ケンコー「PRO ND10000」

日食撮影にあわせて発売されたNDフィルター

限定発売のPRO ND10000。価格は100mm角が2万8,350円、76mm角が1万8,375円

 7月22日はご存知の通り、日本で46年ぶりの皆既日食が起こる日だ。といっても皆既日食が見られるエリアは、奄美大島北部、トカラ列島、屋久島、種子島南部などの島嶼と海域だけとあって、皆既日食を体験できるのは限られた人数になりそう。当日は数多くの天文ファンが種子島などをを訪れると見られるが、ほとんどの国民は部分日食を体験することになる。

 皆既日食、部分日食のどちらにしても、せっかくの大イベントを逃す手はないだろう。ここはひとつ、デジタルカメラで撮影して記念に残したいところだ。

 部分日食を撮るには、太陽の明るさを減光するためNDフィルターが必須となる。ただし真昼の太陽に対しては、一般的なND4やND8では力不足。そこで使われるのがND400だが、これが市中でなかなか見つからない。そもそも部分日食の食分によっては、ND400といえども2枚重ねで使用するほど太陽は明るい。さらなる露出倍数のNDフィルターがあってもよいだろう。

 そんなタイミングで限定発売されたケンコーのPRO ND10000は、露出倍数1万倍という強力な減光効果を持つNDフィルターだ。一般的な角型フィルターと同様、100mm角と76mm角が用意されている。価格は100mm角が2万8,350円、76mm角が1万8,375円。

 実物は「真っ黒なガラス板」といった印象で、ND4やND8とは漆黒度がはっきりと異なる。風景にかざしても何も見えない。ただ太陽が見えるだけだ。室内で蛍光灯を透かしてみたところ、目を凝らしてようやくわずかに光の形が判別できる程度。1枚でこの減光率は、まさに太陽撮影にうってつけのNDフィルターといえそうだ。

左からPRO ND10000、マルチホルダー用のアダプターリング、マルチホルダー100トキナーAT-X 840 Dに装着した状態。D90なので望遠端は600mm相当になる

 今回はフィルター径72mmのトキナー「AT-X 840 D」(80-400mm F4.5-5.6)に取り付けるため、マルチホルダー100にマルチホルダー用のアダプターリングを装着した。マルチホルダー100は、2mm厚のフィルター用ミゾが2つ、ゼラチンフィルター用ミゾが1つついており、PRO ND10000は2mm厚用のミゾに装着する。

 執筆時に編集部近辺で日食を撮ることはできないので、テストとして日中の太陽を撮影してみた。D90、AT-X 840 D、PRO ND10000の組み合わせ。ベース感度のISO200で挑戦したところ、直接目で見るのは危険なほど明るい太陽が、F8・1/1,250秒で撮影できた。さすがND10000といえる。ケンコーは「高精度蒸着製法で高いニュートラル性を実現した」としており、実際、太陽が写った箇所にはムラがなく、素人の私でも、そこそこきれいに撮れたのは感激だった。

 もっとも、皆既日食の最中は周囲が暗く、NDフィルターは必要ない。ただし部分日食から皆既日食に至るまでは、PRO ND10000があると心強いだろう。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を表示します。
PRO ND10000を装着して撮影した例。14時43分、雲間から覗いた太陽を撮影した。D90 / AT-X 840 D / 4,288×2,848 / F8 / 1/1,250秒 / ISO200 / WB:太陽光 / 600mm相当

 ただしケンコーによると、PRO ND10000は日食の撮影用なので、長時間太陽を見つめるのは厳禁とのこと。確かに、PRO ND10000を持ってしても、ファインダー内の太陽のまぶしさは強烈で、フレーミングをしているだけでも目がくらくらしだした。日食をじっくり見たい場合は、同じくケンコーの「太陽観察専用紙製サングラスKSG-01」や、「太陽観察専用サングラスKSG-02」など、観察専用の製品の使用を強くお勧めしたい。



(本誌:折本幸治)

2009/6/17 20:06