写真展

ギスバート・ハイネコート写真展
「70's Rock Photography」

(ブリッツ・ギャラリー)

“David Bowie, Amsterdam, 1974”©Gijsbert Hanekroot

ブリッツ・ギャラリーはオランダ在住の写真家ギスバート・ハイネコート(Gijsbert Hanekroot、1945-)の日本初個展となる「70’s Rock Photography」を2015年1月に開催いたします。ハイネコートは、1969年から1983年までオランダや欧州諸国で音楽雑誌や新聞などのためにロック・ジャズ・コンサートを専門に撮影してきました。ミュージック・シーンの中心地というとロンドンのイメージが強いのですが、だいたいのミュージシャンは欧州ツアーも同時に行っていました。オランダ人写真家ではエド・ヴァン・デル・エルスケン(1925-1990)が有名です。実は彼は「Jazz」というフォトブックを1959年に出版しています。ロック誕生前はジャズが最先端音楽で、ジャズ・ジャイアントといわれる大物はだいたいオランダで演奏を行っていたのです。その流れでロック・コンサートも行われるようになったのです。

多くの写真家が当時の最先端のファッションで風俗だったロック・ジャズの現場を撮影しています。しかし、ハイネコートほどあらゆるスタイルのミュージシャンを同じスタンスでエネルギッシュに撮っている人はいないでしょう。ちょうどジャズからロックへの過渡期だったことから、ジャズやブルースの巨人たちから、カリスマのロック・スターまでを幅広く撮影しています。2008年に彼の初写真集「ABBA...APPA」が刊行されています。同書のインデックスをみると本当にAからZまでのミュージシャンのライブとオフ・ステージのシーンが高い完成度で撮影されています。一部を上げると、デヴィット・ボウイ、ジョニ・ミッチェル、チェット・ベイカー、ジョン・レノン、オノ・ヨーコ、ジェームス・ブラウン、ニール・ヤング、ジョニー・キャッシュ、アリス・クーパー、ボブ・マーリー、ブライアン・フェリー、エルトン・ジョン、ローリング・ストーンズなど錚々たる人たちです。

しかし、80年代前半に彼はミュージック・シーンの撮影をやめて、企業家に転身しています。70年代くらいまでは、ミュージシャンは若者世代の政治的・社会批判的なメッセージを音楽で社会に伝えようとしていました。彼らとカメラマンやファンはより近い存在でした。ハイネコートはそんなミュージシャンたちに憧れ、カッコいいと感じて撮影していたのです。しかし80年代以降はロックがビッグ・ビジネスとなり、みんなお金儲けの仕事として演奏するようになります。彼は当時を振り返り、あまりにもコマーシャル的で型にはまった演奏になり、面白い写真が撮れなくなったからやめた、と語っています。しだいに写真家は自由にミュージシャンと接して好きなように写真が撮れなくなり、ハイネコートもそんな状況での撮影に嫌気がさしたのでしょう。結果的に彼の作品群はジャズやロックの古き良き時代のミュージシャンの素の姿を撮影した貴重なドキュメントとなったのです。それらは当時の社会の気分や雰囲気を伝える広義のファッション写真とも呼べるでしょう。

その後、写真展開催依頼がきっかけとなり、彼は2年の歳月を費やして膨大なアーカイブの整理整頓に取り組みます。過去のネガをスキャニング、再解釈してデジタル・ピグメント・プリントによる作品制作を開始します。単なるライブ写真を超えた魅力的な作品群は当時を知る多くの音楽ファンを魅了し、いまでは欧州やロシアで 写真展が相次いで開催されるようになっています。

本展では写真集「ABBA...ZAPPA」からのベスト作品23点(モノクロ)が展示予定です。いずれも60年代〜70年代に最先端だったミュージック・シーンの気分や雰囲気が楽しめる珠玉の作品です。

(写真展情報より)

“Bob Marley, Den Haag, 1976”©Gijsbert Hanekroot
“Mick Jagger, London, 1972”©Gijsbert Hanekroot
“Neil Young, Copenhagen, 1976”©Gijsbert Hanekroot
“Michael Jackson, Amsterdam, 1972”©Gijsbert Hanekroot
“Lennon / Ono, London, 1971”©Gijsbert Hanekroot
“Keith Richards, Brussels, 1976”©Gijsbert Hanekroot

会場・スケジュールなど

  • ・会場:ブリッツ・ギャラリー
  • ・住所:東京都目黒区下目黒6-20-29
  • ・会期:2015年1月23日金曜日~2015年3月28日土曜日
  • ・時間:13時〜18時
  • ・休館:日曜日・月曜日
  • ・入場:無料

(本誌:河野知佳)