写真展

所幸則写真展「PARADOX - TIME アインシュタイン・ロマンスをめぐる冒険-」

(Espace KUU)

都市の時間、現代における時間への考察へのお誘い

過去から未来に向かって流れ続ける時間、私たち人類はその時間の運動の中で、一瞬たりとも休むことなく、ひたすら“その先へ”と突き動かされて生きてきました。それは千年前の百年前も同じこと、ただ21世紀が過去の時代のどれとも圧倒的に違うのは、その場に存在している時間への認識が恐ろしいほど希薄になってしまったことです。現代人の多くは、SNSの過激なまでの急速な進歩の波の中、目の前よりも他の何処かの時間に関わることに大いなる神経を使わされています。

一体、私たちは何に急かされ、“今、ここで生きる”という唯一の確かな時間との関係性すら、放棄しようとしてしまったのでしょうか?

本展覧会は、人間の支配を超えたこの存在、「時間」について、写真を起点に多角的にその本質に迫ってみたいと考えました。「時間」へのキーワードを整理し、テーマを投げかけるのは、所幸則。1秒間に3回のシャッターを切る「One Second」という手法で、都市における時間の姿を捉えた写真家です。彼の問いかけにさまざまなジャンルのクリエーター、アーティストたちが応えるという展開で今回の展覧会は進行します。時間という制約、時間という空間、そこでどのように写真とアートが呼吸をするのかを皆さんと共有したいと考えています。

写真家を起点とし、複数のクリエーター、アーティストを招いて展開する今回の試み、アーディエンスの反応がなによりも重要なポイントになるはずです。

この挑戦にもっとも重要な役割を担う当事者として、どうぞご参加ください。

心よりお待ち申し上げます。

  • 何かを学ぶためには、
  • 自分で体験する以上にいい方法はない。
  • アルベルト・アインシュタイン

(写真展情報より)

会場・スケジュールなど

  • ・会場:Espace KUU
  • ・住所:東京都豊島区西巣鴨3-20-1
  • ・会期:2015年7月1日水曜日〜2015年9月25日金曜日

作者プロフィール

1961年生まれ。大阪藝術大学客員教授。
少年時代、『ロード・オブ・リングス』やベネチア派絵画の世界に魅了された所は、迷うことなくアーティストへの道を選択、大阪芸術大学に進学する。大学ではアンセル・アダムス、アービング・ペン、ハーブ・リッツ、ユジェーヌ・アジェ、サラ・ムーン、そしてデボラ・ターバヴィル、久留幸子といった透徹した写真表現と物語を語りかける写真の魅力に深く浸ることになる。大学では最初に永坂嘉光に写真に対する真摯な姿勢を学び、後半は写真学科で唯一写真家ではない高岡一弥(前出の久留幸子のビジネスパートナーでもあり夫)のゼミに入った。しかし大学卒業後、所は強い色彩を求める時代の気分を敏感に直感し、モノクロ表現からカラー写真の表現世界を追求することを決断することになる。そんな所のインスパイヤーの源泉となったのはまたしても西欧絵画、ギュスタブ・モローの豊かな色の織りなす世界だった。まず、ファッションやエディトリアルなどのシーンでその頭角を表し、92年世界写真見本市「フォトキナ92」で「世界の新しい表現者」の日本代表として選ばれるなど国内外でその活躍の場を広げる。現実と非現実の間を浮遊し、さらにはそれらが融合したような作品世界は各界から高い評価を得、2003年にはZOOM International(イタリアのフォトアートマガジン)で表紙のイメージとして選ばれ、巻頭特集が組まれるまでとなる。しかし、2006年美術出版社から出版された集大成とも云える作品集『CHIAROSCURO~天使に至る系譜』をもって、第一期の所幸則としてのキャリアをリセットすることを決意する。翌2007年、モノクロームによるSHIBUYAのランドスケープを核とした新らたな所幸則として作家活動を再開、「One Second」シリーズの制作に着手する。“瞬間”とは異なる“概念としての時間そのもの”への問いかけとも云えるこのシリーズは、撮影場所でもある渋谷で「渋谷One Second~瞬間と永遠~」として個展を開催。 SHIBUYAは現在の所幸則のアーティスト活動の拠点にして出発点、そして世界へ発信する所の写真表現のアイコンともなっている。

(本誌:河野知佳)