ハンファ・ジャパン「Pocket GPS PG-S1」

撮らない日も持ち歩きたい本格ロガー

Pocket GPS PG-S1

 2010年春は、GPS内蔵のコンパクトデジカメが数社から登場した。カメラ内で撮影画像に位置情報を記録できる手軽さや面白さは、一度体験すると普通のデジカメに物足りなさを感じるほどだ。

 地図と写真は親和性が高く、いずれGPSユニットは動画記録や手ブレ補正に続くデジカメの標準装備になるのではないかと個人的に期待している。

 とはいえ、GPSユニット内蔵のデジカメはまだまだ選択肢が少なく、現時点では単体のGPSロガーも堅実な選択肢のひとつだ。そこで今回は、ハンファ・ジャパンが5月28日に発売したGPSユニット「Pocket GPS PG-S1」を紹介する。直販価格は1万4,900円。

GPSロガーとして進化

 ハンファ・ジャパンの従来機種「Location Plus A1」と比較すると、モニターの搭載により設定変更・確認を本体で行なえるようになったほか、内蔵の電子コンパスで方位を確認したり、いくつかの表示モードを切り替えてステータス表示をできるようになるなどの進化がみられる。カメラ用のGPSロガーというよりは、アウトドア用途のGPSロガーにデジカメ用のツールソフトが付属した製品という印象だ。


正面に有機ELモニターと3つのボタンを装備携帯電話(中央)、iPhone 3GS(右)とサイズ比較
ラップ表示高度表示
速度表示電子コンパス

 本体に搭載するモニターは128×128ドットの有機EL。視認性は高く、晴天の屋外でも光を手で軽く遮ってやればモニターを確認することができた。

斜めからでも視認性は高いiPhone 3GS(左)と並べてみた。いずれもモニターは最大輝度

 内蔵メモリーもLocation Plus A1の60MBから1,600MB(PG-S1内のユーザー領域)と大幅に増加した。5秒間隔で24時間記録し続けた場合、約半年分のログデータを保存できるという。ユーザー領域はGPSログ記録のほか、音声ファイルなどの保存場所にもなる。

 起動中に側面の「REC」ボタンを長押しすると、内蔵マイクでボイスレコーディングが可能だ。録音したファイルは側面の端子に接続したヘッドホンから聞くか、PCに接続して本体内の「REC」フォルダから取り出せる。録音形式は64kbpsのMP3。リアルタイムのモニタリングも可能。

 同様に、PCからMP3ファイルを転送して再生することもできる。早送りなどのサーチや一時停止の機能はなく、ただ表示順に上から再生していくシンプルなプレーヤーだ。それでも、音楽プレーヤーの電池が切れてしまった時の寂しさを紛らわす保険と考えれば、あって損はない機能である。

ヘッドホン端子を備えるメニュー画面
録音中の画面MP3ファイルを再生する画面。日本語表示も可能

 電源はLocation Plus A1の単3形乾電池から内蔵バッテリーに変更した。USB充電に対応し、連続動作時間が最大約10時間から約13時間に延びている。マニュアルによると、市販の外部USBバッテリーで充電しながらGPSログを取ることも可能だという。電源周りに不安のある海外旅行でも、USBポートさえ確保できれば安心だ。筆者の場合は外に出るタイミングで電源を入れ、そのままバッグの中に入れておくという使い方がほとんどだった。

側面のUSB端子(mini-Bタイプ)側面にも3つのボタン。静かな場所ではクリック音が多少気になる

 なおLocation Plus A1から、USB経由で外部機器と接続することによりGPSレシーバーとして利用可能な点を継承している。マニュアルによると、データフォーマットはNMEA-0183(Version3.01)に対応するそうだ。

付属ソフトでログ変換・結合

 記録したデータは、「.log」の拡張子で本体内に保存されている。USB接続で取り出し、本体内に収録するユーティリティソフト「Storyish」(Windowsのみ対応)で変換・結合を行なうのが公式な利用方法だ。

 Storyishでは、ログデータと撮影画像をそれぞれの時刻データに基づいてマッチングし、撮影画像のExifに位置情報を埋め込むことができる。対応する画像形式はExif2.1以降に準拠したJPEGで、RAWファイルは読み込めなかった。

 取り込み時には、ログデータと撮影画像のExif情報に含まれる時刻情報のズレを補正する設定が存在する。地図上で撮影画像とマップ上の位置関係を確認しながらトライ&エラーでズレを補正してみたが、実際にはPG-S1の電源を入れたついでに画面(時計表示)を撮影しておき、結合時に画像とExifを参照するのが手っ取り早いかもしれない。時刻補正は結合時にのみ使用し、元画像には手を加えないようになっている。

 また、.logファイルを基にKML、KMZ、GPX、CSVの各ファイル形式で書き出す機能も有する。「Google Earth」などの外部ソフトでトラックデータと撮影画像を表示可能だ。

Storyish設定画面
時刻のズレを補正できる

 なお、Mac OS XではHoudah Softwareの「HoudahGPS」(フリーウェア)を使用して.logデータをKML形式へ変換し、Google Earthに読み込ませることができた。あくまで非公式・無保証な使用方法の一例だが、Mac環境でも工夫次第では十分に活用できるのではないだろうか。

記録間隔は使い方に合わせて

 ログの記録間隔は時間(1〜120秒)もしくは距離(10〜2,000m)の範囲で任意に選択できる。距離で記録間隔を設定できるのはPG-S1からの新機能だ。

 デフォルトでは1秒間隔でログを記録しているが、徒歩移動には少々細かすぎる印象だった。必要十分な記録頻度を探ることで、ログの記録容量もセーブできる。重要なポイントでは記録中に「LAP」ボタンを押しておけば、その地点はGoogle Earth上に「L」のマークで示される。

記録間隔をデフォルト設定(1秒ごと)にしたトラックデータをGoogle Earthで表示記録間隔をユーザー設定で「100mごと」にした場合。カメラのマークをクリックすると撮影画像を表示する
乗り換えで滞在した駅でのログ。青いマークが個々の記録ポイント(1秒間隔)

 筆者はPG-S1を使用する際、ほぼ常にショルダーバッグ内のポケットに入れており、外に露出させていなかった。一度バッグへ入れたまま使用してみたところ、地下鉄やビル内を除くほとんどの場所で位置情報が記録されており、特に感度面の問題を感じなかったからだ。

 ちなみに、4機以上のGPS衛星を捕捉している状態では緯度・経度・高度の「3D」、3機の場合は緯度・経度で「2D」と画面上に表示する。高度情報はGPSデータのものを記録し、本体内の気圧計(相対高度計測)が表示する高度はログデータに記録しない仕様だ。

4機以上の衛星を捕捉している状態3機だけ捕捉している状態。この状態では高度を記録しない

AGPSデータはPCから更新

AGPSデータを更新しているところ

 PG-S1はAGPSにも対応している。PCとUSB接続してデータ更新を行う事により、GPS衛星の捕捉速度を向上させる事ができる。

 データ更新の手順は、まずPG-S1を外部機器のGPS受信機として使用するためのドライバをインストールし、それとは別にAGPSデータの更新ツールをインストールして行なう。いずれもWebの製品情報ページから入手可能だ。

 なおPG-S1は、搭載するGPSチップセットの仕様により「コールドスタート36秒未満、ホットスタート1秒未満」としている。ホットスタート時に電源ボタンを押し始めてから「3D」と表示されるまでは実測で約9秒と、細かく電源を切ったとしてもストレスは感じないレベルだった。実際には電源を入れっぱなしで何ら不都合を感じなかったため、捕捉までの時間は細かく計測していない。

“持っていればOK”の気軽さ

 以上のように、電池寿命や感度面での安心感があったため、PG-S1を携帯しながら撮影を行なっていても、その存在を全くといっていいほど意識していなかった。そんなラフな使い方ができてしまう製品だったのである。

 撮影画像の管理はPCで行なうのが常で、かつカメラの機種や台数を問わず利用できることにメリットを感じる向きには、GPS内蔵デジカメよりPG-S1のような単体のGPSロガーが合うと思う。約56gと軽量なので、いざという時の簡易的なボイスレコーダーやMP3プレイヤーとして普段からバッグに忍ばせておくことにも抵抗はない。ふと気になった場所を位置情報と音声でメモしてみるのもいいだろう。



(本誌:鈴木誠)

2010/7/12 00:00