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第39回木村伊兵衛賞授賞式が開催
受賞は「intimacy」森栄喜氏に。作品展は4月24日まで
Reported by市井康延(2014/4/19 10:00)
第39回木村伊兵衛写真賞授賞式が4月17日、東京會舘・ロイヤルルームで開かれた。受賞者の森栄喜氏には、賞状、賞牌と賞金100万円が贈られた。この賞は2013年の1年間に、優れた作品を発表した若手写真家に贈る賞であり、会場には受賞を祝う関係者や友人、今後を期す若い写真家たちも集まり、大いに賑わった。
今年度は昨年の審査員(岩合光昭氏、瀬戸正人氏、鷹野隆大氏、アサヒカメラ編集長)に長島有里枝氏を加えたほか、発表方法に一工夫を凝らした。これまでは受賞者と候補者を3月に発表していたが、1月18日に候補者6名を朝日新聞紙上とアサヒカメラ.netで告知し、2月5日に受賞者を発表したのだ。
「候補者が発表されると、ネット上で、誰が受賞するか、候補作についての論評などが盛んに上げられた。その動きが高まった時に受賞決定ができた」と壇上で話したのは、アサヒカメラ・佐々木広人編集長。毎年、この賞は予測や結果にさまざまな論議が交わされるが、候補の事前発表で、例年以上に多くの写真愛好家の興味を刺激できたようだ。
また佐々木氏は、個人的に交流のあるイギリス人写真家に、なぜもっと海外にこの賞の存在をアピールしないのかと問われたエピソードを紹介し、「来年は記念すべき40回。写真界の芥川賞と言われているが、そんな冠が必要なくなるよう、世界にも発信していくよう努力していきたい」と話を結んだ。
受賞対象となった写真集「intimacy」(ナナロク社刊)は、同性愛者である森氏がパートナーや友人たちとの日常をスナップしたものだ。審査員を代表して、長島氏が登壇し、審査経過や受賞作について語った。
「私がかつてこの賞をHIROMIXさん、蜷川実花さんと受賞(第26回・2000年度)して、ガーリィフォトが新しい写真の潮流として認識された。女性は撮られるだけでなく、撮る側にもなれる事を提示できたと思う。その意味で、森さんの写真も新しい流れを作り出すもので、時代が変わったと感じた。ただこう言ってしまうと、彼の写真がジェンダー的に見てしまいがちですが、この写真の一番の魅力は美しさであり、広い視野で評価して欲しい」
次いで、受賞者の森栄喜氏が喜びを語った。途中、想いが高まり、言葉が途切れる場面もあった。
「10代の頃、男性に関心を持つ自分に悩み、その時、写真に出会った。身近な人を撮り始め、大学に入って片思いのクラスメートやゲイの友人を撮る事ができるようになった。たくさんの人を撮る中で、共に生きている想いがあふれ、自分自身を肯定できるようになった。intimacyは恋人や友人との日々の記録ですが、それは思い悩んでいた頃に、夢として思い描いていた生活そのもの。1秒1秒、目に焼き付けるように撮影していたことを記憶している」
「今は、もう一つ新しい未来を思い描いていて、今ある家族という枠組みを自由に広げた新しい可能性を写真を通して発信していきたい」
これからも、自分の目に映る日常をテーマに写真を撮り続けていくという。
5月15日から18日、香港で開催されるアートフェア「アート・バーゼル香港」で、滞在制作を発表する予定だ。
- 第39回木村伊兵衛写真賞 受賞作品展 森栄喜「intimacy」
- ・会場:コニカミノルタプラザ
- ・住所:東京都新宿区新宿3-26-11 新宿高野ビル4F
- ・会期:2014年4月15日火曜日〜2014年4月24日木曜日
- ・時間:10時30分〜19時(最終日15時まで)
- ・休館:なし
- ・入場:無料