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オリンパス交換レンズ特別レビュー(その5)
M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0

画質良し、ルックス良し…「足で撮る楽しさ」がわかる高性能レンズ

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「M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0」は、35mm判換算で24mm相当の画角をもつ単焦点レンズ。マイクロフォーサーズシステム規格の利点を活かし、F2.0という大口径ながら小型かつ高画質であり、高級感の高いPENやOM-Dシリーズのボディによく合う高品位な金属外装が施されているのが特長だ。

レンズの最大径は56mm、長さは43mmで、質量は130gと、大口径の超広角レンズとしては破格の小ささである。金属外装の質感は高く、PENボディやOM-Dボディとのマッチングは最高によい

実は本レンズ、オリンパス製マイクロフォーサーズ規格のレンズラインナップとしては、2009年7月に「PEN E-P1」とともに発売された「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8」に続く、第2弾の単焦点レンズである。「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8」の描写も決して侮ることはできないが、どちらかというと携帯性を優先して造られた、いわゆるパンケーキタイプのレンズだ。人気の高まるミラーレス機“PEN”で、「もっと高画質なスナップ撮影を楽しみたい」というユーザーの声に応えて2011年7月に登場した初の本格的・高性能単焦点レンズが、今回紹介するM.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0なのだ。

別売の金属製フード(LH-48)も質感が高く、角型でカッコいい。少々値が張るが一緒に揃えたいアクセサリーである。写真はPEN E-P5に装着したイメージ

本稿執筆時点での大手量販店での価格は8万2,000円前後(税込)。本レンズが分類されている「M.ZUIKO PREMIUM」のグレード(高画質単焦点シリーズ)の中でも高目の価格設定であることは、最初の高性能単焦点レンズとして、描写も、操作性も、質感も、一切妥協を許さず設計されていることを物語っている。

被写体の距離感を効果的に表現できる画角

35mm判換算で24mm相当という画角は超広角と考えたほうがよい。換算24mm相当スタートのズームレンズが普及している昨今、24mmが超広角といわれてもピンとこないかもしれないが、立派な超広角レンズだという認識は必要だ。

だた、本レンズの換算24mm相当の画角は、パースのつき方がまだそれほど強烈でもないため、気をつけて使えば視覚的な自然さを残しやすい画角でもある。いわば、誇張と自然さを兼ね備えた、超広角の入口にあたるレンズともいえるだろう。

今年9月にはあたらにブラックモデルも加わった。ブラックのボディともよく合う

ズームレンズのように、ズームリングを操作するだけで被写体を大きく写したり、小さく写したりできないのが単焦点レンズである。これはデメリットではなく、写真に写る被写体の大きさを自分の足で動いて調整することによって、距離による表現の違いを知ることができる、メリットと考えたい。

また、広い範囲が写るということは、被写体の背景に移り込む情報が多くなるということで、背景の配置や整理といった構図についても深く考えさせられる画角である。

この「背景を整理しながら被写体との距離感を効果的に表現できる」という特性こそが、実にスナップ撮影に向いている点。オリンパスが本レンズを「ハイグレードスナップレンズ」と形容している所以のひとつだ。

今回、筆者の好きな猫を被写体として作例を撮る場合にも、大変に使いやすい画角であった。

猫にグッと寄って大きく写しても、背景を広く画面内に入れることができる。視角を超えた迫力のある遠近感が超広角レンズである本レンズの特性のひとつだ。E-M1・絞り優先・ISO200・F2.8・1/3,200秒・0EV・WB:オート

引きのとれない狭い場所でも広い範囲を写すことができるのも特性のひとつ。ただし被写体は小さく写るので、周囲の情報をうまく画面内に配置するなど、適切な構図づくりを考えることが必要。作例では影を子猫に絡めて構図をつくってみた。E-M1・絞り優先・ISO200・F2.0・1/8,000秒・-1.3EV・WB:オート

マイクロフォーサーズの基本のアスペクト比は4:3であるが、状況によっては3:2や16:9にした方がよりワイド感をだすことができる。画角はわずかに狭くなるが、構図がつくりにくい場合には有効な手段なので活用してみよう。E-M1・絞り優先・ISO200・F2.0・1/3,200秒・0EV・WB:オート

シリーズトップクラスの描写性能

レンズ構成は8群11枚。大偏肉両面非球面(DSA)レンズや非球面レンズ、EDレンズ、超高屈折率(スーパーHR)レンズなどを採用しており、大口径ながら小型化と高い描写性能の両立に成功しているのは、これらの特殊レンズの効果的に配置によるものである。

実写による描写性能の感想はというと「非常に高い」の一言につきる。ボディ内での画像処理も手伝っているとは考えられるものの、歪曲収差や色収差などはほとんどない。四隅も含め画面全体が極めてシャープでコントラストが高く、ヌケがよい。

絞り開放から非常にシャープでコントラストの高い優れた描写性能である。最短撮影距離の20cmまで寄れば、前後のボケを活かした作画もできる。E-M1・絞り優先・ISO200・F2.0・1/8,000秒・-1EV・WB:オート

絞り開放では、四隅にシャープネスの甘さが若干見られるが、それも1段絞ってF2.8にするだけで持ち直し、以後は回折の影響がはっきりと出るF16あたりまで高い描写性能が維持される。

こういうと絞り開放での描写が低いように受け取られるかもしれないが、そんなことは全然ない。絞り込んだ状態よりは低いというだけで、絞り開放でも実用上まったく問題なく高画質である。全体的に見れば絞りにかかわらず安定した描写の高性能レンズといえるだろう。

大口径レンズとはいっても、実際の焦点距離が12mmなので極端に大きな背景ボケが期待できる訳ではないが、それでも、開放F2.0で近接撮影を行えば十分に効果的なボケ効果を得ることができる。人物やペット、小物などにグッと近寄ってピントを合わせ、背景の形が崩れない程度に程よくぼかしたいときなどには特に有効だ。

絞り開放ではわずかに解像感が弱くなる。形を残しながらなだらかに背景がぼけ、藁の上で遊ぶ猫の仕草を優しく表現できた。しかし、それでも十分にシャープで実用性の高い画質である。E-M1・絞り優先・ISO200・F2.0・1/4,000秒・0EV・WB:オート

一方で、画面の全体がハッキリと写る(全体にピントが合ったように写る)パンフォーカスは、焦点距離の短い超広角レンズの得意とするところで、F5.6〜F11に絞り込めば被写体にも背景にもピントがあった解像感溢れる写真を撮ることができる。

少し絞るだけで画面全体の解像感は急激に向上する。猫との距離を少し空けて撮影したことで、こんどは周りの藁を細部まで克明に写し取ることができた。E-M1・絞り優先・ISO400・F5.6・1/250秒・0EV・WB:オート

また、小型の大口径レンズであることは機動力の面においても有利だ。

例えば、室内でペットを撮影するような場合に、片手で撫でたりあやしたりしながら、もう一方の手でカメラを構えても、手ブレを起こす心配が少なく、無理なく自由なアングルで撮影ができる。

画角も広いので至近にいるペットを画面全体に収めやすいという利点もある。小さく軽いのは、単に持ち運びが楽というだけではないのである。

小型軽量な本レンズは、光量が少なく狭い室内でのペット撮影にも活躍する。右手でカメラを構えながら、左手で猫の目線を誘導して片手撮りした。大口径による速いシャッター速度とボディ内手ブレ補正機構のおかげで、手ブレが起こる危険も少ない。E-M1・絞り優先・ISO400・F2.0・1/640秒・-0.3EV・WB:オート

さらに猫に近寄って撮影。猫とコミュニケーションを撮りながら自由度の高い撮影ができるという、室内ペット撮影に大変便利なスペックのレンズである。E-M1・絞り優先・ISO400・F2.0・1/500秒・-0.7EV・WB:オート

超広角と相性のよいスナップショットフォーカス機構

本レンズは、スナップ撮影でパンフォーカス撮影を楽しむための「スナップショットフォーカス機構」を搭載した初めてのレンズでもある。

スナップショットフォーカス機構とは、フォーカスリングを手前にスライドすると鏡筒に刻まれた距離目盛が現れ、フォーカスリングを回転すると、フォーカス位置がレンズ鏡筒に刻まれた距離目盛の位置に移動するものだ。

フォーカスリングを手前に引くと距離目盛が現れる。被写界深度が深く、パンフォーカス撮影をしやすい本レンズと相性のよい機構である

オリンパスが用意した被写界深度表によると、F5.6で距離目盛を2mにセットすると、カメラから約93cmより遠方が被写界深度内に入る。F8で距離目盛を2mにセットした場合なら、カメラから約76cmより遠方が被写界深度内に入り、パンフォーカスとなる。

距離目盛を2m、絞り値をF5.6にセットすると、約93cmから無限遠までが被写界深度に入るパンフォーカスになる。被写体との距離を目測で測り、即座に構図を決めて撮影。被写体がこの作例だけ犬なのはご愛嬌ということで……E-M1・絞り優先・ISO400・F5.6・1/100秒・0EV・WB:オート

被写界深度内であれば、手前から背景までピントを合わせることが可能となり、AFでピントを合わせる必要もなく、シャッターチャンスに強い。焦点距離12mmと、被写界深度の深い本レンズの特性と相性をよく考えた、「ハイグレードスナップレンズ」に相応しい優れた機構である。

厳密なピント合わせが必要な場合は、ボディ側で設定する通常のMFでピントを合わせる必要がある。作例では、手前に網戸があるためAFが迷い、なおかつ絞り値がF2.8であったため通常のMFでピントを合わせた。

スナップショットフォーカス機構は「M.ZUIKO DIGITAL 17mm F1.8」にも搭載されている機構だが、あくまで指定位置にピント位置が移動する機構であり、絞り開放付近での微妙なピント合わせをするためのものではない。

一方、「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」にはよく似た「マニュアルフォーカスクラッチ機構」があり、こちらは通常のMF同様に微妙なピント合わせが可能な機構なので、使い方を間違えないように注意したい。

実用性と満足感抜群のスナップレンズ

マイクロフォーサーズ規格の立ち上げから2年以上待ちわびて、ようやく登場した高性能単焦点レンズが本レンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0」であった。その出来は素晴らしく、描写性能はもちろん、質感やデザインも非常に秀逸で、それだけでも大いに物欲がそそられるものである。

焦点距離12mm、35mm判換算で24mm相当の画角は、発売当初ちょっと意外に思ったこともあったが、近くのものをより大きく、遠くのものをより小さく写すことでパースペクティブを強調した迫力の表現が、足で被写体との距離感を掴む単焦点レンズでのスナップ撮影に効果的であることを教えてくれた。

背景を入れた猫の撮影や人物の撮影、あるいは広大な風景や屋内での撮影のために是非そろえておきたい、実用性と満足感抜群の単焦点レンズである。

制作協力:オリンパスイメージング株式会社

デジタルカメラマガジンでも連載中!

デジタルカメラマガジン 2014年11月号」でも、M.ZUIKO PRO & PREMIUMをテーマにした連載が掲載されています。あわせてどうぞ!

曽根原昇