気になるデジカメ長期リアルタイムレポート

OLYMPUS OM-D E-M1【第4回】

銀塩時代のズイコーレンズを試す

 オリンパスはデジタルカメラを発売する以前に、銀塩一眼レフカメラ「OMシリーズ」を展開していました。このOMシリーズは小型軽量設計にこだわりながらも、魚眼から超望遠の幅広い交換レンズ群、マクロ撮影用機材(顕微鏡との連携なども)など様々な撮影に対応できるカメラシステムを構築していました。

 これらのOMシリーズ用交換レンズは「ズイコーレンズ」と呼ばれ、現在のレンズ交換式カメラ用レンズである「ZUIKO DIGITAL」および「M.ZUIKO DIGITAL」へと受け継がれています。

 ズイコーレンズは銀塩フィルムカメラ用のレンズですが、マウントアダプターを使用すればOM-DおよびPENシリーズのカメラでも使用することができます。そこで今回はOLYMPUS OM-D E-M1にズイコーレンズを装着して撮影しました。

今回は「OMアダプターMF-1」と「フォーサーズアダプターMMF-1」を組み合わせて使用した。

 オリンパスからはマイクロフォーサーズ機にズイコーレンズを装着するためのマウントアダプター「OMアダプターMF-2」が発売されています。今回は、フォーサーズ機用マウントアダプター「OMアダプターMF-1」を「フォーサーズアダプターMMF-1」と組み合せてズイコーレンズをE-M1にて使用しました。本来は推奨ではない組み合せですが、筆者はこの組み合せで普段から撮影しています。

ライブビューの拡大表示を使えば正確なピント合わせができる。

 ズイコーレンズをE-M1で使用する場合、M.ZUIKO DIGITALと同様に35mm判換算の焦点距離は2倍となります。またズイコーレンズではAFは使用できませんのですべてMFでのピント合わせとなります。このときE-M1のファインダーおよびライブビュー画面の拡大機能を使用すれば、ピントを合わせたい部分を拡大表示したうえでピントを合わせることができるので、より正確にピントを合わせられます。

右はM.ZUIKO DIGITALレンズ。左のズイコーレンズに電気接点は無い。

 ズイコーレンズではE-M1との電気接点による撮影情報の通信や機械的な連動が行なえないため、自動絞りは使用できず実絞りでの撮影となります。そのためズイコーレンズでの撮影ではカメラから絞りの操作が必要となるS(シャッター優先)モードは使用できません。A(絞り優先)モードもしくはM(マニュアル)モードでの撮影となります(PモードはAモードと同じ動きをします)。なお、レンズの情報をExifデータとして撮影画像に記録することもできません。

 オリンパスのマイクロフォーサーズ機に搭載されているボディ内手ブレ補正機構では、電子接点を持たないレンズにおいても、実焦点距離を手入力することでその焦点距離に合った手ブレ補正を行なうことができます。

銀塩時代のズイコーレンズでもボディ内手ブレ補正機能を利用できる。

 これは非常に効果的で、ズイコーレンズを使用する際にも手ブレ補正機構の恩恵を得ることができます。ただし、異なる焦点距離のレンズを装着した際には必ず再設定が必要です。使用するレンズと異なる設定のままでは不要な動作をしてしまい逆効果となります。ただしM.ZUIKO DIGITAL、ZUIKO DIGITALを装着した場合は自動的に最適な設定に切り替わるので、再設定の必要はありません。

 ズイコーレンズの生産は完了しており、現在は中古でしか手に入れることができません。設計も古くデジタルカメラ対応の最新のレンズと比べると画質も高いとはいえませんが、レンズによってはまだまだ実用的なものもあります。

 また今のレンズにはない、独特なフレアや柔らかさも古いレンズの持ち味として楽しめます。外観も、デジタルカメラとしてはクラシカルなデザインであるE-M1と組み合せた姿は、とても精悍で趣のあるものとなります。これもズイコーレンズの楽しみのひとつと言えます。比較的求めやすい価格のレンズも多いので、はじめてのオールドレンズとして手に入れて試されてもよいでしょう。

 ◇           ◇

 今回撮影に使用したズイコーレンズは「G.ZUIKO AUTO-W 28mm F3.5」「ZUIKO AUTO-S 50mm F1.2」「E.ZUIKO AUTO-T 135mm F3.5」「ZUIKO SHIFT 35mm F2.8」の4本です。

G.ZUIKO AUTO-W 28mm F3.5

E-M1との組み合せでは35mm判換算56mm相当と標準域のレンズになる。最短撮影距離が0.3mと短いので人物に近寄ってのポートレートやスナップ撮影にも扱いやすい。

1/15秒 / F3.5 / -0.3EV / ISO400 / 絞り優先AE
1/20秒 / F3.5 / -0.3EV / ISO800 / 絞り優先AE
1/800秒 / F3.5 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE
1/160秒 / F3.5 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE
1/80秒 / F3.5 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE
1/250秒 / F3.5 / +2.0EV / ISO200 / 絞り優先AE

ZUIKO AUTO-S 50mm F1.2

35mm判換算100mm相当で開放F1.2となる大口径レンズ。開放で出る強いハロが独特な柔らかい描写となる。しかしF2.8程度まで絞ることでハロも解消され、非常に高い描写力を発揮する。

1/30秒 / F1.2 / +0.7EV / ISO400 / 絞り優先AE
1/500秒 / F1.2 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE
1/1,250秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO100 / 絞り優先AE
1/20秒 / F1.2 / 0.0EV / ISO800 / 絞り優先AE
1/320秒 / F2.8 / +1.3EV / ISO200 / 絞り優先AE
1/3,200秒 / F2.8 / +1.7EV / ISO200 / 絞り優先AE

E.ZUIKO AUTO-T 135mm F3.5

35mm判換算では開放F3.5、270mm相当の明るい望遠レンズとなる。開放では色収差も大きいがF5.6まで絞ることで大きく改善する。また開放で大きく出る色収差とフレアを逆手に取り、レンズに逆光を直接射し込むことで白くふんわりとした軟らかな印象の描写を得ることもできる。

1/100秒 / F3.5 / 0.0EV / ISO400 / 絞り優先AE
1/4,000秒 / F3.5 / +0.7EV / ISO1600 / 絞り優先AE
1/500秒 / F5.6 / +1.0EV / ISO200 / 絞り優先AE
1/1,000秒 / F3.5 / 0.0EV / ISO200 / マニュアル
1/1,250秒 / F3.5 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE
1/640秒 / F3.5 / +1.3EV / ISO200 / 絞り優先AE
1/500秒 / F3.5 / +1.7EV / ISO200 / 絞り優先AE

ZUIKO SHIFT 35mm F2.8

珍しいズイコーシフトレンズ。本来は35mmの広角なので室内や建物などを歪み無く撮ることを目的とした特殊レンズとなる。E-M1に装着すると2倍の70mm相当となるのため、スタジオなどでのブツ撮りにも活用できる。

シフトレンズについて少し説明を加えると、被写体に対してカメラを平行(地面に対して被写体もカメラも垂直にするなど)にすることで、建物や器物などの垂直をゆがめることなく撮影が可能となる。しかしカメラの目線の高さによっては画面中心に被写体を収めることができない。そのような場合にレンズを上下にずらすことによって、画像をずらして画面中心に収めることができるようになる。

シフト無し:被写体であるカメラの天面が見えるアングルから撮影。撮影カメラが斜め上から被写体を見下ろしているので、被写体であるカメラにパースがついてしまい逆台形になってしまっている。
撮影時の様子。
シフト有り:被写体であるカメラと撮影カメラを平行にして撮影することで、被写体であるカメラにパースが付かずに正しい長方形として撮影することができた。ただしそのままではフレームの中心に被写体を捉えることができないので、レンズを下方向にシフトしている。
撮影時の様子。

シフト無し:建物に対してカメラを平行(地面に対して被写体もカメラも垂直)にして撮影。建物は垂直に写っているが、屋根がフレーム内に収まらず切れてしまった。1/1,600秒 / F8 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE
撮影時の様子。
シフト有り:建物がフレーム中心に収まるように、レンズを上方向にシフトして撮影した。これによって建物の歪みの原因となる、レンズをあおっての撮影をすることなく建物全体を捉えることができた。1/1,600秒 / F8 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE
撮影時の様子。
このレンズは最近のデジタル対応のレンズと比べてしまうと解像力は高くない。また絞り込むことによる光の回折も目立つので、E-M1との組み合せではあまり実用的とは言えないだろう。しかし現在ほとんど市場にはまわっておらず非常に珍しいレンズだ。

 ◇           ◇

 E-M1に装着しての撮影では、AFでは味わえないMFならではの操作感を楽しむこともできました。また古い設計だけに収差も大きく出ますが、それを活かす方法を考えながらの撮影も非常に楽しいものでした。興味を持たれた方はぜひとも一度、ズイコーレンズでの撮影にチャレンジされてみてはいかがでしょうか。

(モデル:夏弥

礒村浩一

(いそむらこういち)1967年福岡県生まれ。東京写真専門学校(現ビジュアルアーツ)卒。広告プロダクションを経たのちに独立。人物ポートレートから商品、建築、舞台、風景など幅広く撮影。撮影に関するセミナーやワークショップの講師としても全国に赴く。近著「マイクロフォーサーズレンズ完全ガイド(玄光社)」「今すぐ使えるかんたんmini オリンパスOM-D E-M10基本&応用撮影ガイド(技術評論社)」Webサイトはisopy.jp Twitter ID:k_isopy