ニコンD700【第13回】

重いカメラをさらに重くしてしまったのだ

Reported by 北村智史


MB-D10を装着したD700にシグマのAPO Macro 150mm F2.8 EX DG HSMを付けたところ。見慣れているはずのD700が別のカメラみたいに感じる

 ついにというか、ようやくというか、マルチパワーバッテリーパックMB-D10を買ってしまいましたの報告である。ご存じの方のほうが多い気もするが、MB-D10はD700用のいわゆる縦位置グリップで、本体と同じEN-EL3eのほか、D3シリーズにも使われているEN-EL4aや単3形電池も利用できる。EN-EL3e以外の電池を使った場合は、最高8コマ/秒の高速連写が可能になる。

 が、もとが重いカメラなのに、それをさらに重くしてどうする、というのもあって、長らく悩みつづけてきたアイテムでもある。

 なにしろ、D700のボディだけでも995g。レンズを付けたらさらにずっしりの肩凝り保証付きである。持ち上げるたびに、よっこいしょ、が漏れなく付いてくるカメラなのに、さらにウエイトを上積みするのは勇気がいる。本音をいえば、思い切りご遠慮申し上げたい。

 でもまあ、筆者の構え方だと縦位置グリップはあったほうがいいのは間違いないし、重さ以上のメリットがあるはずだ。たぶん。腕力負けしなければ、ですけどね。とはいえ、オリンパスE-620用のHLD-5も買ったし、キヤノンEOS Kiss X4用のBG-E8は最初から付けている。なので、D700にもMB-D10を付けてあげたいなぁ、と思ってしまった次第である。

 さて、買うのは決めたが、どこで買おうかな、というのも問題。HLD-5は2万1,000円だし、BG-E8なんかは1万6,800円のお手ごろ価格。なのに対してMB-D10は4万2,000円(いずれも消費税込みのメーカー希望小売価格である)。ちとお高いんである。大手量販店だとあんまり値引きもよくなくて、店頭価格が3万7,800円のポイント10%還元で、実質3万4,020円といったところ。筆者が知っている最安値は、目黒区にある駅から遠いので有名な新品もあつかってる中古屋さんで、こちらは現金オンリーだが2万8,140円。へたな中古よりよっぽど安い。

 それでもやっぱり、ひょいひょいっとは出てこないのが貧乏性モードな昨今ゆえ。少しは足しになるかと持参した下取り物件が思ったより査定がよくて、ほくほく気分で帰りに池袋で単3形エネループを8本ゲット。こっちはたまっていたポイントを使ったので、トータルの出費は6,000円ちょっと。かなりむふふな感じでありました。

 で、付けてみた。予想どおりではあるのだけれど、でかいです。単体でも存在感があるカメラなのに、MB-D10を付けるとぐぐっと偉そう度がアップする。もうまったく違うカメラになってしまっている。これもやっぱり予想どおりなのだけれど、やっぱり重い。

今回買ったのはMB-D10と単3形エネループ×8本。下取り+ポイントを活用したので、トータルの出費はなんと6,000円ちょっとボディにEN-EL3e、MB-D10にエネループを入れた最重量バージョンでの情報表示画面。濃く表示されているのが使用中のバッテリー

 ちなみに、使用説明書に書かれているMB-D10の重さはMS-D10EN(EN-EL3e用のホルダー)込みで290g。ニコンから公式にアナウンスされている数字はこれだけで、単3形ホルダーの重さは不明である。我が家のアナログ式キッチンスケール(ようは秤である)はけっこうアバウトなヤツなので、もうちょっと信頼感は持てなかったりするのだが、ほかの選択肢がないので、以下は我が家での実測値を使う。

 MB-D10の本体が240g、EN-EL3e用ホルダーが45g(合わせて285gだから公称値よりも5g軽い)、単3形ホルダーが35g、単3形エネループが8本で205g(これも公称値は1本当たり27gなので、8本で11g違う)、D700ボディとEN-EL3eはほぼ公称値どおりで、それぞれ995gと80g。

 最軽量バージョンはEN-EL3e×1本仕様。これでだいたい1,360g。8コマ/秒連写が可能なエネループ×8本仕様にすると1,475g。ボディにEN-EL3e、MB-D10にエネループ×8本の最重量バージョンは実に1,555gになる。ボディ単体+EN-EL3eだと1,075gなので、今までよりも480gも重くなる計算だ。

 ちなみについでに書くと、480gっていうと、E-620やEOS Kiss X4のボディ分(電池とか別で475gである)とほぼ同じ。つまり、エントリークラスのボディ×2台分の重さがあるD700に、さらにもう1台分をくっつけたくらい。ぶっちゃけ3台分。もっとも、若いころに使っていたモータードライブ付きのニコンF2A(MD-1とMB-1のセットで1,525g。これに単3形電池×10本だった)よりはずっとマシ。文句をいってはバチが当たりそうだが、やっぱり重いものは重い。

 重さもすごくなったけれど、ホールド感がまったく違うのにも驚いた。手に持った感じが同じカメラじゃない。D700のボディ単体で横位置で構えると、グリップの下の部分が手のひらの下の部分に食い込むように当たるのだが、MB-D10を付けるとその部分が平らになる分、広い面で重さを受け止める感じになる。おかげでグリップを握る指の負担は大きくなっていない気がする。

 さらに、左手の手のひらで下からMB-D10を支えるように持てるので、今までよりも右手の負担は軽減されているように思う(その分だけ左手の負担が増えてるわけですけど)。右手の指が自由に動かせるので、ダイヤルやボタン操作はずっと快適にやれる。このあたりは予想どおり。

 もうひとつ。縦位置で構えたときの当てプラ(正式には「三角環当てプラスチック」だそうな)が苦痛でなくなったのも発見だった。D700のストラップ取り付け金具は三角環を使うタイプだが、それにかぶせる当てプラのエッジが、縦位置で構えたときにちょうど手のひらに食い込むのが嫌だった。ところが、MB-D10を付けたら重心が下がってストラップ取り付け金具の位置が手のひらから離れてくれて、おかげで当てプラが食い込まなくなった。予想外のちょっとしたボーナスみたいなものだが、本当にうれしかった点だ。

 それとやっぱり8コマ/秒の速さと音は格別。まあ、実際にはほとんど使わないだろうけれど、高速連写というのは音を聞いているだけで顔がにやけてしまうスペックだと思う。いる、いらないで割り切ってしまえば、筆者にはEN-EL3e×1本の最軽量バージョンがベストだが、8コマ/秒連写ができるカメラを持ってるんだもんね的わくわく感を持ち歩けるエネループ×8本バージョンが基本になりそうな感じである。

残念なのが、エネループだと電池の減り具合がおおざっぱにしかわからないこと。純正バッテリーの表示が便利なだけに、あらまぁって感じだ。

 今回は、筆者自身が重さに負けずにいられるかどうかをたしかめたいこともあって、とりあえず手持ちのレンズの中でいちばん重いシグマのAPO Macro 150mm F2.8 EX DG HSMだけ付けてぶらぶらしてみることにした。

 このレンズは公称で895g。三脚座抜きのレンズ本体のみで実測765gだから、合計2240g。正直なところ、腕力よりも握力が落ちていることのほうが気になったけれど、まあなんとかしのいでいけるかなぁ、という感じ。今までよりもさらに肩凝り三昧なフルサイズライフである。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、別ウィンドウで800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
喫茶店だかのアートな看板。背景がいまいちすっきりしてないのがもうちょっとなところ
D700 / APO Macro 150mm F2.8 EX DG HSM / 4,256×2,832 / 1/320秒 / F3 / 0EV / ISO200 / WB:晴天
お土産屋さんの店先に飾ってあったガラス(たぶん)のランプ。手ブレが心配だったので感度を1段アップして撮った
D700 / APO Macro 150mm F2.8 EX DG HSM / 4,256×2,832 / 1/200秒 / F4 / 0EV / ISO400 / WB:晴天
文字の裏の部分に段差を埋めるための板材が入っている。細かいところまできちっと手を抜いていないのに感心した
D700 / APO Macro 150mm F2.8 EX DG HSM / 4,256×2,832 / 1/500秒 / F5.6 / 0EV / ISO200 / WB:晴天
軽食の屋台になっているフォルクスワーゲンは、ナンバープレートが日本のと違う。窓の中はカプチーノの看板だし
D700 / APO Macro 150mm F2.8 EX DG HSM / 4,256×2,832 / 1/640秒 / F5 / 0EV / ISO200 / WB:晴天
これも喫茶店の看板。あんまりおカネかかってる感じはしないけど、安っぽく見えないのがいい
D700 / APO Macro 150mm F2.8 EX DG HSM / 4,256×2,832 / 1/250秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO200 / WB:晴天
久しぶりに感度自動制御をオン。低速限界設定は1/160秒。重さにはめげそうになりながらも、手ブレの心配はほぼ解消である
D700 / APO Macro 150mm F2.8 EX DG HSM / 4,256×2,832 / 1/160秒 / F4 / 0EV / ISO320 / WB:晴天
飼われネコも悪くはないが、筆者的には野性的な顔つきをしたノラのほうが好み。病気を持ってたりするのが多いのはかわいそうだけど
D700 / APO Macro 150mm F2.8 EX DG HSM / 4,256×2,832 / 1/160秒 / F4 / -0.3EV / ISO640 / WB:晴天
けっこうゴミが付いてることも多い。おでこに枯れ葉のかけららしいのや耳にクモの糸がくっついたりとか
D700 / APO Macro 150mm F2.8 EX DG HSM / 4,256×2,832 / 1/160秒 / F4 / 0.3EV / ISO250 / WB:晴天
ここのネコたちはかなり人慣れしているけれど、それでもやはり警戒心は強い。目はよそを向いていても、耳はこっちをとらえている
D700 / APO Macro 150mm F2.8 EX DG HSM / 4,256×2,832 / 1/160秒 / F5.6 / 0EV / ISO450 / WB:晴天
遠距離では絞っても周辺光量落ちが出る。気になる場合はヴィネットコントロール機能を使えばいいし、後処理でも補正はできる
D700 / APO Macro 150mm F2.8 EX DG HSM / 4,256×2,832 / 1/800秒 / F8 / -0.3EV / ISO200 / WB:晴天


北村智史
北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら

2010/8/11 00:00