写真展レポート
LUMIX MEETS/Beyond 2020 BY JAPANESE PHOTOGRAPHERS #6
デジタル時代生まれの若手作家が捉える世界
2018年12月5日 07:00
第6回を迎える「LUMIX MEETS/Beyond 2020 BY JAPANESE PHOTOGRAPHERS #6」が東京・天王洲アイルのIMA ギャラリーで開催されている。会期は12月9日まで。
パナソニック株式会社協賛のもと、これからの活躍が期待される若手写真家の支援・育成、新しい才能を紹介していくという試み。作品展はアムステルダム、パリ、東京の3都市で巡回する。
第6回目となる今回は、IMAメディアプロジェクトが選出した6名の作家が登場した。さまざまな情報が氾濫するデジタル時代に生まれた“ミレニアルズと呼ばれる世代”の若手だ。彼らの目に、世界はどう映っているのだろうか。今回のテーマは「不確実な世界との交信法」だ。
出展作家は市田小百合、ネメス理世、中村健太、三田健志、苅部太郎、草野庸子の6名。
市田小百合「Mayu」
市田さんは2012年からニューヨークを拠点に活動している。作品の被写体は同じく日本から渡米したプロダンサーの小栗真由さん。小栗さんが異国で暮らす葛藤、感情を体の動きで表現し、それを写真で定着させた。さまざまな場所で撮影を行い、今後もこの制作は継続するという。
ネメス理世「Consonant Intervals」
2つのループする映像作品から成る作品。ひとつはリンゴの上を蟻が歩く映像だ。リンゴを動かし、常に蟻がフレームの中央に来るように撮影したという。
もうひとつは観る者が気付かないほどゆっくりとリンゴが回転する映像だ。動画に、さまざまなアングルから撮った静止画を編集で重ねる。
一見、写真のように見えるが、そこには時折、動きが生じる。当たり前に受け入れている視覚という知覚プロセスに疑義を投げかける。
中村健太「Offerings」「Youe story」
中村さんは制作にあたって鑑賞者の価値観を拡張することを目論む。「普段使わない感覚を刺激し、考えてもいなかったことを発想させるきっかけが作れたらいい」と中村さんは話す。
「Offerings」(写真右側)は架空の儀式、祭事などを空想し撮影したもので、「Youe story」(同左側)は、被写体に3Dメガネを掛けさせることで、本来見るだけの鑑賞者に見られていることを意識させる企みだ。
三田健志「Tracing」
三田さんは経験をテーマに制作を行っている。この作品は人が世界を認識する不確かさを提示したものだ。
このシリーズはネットで入手した海岸線の画像をプリントアウトし、海で流木に立てて、背景の光景にできるだけ合った場所で撮影している。
検索した画像はその場所に近い風景を選んだだけで、同じ場所ではない。そのため、プリントと実際の風景にはズレが生じる。それはインターネット社会で生きる私たちの日常で当たり前に起きていることだ。
苅部太郎「INCIDENTS」
苅部さんは紛争地などを取材するフォトジャーナリストとして写真家としてのキャリアをスタートさせた。マスメディア、ジャーナリズムでは一貫性や整合性が過大に評価され、複雑なものを単純化させている。活動する中で、そうした社会の在り様に危機感を感じ始めた。
この「INCIDENTS」は意味や文脈をはく奪したイメージで構成したものだ。テレビモニターに映る映像に故意にノイズを発生させ、それを撮影。さらに画像を回転、トリミングしている。
「ここから人は見たい何かを想像する。ある人はここから城を認識したが、僕には全くそうは見えなかった。私たちが何かを認識する時に存在するバイアスや、制約の存在を問う試みです」と苅部さん。
草野庸子「EVERYTHING IS TEMPORARY(すべてが一時的なものです)」
草野さんはファッションやカルチャー誌で活動する写真家だ。2017年に出版した同名写真集から選んだ写真で構成した。
「誰もが普段の生活で見落としていることや、一人ひとりが見えている世界がある」と草野さんは言う。この写真集はふとキレイだと思った瞬間や、理由なく哀しさを覚えた時に撮影した「薄い膜を積み重ねたような写真集」だ。
「全てが一瞬の揺らぎのようで、儚い。その中で世界とどうコミットしていくか。私なりの交信法がフィルムで写真を撮ることだと思う」
展覧会概要
会場
IMA gallery
東京都品川区東品川2-2-43 T33ビル1階
開催期間
2018年11月30日(金)~2018年12月9日(日)
開催時間
11時00分~19時00分
休館
日曜
入場料
無料