インタビュー

富士フイルム“Xフォトグラファー”インタビュー
「コンパクトなシステム、これが私の人生です」

英国人ポートレート作家 Damien Lovegroveさん

富士フイルムのレンズ交換式カメラ「FUJIFILM X-T1」は、APS-Cサイズのセンサーを採用し、高級感あふれるデザインと外装素材、堅牢なボディを備えたミラーレスカメラだ。

約0.77倍、表示タイムラグ0.005秒という高性能な電子ビューファインダーをはじめ、ダイヤルによる操作感や画質など、プロの写真家からも高い評価を得ている。

今回、横浜市で開催された「CP+ 2015」の会場で、X-T1を愛用するポートレート写真家のDamien Lovegroveさんに話を聞いた。

今までのシステムをebayで売りたくなった(笑)

X-T1を構えるDamien Lovegroveさん

――まず、X-T1を使っていての感想を聞かせてください。

これは特別なカメラです。私は、人生の長い間ファインダーを覗いて写真を撮ってきました。これまでは、ファインダーを覗きながら、露出を何度も変えて撮影し直してきました。X-T1は、画面を見ながら調整できるので、素早く撮影できて素晴らしいです。それでも小さくて軽い。使いやすいんです。

――小さすぎないですか?

(自分の手を見せながら)私の手は大きいんですが、それでもこのサイズは完璧です。また、このサイズだと、撮る相手もびっくりさせないのがいいですね。(ポートレートの)撮影の時はアイコンタクトを取ってコミニュケーションをしながら撮影するので、色々なスタイルで撮影しています。

ボディのエンジニアリングも美しいし、レンズも素晴らしい。今まで使った中で一番XF35mmF1.4 Rが素晴らしいです。今まで、他社の標準レンズも使ってきて、そういったレンズだとどんなに高いレンズでもどこかしらに問題があったのですが、このレンズは解像感も高く、満足しています。

どれだけ拡大してもシャープですし、ボケもきれい。周辺の解像感も素晴らしく、撮った画が素晴らしいのは分かっているので、確認する必要もありません。

――これまでX-T1でどんな被写体を撮影してきましたか?

昨年は、すべての写真をこのX-T1で撮影しました。コマーシャル撮影、コレクション用のファッションデザイン撮影、広告キャンペーン用の撮影など、すべてで、です。最初、このカメラを持っていくと、クライアントは「おー、なんて小さいカメラ」と心配することもあります。そういうときは「自分を信頼して欲しい」と話して撮影を行います。結果、クライアントは写真に満足してくれます。

使っていてワクワクするようなカメラです。

――これまでの利用していたカメラを教えて下さい。

私は1984年から撮影をしています。ハッセルブラッドや35mm一眼レフカメラを使い、デジタルカメラは2001年からFinePix S1 Proをニコンのレンズで使用していました。2004年にはニコンのデジタル一眼レフを使い、Hasselblad H2、Phase Oneを使ってきました。その後キヤノンのEOS 5D Mark IIに移りました。

フォトキナで見たAPS-CコンパクトのX100を入手したのが、Xシリーズとの出会いです。その後はレンズ交換式のX-Pro1、X-T1という順番で使っています。X-T1は予約をして発売日から使っています。最初は趣味用のカメラとしてX-Pro1を使っていました。

ある日、アメリカに旅行に行ったとき(Lovegrove氏は英国在住)に、X-Pro1と3本のレンズを持ってルート66を通り、その間撮影をしていました。そして、帰ってきたときには、持っている一眼レフのシステムをすべてeBayで売ろうと思いました(笑)。

X-Pro1は、私を自由にして、さらに創造性もかき立ててくれました。レンズも素晴らしいし、フォーカスのスピード、正確さも素晴らしい。私の写真人生では「光」が重要で、光学性能も優れています。

小さいバッグにX100Tを入れて、さらにX-T1、XF14mmF2.8 RとXF35mmF1.4 R、XF56mmF1.2 Rを入れています。これが私の人生です。コマーシャル撮影の時は、まず23mmのXレンズを使います。

――これまでのカメラと比べて、X-T1で気に入っているところはどんな点ですか。

いい質問です。2つあります。……いや、3つあります(笑)。1つ目は液晶モニターがチルトすること。もう1つはビューファインダーです。とても大きくて明るい。3つ目は遅延がないことです。ローライトの現場でも遅延が少ないです。

今でもX-Pro1は好きです。日産のダットサン(国内ではフェアレディZ) 240Zが、(現行の)370Zがあっても愛されているようなものです。私の部屋には240Zのポスターが飾ってあります(笑)。

マニュアル操作がやりやすい

――一眼レフの頃と比べて、X-T1で撮影方法は変わりましたか。

以前は撮ってみないとどんな写真ができるか分からなかったのですが、今はEVFが優れているので、撮る前に露出や明るさが確認できるので、それは大きく変わりました。システムも小さくなり、今までは「大きなカメラを持ち歩いている」と言われましたが、今はだいぶ小さくなりました。

普段は23mmのレンズですが、1カ月前にXF50-140mmF2.8 R LM OIS WRを借りて使いました。使いやすいので、外でのポートレートに適していると思いました。とはいえ、もう少し大きいバッグが必要になるかもしれません。それでも小さいので、バッグから取り出し、レンズ交換をするのも簡単です。雨の日もそのまま交換していますので、X-T1のタフネスボディはありがたいです。

――X-T1でポートレートを撮影する際のアドバイスはありますか。

マニュアル撮影で、シャッタースピードは焦点距離の4倍にします。35mmなら1/125秒にします(シャッタースピードダイヤルで1/125秒の次が1/180秒のため)。露出とISO感度をダイヤルで設定します。これだけです。メニューは使いません。シャッタースピードとISO感度と絞り、これがすべてです。

マニュアルで撮影すると、少しずつ学んでいけるので、そこで改善しながらいい写真が撮れるようになります。オート撮影では何も学べませんので、マニュアルをおすすめします。20枚撮れば、1枚はきっといい写真が撮れます。

豊富なダイヤルのおかげで、マニュアル撮影が得意なX-T1。フォトグラファーに好評な理由の一つだ。

連写をすればいいと言うものではありません。私がポートレート撮影をするとき、20分は会話をします。私のYouTubeチャンネルがありますので、参考にしてみて下さい。

ISO感度や露出が1/3段ずつなのにシャッタースピードダイヤルは1段刻みなので、もう少し小刻みに変更できればもっといいのですが、すでに文字がたくさんあるので難しいかもしれませんね。(編集部注:ボディ上面のシャッタースピードダイヤルは1段刻みですが、フロントコマンドダイヤルを使用すれば、1/3段刻みでの変更が可能です)

私は、メガネをしているときはライブビューで撮影し、かけてないときはダイヤルで調整してからファインダーを覗きます。ただ、ウエストレベルで撮影するとき、ファインダーでは膝をついて撮影しますが、ライブビューも使います。X-T1がバリアングルなら良かったのですが。

コミニュケーションを撮りたいときはライブビューを使ってアイコンタクトを取ったり、撮影の状況に応じて変えています。

Wi-Fi機能も活用中。スマホで撮ることがなくなった

――ポートレート撮影での肌色の表現などはどうですか。

素晴らしいです。ただ、設定は必要です。JPEGで撮影する場合、ノイズリダクションは-2に、シャープネスも-2に、ハイライトトーンとシャドウトーンは-1にします。フィルムシミュレーションモードはPRO Neg.Stdにします。こうすると、肌の階調を含めてとても「穏やか」になります。

私自身は普段はRAWで撮影してますので、そうした設定はあとから変更もできます。プリントするときのシャドー部の階調にはこだわっています。クライアントに見せるときはプリントしてサインをしてます。

Adobe Photoshop Lightroomを使っていますが、富士のフィルムシミュレーションは完璧です。

――無線LAN機能は使っていますか?

プリンターに送るのに使ったり、スマートフォンに送信してSNSに投稿したりで使っています。今まで、SNSに投稿するためにスマートフォンでも撮影していたのですが、X-T1ですべて撮影して、スマートフォンに転送しています。

――富士フイルムのレンズロードマップで気になるレンズはありますか。

2月10日に発表されたレンズロードマップ。

16mm(XF16mmF1.4 R)は気になります。今まで14mm(XF14mmF2.8 R)では少し広角と感じることがあったので、しかも14mmのF2.8に対してF1.4と明るくなり、しかも似たようなサイズなので良さそうです。既存の16、23、32、56mmがあればいいでしょう。

他のレンズですと、90mm(XF90mmF2 R)や120mm(XF120mmF2.8 R Macro)は、50-140mm(XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR)でカバーできると思います。これは大変気に入っています。手ブレ補正が私にとって重要なのです。既存のレンズも、すでに画質としては満足しています。

ズームレンズでは16-55mm(XF16-55mmF2.8 R LM WR)がすみずみまでシャープで、こうしたレンズが必要なんです。

小山安博

某インターネット媒体の編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、音楽プレーヤー、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、音楽プレーヤー、PC……たいてい何か新しいものを欲しがっている。