中古カメラのススメ

中古カメラのススメ(第5回)フィルムカメラ編

若いお客も増加中!フィルムで撮る魅力とは?

デジタルの対極にあるものといえば、カメラの場合いうまでもなくフィルムだ。デジタルカメラが登場する以前、静止画の大半はフィルムで撮られ、写真=フィルムという図式が長く成り立っていた。デジタル時代となりフィルムがショーケースの隅へと追いやられて久しいが、デジタルしか知らない新しい写真愛好家のなかには、自身にとって新たな表現方法のひとつととらえ、フィルムでの撮影に挑戦してみようと考える者が少なくないと聞く。

第5回目となる本コーナーでは、これからフィルムで撮影を楽しんでみたいデジタルユーザーが中古フィルムカメラを選ぶ際に注意したいところなど紹介したい。お話は株式会社ミヤマ商會・代表取締役の森田和明さんに伺った。

新宿3丁目交差点近くにミヤマ商會新宿店がある。デジタル一眼レフから国産レンジファインダー、中判カメラなどの中古のほか、新品の最新モデルも多数取り揃える。
今回お話を伺った株式会社ミヤマ商會・森田和明さん(右)と店長の木村亮一さん。「一眼レフをはじめとする実用機のフィルムカメラを多数取り揃えております。購入前も購入後も分からなところがありましたら、私どもにお気軽にお尋ねください」

デジタルでデビュー→フィルムに夢中な人も

フィルムカメラはフォーマットサイズ(判型)に応じて大きく3つに分けられる。4×5インチ以上のフィルムを使う大判カメラ、ブローニーフィルムを使う中判カメラ、そしてその名のとおり35mmフィルムを使う35mm判カメラである。そのほかにもいくつか判型はあるが、最も一般的で中古の流通量も多いのはいうまでもなく35mm判カメラである。しかも製造年代は幅広く、太平洋戦争以前のものも珍しくない。したがって程度や状態などさまざまなものが存在する。

「私どもが扱っている中古のフィルムカメラは主に実用機です」と森田さん。実用機とはどのようなものを指すかというと、「実際にガンガン撮れるカメラのことですね。私どもではオートフォーカス機、マニュアルフォーカス機のどちらも実用機を多数用意しております」とのこと。ここでいう実用機とは製造された年代が比較的新しく、しかも修理の可能なものと考えてよいだろう。コレクションの対象になるような古いカメラだと実際の使用では気を使うことが多く、故障しても修理できない場合もある。

ちなみに同ショップでは、以前はマニュアルフォーカスのフィルム一眼レフが人気あったが、現在はオートフォーカスのフィルム一眼レフに人気が移行しているとのこと。「カメラデビューがデジタルカメラという人が増えたからでしょう」と森田さんは分析する。

現行モデルでもあるニコンF6。ニコンフィルム一眼レフの最終モデルと目されるが、それゆえフィルムカメラとしての完成度は高い。ただし、中古でも価格はそれなり。
ミヤマ商會で人気のあるフィルム一眼レフのひとつといえばニコンF100。現行モデル時代「F5ジュニア」として人気を博したが、その名に偽りのない実力を誇る。
人気のFMシリーズも充実。FEシリーズも含め同シリーズは、例年春先になると写真学生の購入で中古カメラ市場での動きはより活発になる。
1950年代につくられたレンズシャッター機。つくりがしっかりしているうえに、修理も専門業者であれば対応する。このようなカメラでフィルムを楽しむのもありだ。
ヤシカ/コンタックスマウントのカメラも人気だ。ただし、優れた描写特性のカールツァイスレンズは一眼レフ用の中古交換レンズとしては高価なので、出費は覚悟したい。

ところでフィルムカメラの魅力とはなんだろう。また、何が未だ写真愛好家を引きつけるのだろうか。

「1枚1枚を大切に撮りますので、デジタルよりも写真に対する思い入れがより一層強くなることだと思います。ましてや昨今フィルムが値上がっていますので、その傾向はより顕著になりつつあるといえます。うちに来るお客さまで、通常はデジタルだが、ココ一番というときはフィルムという人も少なくありません」とのこと。

もちろん、フィルムならではの発色も魅力。「当店ではDPEの受け付けはしておりませんが、このところプリントにこだわったカメラ店、DPEショップが増えてきています。そのようなお店を開拓するのもフィルムカメラの魅力のひとつでしょう」と語る。

ちなみにフィルムは大きくわけて、カラースライドフィルム(カラーポジフィルム)、カラーネガフィルム、モノクロネガフィルムの3種類から選ぶことができる。そのうち安価で入手しやすく、手軽にプリントが楽しめるのはカラーネガフィルムだ。ラチチュード(露光許容度)が広く、プリント時に露出の失敗をカバーしやすいのも特徴である。

「素直にお店の人間に訊いてほしい」と森田さんがいうのは、カメラの状態の確認だ。フィルムにすら触れたことのないようなビギナーが中古のフィルムカメラを購入するとき、自らその状態を知ろうとすることには無理がある。「フィルムカメラのことを知らなければ最初から知らないといってもらったほうがいいかと思います。こちらもより分かりやすく説明させていただきます」とのことである。

ただし、いくつかはこちらから積極的に確認しておく必要がある。まずは前述しているが、修理について。メーカーで修理できるか、あるいは専門の修理業者で対応できるか訊こう。特にちょっと古いフィルムカメラの場合、電子部品が払底していると修理ができないことがあるからだ。

また、自らカメラを持ちファインダーを覗いて見たり、シャッターボタンを押してみるなど撮影における一連の操作も行ってみたい。そのときグリップ部のべたつきやファインダーの汚れの有無、シャッターボタンや巻き上げ巻き戻しレバーの動き、フィルム室の状態など店員の説明を聞きながらチェックすると、同時に使い方も憶えることができるのでおすすめだ。もちろんカメラ外装のキズやアタリ(何かに当り凹んでいたりすること)なども、自分自身の目でも確認しておきたい。

また、同時に聞いておきたいのがカメラの保証だ。「中古のフィルムカメラでも多くのショップで何らかの保証を付けているところが多いと思います。当店の場合では、販売価格3万円以上の中古カメラおよび2万円以上の中古交換レンズであれば半年間の保証を、それ以下の価格の中古カメラ、中古交換レンズでは15日のお試し期間を設けさせていただいております」とのことである。

新宿店の広い店内にはショーケースがずらりと並び、その中には中古のカメラ、交換レンズのほか新品も展示されている。同店の中古カメラは特にニコンが充実している。

カメラの仕組みを知るにも良し。機材は安く入手可能

中古フィルム一眼レフを購入の際に気になるのが交換レンズである。森田さんは「当店では、F1.4クラスの50mm標準レンズを特におすすめすることが多いですね。大きなボケを撮影に活かした撮影が楽しめますし、マニュアルフォーカスの場合ピント合わせも比較的容易ですから」という。たしかに開放F値の小さなレンズのほうが大きなボケはつくりやすいし、ピントも掴みやすい。何よりちょっと古い交換レンズの場合、ズームレンズよりも単焦点レンズのほうが写りのよいことが多い。さらに大きなボケに対する要望もこのところより一層高まっているという。

「ミラーレスの場合、フォーマットサイズがフルサイズの一眼レフにくらべはるかに小さいため大きなボケは得られにくい。そんな理由からボケに対する憧れが強くなっているように思えます」と話す。ちなみにミラーレスの交換レンズをフィルム一眼レフに装着することは不可能であるが、デジタル一眼レフ用のものであれば、フィルム一眼レフで使用できる場合もある。そのため、所有するデジタル一眼レフと同じメーカーのフィルム一眼レフを購入するのであれば、その際自分のレンズを持っていって装着できるかお店に相談してみるとよいだろう。

キヤノンのマニュルフォーカスを代表するFDレンズ。タマ数も多く、比較的手ごろな価格で手に入れることができる。写真は、その開放値F1.4の50mm単焦点レンズ。

「楽しいですよ」……森田さんがフィルムカメラをすすめる最大の理由だ。「丁寧に撮りますから写真に思いを込めることができます。それは自分の写真にプレミアムが付くと例えてもよいでしょう」という。繰り返しになるが、1カット1カットを慎重に撮影を行なうフィルムは、デジタルにくらべ写真に対する思い入れがより強くなる。それは被写体に気づき、アングルを考え、シャッターを切るまでの一連のプロセスの鍛練ともなり、結果デジタルに戻ったときも活かされるように思える。

また、フィルムカメラはカメラの構造を知るよい機会にも。「裏ブタが開くことに驚くビギナーも少なくない」と森田さんがインタビューのなかで話されていたが、フィルムカメラはフィルムを装填するために裏ブタが大きく開く。その状態でシャッターを切るとミラーがアップしシャッター幕が開閉する様子を見ることができる。そのような動きを見るのもカメラを理解するうえで大切な経験のように思える。現在、実用機といわれるフィルム一眼レフはグレードや状態を選ばなければ、比較的安価で手に入る。この機会にフィルムでの撮影を楽しんでみるのはいかがだろうか。

ショーケースのなかで見かけた貼り紙。機械式マニュアルカメラに興味ある若い客に向けてのものであるが、同店の心意気を感じさせる。分からないことがあったら積極的に尋ねてみたい。

編集協力:株式会社玄光社 カメラファン
取材協力:株式会社ミヤマ商會(カメラファン加盟店)

大浦タケシ

(おおうら・たけし)1965年宮崎県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、二輪雑誌編集部、デザイン企画会社を経てフリーに。コマーシャル撮影の現場でデジタルカメラに接した経験を活かし主に写真雑誌等の記事を執筆する。プライベートでは写真を見ることも好きでギャラリー巡りは大切な日課となっている。カメラグランプリ選考委員。