気になるデジカメ長期リアルタイムレポート

PENTAX K-3【第6回】

「FLUCARD FOR PENTAX」でリモート撮影を試す

 例えば真俯瞰撮影のように、カメラのファインダーや背面液晶モニターを覗くことができないカメラアングルの場合、カメラにバリアングル液晶モニターがあれば撮影がとても楽になる。あるいはパソコンと接続してリモートライブビューが可能ならさらに使い勝手はいい。しかし、K-3の液晶モニターは固定式で、USBテザー撮影機能もない。その点をカバーするために、同社から「FLUCARD FOR PENTAX」(O-FC1)が用意された。

 FLUCARDはEye-Fiカードに追随する形で登場した無線LAN内蔵SDカード製品の1つだ。カードのOSとしてLinuxを採用し、OSをカスタマイズして機能を追加したり、Linuxプログラムを実行できることを特色とする。現在は第二世代のFLUCARD Proシリーズがリリースされている。

 PENTAXのサイトでは、O-FC1について、写真の閲覧や転送などのFLUCARD機能を付帯機能と位置づけ、主眼はスマートフォンやタブレットをコントローラーとした「ワイヤレスリモート撮影」だと説明されている。つまり、O-FC1は、FLUCARD Proをベースとして、ペンタックスのデジタル一眼レフをコントロールするカメラ・コンパニオンとしての機能を組込んだ製品と考えてよさそうだ。

リモート撮影の様子を動画に収めたのでご覧いただきたい。すでにWi-FiはO-FC1のネットワークに接続されており、そこから「http://pentax」に接続し、一連の撮影手順を再現した。

 リモートライブビューをオンにすると、K-3がライブビューモードになり、映像がiPhoneに送られてくる。フォーカスポイントはタッチパネルで移動可能、レリーズボタンをタップするとシャッターが切れ、撮影画像のサムネイルが表示される。

 ただし、ファイルが自動転送されるわけではなく、これはあくまでも表示用のサムネイルだ。表示の遅れはほとんど感じられず、操作性は悪くない。

 では、次にレリーズタイムラグについてみていただこう。

O-FC1に接続し、iPhoneのリモート画面上で時計の針が40秒/50秒/0秒をそれぞれ指したタイミングでレリーズした。
40秒のところでレリーズ。
50秒のところでレリーズ。
0秒のところでレリーズ。
上のデモ動画の中で撮影された結果はこの3点の写真のようになった。秒針の遅れにタイムラグが現れる。

 直接秒針を見るのではなくリモートの画面で秒針を見てレリーズしたので、ライブビュー画面がiPhoneに送られる遅れに加え、レリーズしてからカメラのシャッターが切れるまでの遅れという2つのタイムラグが加算された形で影響しているはずだ。

 結果を見ると、タイムラグは1秒弱といったところで、スチルライフ撮影では問題にならないレベルだと言える。

 ◇           ◇

 O-FC1を使うために必要な初期設定の手順は以下の通り。まずO-FC1をカメラのSD2スロットにセットする。そしてカメラの電源をオンにするとO-FC1が起動プロセスに入り、背面液晶の無線LANのアイコンが点滅し始める。起動が完了するとO-FC1から「ピーピーピーピー」と4〜5回ほどのビープ音が聞こえ、アイコンの点滅が消える。

O-FC1はSDカードインターフェースを通じてカメラコントロールを行なうため、スロット側がそのプロトコルに対応している必要がある。K-3の場合、必ずSD2スロットに挿入する。SD1スロットに挿しても機能しない。
O-FC1の起動中はアイコンが点滅する。完了すると点滅は止まり、「未接続」を示すグレーアウト状態になる。ビープ音はカメラのスピーカーではなくカードから鳴るので聞き取りづらい。アイコンで確認する方がいい。

 カメラの電源がON/OFFするたびにこの工程が繰り返される。およそ15秒ほどかかるが、この間も撮影は普通にできるので、O-FC1を使うことでカメラの速写性が損なわれる心配はない。

 起動が確認されたら、続いてスマートフォン側でネットワーク接続に関する設定を行なう。設定内容は一般の無線ルーターと変わりないので、同梱されているマニュアルに従えば迷う部分はないだろう。

クライアント(スマートフォン、タブレットあるいはパソコン)のWi-Fi設定パネルからO-FC1のネットワーク(デフォルトSSID:FLUCARD_for_PENTAX)を選択し、初期設定のWPA2パスワード(取扱説明書に記載された8桁の数字)を入力する。
すると、FLUCARDと端末がWi-Fiで接続されるので、ブラウザを起動し、「http://192.168.1.1」ないしは「http://PENTAX」を開く。
すると、FLUCARD内蔵のWebサーバに接続し、カメラコントロールが可能になる。
スマートフォンと接続が確立されると、カメラ背面液晶モニターのWi-Fiアイコンが点灯表示に変わる。
初回の接続が確立されるとSSIDとパスワードの変更を求められる。変更しておかないと周囲に別のO-FC1が現れた場合にそちらに接続してしまったり、逆に、第三者からカメラをコントロールされてしまう可能性があるので、かならず変更しておこう。
SSIDを任意の文字列に変更し、WPAパスワードも変えてやる。こうしておけば、第三者からの接続は防止される。

 余談ながら、これらの設定変更はパソコンのブラウザから行なうこともできるので、文字列の入力がやりやすいパソコンから行なうのがいいだろう。

ライブビューウィンドウの下に青いシンボルカラーで表示されているシャッター速度/絞り/露出補正/感度/レリーズのボタンが、操作できるパラメータを示す。その他、ライブビューのON/OFFとグリーンボタンの操作ができる。この画面はパソコンのブラウザから開いた様子。

 リモート撮影機能から行なえるカメラ操作は以下の通り。

  • カメラ側のモードに合わせたTv/Av/ISO/設定変更とグリーンボタン
  • LVオフで撮影(単なるラジオリモコン)
  • ボディ側LVモードで撮影
  • ブラウザ側LVモードで撮影
  • 画面タッチでフォーカスポイント変更(AFならフォーカスも)
  • タッチフォーカス

 つまり、カメラの前後ダイヤルとISO/露出補正およびグリーンボタンで行なう「ハイパーオペレーション」と、レリーズボタンの外部化(ボタン/ダイヤルの外部化)。および、ライブビュー機能(ライブビューそのものとタッチ操作によるAF)が可能ということだ。

iPhoneのスクリーンサイズだと正直なところ各ボタンが小さすぎて操作しにくい。日常使いはともかく、撮影機材として考えるなら7型以上のタブレットを用意したいところ。9.7型のiPadなら申し分ない。

 AFターゲット移動後のライブビュー表示更新の待ち時間は1秒強といったところで痛痒感はない。シャッタースピードや絞りなど撮影パラメータの操作に表示上のタイムラグを感じることはなく、スムーズに操作できる。

 有効距離は、マニュアルによると7.5mまでと決して長くはない。“遠隔操作”というよりはリモートスイッチのケーブルを無線LANに置き換えたというイメージに近い。

 電波が弱くなるとレスポンスに障害が出る可能性は考えられるが、私の仕事場に限って言えば、室内のどこからでもコントロール可能だった。

 ◇           ◇

 撮影した写真の取り込みはブラウザから行なうこともできるが、専用のクライアントを使う方が速い場合がある。FLUCARDに対応するクライアントソフトは、PENTAXではなく、O-FC1のベースであるFLUCARD proの公式サイトで配布されている。

 Mac/Windowsを始め、iOS、Androidなどの各プラットフォーム向けにそれぞれ用意されている。FacebookなどのSNSに投稿するアプリもある。しかし、O-FC1はかなりカスタマイズされているので、動かないアプリも多いようだ。特にWindowsとAndroid版は厳しいらしい。

 iOSでは「FLUCARD Shoot&View Pro」と「FLUCARD Download」を試したが、いずれも撮影画像の順次自動転送に対応しておらず、操作する必要があるので、Eye-Fiのように自動的にバックアップをとるというような使い方はできないようだ。

FLUCARD Shoot&View Proの画面。表示が乱れているが、機能としては動作しているように見える。しかし、写真をブラウズしてダウンロードするだけなら、ブラウザからO-FC1のサービスを使う標準のやり方で代替できるので、あえてこのアプリを使う必要もないだろう。
FLUCARD Downloadの画面。1画面に表示される写真を一括でダウンロードできるので、1枚ずつダウンロードしなくてはならないブラウザインターフェイスよりバックアップ用途には能率がいい。こちらは一見したところ、問題なく動作しているようだ。

 O-FC1はスマートフォンやタブレットからの操作を主眼として開発されているが、ブラウザからコントロールするシステムなので、パソコンからもカメラを操作できる。撮影された画像を自動転送するFLUCARD ProアプリケーションとWebブラウザ、画像処理ソフトを組み合わせれば、パソコンから無線テザード撮影を行なうことが可能だ。リモート撮影機能の真価が発揮されるのはむしろこのスタイルだと言ってもよいかもしれない。

私のテスト環境では、RAWコンバーターにCapture Oneを使い、撮影ファイルの自動取り込みにはMac版の「FLUCARD Instant Wi-Fi」を使う。

 ブラウザでカメラと接続し、FLUCARD Instant Wi-Fiで取込み先のフォルダを指定し、そのフォルダをCapture Oneで開き、ホットフォルダを有効にしてやる。そうすると、ブラウザで開いたリモート撮影コンソールからシャッターを切ると、撮影した写真が10秒前後でCapture Oneに表示される。

 O-FC1はIEEE 802.11b/g/nテクノロジーに採用し、規格上最大54Mbpsと、USB 3.0には及ばないがまずまず実用的な転送速度が出ている。Mac版のFLUCARD Instant Wi-FiはJPEGファイルしか転送できないが、接続は安定しており、1度接続を確立すれば後はほぼ自動的に転送される。標準のブラウザインターフェイスでダウンロードするよりはずっとスムーズだ。

 FLUCARDには複数のクライアントから同時に接続できるので、若干の制限はあるがパソコンとタブレットで同じビューを見ることができる。つまり、手元のiPadでカメラアングルと構図をチェックしながらセッティングを行ない、撮影のコントロールやファイルの転送はパソコンのWebブラウザとFLUCARDアプリを通じて行なうということができる。

アシスタント無しでブツ撮りをするカメラマン(私だ)にとって、タブレットに表示されるレンズ位置からのビューを参考にブツを配置できるようになるメリットは計り知れない。

 ◇           ◇

 さて、O-FC1はどういうシーンで役に立つのだろう?

 O-FC1を使うことでスチルライフ撮影におけるK-3の使い勝手は飛躍的に向上する。いくつか改良して欲しい不完全な実装があるものの、リモートライブビューの便利さはそれを補ってあまりある。

 趣味の世界でも、例えば小物やアクセサリーの撮影をしている方や、蒐集したフィギュアの撮影などに威力を発揮するだろう。

 FLUCARDアプリを組み合わせて使用目的にあわせた環境を構成できることも、1つの利点であることに違いないが、できることなら、必要な機能を全てサポートするパソコンソフトをペンタックス純正で用意するか、あるいはK-3に付属の「Digital Camera Utility」に組込んで欲しいところだ。

 スマートフォンとの連携は現状のブラウザインターフェイスでも不自由はないが、これも専用のアプリからAPIを利用できるようになれば、よりスムーズに動くようになるはずだ。

 私自身にとってはO-FC1は現状でも大いに“アリ”な機材であり、今後の開発・熟成に大いに期待するとともに、PENTAX 645D系をはじめとするプロ用機がこれに対応してくることを望んでいる。

大高隆

1964年東京生まれ。美大をでた後、メディアアート/サブカル系から、果ては堅い背広のおじさんまで広くカバーする職業写真屋となる。最近は、1000年存続した村の力の源を研究する「千年村」運動に随行写真家として加わり、動画などもこなす。日本生活学会、日本荒れ地学会正会員

http://dannnao.net/