ドンケ「F-811フォト& PCサッチェルバッグ」

ノートPC収納部を持つドンケのニューカマー

 カメラバッグの歴史において、独自のポジションを維持し続けた米国のドンケ。シンプルで古びないスタイリング、独特の風合いを持つコットン素材、自由度の高いカスタマイズ性など、その魅力に取り付かれたファンも多いと思う。代表格はロングセラーの「F-2」。付属コンパートメント(中仕切り)の人気も高く、他のバッグに常時ドンケのコンパートメント(単体でも購入できる)を入れている人もいるくらいだ。

 そんなファンの支持が厚いドンケだが、基本的なスタイリングが変化していないことから、最近のトレンドを求める向きには物足りない存在であるのも事実。例えばノートPC収納部がないことに、多少の不満を覚える層は少なからずいると思う。ちなみにF-802、F-803などノートPCの収納を謳う製品はあったものの、専用のノートPC収納部があるわけではなく、カメラ・レンズ用のコンパートメントもない。ノートPCを入れるならカメラの収納をあきらめなければならない製品だった。

 今回紹介する「F-811フォト& PCサッチェルバッグ」は、ドンケにしては珍しく、ノートPC収納部を備えたカメラバッグ。表面素材の違いにより、コットンのF-811に加えて、バリスティックナイロンの「J-811」も選択できる。F-811が3万2,550円、J-811が3万3,600円。

 実はドンケ正規代理店の銀一に聞いて初めて知ったのだが、かつてドンケにもノートPC収納部を持つカメラバッグが存在したそうだ。「DataPorter」(データポーター)という製品で、1990年代のデジタル一眼レフカメラ黎明期に米国で登場。ノートPCや35mmフィルムスキャナーを収納するためのバッグとして少数がリリースされたという。その外観は思いっきり巨大で、かつビジネスバッグ然としており、ずいぶんドンケ離れしたものだった。

 F-811はドンケらしさを残しつつ、ノートPC収納部を背面に装備。ノートPC収納部の内寸は35×3.8×25cmで、13インチのMacBook Airが余裕で入った。またメインのカメラ収納部は内寸35×15×25cmとなっており、F-2が苦手としていた70-200mm F2.8クラスの望遠ズームレンズを縦に収納可能だ。

 簡単にいうと、ロープロの「ステルスリポーター」、ナヌープロ「タンゴ」などの路線に近い製品であり、シルエットがドンケらしくないところは構造上、まあ仕方がないところだろう。ドンケF-800番台はこれまでにも、カメラ収納部を持たないノートPC専用バッグだったという歴史があり、その流れを汲む製品だと思えば不思議はない。

 ただし、それなりにドンケのテイストが見られるところが面白い。例えば表面やショルダーベルトの素材感。特に滑り止めが入ったショルダーベルトの使いごごちは、ドンケそのものといってよい。また、付属の田の字型のコンパートメントもドンケらしさがあふれている。F-2などのものより縦長だが、ドンケユーザーならその使いやすさをわかってもらえるだろう。

 とはいえメイン収納部の開口部はジッパーで開閉するタイプなので、普段使っているF-2よりも機材へのアクセス性は良くない。また、F-2の象徴ともいえる両サイドのポケットがないため、かなり異なる使いごこちだ。歩行時の安定性もF-2には適わない印象を受ける。

機材の収納例F-2より高さがある分、望遠ズームレンズの収納が楽付属のコンパートメントは縦長の田の字型
ノートPC収納部はしっかりした造り
使用例
メイン収納部の開口部はジッパー式

 もっとも、ここまでフォルムが違うとなると、従来のF-2などのメインストリーム製品とは別モノとして考えるべきだろう。例えば、F-2にはできないスーツケースのハンドルへの取り付けが可能な点などは、出張時に使いやすくて好ましいだろう。F-2も上面のハンドベルトをくくりつけることで、スーツケースのハンドルに取り付けられないこともないが、専用機構を備えたF-811の安定感とは比べるまでもない。いかに危険きわまりない行為をF-2でやっていたかを反省させられた。

 また、正面フラップ内のジッパー付きポケットは、パスポートなどよく取り出す書類を入れておくのに向いているし、フラップ内側に設けられたポケットには、メモやペンなど文具を収納するのに好都合。F-2にはないビジネス系の機能が充実している。

正面フラップにジッパー付きのポケットを装備フラップ内側にもポケットが。メモ帳やペンを入れるのに向いている
滑り留めゴムを縫い込んだドンケらしいショルダーベルトスーツケースのハンドルに装着可能

 というわけでF-811は、出張時など長距離の移動時に威力を発揮する印象。報道カメラマン向けというより、カメラを抱えて移動するビジネスマンにありがたいバッグなのかもしれない。縫製など造りも良く、その点でも長期間、愛着を持てそうだ。このバッグを持って、色んなところに行きたくなった。

 なおもう少し大きめのタイプが必要なら、一回り大きめのF-812/J-812も選べる。さらにノートPCの収納にこだわらないなら、シリーズ最小のF-810/J-810も存在する。いずれもカラーはブラック。



(本誌:折本幸治)

2010/3/17 14:59