中筋純写真展「チェルノブイリ曼荼羅」(経王寺)


廃墟の持つメッセージに憑かれ撮り続けること15年ほど、初めて訪れたチェルノブイリの平原には背筋が凍るような光景が広がっていた。
廃墟は限りないリアルであると確信させる光景だ。常に自然に抗うことで築き上げられた文明の抜け殻が、
あっけなく地球の始源に呑み込まれてゆく様は人類のちっぽけな生き様とただの塵埃に過ぎないと思わせるに十分だった。
東日本大震災から1年。
自然の残酷さにうちひしがれたあの日は我々の心に大きな楔を打ち込んだ。そして追い討ちをかけるような原発人災による放射能汚染。
わずか数年微力ながら放射能汚染の恐怖を世に伝えようとしてきた自分に計り知れない虚無感が襲ったことはいうまでもない。
事故後26年を迎えるチェルノブイリはもうすぐ雪が解け、若葉が芽吹き、小鳥のさえずりが聞こえてくることだろう。
しかし未だに線量計は鳴き続け、こども達の嬌声が聞こえることはないのも事実だ。
繰り返される人間不在の季節の流転。それは今我々の足元でも確実に繰り返されることになってしまった。
チェルノブイリの平原に横たわる文明の抜け殻は、繰り返される人類の過ちにその身を呈して言葉を投げかけているであろう。
それは我々の未来曼荼羅かも知れない。
「打ち込まれた楔を抜くことなく、これからの生きる術を探れ」
答えはチェルノブイリに吹く春風の中にあるのかもしれない。
(写真展案内より引用)

  • 名称:中筋純写真展「チェルノブイリ曼荼羅」
  • 会場:経王寺
  • 住所:東京都新宿区原町1-14
  • 会期:2012年3月10日~2012年3月20日
  • 時間:9時~19時

(本誌:鈴木誠)

2012/2/28 18:53