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「COOLPIX P6000」のGPS機能を試す

Reported by 本誌:折本 幸治

 ニコンは9月12日、GPSを内蔵したコンパクトデジタルカメラ「COOLPIX P6000」を発売した。ここでは特徴のひとつであるGPS機能について試してみた。

 撮影に関する操作性や、カメラ本来の完成度については、後日改めて掲載する予定だ。


待ち望まれた「本体内蔵GPS」

GPSロガーのうち、フォト寄りの代表格がソニーのGPS-CS1KSP。カメラバッグなどにぶら下げ、常時測位させておくのが基本的な使い方だ
 撮影画像に位置情報(いわゆるジオタグ)を付与するソリューションとして、最近はGPSロガーと呼ばれるハンディGPS端末の活用が広がっている。撮影中、USB接続可能なGPSロガーを測位させ続けて位置情報を断続的に記録、パソコンにログファイルを取り込んだ後、撮影画像の日時情報と合致する日時の位置情報があれば、画像のメタデータに書き込むという方法だ。ジオタグを画像に書き込むフリーウェアも以前に比べると充実してきた。

 ただし、GPSロガーとデジタルカメラの両方を持ち歩かねばならず、両者のバッテリーや記録容量の管理が必須。また、GPSのログと画像をマージさせるのは、それなりに手間がかかる。ログデータにもいくつかフォーマットがあるので、使用するGPSロガーにあわせたソフト選びを強いられることもある。最近ではログデータから画像データをひもづける方法とは逆に、地図ソフトから画像に緯度経度を書き込む方法もあるが、旅行に行ったときの観光写真ならともかく、頻繁な移動が伴うスナップ写真などでは対処が難しい。そのため、どうも本末転倒の感が拭えない。

 ところがCOOLPIX P6000は、カメラ本体にGPSを内蔵することで、撮影と同時に位置情報を画像に記録。GPSが測位さえ行なっていれば、位置情報が自動的に記録される仕組みだ。ログデータと画像のつきあわせ作業がない分スマートであり、GPSロガーの電池管理も必要ないわけだ。


高い精度とグラフィカルな表示

COOLPIX P6000
 COOLPIX P6000は、有効1,350万画素の1/1.7型CCDを備えるシリーズハイエンドモデル。レンズは焦点距離28~112mm相当、F2.7~5.9の4倍ズームで、液晶モニターは2.7型約23万ドット。絞り優先AE、シャッター速度優先AE、マニュアル露出にも対応する。

 GPSアンテナの場所は本体左手側の側面上部。現在出回っているGPSロガーの大きさを考えると、意外なほどコンパクトにまとまっている印象だ。説明書には、「アンテナ部を上に向けると測位しやすくなる」との説明があるが、ストラップを両吊りにすると、アンテナ部は横に向いてしまう。大きく精度が損なわれる印象はないが、何となく気になってしまう。

 位置情報を画像に記録するには、まずモードダイヤルを「GPS」ポジションにあわせて現れる「GPSメニュー」で、MENUボタンを押す。そこで表示された「位置情報記録機能」をONにする(デフォルトではOFF)だけだ。すると、位置情報の取得がはじまる。


ダイヤルの「GPS」ポジションに設定を集約 GPSアンテナは側面に設けられている

GPSを使うには、位置情報記録機能をONにする。ONにしている間は、カメラの電源を切っても測位する 測位が長く中断されたときや初めて測位する場合、環境にもよるが測位完了まで2~4分ほどかかる

測位を完了した状態。補足した衛星の方位と数、現在の緯度と経度が表示される GPSの受信状態は、撮影画面でも知ることができる

測位不能後、最後に得た位置情報をどれくらいの時間記録し続けるかを設定可能

 測位が終わると、液晶モニターに補足した衛星と緯度・経度が表示される。ハンディGPS端末では得られないグラフィカルな表示が格好良い。

 そのままモードダイヤルを撮影モードに合わせれば、液晶モニターの撮影時表示に衛星をかたどったアイコンが現れる。受信状態を表したもので、「4つ以上の衛星から受信」、「3つ以上の衛星から受信」、「測位できていないが、記録有効時間内」、「測位不能」の4段階を示している。

 「記録有効時間」とは、測位不能になった場合、位置情報の書き込みをいつ中断するかの時間設定。GPSモードの設定メニュー内にある「記録有効時間」に基づくもので、デフォルトでは「1分以内」になっている。測位不能後の位置情報とは、つまり誤った情報になるが、建物の中にしばらく入って撮影するケースなどでは、長めに設定しておくと、屋内に入る前の位置情報が、記録有効時間内であれば書き込まれる仕組みだ。

 電源オンの状態だと、測位間隔は5秒に1回。撮影中に移動してもしっかり更新されており、精度は結構高い。これまで複数のGPSロガーを試したことがあるが、その中でもトップクラスの精度だと感じる。もちろん数m、ときには数10mの誤差がでるときがあるが、GPSロガーでも同様の誤差は生じる。

 一度、位置情報取得を行なった後は、撮影位置を変えても即座に測位してくれる(位置情報取得オンの場合)。またうれしいことに、カメラの電源をオフにしても、電源オンからの再測位は速い。撮影中、こまめに電源を切っても問題ないわけだ。


測位成功中に撮った写真には、もちろん位置情報が付いている
 位置情報記録をONにしている場合、カメラの電源をオフにしても、90分ごとに6回までの測位を行なってくれる。記録有効時間の設定を上手く使えば、移動の多い撮影でも、測位にかかるストレスを軽減できるわけだ。

 ただし地下鉄での移動が生じたときなど、長く測位できない状態が続くと、次回の電源オンでは初回と同じように位置情報取得に時間がかかることがある。また、電源オフにしてから約2時間が経過した場合も同様だ。

 バッテリーの持ちは、ストロボ発光を伴うCIPA規格準拠で約260枚。位置情報取得をONにした場合、ストロボ非発光で337枚撮影できた。本機はバッテリーを取り替えると再測位になってしまうので、フル充電からの撮影可能枚数が重要になるが、2~3泊の一般的な旅行などでの使用なら問題ないだろう。


予想以上の使いやすさ、今後の進化にも期待

 使ってみてわかったのは、とにかく気軽に位置情報が得られること。これまではGPSロガーの受信状態が気になり、バッグから露出しているか、電池がなくなってないかなど、そのロガーに慣れていないうちは、常に不安を覚えていたものだ。実際に帰宅し、ログデータを見るまでその不安はつきまとう。結局面倒くさくなって、GPSロガーを携帯していたとしても、無視して撮影することが個人的にはしばしばあった。

 しかしCOOLPIX P6000なら、撮影画面に受信状態が常に出ているので安心感が高い。測位にかかる時間や精度も、安価なGPSロガーと比べれば問題ないレベルに感じる。もちろん、ログファイルと画像ファイルのひも付けを行なわなくてよいのもうれしい点だ。

 唯一気になったのは、カメラを常に露出させなければならないこと。GPSロガーも同じくカバンの外などに露出させる必要があるので当たり前といえば当たり前だが、移動中はカメラをさらにグリップを右手で持ったまま移動すると、自然とGPSアンテナ部が下を向くのが気になった。だからといって極端に測位できなくなるわけではないが、林の中など測位しづらそうな場所だと、ついグリップを下にした状態で持ち歩いてしまう。

 また電源をオフにすると、受信状態を示すものが何もなくなる。実用上問題ないとはいえ、受信中はLEDを発光させるなど、安心感を与えてほしいと感じた。

 気になる点はその程度で、カメラとGPSロガーの併用に慣れた人ほど、その簡便さに驚くことだろう。もちろん、本格的なカーナビゲーションに比べると、測位までの時間や本体の大きさなど、GPSロガーと同様に課題は多いが、コンパクトデジタルカメラにおいて国内大手メーカーが、位置情報付加の一歩を示した意義は大きいと思う。



URL
  ニコン
  http://www.nikon.co.jp/
  製品情報
  http://www.nikon-image.com/jpn/products/camera/compact/coolpix/p6000/

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本誌:折本 幸治

2008/10/01 12:51
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