交換レンズレビュー
ライカブランドを冠した、待望の大口径プレミアム・ワイド
LEICA DG SUMMILUX 12mm / F1.4 ASPH.
2016年8月1日 07:00
パナソニックの交換レンズは、ワイド側に12mmを含む焦点距離のレンズには4種類のLUMIX Gワイドズームがあるものの、LEICAの名を冠したLEICA DGシリーズにはこれまでワイド側はLEICA DG SUMMILUX 15mm / F1.7 ASPH.の35mm判換算で30mm相当までしかなかった。
今回のLEICA DG SUMMILUX 12mm / F1.4 ASPH.は35mm判換算で24mm相当となるので、本レンズの登場でやっとワイドらしい焦点距離の単焦点広角レンズがラインナップに加わったことになる。
いくつかある特徴のひとつとして、やはり大口径の開放絞り値F1.4であるということが一番に挙げられる。非球面レンズの採用によって開放値から画面周辺部でもサジタルフレアの発生を抑え歪みや滲みが少ない画質性能を持つ。
また、絞りリング搭載で視認しながら直感的に絞り値を操作ができるうえに防塵・防滴仕様。そして9枚羽根の円形虹彩絞りの採用によりなめらかで美しいボケ味の描写などがある。
発売日 | 2016年7月15日 |
実勢価格 | 税込15万5,360円前後 |
マウント | マイクロフォーサーズ |
最短撮影距離 | 0.2m |
フィルター径 | 62mm |
外形寸法 | 70×70mm |
重量 | 約335g |
デザインと操作性
最初に箱から取り出して手に取った瞬間、335gという重みが手のひらにズシリと伝わってきた。マイクロフォーサーズレンズという概念からすると、想像していたよりもちょっと重いな、と感じたのが正直なところだ。
ボクの考え方のひとつとして“優れたプロダクトは必ずと言って良いほど程、デザインも秀でている”という理念が染みついている。
それはつまり、カメラやレンズなど手にする道具の機能美は人間工学デザインという発想からきているのだが、まさにこのレンズには箱から取り出した瞬間にそれを感じた。まったくもってオーソドックスなデザインは、いかにもライカの思想に通じるシンプルさが現れている。
絞りリングを備えているのも特徴。直感的なアナログ操作も楽しめる。
LEICA DGレンズシリーズ同様にしっかりとした金属製マウントを採用。頻繁なレンズ交換にも安心な構造だ。
作例撮影にはLUMIX GX7 Mark IIを使用。ボディの重量が約426g(バッテリーとメモリーカード込み)でレンズ本体が335gなので合わせるとズシリとくる。
付属の専用フードは金属製の丸形フードでしっかりした造りだ。着脱はバヨネット方式を採用。
作品
70~80cmの距離にある草の穂先にフォーカスを合わせて開放F1.4で撮影。約20m後方の運河沿いに建つ倉庫は完全にボケている。明るい開放値の醍醐味だ。
同じくF1.4で無限遠に合焦させて撮影。水面は手前に近づくにつれてボケてくるのが確認できる。開放では若干の周辺光量落ちが確認できるが、F5.6くらいで改善する。
小樽の坂道に建つ市場組合ビルを正面から撮影。画像を視認で確認する限り、歪みなどの収差は極めて少ない方だ。
これまで何度も見てきた絵葉書的構図に自分もチャレンジしてみた。倉庫に合焦させて絞りF11でパンフォーカス撮影。ヌケも良く立体的な遠近感の描写も良好。
余市にある有名なウイスキー工場の建物を撮影。ほとんど歪みを感じることなく広角で表現できるので、今後はマイクロフォーサーズでの建築写真も楽しみだ。
開放絞りF1.4で最短距離の20㎝に寄って撮影。キューピー人形の身長は約4㎝。MF時のピントリング操作はやや重めだがスムースな動きが気持ちよい。
上の写真と同じカメラ位置からの撮影。フォーカスは背景の海や空に合わせて無限遠に合焦。
画面中央のランプの留め金具にピントを合わせてF1.4で撮影。9枚羽根の円形虹彩絞りによって柱や駅舎の天井のボケ味はやわらかく自然な描写。
画面右の雲間に太陽がある位置からの撮影だが、フレアやゴーストもほとんど感じられない。逆光耐性もかなり良いレンズである証明だ。
暗い室内でも開放F値がF1.4と大口径なので感度ISO200のまま1/160秒と速いシャッターを切れるので三脚が使えない場所での手持ち撮影も余裕で行える。
海と鉄道に挟まれた路地に建つ、錆で赤茶けた漁師小屋。画面周辺部まで減光もなく、高解像の描写で暗部の再現も良い。ディストーションもほぼ感じられない
午後の斜光線が射し込む薄暗い工場の壁面。強いコントラスト比の撮影条件だが、明暗部ともによく再現されていて、中間トーンのマテリアルも克明に描写されている。
絞り開放F1.4、1/15秒の手持ち撮影。EV値10段以上も明るい逆光のため、ある程度のフレアの発生は想定内。極めて優れた逆光耐性といえる。
コントラストが強い条件をパンフォーカスで撮影。影の部分にある砂利石から強い光線が当たっている白い壁面までディティールが克明に再現されている。
青い空と白い雲の晴天だが、内陸から海へと吹き付ける風の強い日だった。絞りF8で撮影。周辺減光はほとんど見当たらなく、ヌケも良い描写である。
絞り開放でも中心部はじゅうぶんシャープだが、F8くらいまで絞ると周辺部も流れもなくグッと解像度を増してくる。安全運転でお願いします。
海と空の色が混ざりはじめた時、一日の終わりを知らせるかのように一羽のウミネコが目の前を静かに横切っていった。
まとめ
冒頭にも書いたが、マイクロフォーサーズ用の単焦点レンズとしては約335gというのは決して軽くはない重量だ。むしろかなり重いともいえるだろう。
しかし高性能な描写力、逆光耐性、広角レンズでありながら、少ない歪みとやわらかなボケ味、スムーズな動きをもたらす造りの良さ、高級感あふれる質感、開放値F1.4という大口径レンズであるということを考えると納得もできる。
例えば同じく大口径の中望遠レンズ、LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.と組み合わせてスナップの他、ポートレートでの使用など撮影バリエーションも広がる。
今後マイクロフォーサーズ用レンズのラインナップにも、このようなプレミアムなレンズの登場が続くことを期待したい。