吉江淳写真展「地方都市」(新宿ニコンサロン)



地方都市という町は存在しない。しかし、日本各地にそれは無数にあるし、作者自身、そうした地域に生まれ暮らしている。そこは現在、その土地その地域で時代や時間を積み重ねて出来た独自の集合体といったものが、日本全土に蔓延した各自治体の均一化されたまちづくりのシステムに侵食され、その光景がその土地土地の景色になっているようだ。各地に行き、歩き始めるとすぐに既視感に襲われるのもそのためだ。

生産性に落とし込められた町の造りが、かつてその土地に適していたであろう在り方を軽く飛び越えて、路上で繋がっている。もう日本はとっくにひとつになってしまっているという感覚から始めなくてはならないのだろう。

だからといって作者にとっては、それを証明するための写真に意味はなく、逆にその中から、失われつつある独自の風土や歴史だけを抽出することにも、大した関心はない。
しかし、そうした街角の日常的な空間にあって、目の前の光景が生々しい存在感を放っている時がある。駅前や街道、あるいは住宅街や公園の見慣れた空間で、ふとその土地の隠れた凄みをもった世界に出会った時、地方都市という実体のない町の一端が顔をのぞかせている気がすると作者はいう。カラー約35点。

(写真展情報より)

  • 名称:吉江淳写真展「地方都市」
  • 会場:新宿ニコンサロン
  • 住所:東京都新宿区西新宿1-6-1新宿エルタワー28階
  • 会期:2012年10月16日〜2012年10月29日
  • 時間:10時30分〜18時30分(最終日は15時まで)
  • 休館:会期中無休

(本誌:折本幸治)

2012/10/2 00:00