交換レンズ実写ギャラリー
NOKTON 10.5mm F0.95
大きなボケと緻密な描写が両立
Reported by澤村徹(2015/6/11 07:00)
コシナのフォクトレンダー ノクトンシリーズは、F0.95にこだわったマイクロフォーサーズ用MF単焦点レンズだ。そのノクトンに、4種5本目となる「NOKTON 10.5mm F0.95」が加わった。
マイクロフォーサーズ機に装着すると、35mm判換算21mm相当となる超広角レンズだ。画角的に目新しさはないものの、F0.95という驚異的に明るい広角レンズは、唯一無二の存在感を放っている。早速、その特徴を見ていこう。
高級感のある作り
NOKTON 10.5mm F0.95は10群13枚で、うち2枚は非球面レンズを採用している。非球面レンズを2枚用いたのは、ノクトンシリーズでは初となる。やはり広角でF0.95という明るさを実現するのは、設計面でそれ相応の困難が伴うのだろう。
鏡胴の作りはフォクトレンダーならではの高級感があり、ピントリングの滑らかな動きも心地良い。絞りリングはクリックの有無が選択可能だ。絞りリング直下のリングが切り替えスイッチを兼ねており、このリングを押し上げて回すと、クリック有りとクリック無しが切り替わる。
カブセ式の花型レンズフードが付属しており、フィルターを装着した上からフードを取り付けられる。今回、ケンコーのプロND4ワイドを装着した上でフードを取り付けてみたが、ケラレることなく撮影できた。
ノクトンシリーズの絵作りを踏襲
メーカーによると、本レンズはノクトンシリーズ共通の描写傾向を重視したという。一般に、広角レンズは硬い描写のものが多い。一方、既存のノクトンシリーズはボケ味の美しさや繊細さを意識した絵作りだ。
実写してみると、開放から十分なシャープさを保ちつつ、優しさを備えている。広角レンズとしては線が細く、コントラストも落ち着きがある。前後のボケはなだらかで、大口径ノクトンシリーズの一翼であることを実感できるだろう。焦点距離の異なるノクトンと一緒に使っても、共通の世界観で作品を揃えられそうだ。
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寄れるからボケが作れる
本レンズの最短撮影距離は17cmだ。広角レンズは寄れるものが多いとは言え、17cmはレンズフード先端に被写体が触れんばかりの近距離である。機動力に長ける反面、開放の近接撮影では周辺像は流れがちだ。
開放近接で被写体を周辺部に配置し、結像させるのは難しい。F4あたりまで絞ってようやく結像するエリアが広がってくる。かなりクセのある描写傾向だが、メーカーによると、画質よりも寄れることを優先して設計したと言う。
その理由を斟酌してみると、そもそも広角レンズは被写界深度が深く、大きなボケを稼ぐには近接撮影が欠かせない。大口径ノクトンシリーズにとって、大きなボケはいわば生命線だ。画質よりも最短17cmを優先したのは、NOKTON 10.5mm F0.95がノクトンたり得るための必然と言えるだろう。
逆光性能も上々
広角レンズは当然ながら画角が広く、屋外撮影では好むと好まざると、太陽が写り込む場面が少なくない。それだけに描写面では逆光耐性が大きなポイントとなる。
光源を入れ込んで開放で撮影したところ、ハイライトにパープルフリンジが発生するものの、フレアとゴーストは最小限に抑えられていた。光源を隠した逆光条件でも描写は上々だ。逆光シーンも気後れせずにチャレンジできるだろう。
作品
F5.6まで絞って無限遠撮影した。広角レンズのF5.6であることを思うと、多少柔らかい描写だろうか。
F4まで絞れば切れ味良く、歪曲もほぼ感じさせない。隅々までしっかりと解像している。
開放で奥の電車にピントを合わせる。こうした中間距離でボケを活かせるのがノクトンの強みだ。
周辺光量落ちが若干発生する。落ち込みはさほど目立たず、F2.8あたりでほぼ解消する。
ほぼ最短撮影距離での撮影だ。F4あたりまで絞り込むと、近接でもしっかりと結像する。
薄暗いシーンでも、NOKTON 10.5mm F0.95ならISO感度を上げずに撮影できる。
まとめ
17.5mm、25mm、42.5mm、そして10.5mm。焦点距離の異なるレンズをすべてF0.95で揃え、さらに画質面でも共通のテイストを実現するのは、並大抵のことではない。
マイクロフォーサーズ機で大きなボケを実現し、なおかつ周辺まで緻密なシャープネスを見せるノクトンシリーズ。広角から中望遠までF0.95がラインアップされたことで、作品づくりの新たな可能性が見えてくるだろう。