新製品レビュー

FUJIFILM X70(実写編)

新フジノンレンズの実力やいかに!

富士フイルムから広角28mm相当の単焦点レンズを搭載するコンパクトカメラ「FUJIFILM X70」が登場した。レンズ交換式の「FUJIFILM X-T1」などにも採用されるAPS-Cサイズ1,630万画素のX-Trans CMOS IIイメージセンサーとEXR Processor IIの組み合わせに、新設計の18.5mm F2.8レンズ(35mm判換算28mm相当)を搭載したモデルだ。本稿ではX70の実写レポートをお届けしよう。

遠景で描写チェック

まず気になるのが新開発のフジノンレンズ、18.5mm F2.8の実力だろう。5群7枚構成で、うち2枚は非球面レンズを採用して歪曲収差を限りなくゼロに近づけているという。同社独自のコーティング技術HT-EBCを施し、逆光対策も万全だ。遠景を1段ずつ絞りながら撮影したので、その結果から考察してみよう。

F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

解像感は開放からシャープで、コントラストの付き方も安定感がある。周辺光量落ちはほぼ感じられず、絞りコントロールによるボケ以外の描写変化は極めて少ない。本機は点像復元処理を搭載しており、回折現象を気にせず絞り込める。実写結果を見ると、F11までは申し分ないシャープさで、F16で回折による甘さが感じられた。

これは広角コンパクトカメラの本機にとって大きな強みとなる。広角スナップシューターとしては被写界深度を深く取りたいので、F11でもシャープに撮れるメリットは大きい。

一方、ボケを活かした撮影もX70は得意だ。開放F2.8は取り立てて大口径というわけではないが、本機は最短撮影距離10cmまで寄れる。特にマクロモードに切り替えるような面倒はなく、そのまま寄っていけば最短10cmまでクローズアップが可能だ。このとき開放F2.8で撮影すると、被写界深度の極端に浅いカットが撮れる。本機は絞り羽根が9枚とリッチな仕様で、円形のボケを形成してくれる。近接開放のボケ量の多い表現も積極的に活用したい。

開放絞り+最短距離で撮影

ISO感度

高感度撮影時のノイズののり具合を見ていこう。ノイズリダクションはスタンダード(初期状態)を選択した状態で、1段ずつ感度を上げて撮影した。

以下のサムネイルは青枠部分の等倍切り出しです
ISO100(拡張)
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
ISO6400
ISO12800(拡張)
ISO25600(拡張)
ISO51200(拡張)

ISO3200まではほぼクリアな写りで、ISO6400でようやくノイズが感じられる。とは言え、ISO6400も十分に常用できる程度のノイズだ。拡張感度のISO12800はさすがにノイジーだが、合焦部はシャープさを保っている。ISO25600まで上げるとディテールが崩れ、画質的にかなり厳しい状態だ。被写体や光の状態にもよるが、ISO6400までは安心して使えそうだ。

フィルムシミュレーションの顔ぶれ

仕上がりモードについては、同社が得意とするフィルムシミュレーションとアドバンストフィルターを搭載する。ちなみに、同時期に登場したX-Pro2は、富士フイルムの銀塩モノクロフィルムにちなんで「ACROS」と名付けられたフィルムシミュレーションを追加搭載している。階調重視のリッチなモノクロが魅力だが、残念ながらX70には未搭載だ。

PROVIA/スタンダード
VELVIA/ビビッド
ASTIA/ソフト
クラシッククローム
PRO Neg.Hi
PRO Neg.Std
モノクロ
モノクロ+Yeフィルター
モノクロ+Rフィルター
モノクロ+Gフィルター
セピア

スナップから作品づくりまで

広角28mmのコンパクトは、ノーファインダーですばやく切り取るような、撮影のテンポを重視した印象が強い。しかしながら、イメージセンサーが大型化するにともない、被写体を被写界深度内に収められるか否か、広角と言えども意識する必要が出てきた。

X70を実際に使ってみると、動体に強い新AFシステムが功を奏し、ラフな撮り方でもちゃんと被写体を捉えてくれる。その一方で、開放近接で背景を大きくボカし、じっくりと作り込むような撮影も可能だ。気軽なスナップから作品づくりまで、X70は幅広いニーズに応えてくれるだろう。

作例

四隅までしっかりと解像し、緻密な描き方だ。F8で橋の中程にピントを合わせたところ、遠くの鉄塔はわずかにボケている。広角モデルとは言え、被写界深度を意識した撮影が必要だ。

X70 / F8 / 1/350秒 / +1.33EV / ISO200 / AWB / スタンダード

直線で構成された被写体を選び、撮影した。歪曲のない直線がきれいに伸びる。白いペンキのわずかな隆起まで捉え、緻密な描写力を実感できる。

X70 / F4 / 1/1,600秒 / ±0EV / ISO200 / AWB / スタンダード

高速道路の高架を見上げる。コントラストの付き方が絶妙で、けっして過度にならないところが良い。暗がりの奥にうっすらと像が浮かぶあたり、通の琴線に触れる描き方だ。

X70 / F8 / 1/210秒 / -0.67EV / ISO200 / AWB / スタンダード

F4で被写体に寄り、背景をボカして撮影した。ボケ味はなだらかで嫌みがない。最短撮影距離でなくてもちゃんとボケてくれるのは、APS-Cセンサー搭載機のアドバンテージだ。

X70 / F4 / 1/1,400秒 / +0.67EV / ISO200 / AWB / スタンダード

逆光で太陽を入れ込んで撮影した。ゴーストやフレアが抑えられ、シャドウの浮きもほとんど感じられない。これなら積極的に逆光撮影できるだろう。

X70 / F8 / 1/1,700秒 / ±0EV / ISO200 / AWB / スタンダード

スコアボードの「8」のあたりにピントを合わせた。F5.6でも前後がボケているのがわかるだろう。発色はあくまでも自然で、リアリティのある仕上がりだ。

X70 / F5.6 / 1/750秒 / ±0EV / ISO200 / AWB / スタンダード

澤村徹

(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp