李容夏写真展「3rd Generation」(新宿ニコンサロン)


作者は、1972年1月、大韓民国の軍人としてベトナム戦に参加した。所属部隊はベトナムのクイニョン(Quy Nhon)に位置する猛虎師団隷属の機甲連隊作戦状況室だった。
その危険で生と死の分かれ目を無事乗り越え、20数年前から枯葉剤の病魔に全財産を奪われ、家庭が破綻し、自ら命を断つ一部の戦友らの壮絶な事情と、ベトナム現地の枯葉剤第三世代患者の辛い現実を、作者はメディアを通じて分かった。
これを世の中に伝えなければ永遠に忘れられる恐れがある中で作者はカメラを手にし、これを伝えるためにも56歳で写真の世界に入り、日本の大学に留学、卒業論文のテーマも枯葉剤“Agent Orange”に決めた。
韓国の報勲病院とベトナム現地の枯葉剤被災地の村及び病院を訪れ、ホーチミンからハノイまで2年3カ月かけて幅広く撮影した。微かな希望も何も見えないまま病室で苦しんでいる戦友と、後の代まで遺伝し、消えない傷を負ったまま生きていく幼い患者の様子と、生れることなくホルマリン溶液の中に入れられ保管された胎児を見て、この事実を世の中に知らせるのが、ベトナム参戦が与えてくれた作者の人生の任務だと思った。
今、歴史の影に徐々に忘れられていくベトナム戦争の枯葉剤の傷を、戦争当事国であろうと、傍観国であろうと関係なく、人類共通の責任意識を持って、ベトナム現地の子供患者たちに温かい愛と激励が何よりも必要である。また、この病魔がこれ以上次の世代につながらないように、一日も早く治療薬が開発できるように、実力のある製薬会社らが力を結集してほしい。
作者は、本展をきっかけに“戦争なき平和”が世界中に定着することを望み、これ以上この地球上の人が互いに銃口を向けあい、命を奪い合う行動が起こらないことを望んでいる。
自国の利益のために他国の財産と尊い命を奪う行為は、真の力のある勝者ではない。
カラー作品。
(写真展情報より引用)

  • 名称:李容夏写真展「3rd Generation」
  • 会場:新宿ニコンサロン
  • 住所:東京都新宿区西新宿1-6-1新宿エルタワー28階
  • 会期:2012年7月10日~2012年7月23日
  • 時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
  • 休館:会期中無休

(本誌:鈴木誠)

2012/6/25 12:36