新製品レビュー

キヤノンPowerShot SX60 HS(外観・機能編)

超広角から超望遠までを1台でカバーする、世界最高光学65倍ズームモデル

高倍率ズームを搭載したデジタルカメラといえば、最近では各社とも光学50倍以上が当たり前となり、中には光学60倍に対応した製品もある。そんな中、キヤノンは世界最高クラスをうたう光学65倍ズーム機PowerShot SX60 HSを発売した。

本機は、同社がハイクオリティズームシリーズと呼ぶ高倍率ズーム搭載モデルPowerShot SXシリーズの最上位に位置し、2012年に発売した光学50倍ズーム機PowerShot SX50 HSの後継製品となる。

35mm判換算の焦点距離イメージは、21-1,365mm相当。前モデルPowerShot SX50 HSは24-1,200mm相当だったが、それに比べるとワイド側とテレ側の両方が拡張されている。この数値だけを見れば、超広角から超望遠までを1台でカバーする、まさに夢のようなカメラである。

撮像素子は、前モデルの1/2.3型約1,210万画素CMOSから、1/2.3型約1,610万画素CMOSへと、センサーサイズを変えずに多画素化した。画像処理エンジンはDIGIC 5からDIGIC 6へと進化。さらに、ファインダーや液晶モニターを精細化したほか、新機能としてWi-Fiを搭載している。

大型グリップによる良好なホールド感

ボディは、レンズ部とグリップ部が大きく突き出たオーソドックスなカメラスタイルを採用する。

本体サイズは、標準ズームを装着した一眼レフのエントリー機に比べて一回りほど小さいくらいだ。

バッテリーを含めた使用時の重量は約650g。前作PowerShot SX50 HSに比べた場合は、幅と高さ、奥行きがそれぞれ数mm増え、重量は55g重くなっている。

外装は、フルブラックの樹脂素材で、鏡胴部分など一部が金属素材となる。樹脂部分にはざらつきのある表面処理を、金属部分には薄いヘアライン処理をそれぞれ施し、質感と手触りを高めている。高級と呼べるほどではないが、かといって安っぽい印象はなく、品のある引き締まったデザインといっていい。

天面にある電源ボタンを押すとレンズが少しせり出し、約1.3秒で素早く起動する。同時にレンズの前玉部分は約1.4cmせり出して、広角端にセットされる。

望遠端までズームアップした場合は、約6.5cmせり出した状態になる。かなり長く伸びるが、全体の重心はレンズ側ではなくボディ側にあるため、ズーム位置を問わずホールドバランスは良好に感じた。

21mm相当になる広角端の状態
1,365mm相当になる望遠端の状態。

ズームの操作には、シャッターボタンの周辺にあるズームレバーを使用する。これまでの同社製品と同じく、レバーの角度によってズームスピードが変化する可変式だ。ズームの駆動音はややあるが、動画撮影時には気にならないレベルにまで低減されるようになっている。

背面モニターには、従来より大型化/精細化した約92.2万ドットの3.0型バリアングル液晶モニターを搭載する。左右に最大175度、上下に最大270度まで回転し、ローポジション撮影やハイポジション撮影、自分撮りなどが快適に行える。

液晶モニターには十分な明るさと視野角、精細感があり、屋内外を問わず視認性は悪くない。タッチ操作には非対応だ。

いっぽうEVFには、こちらも従来より精細化した約92.2万ドット相当の液晶を搭載する。

またアイセンサーによる自動切り替えにも対応していないのは少々物足りないところ。背面モニターからEVFに表示を切り替えるには、画面を内側にして液晶モニターを閉じる、またはDISPボタンを1、2回押す、という操作が必要になる。ビューファインダーの視認性についてはまずまずといえる。

アングルの自由度を高める可動式の液晶モニターを搭載。画面をレンズ側に向けると自分撮りが楽しめる
約92.2万ドット相当のEVFを装備。左側には視度調整ダイヤルがある

オートズームとサーチアシストに新対応

機能面での注目は、望遠撮影のサポート機能であるフレーミングアシストがいっそう進化したこと。これは、ズームアップして撮影している際に、鏡胴部にある専用ボタンを押すことで一時的にズーム倍率を下げて、見失った被写体を再発見するための機能だ。

レンズ側面の上にあるのが「フレーミングアシスト-探索」ボタン、下にあるのが「フレーミングアシスト-固定」ボタン。固定ボタンを押した場合は、手ブレ補正が作動し、画面表示のブレが低減される

使い方は、望遠撮影時に狙っている被写体が画面から外れてしまったら、レンズの側面にある「フレーミングアシスト-探索」ボタンを押す。すると、ズーム倍率が下がり、ボタンを押す前の撮影範囲の目安が白い枠で表示されるので、その枠を見ながら被写体を捉え直す。そして、ボタンから指を離すと再び元のズーム位置に戻る、という手順になる。

ここまでの使い方は前モデルと同じだが、本モデルではさらにフレーミングアシストのオプションとして、「オートズーム」と「サーチアシスト」と呼ばれる機能を搭載した。

オートズームとは、画面に対する顔の大きさを「顔/上半身/全身/マニュアル」の4タイプから選択しておくと、被写体の動きに応じて、そのサイズに合うようにズームが自動的に行われる仕組みだ。

一方サーチアシストとは、人物などの被写体が画面外にフレームアウトした場合に、自動的にズームダウンが行われ、見失った被写体を見つけやすくしてくれる機能だ。

フレーミングアシストの設定メニュー。サーチアシストのオン/オフと、オートズームのサイズを選択できる
左から順に、オートズームを「顔」「上半身」「全身」に設定した状態。画面に対する顔の大きさが維持されるように、被写体の動きに応じて自動的にズームが行われる

これまでの感覚では、露出やフォーカスはオートを利用しても、フレーミングに関しては撮影者自身が決めるもの、と考えるのが一般的だった。

だが、このフレーミングアシストのオートズームやサーチアシストでは、フレーミングまでカメラが決めてくれる。これを親切と感じるか、余計なお節介と感じるかは、人それぞれだろう。撮影を趣味にしている中級以上のユーザーにとっては不要な機能だが、できるだけカメラ任せで撮りたいと感じる初級ユーザーには役立つ機能かもしれない。

ズームメモリーやWi-Fi機能を新搭載

撮影モードは、天面のモードダイヤルを使って計13モードを選択できる。カメラまかせのオートモードやシーンモードだけでなく、絞りやシャッター速度のマニュアル露出モードを備えることは、PowerShot SXシリーズ共通の特長だ。

モードダイヤルの横には、好きな機能を割り当てられるショートカットボタンを備える

AFには、一般的なコントラスト検出方式を採用する。一眼レフの位相差AFのような快適さは望めないが、コントラストAFとしては比較的高速のクラスだ。AFロックなどを上手に使えば、動きのあるシーンをとらえることも不可能ではない。

手ブレ補正は、レンズの一部を平行移動させて光軸のズレを補正するレンズシフト式を採用する。CIPA準拠による補正効果は3.5段分。試用では、しっかりとカメラを構えて慎重にシャッターボタンを押した場合、ズームのテレ端で1/60秒でもブレない程度の強力な補正効果を確認できた。

連写はフル画素で最大約6.4コマ/秒に、動画はMP4形式のフルHD記録にそれぞれ対応する。そのほか、笑顔検出や寝顔検出、最短0cmまで近寄れるマクロモード、マルチアスペクト、マニュアルフォーカス、クリエイティブフィルターなどの機能を前モデルから引き続き備える。

新機能としては、1回のシャッターで5種類のエフェクト付き画像が撮影できるクリエイティブショットや、ピントが合った部分を色付きで表示するMFピーキング、電源オフ後もズーム位置やフォーカス位置を記憶するズームメモリーなどを搭載。Wi-Fiによるスマホやタブレットとの連携も可能になっている。

ポップアップ式のストロボを内蔵。ストロボの上げ下げはボタンではなく手動で行う
ホットシューには、EOSシリーズと共通の外部ストロボなどを装着できる
シャッターボタンの後ろには、絞りやシャッター速度などを切り換えるための電子ダイヤルを装備する
電源はリチウムイオン充電池。CIPA準拠の撮影可能枚数は、液晶モニター使用時で約340枚

まとめ

トータルとしては、超広角から超望遠までの撮影が気軽に楽しめるカメラとして、充実した内容だと感じられた。欲を言えば、タッチパネルやアイセンサーがあれば、操作はいっそう快適になったはずだ。この点は価格を抑えるために仕方ないのかもしれない。

あらゆる撮影がこなせるズーム倍率の高さと、効果の高い手ブレ補正、強力なマクロ性能については気に入った。スマートにまとまったデザインも悪くないと思う。次回は実写編をお届けしよう。

曲線的なシルエットラインが美しい端正なデザイン。天面には動画用のマイクを備える

永山昌克

広告スタジオを経て、1998年よりフリーランスのフォトグラファー。以後、主に雑誌やウェブ、広告の分野で活動。得意分野は都会のスナップ。写真展に「チャイニーズ・ウエスタン」(銀座ニコンサロン)、著書に「写真の構図&アングル練習帳」(ソーテック社刊)などがある。