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【新製品レビュー】ニコン「COOLPIX P6000」
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~競争力を高めた多機能コンパクト
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Reported by
大浦タケシ
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「COOLPIX P6000」は、COOLPIX P(パフォーマンス)シリーズの最上位に位置付けられるコンパクトデジタルカメラである。
同シリーズはCOOLPIXの中でも性能に秀で、機能を充実させているのが特徴だ。そのトップとなるわけだから、カメラ好きとしては大いに気になるカメラといえる。量販店などにおける実勢価格は5万6,000円前後となる。
■ 質感や造りの良さが向上
COOLPIX P6000のボディ形状は、前モデルの「COOLPIX P5100」に準じたものだ。ただし、質感や造りの素晴らしさは大きく凌いでいる。COOLPIX P5100もコンパクトとしてはつくりのよいボディを持つが、それを上回るボディ表面の上質な処理や、グリップに貼られたラバーのしっとりとした質感、撮影モードダイヤルの心地よいクリック感など、クラスの違いを見せつけている。安価なつくりのデジタル一眼レフカメラはその足元にも及ばないように感じられるし、PシリーズのみならずCOOLPIXの最上位機としても申し分のないものだ。
イメージセンサーには、有効画素数1,350万画素の1/1.7型CCDを採用する。コンパクトデジカメといえども画素数はまだまだ留まるところを知らないようだ。メーカーとしてはライバルとの競争で、一番分かりやすいイメージセンサーの画素数でアドバンテージを得る必要があるからだろうが、個人的にはCOOLPIX P6000の使い道から見たとき、画素数はオーバースペックのように感じられる。画質的にもシャドー部が潰れやすいなどダイナミックレンジの狭さを多々感じることも多く、このカメラの性格を考えると、画素数よりも階調特性を優先させても良かったのではないかと思えてならない。テクノロジーの進歩を留めてしまうような考え方は嫌いだが、画素数以外で競争できる何かをもっとメーカーは模索しても良さそうに思える。
ちなみに、ISO感度のレンジはISO64からISO6400まで。ISO3200およびISO6400設定時の記録画素数は約300万となる。ノイズレベルはほかのコンパクトと同様といったところで、ノイズレスといえる画像はISO200まで。それ以上となると顕著に現れはじめてくる。
レンズにはEDレンズ2枚を使用した光学4倍ズームを搭載。35mm判換算で約28~112mmに相当する画角で、35~123mmに相当するCOOLPIX P5100のレンズよりもワイド側に重きを置いたものとなる。この画角の選択を歓迎する声は多いことと思うし、実際に使ってみてもワイド側の画角に不満を感じることは少なかった。
最短撮影距離は通常時でレンズ前約50cm。マクロAF時では広角側で約2cmとなる。ワイド端が広がったため、昆虫や花など広角マクロ撮影で楽しむことも可能となった。レンズの描写は画像周辺部でアマく感じられるところも見受けられるが、コンパクトとしては概ね良好。ディストーションも「ゆがみ補正」の効果もあって、皆無といってよいだろう。
なお、レンズにはシャッタースピードで約4段分の補正効果が得られるレンズシフト方式の手ブレ補正機能「VR」が搭載されるほか、別売のアクセサリーとして、21mm相当の画角が得られるワイドコンバーター「WC-E76」(2万5,200円)が用意されている。
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バッテリーとメディア。SDHC/SDメモリーカードを使用する。撮影可能枚数は約260コマ
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ポップアップ式のストロボを搭載する。ポップアップはカメラ背面部にあるボタンで操作する
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ホットシューを装備。オプションとしてワイド端専用の外付けファインダーNH-VF18を取り付けられる
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COOLPIX P5100と同様、リングを外すとコンバーターが装着できる。また、オプションとしてシルバーとグリーンのリングが用意されている
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■ よりデジタル一眼レフに近づいた機能面
ニコンのデジタル一眼レフカメラでお馴染みのピクチャーコントロールとアクティブD-ライティングを備える。ピクチャーコントロールは「スタンダード」、「ニュートラル」、「ビビッド」、「モノクローム」から選択が可能のほか、カスタムピクチャーコントロールでは好みに応じてシャープネスやコントラストなど微調整したものを登録しておくこともできる。
アクティブD-ライティングは「強め」、「標準」、「弱め」、「しない」から設定が可能。最新機種「D90」のアクティブD-ライティングには、それら以外に「より強め」と「オート」が設定項目としてあったが、COOLPIX P6000にこそ欲しかったところ。しかしながら、ピクチャーコントロールやアクティブD-ライティングなどの機能やカメラ背面部のボタン類の配置なども含め、デジタル一眼レフカメラのサブ機となることをかなり意識したものといえる。
RAWデータのボディ内現像も可能にしているのも、デジタル一眼レフカメラに慣れたユーザーを意識してのことだろう。こちらはホワイトバランス、露出補正、ピクチャーコントロールなど調整が可能で、特に画像サイズの設定では一眼レフと同じ3:2のアスペクト比のものや、1:1のスクエアサイズも選べ使い勝手はなかなか。
ピクチャーコントロールには「スタンダード」、「ニュートラル」、「ビビッド」、「モノクローム」が備わる。D90に搭載された「ポートレート」と「風景」も欲しいところだ。また、一眼レフと同様にシャープネスや彩度などの微調整も可能にしている |
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RAWによる撮影も可能。デジタル一眼レフユーザーを意識したものといえる。拡張子はニコンのデジタル一眼レフのNEFとは異なりNRWとなる
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RAWのボディ内現像では、ホワイトバランスや露出補正などD90と同様に調整が可能。画像サイズなども好みに応じて選択することが可能だ
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画像サイズでは3:2やスクエアの画面が得られる1:1も選択することができる
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ダイナミックレンジの狭いコンパクトデジカメではアクティブD-ライティングは必需品だ。こちらも一眼レフと同様に好みやシーンに応じて強さを選ぶことができる
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液晶モニターは2.7型23万画素を採用。視野角も広い上に、明るい場所でも比較的見やすい。この大きさであればRAW現像でも不満を感じることはない。欲をいえばひと回り大きな3型を搭載してほしいところだが、2.7型よりも大きな液晶モニターを積もうと思うなら、このボディサイズだと光学ファインダーを無くしてしまうしかない。
その光学ファインダーは見え具合が今一歩。コンパクトなボディに収めるため必要最小限といった感じだが、もう少し考慮してほしかったところだ。前述しているが、液晶モニターを中心とするボタン類のレイアウトはデジタル一眼レフカメラのものを意識したものとなる。ただし、厳密にいえば、ボタンのレイアウトは同じだが、ボタンに与えられた機能は異なる。そちらも同じか準じたものであったなら、デジタル一眼レフカメラと併用した場合、使い勝手はさらに向上したことだろう。
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光学ファインダーを搭載。決して見やすいとはいいがたいが、バッテリーの残量が少ないときや、しっかりカメラを構えて撮影を行なうときなど重宝する
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■ まとめ
GPSや有線LANのための端子を内蔵しているのもユニーク。GPSは緯度と経度の位置情報のほか時刻も受信することが可能で、カメラに内蔵されている時計も、GPSからの情報で日時を合わせられる。
位置情報を記録した画像は、付属するソフト「View NX」(Ver.1.2)を使って位置情報を地図に反映できる。どのような目的に使うかは未知数のところもあるが、使い方によっては有意義に活用できそうだ(編集部:GPS機能については10月1日掲載の「COOLPIX P6000」のGPS機能を試すにまとめた)。
有線LANはネットに繋がっているLANケーブルをグリップ底部にある端子に差し込めば、ニコンが運営するオンラインアルバムサイト「my Picturetown」に画像を送信できるもの。保存できる容量は2GBまで無料。それ以上になると有料となる。my Picturetownに送った画像については、いつでも自分のパソコンから閲覧およびダウンロードすることができる。インターネットストレージとして旅先での撮影した画像のバックアップなどにも便利そうだ。
COOLPIX P6000はグレードの高いコンパクトデジタルカメラとして競争力の高いカメラに仕上がっている。想定されるライバルとしてはキヤノン「PowerShot G10」、リコー「GX200」あたりになるかと思われる。しかし、そこより一歩抜きん出るには、画素数の多さや多様な機能もさることながら、より強くインパクトのある個性も必要なように思われて仕方がない。
確かにGPSや有線LAN機能などほかにはない機能やデジタル一眼レフカメラと同等の機能もいくつか搭載されてはいる。だが、カメラとしての魅力や資質がそれだけでは及ばないように思われて仕方がない。COOLPIX P6000はコンパクトデジカメとして見た場合、申し分のないカメラである。さらに所有欲を満たし、撮ることをより愉快に感じる何かが備われば、これ以上のカメラはないだろう。
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GPSのアンテナ部。いうまでもなくGPSは屋外のみで有効となる。付属の画像ソフトView NX(Ver.1.2)で撮影した画像のマッピングが可能だ
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有線LANのコネクターはグリップ下部に備わる。LANケーブルを差し込むと自動的に「my Picturetown」に接続を行なう。LAN接続時にはACアダプターからの電源ケーブルをカメラに接続することが推奨されている
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●作例
- サムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。
■ 画角
35mm判換算で約28~112mmに相当する画角の光学4倍ズームを搭載する。ワイド端が28mm相当となり使い勝手が格段に向上した。
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COOLPIX P6000 / 4,224×3,168 / 1/390秒 / F7.2 / -0.7EV / ISO64 / WB:晴天 / 28mm(35mm判換算)
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望遠端
COOLPIX P6000 / 4,224×3,168 / 1/396秒 / F7.7 / -0.7EV / ISO64 / WB:晴天 / 112mm(35mm判換算)
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■ ISO感度
ISOレンジは64から6400まで。ノイズレベルはISO200までなら問題ないもので、ISO400は何とか許容できるものだ。ISO1600とISO3200とではISO3200のほうがノイズレベルは低く感じられるが、これはISO3200およびISO6400では有効画素数が約300万画素となることに起因する。
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ISO64
COOLPIX P6000 / 4,224×3,168 / 1/3秒 / F2.7 / 0EV / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
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ISO100
COOLPIX P6000 / 4,224×3,168 / 1/5秒 / F2.7 / 0EV / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
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ISO200
COOLPIX P6000 / 4,224×3,168 / 1/10秒 / F2.7 / 0EV / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
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ISO400
COOLPIX P6000 / 4,224×3,168 / 1/23秒 / F2.7 / 0EV / ISO400 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
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ISO800
COOLPIX P6000 / 4,224×3,168 / 1/48秒 / F2.7 / 0EV / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
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ISO1600
COOLPIX P6000 / 4,224×3,168 / 1/90秒 / F2.9 / 0EV / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
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ISO3200
COOLPIX P6000 / 2,048×1,536 / 1/122秒 / F3.6 / 0EV / IWB:オート / 28mm(35mm判換算)
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ISO6400
COOLPIX P6000 / 2,048×1,536 / 1/171秒 / F4.5 / 0EV / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
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■ ゆがみ補正
実際に撮影した画角よりもわずかに狭くなるものの効果は上々。わずかに湾曲した線も気持がよいくらい真っすぐに補正する。常時ONにしておいて問題はなさそうだ。
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ゆがみ補正OFF
COOLPIX P6000 / 3,168×4,224 / 1/455秒 / F6.4 / 0EV / ISO64 / WB:晴天 / 28mm(35mm判換算)
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ゆがみ補正ON
COOLPIX P6000 / 3,168×4,,224 / 1/479秒 / F6.4 / 0EV / ISO64 / WB:晴天 / 28mm(35mm判換算)
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■ 自由作例
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COOLPIX P6000 / 4,224×3,168 / 1/313秒 / F5.9 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 112mm(35mm判換算)
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COOLPIX P6000 / 4,224×3,168 / 1/289秒 / F6.9 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 112mm(35mm判換算)
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COOLPIX P6000 / 3,168×4,224 / 1/157秒 / F4.8 / -0.7EV / ISO64 / WB:オート / 63mm(35mm判換算)
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COOLPIX P6000 / 3,168×4,224 / 1/11秒 / F5.9 / 0EV / ISO100 / WB:オート / 112mm(35mm判換算)
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COOLPIX P6000 / 3,168×4,224 / 1/244秒 / F6.1 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 63mm(35mm判換算)
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COOLPIX P6000 / 3,168×4,224 / 1/393秒 / F5.7 / -0.7EV / ISO64 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
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COOLPIX P6000 / 3,168×4,224 / 1/407秒 / F7.2 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
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COOLPIX P6000 / 4,224×3,168 / 1/356秒 / F5.7 / +0.7EV / ISO64 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
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COOLPIX P6000 / 4,224×3,168 / 1/200秒 / F5.1 / +0.7EV / ISO64 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
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COOLPIX P6000 / 3,168×4,224 / 1/214秒 / F4.6 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 57mm(35mm判換算)
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COOLPIX P6000 / 3,168×4,224 / 1/97秒 / F3.7 / -1EV / ISO64 / WB:オート / 47mm(35mm判換算)
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COOLPIX P6000 / 3,168×4,224 / 1/375秒 / F7.2 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
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COOLPIX P6000 / 3,168×4,224 / 1/237秒 / F6.2 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 94mm(35mm判換算)
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COOLPIX P6000 / 3,168×4,224 / 1/247秒 / F5.9 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 112mm(35mm判換算)
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COOLPIX P6000 / 3,168×4,224 / 1/584秒 / F7.2 / 0EV / ISO64 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
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COOLPIX P6000 / 3,168×4,224 / 1/320秒 / F5.1 / -0.7EV / ISO64 / WB:オート / 28mm(35mm判換算)
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COOLPIX P6000 / 3,168×4,224 / 1/360秒 / F6.9 / -0.7EV / ISO64 / WB:晴天 / 112mm(35mm判換算)
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COOLPIX P6000 / 4,224×3,168 / 1.6秒 / F3.7 / -1EV / ISO64 / WB:オート / 52mm(35mm判換算)
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■ URL
ニコン
http://www.nikon.co.jp/
製品情報
http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/compact/coolpix/p6000/
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大浦タケシ (おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。 |
2008/10/09 11:51
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