オリンパス・ペンライトE-PL1でショートフィルムを撮る

Reported by近藤勇一

E-PL1 / M.ZUIKO DIGITAL 17mm F2.8 / 4,032×2,272(16:9で撮影) / 1/2,000秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / WB:オート / 17mm
サムネイルをクリックすると、E-PL1で撮影した静止画像を開きます。(撮影:野下義光)

 オリンパスが3月に発売した「ペンライトE-PL1」は、有効1,230万画素の4/3型Live MOSセンサー、2.7型約23万ドットの液晶モニター、ポップアップ式内蔵ストロボなどを備えるマイクロフォーサーズシステム規格のレンズ交換式デジタル一眼レフカメラだ。

 動画の形式は1,280×720ピクセル(720p)、30fpsのAVI(Motion JPEG)。アートフィルターは、従来モデルから「ポップアート」、「ファンタジックフォーカス」、「ラフモノクローム」、「トイフォト」、「ジオラマ」を引き継ぐ一方、新たに「ジェントルセピア」を追加した。

 今回のショートフィルムで撮影と編集を担当した映像作家の近藤勇一氏と、撮影のコーディネートを行なった写真家の野下義光氏による対談も掲載した。(編集部)

【ショートフィルム】

 

※掲載したショートフィルムは、E-PL1で撮影したHD動画をアップルの動画編集ソフト「Final Cut Pro 6」で編集した。リサイズには、同じくアップルの合成ソフト「Shake 4.1」を使用している。本編使用カットのアートフィルターは、登場順に「ジェントルセピア」、「ポップアート」、「トイフォト」、アートフィルター無し、「ファンタジックフォーカス」、「ジオラマ」、アートフィルター無し。編集で色調整などは行なっていない。

※掲載したFLVファイルは640×360ピクセル。ビットレートは約2Mbpsとした。そのため、オリジナル映像には無かった画質の低下が見られる点をご了承いただきたい。なお、本編に使用した未加工のオリジナル動画ファイルを記事末に掲載した。

 

・撮影中の様子

 

●使いやすい操作系

野下:今回は第2回のパナソニック「LUMIX DMC-GF1」と同じマイクロフォーサーズという規格のE-PL1です。レンズ交換式デジタルカメラとしては小さい部類の撮像素子ですが、実は映画用フィルムに置き換えると35mm判に近いサイズなんですよ。

近藤:DMC-GF1も今回のE-PL1も映像機器としては非常にコンパクトですが、それでいて35mm判に近いサイズとは改めて驚きました。映画を志す者にとって35mmは憧れでしたからね。まさかそれがこんなにコンパクトで手ごろな価格で手に入る時代になろうとは! 8mmフィルムで頑張っていた20年前の自分に教えてあげたいですね(笑)。

野下:E-PL1の使い勝手はいかがでしたか?

近藤:操作系は良いですね。動画モードで各種の設定がまとめられていて使いやすかったです。それに、露出補正なども直感で操作できる作りでしたね。毎回いつもカメラ周りのセッティングは野下さんに任せっきりでしたが、今回初めて自分で露出補正できました(笑)。

野下:使い慣れればどんなカメラでも扱えるでしょうが、この企画では、撮影日の一期一会ですからね。でもさすがオリンパス! とでも言うべきでしょうか。長年のカメラ造りで培った操作系などの作りこみは、一朝一夕では得られないノウハウなんでしょうね。ピント合わせはいかがでしたか?

近藤:DMC-GF1もそうでしたが、EOS Digitalとは比べ物にならないほどスピーディーですね。

野下:ライブビューのコントラストAFは確かにスピーディーでストレスないですね。なぜこんなに速いのか以前オリンパスの方に聞いたことがあるのですが、すべてをデジタル専用にゼロから出発した規格で、当初からコントラストAFも想定して開発したからという回答でした。つまりコントラストAFがネイティブってことですね。

近藤:なるほど。でも常時AFはハッキリ言ってイマイチでしたよ。

野下:どんな感じに?

近藤:一度ピントが合ったかのように見えて、再度確かめるようにピント位置を前後させるんですよ。カメラや人物が動くと常に小刻みにAFが作動し続けるので、ピントの芯がフワフワ動く画になってしまいます。なので常時AFは使わずに、ピント固定で撮りました。撮る直前のピント合わせはAFを用いましたが、そのAFは高速で使いやすかったです。

野下:ペンシリーズで、「M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6」(4月23日発売)か「M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4-5.6」(5月下旬発売)を使用した場合に、動画撮影のコンティニュアンスAF追従性を従来機より改善したファームアップをオリンパスがアナウンスしていました(E-PL1は出荷時にアップデート済)。オリンパスも近藤さんが指摘された点は検討課題だったのでしょうね。新ファーム&新レンズに期待しましょう。

●アートフィルターで予想外の仕上りが楽しめる

野下:一方で画質はいかがでしたか?

近藤:さすが撮像素子サイズが映画の35mm判に近いサイズだけありますね。このコンパクトなボディからは想像できない綺麗さです。パナソニックとは趣きは異なりますが、どちらも甲乙つけられないくらい良いです。DMC-GF1もそうでしたが、これだけの画質があるのだから、是非EOSムービーみたいに29.97fpsや23.98fpsにも対応して欲しいものです。

野下:アートフィルターはいかがでしたか?

近藤:フィルターというかエフェクトとしては代表的なものばかりですね。効果と使用目的をイメージしやすいので、初心者の方も楽しめると思います。ただ、処理が追いつかないのか撮影時のフレームレートがかなり落ちるものもありましたね。しかも記録自体は30fpsにしているものもあれば、そのままのものもあったりとフォーマットがバラバラです。

野下:ノーマルで撮って、映像編集ソフトでアートフィルターと同様の後処理は可能ですか?

近藤:初級レベルでも対応可能だと思います。プロ用編集ソフトでなくても標準搭載されていることが多い効果です。静止画もそうですよね?

野下:そうですね。画像処理ソフトによっては最初から似たようなフィルター効果を持っているものもありますので、初心者でも作れると思います。でもファミリーユースとして見ると、カメラにこのような機能が内蔵されているのは、楽しいと思いますよ。ところで、ちょっと思ったのですが、E-PL1のアートフィルターは、JPEGなどRGBデータを後処理した感じがしました。それに対して、パナソニックのマイカラーやフィルムモードはRAW現像設定というか現像ソフトの根幹から変えている感じがします。

近藤:そうですか! 確かにアートフィルターは効果によってノイズ感が上がってしまうものがあったのに対して、DMC-GF1のマイカラーはすべてで高度な画調を感じましたね。ただ通常アートフィルター的な効果を作品に盛り込むのであれば、動画素材として現場はノーマルで撮影して、後処理で仕上げる方が自分のイメージ通りに仕上げられるので、たぶんそうすると思います。

野下:では、E-PL1のアートフィルターは近藤さんには不要でしたか?

近藤:最初はそう思いつつ始めたのですが、結果として意外とそうでもなかったですよ(笑)。フレームレートも含めて後処理でなら自由に設定できますが、完成品は良くも悪くも想定の範囲内に納まることになります。確かにパラパラマンガのようなコマ速は想定外でしたが、それによって自分の想像してなかった意外性が作品の中に生まれました。

 アートフィルターのフレームレートは、オリンパスが本来目指したものではなく、技術的な結果だと思います。でも今回の作品は、自分ですべてが自由になっていたらこうはならなかったでしょうね。むしろ不自由さから生まれた意外性が新鮮味となって仕上がったのでとても気に入っています。でも、時には許容できないほどイメージとかけ離れてしまう可能性もありますからね。プライベートならそれも面白みですが、業務だと致命的になりかねません。今回の企画はアートフィルター機能を試すことも主旨のひとつでしたので果敢にチャレンジできましたが、そうではない企画だと実際に使うかどうかは“?”です。

●小型のカメラはリラックスした表情を狙える

野下:今回の作品のテーマは何ですか?

近藤:ずばり、“友だち以上恋人未満目線です”(笑)。というのも、E-PL1ってどこからどうみても業務用機には見えませんよね。あたりまえですが。普段、業務用機で撮影していると、どうしても現場の空気も仕事としての緊張感が漂います。キャストもプロなので、プロとして自身の魅力を表現します。これは当然ですし重要で必須なものですが、時にはもっと素の感じを撮りたいと思うこともあるんですよね。

野下:あぁ、それは静止画でも常々思いますよ。いつでも手軽で全部カメラ任せで撮れるコンパクトカメラを敢えてわざわざ使っている大御所の写真家もいますからね。

近藤:そこなんですよ。そのコンパクトカメラ的なリラックスした表情を狙えますからね。業務レベルの画質でプライベート感が撮れるんです。私としてはE-PL1などのカテゴリーのカメラには、非常に価値を感じました。全編は難しいですが、尺の長い作品でも要所要所で使ってみたいですね。

 今回は撮影編集の過程で、業務用機に比べて色々限界や制限を感じもしましたが、大げさに考えるとだからこそ生まれた広がりもあったのかなと、完成してから思いましたね。頼りになる万能機ではないですが、このカメラだからこそ魅力的に撮れるものは身近にむしろ多そうですね。

【オリジナル動画】

サムネイルをクリックすると、本編で使用したカット(一部)のオリジナルファイルをダウンロードします。
E-PL1 / 1,280×720ピクセル / 30fps / 43秒 / 約65MB / AVI(Motion JPEG)形式





1969年栃木県生まれ。小学生時代に父の8ミリカメラで撮影を始め、怪獣映画監督を夢見る。しかし何故かアイドル映像制作の日々に(苦笑)。女は最強の怪獣と解釈するに至る。アイドルものを中心としたビデオ撮影・編集に加え、企業VPなどのCGを担当するほか、ショートムービーも制作し「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」の常連監督でもある。Webサイト「GIRAFFiLM」はこちら

2010/5/6 13:33