写真展

松本コウシ写真展「泳ぐ夜 其の弐 Castaway in the still night 2」

(ニコンサロン)

作者が長年モチーフとしてきた「夜の写真」は、2種類がある。「ヒトとは関係がなかった事象のごとく自らを主張する風景」と「ヒトを受け皿とする夜の街を現した人物スナップ」である。2つの夜は、まるでコインの表と裏のように、決して交わることなく、蓋然性をもって存在すると作者は言う。後者の作品を展示する本展は、2009年開催の写真展「泳ぐ夜」の続編である。

たゆまなく流れる時間、一喜一憂する間もなく上書きされていく記憶。ヒトは矛盾と幻覚に抗い、何処かとりとめのない"物語 = 街"の中で居場所を求め彷徨っていた。

「泳ぐ夜」は、時の流れが残していく形見。時計の針を巻き戻すように人混みの中を歩く。どこかに失ってしまった"時の片"が落ちているはずだ。僕は夜の繁華街で何度もライカのシャッターを切った。真新しい廃墟のような街で時という幻影に埋没するヒトたちに向けて...。夜は制約から解放されたヒトの本能が蠢いている。自分が生きた現実を夜という回想の中で幻影へと変容させているのだろうか?

すべての情報をシャットアウトすれば、時間はいとも簡単に止まる。外的ファクターなどは所詮観念的な表象であったということだ。やがて、自分が生きているほんとうのゾーンだけが浮き上がってくるのだろう。この空っぽの日常に自らの手で如何なる時間を詰め込むのか?

生きること―、 いつしか美しき追憶となるべく時間たちへ― 。

Castaway in the still night

~ ルノワールへ捧ぐ ~

(松本コウシ)

カラー・モノクロ約50点(2点一組)

銀座ニコンサロン 2016年9月 - 写真展 - ニコンサロン

会場・スケジュールなど

  • ・会場:銀座ニコンサロン
  • ・住所:東京都中央区銀座7-10-1STRATA GINZA(ストラータ ギンザ)1・2階
  • ・会期:2016年9月14日(水)~9月27日(火)
  • ・時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
  • ・休館:会期中無休
  • ・入場:無料

  • ・会場:大阪ニコンサロン
  • ・住所:大阪市北区梅田2-2-2ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー13階
  • ・会期:2016年10月27日(木)~11月2日(水)
  • ・時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
  • ・休館:会期中無休
  • ・入場:無料

作者プロフィール

1961年広島県生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業。84年「京阪沿線」(アサヒカメラ誌)で写真家としてデビュー。25年以上にわたり、「夜」を写真の分野として追求している。写真展に、「眠らない風景」(93年~94年キヤノンサロン銀座・名古屋・梅田)、「続・眠らない風景」、2009年「泳ぐ夜」(キヤノンギャラリー銀座・大阪・福岡)、「午前零時のスケッチ」(14年銀座ニコンサロン、15年大阪ニコンサロン)などがある。写真集に、「眠らない風景1989-2003」(求龍堂)、「続・眠らない風景」(求龍堂)、「泳ぐ夜」(日本カメラ社)、「午前零時のスケッチ」(日本カメラ社)などがある。