リコーGXRの「A12」ユニットを実用カスタマイズ――ファインダー編
Reported by糸崎公朗
■“写真とは何か”を知るために“写真”を撮る
ぼくは写真を継ぎ接ぎした「ツギラマ」や、写真を立体構成した「フォトモ」など、“普通じゃない写真”を発表し続けてきた。そのほかに昆虫写真や路上観察写真なども撮っているが、それらは“記録写真”であって、普通に写真家やフォトグラファーなどといわれる人が撮る写真とは性質が異なるかもしれない。
現在“スナップ用カメラ”として使用している、ぼくのリコー「GXR」+「A12ユニット」。外付けEVF「VF2」をさらに見やすくするため、倍率アップの改造を施している。ほかにリコー独自の「マイセッティング」を、自分の撮影スタイルに合わせカスタマイズしている |
ぼくはカメラという道具を使いながら、普通の写真のあり方に反抗した、いわば“反写真”を追求してきたのだ。しかし最近になってふと、自分が“写真とは何か”をよく考えないまま、闇雲に写真を否定していたことに気がついた。
ぼくは改めて写真とは何かを知りたいと思い、それには自分で写真を撮ってみるのが一番だと考えた。しかし写真といってもさまざまな分野がある。そこでとりあえずスナップ写真にテーマを絞り、あらためて“普通の写真”を撮ってみることにしたのだ。
■“普通の高性能”が凝縮したGXR+A12カメラユニット
では、スナップ写真を撮るにはどんなカメラが良いか? と思って手持ちの機種を見渡したところ、リコー「GXR」+「GR LENS A12 50mm F2.5 Macro」(A12カメラユニット)が目に付いた。このカメラユニットが装備するレンズは、単焦点で50mm相当(実焦点距離33mm)であり、まさに昔からの“標準レンズ”である。また12メガピクセルのAPS-Cという撮像素子サイズも、今時の写真家が使うカメラとしては定番だろう。
また、GXR+A12カメラユニットは、一般的なAPS-Cサイズデジタル一眼レフカメラに比べ格段にコンパクトである。レンズ描写は「GR LENDS」ブランドに恥じない素晴らしさだ。さらに外付けEVFである「VF-2」を装着すると、伝統的なカメラの構え方で撮影ができる。これらのユニットの組み合わせは、まさに“普通の高性能”が凝縮した、スナップ写真に最適のカメラになるのだ。
と言うことで使い始めたGXR+A12カメラユニットだが、撮る道具としての使い勝手はなかなか良い。しかし、やはりメーカーのお仕着せのまま使っていると、どうしてもちょっとした不満が出てしまう。そういうちょっとした部分を改良することで、道具は自分のものとしてより愛着が出る。そこで今回は、「VF-2」の実用的カスタマイズを紹介しよう。
―注意―
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■ファインダーの改造でより実用的な“スナップ用カメラ”に仕上げる
GXR用の外付けEVF(電子ビューファインダー)「VF-2」の接眼部。EVFとしては高性能だが、ゴム製のアイカップが小さめで、眼鏡使用者のぼくには迷光が入りやすく、そこだけがちょっと使いにくい | そこで、アイカップを手持ちのフォーサーズ用と交換しようと思ったのだが、どうせならファインダー倍率の増加も兼ねて、パナソニック製マグニファイアーアイカップ(左、こちらの記事で紹介済)を使用することにした |
VF-2のアイピースゴムは接着されているので、慎重に剥がす | マグニファイアーアイカップアイカップは、このように分解できる。本来はここまで分解する必要はないのだが…… |
アイカップのレンズのコバ(外周切削面)が白いままなので、プラカラーのつや消し黒で塗ってみた。コバが白いと乱反射して、ファインダーが見づらくなることがあるためだ。レンズを固定する治具は、ABS板の切れ端に両面テープを貼ったもの | 無改造のアイカップ(左)と、コバを塗ったレンズを組み込んだアイカップ(右)。さらに改造アイカップは、カメラと接する部分の突起物を、紙ヤスリなどで削り取っている |
0.7mm塩ビ板をカットして、オリジナルパーツ(手前)を制作。内側の穴は、VF-2のアイカップ取り付け部(直径21mm)に合わせている。外形はマグニファイアーアイカップアイカップに合わせている。下部に切れ目を1カ所入れている | VF-2と、マグニファイアーアイカップのそれぞれご覧の位置に、両面テープを貼り付ける。接着剤の方がしっかり固定できるが、念のため“可逆改造”とするためだ |
塩ビ板のオリジナルパーツを、VF-2のアイカップ取り付け部に、はめ込むように取り付ける | さらに、塩ビパーツにマグニファイアーアイカップを取り付ける |
マグニファイアーアイカップの下部には、ご覧のような隙間ができてしまうため…… | 製本テープをカットして貼り付けた(製本テープは丈夫で柔軟性が高く、接着力も強いので重宝する)。これで今回の工作は完了 |
改造したVF-2をGXR本体に装着したところ。大きめのアイカップゴムのおかげで迷光が入りにくくなり、ファインダー倍率も1.2倍拡大された。もともと高性能のVF-2だが、さらに見やすいファインダーになり非常に満足だ | 改造VF-2を取り付けたGXRを前から見たところ。“チョンマゲ”と揶揄されることもある外付けEVFだが、よけいチョンマゲっぽくなった感がある。まぁ、これも無骨な格好良さと思えばいいだろう |
■スナップ用カメラとしてのマイセッティング
デジタルカメラはフィルムカメラに比べて各種設定項目が多く、ともすればメーカー独自の操作方法になじめなくて、イライラすることがある。その点、最近のリコー製デジタルカメラは、操作ボタンの割り当てなどを自由にカスタムできるようになっている。それが「マイセッティング」機能なのだが、いわばカメラのインターフェイスを撮影の用途に合わせ、ユーザーが自分で設計できるようになっているのだ。
前回の記事で、リコーCX3の「マイセッティング」機能についてちょっと解説したが、GXRではさらに多機能となっている。モードダイヤルに3種類のマイセッティングを登録できるほか、メニュー画面の「マイセッティングBOX」に6種類ものマイセッティングを登録できるのだ。文字で説明すると複雑に思えるかも知れないが、操作方法が合理的に整理されているので、設定そのものは簡単だ。
ぼくはGXR+A12を“スナップ用カメラ”として使いながらマイセッティングの内容をあれこれ変更してゆき、徐々に改良を重ねてきた。例えば、当初はAFで撮影していたが、現在はデフォルトをMF(∞より少し手前)にして「Fn1」ボタンでAFに切り替えられるよう設定している。このように、切り貼りせずとも“自分だけのGXR”にカスタムできるところが、このカメラの魅力の1つなのだ。
■実験作品「反-反写真」
ぼくがツギラマやフォトモなど独自の“反写真”を追求してきたのは、実のところ普通の写真を撮るのがヘタクソだったからだ。つまりぼくは真っ当に写真を勉強することを放棄して、写真に背く道を選んでしまったのだ。
しかし“背く”とは、結局それを理解しようとしない態度であり、理解しないまま反発しているに過ぎない。これに気づいたぼくは、自分のこれまでの実績をリセットした気持ちで、改めて写真に取り組むことにしたのだ。
実はぼくの友人に、自らの“写真とは何か”を実に明快な言葉で語ってくれる写真家がいる。彼は自分が何となくやってきたことをできるだけ言葉に置き換えようとし、さらにそれをフィードバックしながら“写真”を撮影している。
そこでぼくは、彼の言葉を自分へのアドバイスとして勝手に受け取り、理解できる範囲で実践することにした。早い話が人まねなのだが、「学ぶは真似ぶ」と昔から言われていることに従ってみたのだ。。
その結果、自分でも「イケてるんじゃないか?」と思えるような写真がだんだん撮れるようになってきた。実のところ、自分ではどれだけ撮れるかまったく期待していなかっただけに、ちょっと意外である(単なる自画自賛かも知れないが)。
このシリーズはこれまでの自分の“反写真”に反するという意味で「反-反写真」と名付けてみた。今回は作例というより、実験作品「反ー反写真」のミニ個展だと思って作品を掲載しよう。もちろん、GXR+A12ユニットの素晴らしい描写も見ていただければと思う。
※作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、別ウィンドウに800×600ピクセル前後で表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
■告知
糸崎公朗氏と相馬泰氏をパネラーに、企画展『ながめる・まなざす』のフリートークを開催します。
- 名称:ギャラリー企画展「ながめる まなざす」
- 開催日:7月11日(日)
- 時間:16時から
- 会場:アップ フィールドギャラリー
- 住所:東京都千代田区三崎町3-10-5 島原第3ビル(JR水道橋駅から徒歩5分)
- テーマ:「風景」に関わる写真について
- パネラー:相馬泰氏×糸崎公朗氏
- 参加費:無料
2010/7/5 00:00