オリンパス・ペンE-P1【第2回】

高感度画質を検証

Reported by 小山安博


標準ズームレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6」を装着したところ。このレンズは収納時はコンパクトだが、撮影時にはレンズが飛び出す沈胴式。ストラップは、E-420の時にゲットしたロングストラップ。たすき掛けにして持ち歩いている

 「オリンパス・ペン E-P1」の小型軽量さは、持ち歩くほどに威力を感じる。重さ自体は約335gなので、「E-420」の約380gから50g程度しか変わっていない。金属ボディによるずっしりとした印象もあって極端に軽くなったわけではないが、パンケーキレンズのセットだと全体で軽く、ちょっと出かけるときにも持ち歩きたい気にさせる。

 ふとした外出だけならM.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8のパンケーキレンズ1本で、レンズ交換をしないで撮影するのが一番楽しい。あとは、同じマイクロフォーサーズ規格のLUMIX G VARIO 7-14mm F4 ASPH.も良さそう。オリンパスからこのクラスの広角レンズが出てくるのも期待したい。

 さて、E-P1を正面から見て真っ先に気づくのが、内蔵ストロボがないということ。サイズの制限があったせいだろうし、消費電力の問題もあったかもしれない。いずれにしても一部のプロ向けをのぞいて普通は搭載されているストロボを省いたのは思い切りがいい。

 オリンパスでは内蔵ストロボを省いた理由の1つに、撮影の難しさを挙げている。確かに、暗いからといって安易に内蔵ストロボを発光させても、被写体は白トビして、背景は暗く沈むといったことが起こりがち。わずか数mの投射距離性能しかないのにも関わらず、スタジアムの観客席から無数のストロボがたかれるシーンもよくある光景だし、ストロボ撮影禁止の場所でストロボをたいてしまうミスも起こりがちだ。

 難しいならいっそのこと省いてしまって、暗いシーンは高感度撮影に任せる、というのがオリンパスの見解なのだろう。そのために高感度画質を向上させたという。

 そうなると気になるのが高感度時の画質。個人的にE-420の高感度画質には満足していなかったので、よりよくなったという画質に期待も高まる。

 E-P1のISO感度設定は、標準がISO200〜6400で、ISO100も選択可能。E-420がISO1600まで、E-620でもISO3200までだったので、上限が引き上げられたことになる。今回は、手持ちのカメラとの比較ということで、E-420と比べてみることにした。

 実際に見てみると、同じISO1600での画質は、E-P1の方がノイズは少なくて画質はいいが、極端に大きな差とはいえない感じ。どちらも常用できないほどではないが、フルサイズの撮像素子を積んだカメラと比べるとちょっと厳しい。ただ、ノイズ量は減っているようだ。

 高感度時のノイズ処理では、なし、標準、弱、強の4種類から選択できるのは従来通り。ノイズ低減を強くすると解像感が失われるが、どのレベルでもE-P1の方がよい結果だ。個人的には高感度で人の顔を撮影する場合が多いのだが、解像感とノイズのトレードオフの関係は悩ましい。このあたりはその時のシーンに応じて判断することになりそうだ。

 また、白トビ・黒ツブレを補正する階調オートよりも階調標準の方がノイズは少ない。Fnボタンから1ボタンで「フェイス&バック」設定になるが、その場合は顔検出がオンになるとともに階調オート設定になってしまうので、高感度時はこれを使わずに単独で顔検出だけを設定して階調標準で撮影すると良さそうだ。

E-420では、高感度ノイズ低減の設定がデフォルトで表示されていたE-P1の場合、高感度ノイズ低減の設定は「カスタム機能」に移動した
しかも「カスタム機能」は、セットアップメニューの「メニュー表示」をONにしないと表示されないようになっている。初心者ユーザーを想定し、難しい設定は表に表示しないようにした、ということだろう

 E-P1では、ISO感度オート時の上限を設定で変更でき、ISO200〜ISO6400までの間から選べるが、個人的にはISO1600までにとどめるのがいい。それ以上の高感度が必要な場合は明示的に設定して、解像度を犠牲にして高感度ノイズ低減を「高」に設定しようと思う。このあたりは好みで設定するといいだろう。それでも、ISO6400まで選べるようになったのはありがたい。

 ノイズの粒がそろっているため、比較的PCで処理しやすいのと、等倍表示で確認しなければガマンできるレベルではあるので、用途と要求に応じて処理すれば良さそう。RAWで撮影してノイズ処理するのも手だ。撮影した時点で高画質であるのが一番だが、現状ではこうした運用で回避したい。また、手ブレ補正機能も内蔵しているので、被写体ブレを考慮しないシーンならなるべく感度を低くして撮影するといい。

 ちなみに、E-P1のISO感度の下限はISO100だが、ISO200が標準となっている。説明書には「ノイズと階調のバランスがもっともとれている」とされており、ISO100はより遅いシャッタースピードや絞りを開放したいときに使うとされている。テストでは、なぜかISO100の時だけオートホワイトバランスが狂ったし、階調オートでの効果もやや鈍いような感じもした。このあたりはもうちょっと使い込んでみないと分からない。

 結果としては「大満足」とは言いがたいが、コンパクトデジカメに比べれば十分実用的な高感度画質と判断したい。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
  • 使用レンズはE-P1がM.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6、E-620がM.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6。焦点距離はいずれも約32mmです。

高感度:階調「標準」

●高感度ノイズ低減「OFF」

・E-P1

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600ISO3200
ISO6400

・E-420

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600

●高感度ノイズ低減「低」

・E-P1

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600ISO3200
ISO6400

・E-420

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600

●高感度ノイズ低減「標準」

・E-P1

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600ISO3200
ISO6400

・E-420

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600

●高感度ノイズ低減「高」

・E-P1

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600ISO3200
ISO6400

・E-420

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600

高感度:階調「オート」

●高感度ノイズ低減「OFF」

・E-P1

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600ISO3200
ISO6400

・E-420

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600

●高感度ノイズ低減「低」

・E-P1

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600ISO3200
ISO6400

・E-420

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600

●高感度ノイズ低減「標準」

・E-P1

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO100ISO3200
ISO6400

・E-420

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600

●高感度ノイズ低減「高」

・E-P1

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600ISO3200
ISO6400

・E-420

ISO100ISO200ISO400
ISO800ISO1600

階調「オート」と「標準」の違い

 こういったシーンでは確かに有効な階調オート。使い分けると良さそうだ。

E-P1 / M.ZUIKO DIGITAL ED-14 42mm F3.5-5.6 / 約8.2MB / 3,024×4,032 / 1/1250秒 / F4.5 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 14mmE-P1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 約7.5MB / 3,024×4,032 / 1/1,000秒 / F4.5 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 14mm

自由作例

E-P1 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8 / 約7.8MB / 3,024×4,032 / 1/13秒 / F8 / -0.3EV / ISO1600 / WB:オート / 17mmE-P1 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8 / 約8.1MB / 3,024×4,032 / 1/60秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO1600 / WB:オート / 17mm
E-P1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 約7.8MB / 3,024×4,032 / 1/80秒 / F5.6 / 0EV / ISO1600 / WB:オート / 42mmE-P1 / M.ZUIKO DIGITAL ED 14-42mm F3.5-5.6 / 約7.2MB / 4,032×3,024 / 1/40秒 / F3.5 / 0EV / ISO500 / WB:オート / 14mm
E-P1 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8 / 約8.2MB / 3,024×4,032 / 1/40秒 / F2.8 / 0EV / ISO1600 / WB:オート / 17mmE-P1 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8 / 約8.7MB / 4,032×3,024 / 1/80秒 / F2.8 / 0EV / ISO1600 / WB:オート / 17mm
E-P1 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8 / 約8.1MB / 4,032×3,024 / 1/125秒 / F5.6 / 0EV / ISO800 / WB:オート / 17mmE-P1 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8 / 約6.3MB / 4,032×3,024 / 1/15秒 / F5.6 / 0EV / ISO800 / WB:晴天 / 17mm
E-P1 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8 / 約7.9MB / 4,032×3,024 / 1/25秒 / F2.8 / 0EV / ISO320 / WB:オート / 17mm


小山安博
某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。

2009/8/3 00:00