき方がまだそれほど強烈でもないため、気をつけて使えば視覚的な自然さを残しやすい画角でもある。いわば、誇張と自然さを兼ね備えた、超広角の入口にあたるレンズともいえるだろう。
ズームレンズのように、ズームリングを操作するだけで被写体を大きく写したり、小さく写したりできないのが単焦点レンズである。これはデメリットではなく、写真に写る被写体の大きさを自分の足で動いて調整することによって、距離による表現の違いを知ることができる、メリットと考えたい。
また、広い範囲が写るということは、被写体の背景に移り込む情報が多くなるということで、背景の配置や整理といった構図についても深く考えさせられる画角である。
この「背景を整理しながら被写体との距離感を効果的に表現できる」という特性こそが、実にスナップ撮影に向いている点。オリンパスが本レンズを「ハイグレードスナップレンズ」と形容している所以のひとつだ。
今回、筆者の好きな猫を被写体として作例を撮る場合にも、大変に使いやすい画角であった。
シリーズトップクラスの描写性能
レンズ構成は8群11枚。大偏肉両面非球面(DSA)レンズや非球面レンズ、EDレンズ、超高屈折率(スーパーHR)レンズなどを採用しており、大口径ながら小型化と高い描写性能の両立に成功しているのは、これらの特殊レンズの効果的に配置によるものである。
実写による描写性能の感想はというと「非常に高い」の一言につきる。ボディ内での画像処理も手伝っているとは考えられるものの、歪曲収差や色収差などはほとんどない。四隅も含め画面全体が極めてシャープでコントラストが高く、ヌケがよい。
絞り開放では、四隅にシャープネスの甘さが若干見られるが、それも1段絞ってF2.8にするだけで持ち直し、以後は回折の影響がはっきりと出るF16あたりまで高い描写性能が維持される。
こういうと絞り開放での描写が低いように受け取られるかもしれないが、そんなことは全然ない。絞り込んだ状態よりは低いというだけで、絞り開放でも実用上まったく問題なく高画質である。全体的に見れば絞りにかかわらず安定した描写の高性能レンズといえるだろう。
大口径レンズとはいっても、実際の焦点距離が12mmなので極端に大きな背景ボケが期待できる訳ではないが、それでも、開放F2.0で近接撮影を行えば十分に効果的なボケ効果を得ることができる。人物やペット、小物などにグッと近寄ってピントを合わせ、背景の形が崩れない程度に程よくぼかしたいときなどには特に有効だ。
一方で、画面の全体がハッキリと写る(全体にピントが合ったように写る)パンフォーカスは、焦点距離の短い超広角レンズの得意とするところで、F5.6〜F11に絞り込めば被写体にも背景にもピントがあった解像感溢れる写真を撮ることができる。
また、小型の大口径レンズであることは機動力の面においても有利だ。
例えば、室内でペットを撮影するような場合に、片手で撫でたりあやしたりしながら、もう一方の手でカメラを構えても、手ブレを起こす心配が少なく、無理なく自由なアングルで撮影ができる。
画角も広いので至近にいるペットを画面全体に収めやすいという利点もある。小さく軽いのは、単に持ち運びが楽というだけではないのである。
超広角と相性のよいスナップショットフォーカス機構
本レンズは、スナップ撮影でパンフォーカス撮影を楽しむための「スナップショットフォーカス機構」を搭載した初めてのレンズでもある。
スナップショットフォーカス機構とは、フォーカスリングを手前にスライドすると鏡筒に刻まれた距離目盛が現れ、フォーカスリングを回転すると、フォーカス位置がレンズ鏡筒に刻まれた距離目盛の位置に移動するものだ。
オリンパスが用意した被写界深度表によると、F5.6で距離目盛を2mにセットすると、カメラから約93cmより遠方が被写界深度内に入る。F8で距離目盛を2mにセットした場合なら、カメラから約76cmより遠方が被写界深度内に入り、パンフォーカスとなる。
被写界深度内であれば、手前から背景までピントを合わせることが可能となり、AFでピントを合わせる必要もなく、シャッターチャンスに強い。焦点距離12mmと、被写界深度の深い本レンズの特性と相性をよく考えた、「ハイグレードスナップレンズ」に相応しい優れた機構である。
スナップショットフォーカス機構は「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8」にも搭載されている機構だが、あくまで指定位置にピント位置が移動する機構であり、絞り開放付近での微妙なピント合わせをするためのものではない。
一方、「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」にはよく似た「マニュアルフォーカスクラッチ機構」があり、こちらは通常のMF同様に微妙なピント合わせが可能な機構なので、使い方を間違えないように注意したい。
実用性と満足感抜群のスナップレンズ
マイクロフォーサーズ規格の立ち上げから2年以上待ちわびて、ようやく登場した高性能単焦点レンズが本レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0」であった。その出来は素晴らしく、描写性能はもちろん、質感やデザインも非常に秀逸で、それだけでも大いに物欲がそそられるものである。
焦点距離12mm、35mm判換算で24mm相当の画角は、発売当初ちょっと意外に思ったこともあったが、近くのものをより大きく、遠くのものをより小さく写すことでパースペクティブを強調した迫力の表現が、足で被写体との距離感を掴む単焦点レンズでのスナップ撮影に効果的であることを教えてくれた。
背景を入れた猫の撮影や人物の撮影、あるいは広大な風景や屋内での撮影のために是非そろえておきたい、実用性と満足感抜群の単焦点レンズである。
制作協力:オリンパスイメージング株式会社
デジタルカメラマガジンでも連載中!
「デジタルカメラマガジン 2014年11月号」でも、M.ZUIKO PRO & PREMIUMをテーマにした連載が掲載されています。あわせてどうぞ!