デジカメドレスアップ主義

デジカメドレスアップの極意教えます

連載7年間を振り返る 最多登場機種は?

2010年より7年続いたデジカメドレスアップ主義が、ついに幕を下ろすことになった。当初、半年を目標にスタートした不定期連載だったが、7年間というデジカメWatch史上最長クラスの連載に化けた。カメラアクセサリーという側面から、デジタルカメラ史を見つめてきたと言っても過言ではないだろう。7年にわたるデジカメドレスアップの変遷、そして筆者なりのドレスアップの極意をお伝えし、最終回としたい。

コンセプトはミニチュア感覚

デジカメドレスアップのコンセプトは、連載開始から今日に至るまで、一切変わりない。それはミニチュア感覚だ。現代的なデザインのデジタルカメラを、懐かしいクラシックカメラに似せる。ただし、本物そっくりにするのではなく、ちょっと大げさなところを狙う。クラシックカメラ然とした佇まいを強調することで、ミニチュアっぽさを表現するのがポイントだ。雰囲気としては、ロシアカメラを愛でる感じに近い。ロシア製ライカ型カメラの、そのコピーっぷりを愛でるような感覚だ。デジカメドレスアップは意識の片隅に目標値としてのクラカメ像があり、そこに似せつつ、距離をとりつつ、スタイリングを楽しむわけだ。

このミニチュア感覚を表現する上で、特に役立ってくれたのが外付けビューファインダーとレンズフードだ。連載当初は小振りなミラーレス機やハイエンドコンパクト機が多く、これらに外付けファインダーやレンズフードを付けると、過剰気味にクラカメっぽさを演出できる。オリンパスPENシリーズ、リコーGR、富士フイルムX100などは、この手法で様々なスタイルを楽しんだ。

リコーGXRにファインダーとフードを装着。ライカの28mmファインダーはGRに付けると大きすぎたが、GXRならほどよくミニチュア感覚を醸し出した。
オリンパスPENでライカMのミニチュアを作ってみた。この回のドレスアップはミニチュア感覚をわかりやすく見せることができたと思う。
GRのドレスアップは、筆者にとってカメラドレスアップの原点だ。ファインダーとフードを取っ替え引っ替えし、様々なスタイルを楽しんだ。
X100シリーズも外付けファインダーとフードでいろいろなスタイルを満喫したコンパクト機だ。レザーケースも選択肢が多かった。

ただし、外付けファインダーとフードは、次第になりを潜めていく。そのキッカケとなったのが、富士フイルムX-Pro1やライカMデジタルだ。もともとクラシカルなデザインで、ボディも本格カメラといったサイズ感だ。言わば本物志向のボディである。ここに外付けファインダーやフードを付けると、ドレスアップというよりも、実用パーツの装着という意味合いが強くなってしまう。そのため、こうしたモデルはレザーケースやストラップで魅せることに注力した。

その際も単に似合うケースやストラップではなく、強烈に自己主張できる製品を選ぶ。ドレスアップを通じて自分らしさを魅せる、という思いがあった。ちょっと大げさな言い方になるが、カメラで生き様を魅せたかった。カメラとは、写真を通じて社会と個人が対話するツールだ。自分の生き様が世界でひとつだけであるように、自己表現するツールも唯一無二のスタイルであるべきだろう。名は体を表わすかのごとく、カメラドレスアップで人生を表わそうというわけだ。

X-Pro1はメーカーが本気で作ったクラシックスタイルだった。そのぶんミニチュアっぽさはなく、本格スタイルを攻めるカメラだった。
ライカMのドレスアップはラグジュアリーの度合いがポイントだった。豪華さに照れてはいけない。潔く浸る勇気がほしい。

印象深かったドレスアップアイテム

本連載では様々なドレスアップアイテムを紹介してきた。レザー製カメラケース、ストラップ、外付けファインダー、フード、ソフトレリーズボタンあたりが代表格だ。ただし、こうしたカテゴリーに属さない個性派アイテムもあった。中でも印象深いのが貼り革だ。ケースと貼り革、どちらを付けるか、という二択でよく悩んだものである。それほど多様な機種に向けて貼り革キットが発売された。

オリンパスペンの貼り革は新規で貼り付けるタイプ。そのため気軽にカラバリを楽しめた。写真はチェリーウッドの貼り革キットだ。
ライカM8は貼り革の交換に専用工具が必要だ。このアルテディマーノの貼り革は、デジタルホビーに依頼して交換してもらった。

貼り革については記事制作上の苦労もあった。貼り革は新規で貼り付けるタイプと、既存の貼り革と交換するタイプがある。問題は交換するタイプの貼り革だ。純正の貼り革を剥がすため、カメラメーカーからの貸し出しボディでの作業できない。私物のカメラを生け贄として捧げる必要があった。剥がした貼り革は元に戻せないため、貼り革交換済みの姿がデフォルトになってしまう。交換タイプの貼り革を紹介するときは、思い切りと諦めが複雑に入り交じる気分だった。

一方、他の追随を許さない、というか追随のしようがないほどに個性的なアイテムもあった。その筆頭はmukカメラサービスのハッセルファインダーアダプターだろう。ハッセルブラッド一眼レフのファインダーフードを、液晶ビューファインダーとして流用するアダプターだ。発想もさることながら、それを製品化する実行力に驚かされる。ジェイツジムラのトレジャーグリップも圧倒的だった。ライカM(Typ240)用のサムグリップなのだが、シルバー925のハンドメイドジュエリーだ。削り出しではなく、鋳造(溶かした金属を鋳型に流し込んで製品を作ること)による製品だ。製造上の微妙な誤差を、ひとつずつ手作業を調整していく。シルバーというマテリアルも驚きだが、根気のいる製造工程にも脱帽である。カメラアクセサリーは似たような製品が登場しやすいジャンルだが、これらは紛れもなくオンリーワンだ。こういう天才肌の職人が生んだ製品を、リアルタイムで触れられたことに感動すらおぼえる。

ハッセルブラッド一眼レフのファインダーフードをオリンパスPENで流用する。生産数は限られており、文字通り、幻の製品だ。
ジェイツジムラのトレジャーグリップはカメラアクセサリーというより、もはや宝飾品だ。ライカ用アイテムの中でも極めつけの逸品である。

撮影操作も写真の楽しみだ

ドレスアップスタイルに合わせるレンズは、オールドレンズを選ぶことが多かった。マウントアダプター経由で様々なオールドレンズを楽しめるのは、ミラーレス機の特権である。ただ、後半はもう少し視野を広げ、趣味性の高いMFレンズというくくりでセレクトしていた。中一光学やハンデビジョンといった中国製MFレンズが登場し、さらにライカMデジタルの盛況に合わせ、コシナ、ロモグラフィー、ツバサなど、サードパーティー製の距離計連動式レンズも選択肢が増えた。MFレンズは手動でピントと絞りをコントロールするため、自らの意志でカメラを操っている感覚が強い。実用性ではAFレンズにかなわないが、撮影の楽しさという点で満足度が高いだろう。カメラと向き合うという点において、ドレスアップと相通ずるものがあると思う。

オールドレンズを装着するために各社のマウントアダプターを紹介したが、このジャンルはここ数年で劇的に進化した。補助ヘリコイド付きのマクロアダプター、ライカレンズをAF化するテックアートLM-EA7、キヤノンEFレンズをAF動作させるスマートタイプのマウントアダプターも種類が多い。いわゆるドレスアップアイテムではないため、詳細に掘り下げて紹介できなかったのが心残りだ。このジャンルはまた改めてレビューで紹介できればと思っている。

このレンズは黒塗りした後、エイジング加工を施した。単にオールドレンズを紹介するだけでなく、ひと手間加えた個体も取り上げた。
木下光学のキスターシリーズは、現代の技術でオールドレンズテイストを再現する。現行MFレンズの中でも個性派スタンスの製品だ。
元祖ヘリコイドアダプターと言えばホークスファクトリー。ライカレンズのようにレバー付きのピントリングがかっこいい。
テックアートのLM-EA7は当初品薄だったが、最近は在庫も潤沢だ。ライカレンズ好きの間ではすでに定番アイテムに成長した。

お世話になったボディたち

デジカメドレスアップは、当然ながらカメラボディなしに語れない。登場回数は別表に譲るが、連載当初はオリンパスPENシリーズを取り上げることが多かった。その後、APS-Cミラーレスの富士フイルムX-Pro1、35mmフルサイズのソニーα7シリーズへとメイン機種が移行していく。クラシックデザインのボディ、オールドレンズ撮影に適したボディをドレスアップするのが好みだった。

その一方で、カメラらしからぬカメラの存在を忘れてはならない。ソニーNEX-5とシグマdp Quattroシリーズは、カメラと似ても似つかぬスタイルで我々の度肝を抜いた。特殊なスタイルゆえにレザーケースの登場は困難と思われたが、サードパーティーから対応レザーケースが登場。デジタルカメラがカメラの既成概念を越えた瞬間のように思えた。

E-P1からはじまり、オリンパスPENシリーズはその都度ドレスアップのベースボディとして取り上げてきた。小振りのボディが多く、ミニチュアっぽさを表現しやすかった。
α7シリーズは本連載のお得意様だ。この写真はLM-EA7付きα7 IIの専用ケースだ。鳥井工房の独自性極まるレザーケースである。
NEX-5はボディサイズに対してきわめてグリップが大きく、マウントはボディからはみ出している。このデザインは暴力的なまでに先進的だった。
dp Quattroの奇抜さは言わずもがな、専用ケースが登場したのは予想外だった。シグマファンの層の深みを感じる。

カメラアクセサリーは永遠に主役です!

この連載がスタートした2010年当時、カメラアクセサリーはあくまでもカメラの脇役だった。機種別ムックの巻末にて、カタログページで十把一絡げのごとく紹介されることが大半だった。また、カメラをファッション的な観点で語ることをタブー視する風潮も否めない。カメラは基本的に実用ツールなので、それをファッションとして語るような軟派はけしからん、という人は少なくなかった。

ただし、自分のカメラをかっこよく携行したいという思いは、誰だって変わりないだろう。上質なレザーで作ったカメラケース、ウォッシュのかかったコットン製のストラップ、そしてお気に入りのオールドレンズ。カメラドレスアップを通じて、カメラアクセサリーを主役として語る。カメラ好きならば、アクセサリーにこだわりを持つことは自然な成り行きだ。本連載が7年つづいた背景には、カメラアクセサリーがカメラの付属品という枠組みを超え、独り立ちしたという事実が見え隠れする。そうした状況にこの連載が貢献できていたのであれば、著者として幸甚である。

公開!最多登場機種ベスト10

機種名登場回数
ソニーNEX-520回
ライカM(Typ240)13回
ソニーα7 II12回
ソニーα711回
FUJIFILM X-Pro17回
キヤノンEOS 5D Mark II4回
ソニーNEX-74回
FUJIFILM X-T14回
FUJIFILM X1004回
リコーGR DIGITAL III3回

ブランド別の登場回数ベスト10

ブランド名登場数割合
ソニー5933.1%
オリンパス3318.5%
富士フイルム2312.9%
ライカ2111.8%
リコー105.6%
キヤノン95.1%
パナソニック84.5%
ペンタックス52.8%
ニコン42.2%
シグマ31.7%

澤村徹

(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp