クルマとカメラ、車中泊

星景写真家が「Amazfit T-Rex 3 Pro」を登山・夜間撮影の相棒に選んだ理由

今回の1枚

10月7日〜9日、幕張メッセで開催されたTOOL JAPANに行ってきました。プロ用からDIY用まで、工具・安全用品・作業服・カー用品などが揃う展示会です。言わずもがなカー用品がお目当てだったんですが、どちらかというと電動工具類に目がいっちゃいましたね〜(笑)。空調ウェアなんかも多かったんですが、多くの出展社から熊スプレーが出ていたのが印象的でした。

久しぶりに好天に恵まれたので、九十九里から幕張までバイクで行ってきたんですけど、行きは高速を使い、帰りはツーリングがてら下道でのんびり帰ったら、なんと2時間以上かかってしまいました。本来なら1時間半もかからない距離なんですが、千葉豪雨の爪痕で通行止めになっている箇所が残っていまして。帰り着いた時にはすっかり夜で、体の芯まで冷え切ってしまいました。雨に閉じ込められているうちに季節はすっかり秋なんですねえ。風が冷たかったですよ。今年ももう残り少ないなあ、なんて実感した瞬間でした。

スマートウォッチに求めるのは、ずばり「信頼できるGPSナビゲーション」

Amazfit T-Rex 3 Pro(48mm)。かなり大柄でタフなスマートウォッチだ。少し小さな44mmモデルもある。

Amazfit T-Rex 3 Pro(48mm)を買っちゃいました! これでAmazfitは3本目になります。今まで使っていたのは「Active 2」でした。僕の使い方だとActive 2でも十分活躍してくれていたのですが、マップを格納できるストレージ容量が大きくなったこと、ウォッチ単体でのナビゲーションが可能になったこと、そしてGPS使用時のバッテリー持ちが大幅に伸びたことが買い替えの決め手です。

僕がスマートウォッチに期待している機能は、ずばり「GPSナビゲーション」。地図表示やルート案内がしっかり使えるスマートウォッチの中で、Amazfitは群を抜いてリーズナブルだと感じています。

今回は、このタフネスモデル「Amazfit T-Rex 3 Pro」の、僕なりの実践的な使い方をお話ししたいと思います。

夜の山歩きを安全に行なうためのマイルール

星景撮影をしながら登山道をゆっくり登る。夜間行動のリスクは非常に高いため、念入りな準備と自制が欠かせない

まずは夜の山での1枚を見てください。すっかり星景写真ばかり撮っているワタクシですが、雪のない季節は山にも登って撮影します。

ご心配いただく通り、夜の山は標高の高さに関係なく大変危険です。常に遭難のリスクを想定しなければなりません。1番多いトラブルは道迷いですよね。そこから怪我や行動不能に陥るのが典型的な遭難パターンです。

そこで、山に限らず海辺であっても、僕自身の中で明確な行動マイルールを定めています。

  • カメラと三脚などの撮影機材のみで動く場合は、拠点(駐車場所や宿泊場所)から徒歩10分以内にとどめる。
  • 徒歩10分を超えて1時間以内の範囲へ行くなら、1泊分の食料、水、防寒具を携行する。
  • 1時間を超えて2時間以内の距離へ行くなら、1泊分以上の食料、水、防寒具に加え、ツエルト(簡易テント)と寝袋を必ず装備する。
  • いずれの場合もGPSを携行し、10分を超える行動では必ず紙地図とコンパスを追加する。縦走はせず往復ルートに限定する。
  • 10分を超える行動を行なうのは、過去に行ったことがある場所か、日中に下見を済ませた場所に限る。
  • 行動計画の所要時間は、平均速度を「時速1km」として計算する。
  • 徒歩1時間以内の距離では夜間に下山・帰還する場合もあるが、1時間を超える行動では必ず明るくなってから下山する。

以上が何十年の経験から導き出したマイルールですが、特に重要なのが、平均速度を「時速1km」と極端に遅く見積もっている点です。撮影しながら歩いていると実際にこれくらいのペースになるものですが、意識してゆっくり歩くようにしています。

その目的は、筋肉痛を起こさないペースを保つことにあります。何か不測の事態が起きた時に足が動かない、下山時に筋肉疲労で足がふらついて滑落・転倒する、といった事態を防ぐためです。目安は「汗をかかない速度」。下りも膝に衝撃を与えないよう、1歩1歩静かに降ります。

このペースを維持すると心拍数は100bpm前後になりますが、調べてみると60代が筋肉疲労を残しにくい運動強度の心拍数とぴったり合致するようです。傍から見ればそぞろ歩きのようなペースで、他の登山者にどんどん追い越されていく速度なのですが、安全第1の撮影登山にはこれが1番合っています。そして、こうしたペースや心拍数のシビアな管理に、スマートウォッチが抜群に向いているわけです。

実戦テスト! 近所のトレッキングコースへ

新しいギアを手に入れたら、まずは身近なフィールドでテストするのが鉄則です。T-Rex 3 ProとActive 2を両腕に着け、オフライン地図アプリ「スーパー地形」を入れたiPhone、紙地図、コンパスを持って近所の山へ出かけました。

テスト機材一式。T-Rex 3 Pro、Active 2、iPhone(スーパー地形アプリ)、紙地図&コンパス。オレンジ色の端末は衛星通信ができるハンディGPS「GARMIN inReach」(今回はおまけ携行のため解説は割愛)

テストの舞台に選んだのは「のみがね峻道(しゅんどう)」。最高地点は標高180m、1周およそ3,000mの周回コースです。半分は車が通れる舗装路ですが、「峻道」の名に違わず、急勾配や木の根が激しく露出した足場の悪い箇所が連続し、低山ハイクというよりはコンパクトながら本格的な登山道の様相を呈しています(※残念ながら8月の千葉豪雨の影響で現在は通行止めとなっています。手軽に登山の醍醐味を味わえる良いコースなので、早い復旧を願うばかりです)。

のみがね峻道の入り口
樹林帯の登山道といった雰囲気で、視界の開けた眺望はほとんどない
急な登り下りがあるほか、木の根が複雑に入り組んでおり足元には細心の注意が必要だ
場所によってはトラロープを掴んで登り下りするような急斜面も現れる

等高線が見える「コンターマップ」の圧倒的な分かりやすさ

山道を半分ほど登った地点で、T-Rex 3 ProとActive 2のオフライン地図を見比べてみました。違いは1目瞭然、画面上に等高線が表示されるかどうかです。

Amazfit T-Rex 3 Proの画面。等高線(コンターライン)が精密に描画され、周囲の地形と照らし合わせやすい
Amazfit Active 2の画面。市街地以外は緑1色のシンプルな表示となり、山中では現在地の地形把握が難しい

Amazfitではこれを「コンターマップ」と呼んでいますが、等高線と詳細な地形の起伏が描画されることで、現在地の状況が圧倒的に把握しやすくなっています。画面上の青いラインは歩いてきた軌跡(ブレッドクラムログ)で、ワークアウトを開始しておけば自動的に記録されます。往復ルートであれば、この青い線をなぞって引き返せば道迷いを防げます。

また、復路のナビゲーションにはもう1つ賢い方法があります。折り返し地点で一旦ワークアウトを終了し、記録された軌跡をスマホアプリ経由で「マイルート」として保存、それを再びT-Rex 3 Proへ転送して復路のルート案内を開始するやり方です。スマホの操作を挟む必要はありますが、通ってきた道を忠実にガイドしてくれる上、万が1ルートを外れた際には警告アラートを鳴らしてくれるため、夜間行動時の安全性は1段と高まります。

歩き出しの記録忘れを防ぐ「運動自動検出」

1つ注意したいのは、行動軌跡はワークアウトを起動していないと記録されないという点です。登山口を出発する際にスタートボタンを押し忘れてしまうとログが残りません。準備や荷物の整理でバタバタしていると、うっかり忘れがちですよね。

そこで役立つのが「運動検出」機能です。あらかじめウォーキングの検出をオンにしておけば、歩き始めたことを時計が自動で察知し、ワークアウトの記録開始を促してくれるので安心です。

設定画面から「運動」を選択
続いて「運動検出」を開く
「カテゴリ」をタップ
「ウォーキング」を有効にしておけば、歩行開始を検知して自動でログ記録をスタートしてくれる

時計単体でのナビゲーションと周辺スポット検索

T-Rex 3 Proでは、スマホを使わずウォッチ単体でも簡易的なナビゲーションが可能です。操作は簡単で、地図上の目的地を画面上で長押しするだけ。指定した場所の緯度経度が表示され、右側の青い矢印をタップするとナビゲーションが始まります。

地図上の任意の場所を長押しすると緯度経度が表示され、青い矢印をタップするとナビゲーションメニューが開く

ナビゲーションは、目的地までの直線方向を示す「直線航法(直行ナビ)」と、道路ネットワークに沿って案内する「ルートナビ」から選べます。登山道のように詳細な道路データがない山奥では直線航法になりますが、目標の方角と距離が手元で常に分かるだけでも心強さは段違いです。もちろん、車を停めた場所をポイント登録しておく用途にも最適です。

さらに、ウォッチ内の地図データから周辺の施設を検索する機能も備わっています。山あいのドライブや移動中、最寄りのコンビニや公衆トイレを探してそこまでナビしてもらう、といった使い方が手元だけで完結するのは本当に便利ですね。

GPS捕捉後、地図メニューから周辺施設を直接探すことができる
コンビニや公衆トイレ、宿泊施設など実用的なカテゴリが揃っている

驚異のスタミナ! バッテリー消費は3時間半でわずか6%

のみがね峻道を1周し、記録を終了した画面がこちらです。全行程3.74km、行動時間は3時間31分、平均速度は時速1.06km。まさにマイルール通りのペース配分となりました。

ワークアウト終了画面。歩行ルートの全景、平均速度、所要時間がひと目で把握できる
画面をスワイプすると、歩いてきた詳細な軌跡地図を確認できる

実戦で最も気になるバッテリーの持ちについても検証しました。iPhone SE3は95%、T-Rex 3 ProとActive 2は100%の満充電からスタートし、約3時間30分行動した後のバッテリー残量です。いずれも特別な節電モードは使わず、標準設定のままログを取り続けました。

結果は、iPhoneが62%(33%消費)、Active 2が81%(19%消費)だったのに対し、T-Rex 3 Proはなんと94%! 3時間半GPSを動かし続けて、たったの6%しか減っていませんでした。

iPhone SE(第3世代)のバッテリー残量は95%から62%へ(33%消費)
T-Rex 3 Proのバッテリー残量は100%から94%へ(消費はわずか6%!)
Active 2のバッテリー残量は100%から81%へ(19%消費)

この数値をベースに連続駆動時間を単純計算してみると、iPhoneが約10時間半、Active 2が約18時間半、そしてT-Rex 3 Proは約58時間という計算になります。実際の過酷な環境下ではこの7〜8割程度に見積もるのが安全ですが、それにしてもT-Rex 3 Proのバッテリー性能は圧倒的です。

メーカーの公称スペックでも、最も高精度なGPSモードで最大42時間、省電力GPSモードなら114時間、耐久GPSモードに至っては180時間となっています。万が1山中で天候急変やトラブルに見舞われ、ビバークして停滞を余儀なくされたとしても、バッテリー切れの心配が全くありません。この絶大なスタミナこそが、僕がこの時計を選んだ最大の理由です。

「Zepp」アプリで身体への負荷とペースを振り返る

スマートフォンアプリ「Zepp」と同期すれば、詳細なアクティビティログを分析できます。

歩行速度に応じてルートが色分けされています。周回の上半分(舗装路)は時速5km弱の通常のペースで歩いたため赤く表示され、下半分の山道(峻道区間)は黄色から緑色の極めて遅いペースで慎重に進んだことがよく分かります。

専用アプリ「Zepp」のルート画面。歩行ペースに応じて軌跡が色分け表示される

「時速0km」が長く続いている時間帯は、写真やデータを撮影したり、軽食をとったりして立ち止まっていた時間です。今回は検証を兼ねていたため普段より休憩が長めになっています。

歩行速度の推移グラフ

125bpm以上の高負荷な時間帯は全体の10%程度(急登を登る場面)。全体の40%は94〜124bpmのゾーンに収まっており、これが山道をゆっくり歩いている時の心拍数です。そして93bpm以下が休憩時間ですね。

心拍ゾーンの分析。運動強度の割合が視覚的に把握できる

このペースを守ったおかげで、歩行中も軽く肌がしっとりする程度で汗が滴り落ちることはなく、翌日に筋肉痛が残ることも一切ありませんでした。実際の星景撮影では重いカメラ機材を背負うため、平地でもさらにペースを落としますし、休憩も短くなります。そうした実情を考えると、やはり「時速1kmペース」の計画が安全マージンとして最適解なのだと再確認できました。

衛星を捉えにくい樹林帯でもブレない高精度GPS

GPSのトラッキング精度についても見てみましょう。峻道の山道部分は公的な地図に道が記載されていないため、国土地理院の地形図に道が載っている周回路後半の舗装路部分で精度を比較しました。写真の通り、舗装路とはいえ両脇から高い木々が生い茂り、空が狭く衛星電波を遮りやすい悪条件です。

周回路後半の舗装路。木々に囲まれた1本道を進む
頭上はご覧の通り鬱蒼とした木立に覆われており、空が開けていないためGPS電波の受信環境としてはかなりシビアだ

「スーパー地形」に3つのGPSログを同時に読み込ませてみました。実際の道路ラインに対して最も正確に追従していたのはT-Rex 3 Pro、続いてActive 2、iPhone SE3の順でした。iPhone SE3は最大で20mほどのズレが見られましたが、これは内蔵GPSチップの世代差もあるため、最新のスマートフォンであればもう少し精度は高いはずです。

地形図アプリ「スーパー地形」に3台のログを重ねて表示(赤:iPhone SE3、緑:T-Rex 3 Pro、青:Active 2)。

一方、周回路の下半分(峻道区間)は舗装路より木々の背丈が低かったこともあり、3台とも衛星をしっかり捉えて軌跡が綺麗に1本に重なっていました。いずれのデバイスも登山における現在地確認として実用レベルにあることが実証されましたが、専用のGPSウォッチであるT-Rex 3 Proの描くラインのブレの少なさは特筆ものです。

夜間撮影をサポートする手元のデュアルLEDライト

最後にもう1つ、夜間撮影者として嬉しかったギミックが、本体の12時位置に組み込まれたLEDライトです。白色LEDと赤色LEDの2種類が点灯でき、白色は4段階の調光が可能です。

本体の12時側ベゼルに白色と赤色のLEDライトが内蔵されている。
手元を照らすには重宝するが、前方に向けるには手首を少し持ち上げる必要がある。

最大光量にすると約10m先までしっかり照らし出せ、足元が不安な夜道を小走りできるほどの明るさがあります。逆に最小光量に絞ると、手元をほんのり照らす読書灯のような光になります。1見暗く感じるかもしれませんが、暗順応した夜間の撮影現場では、周囲の星景撮影を邪魔することなく機材を操作できる絶妙な明るさです。

バッテリー消費を測ってみたところ、最大光量では2時間で30%消費、最小光量では5時間点灯させてもわずか10%の消費でした。最小光量であれば、夜間にGPSログを取りながら1晩中点けっぱなしにしても余裕で耐えられます。天体撮影者にとって必須の「赤色灯」が時計単体で使えるのもありがたい配慮ですね。

日の出・日の入り時刻、月齢、潮汐情報の手元表示はもちろん、極めて正確なデュアルバンドGPSと圧倒的なバッテリーライフ。登山やトレーニングの枠を超えて、過酷な夜のフィールドへ踏み込む星景・風景写真家にとって、Amazfit T-Rex 3 Proは間違いなく頼もしい相棒になってくれるはずです。

1962年東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社マガジンハウス入社。社員カメラマンを経て2010年にフリーランスとなる。主に風景・星景を撮影し、星空の撮影は中学校で天文部に入部した頃からのライフワーク。ニコンカレッジで、星景写真講座を担当。星空に興味ある方は「こちら」へ