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【フォトキナ】インタビュー:「フルサイズトリオ」を発表したソニーの意図とは


 フォトキナ2012で鮮明になったのが、フルサイズセンサー採用カメラの急増である。これまでも、独自CMOSセンサーを持つキヤノンがフルサイズセンサー機に積極的で、その動きにニコンもFXフォーマット普及機を投入するなど、主に35mm判フィルムカメラで多くのレンズ資産と顧客資産を持つメーカーがフルサイズへの流れを作ってきた。さらに、ソニー製のフルサイズCMOSセンサーの利用が拡大し、さらにキヤノンも低価格モデルを投入し……と、急にフルサイズへの動きが加速している。

 とりわけ、ソニーはトランスルーセントテクノロジを搭載したα99、35mm F2のカール・ツァイスレンズを搭載したサイバーショットDSC-RX1、それにNEXのEマウントを踏襲しながらフルサイズセンサーでの動画撮影を実現したNEX-VG900と、35mm判フルサイズのセンサーを搭載する製品を3つも揃えてきた。今回のフォトキナにおけるソニーの展示について、デジタルイメージング事業本部副本部長の勝本徹氏に話を聞いた(聞き手:本田雅一)。


デジタルイメージング事業本部副本部長の勝本徹氏

スマートフォンにはできない要素を提供したい

--- ライカ判フルサイズのセンサーを3機種揃えてきました。

「今年のフォトキナは、フルサイズセンサー搭載機種にフォーカスしています。もっとも力を入れて準備してきたのはフルサイズトリオ(α99、RX1、VG900)ですね。あとは、スマートフォン連携を無線LANで行うNEX-5Rです。ここに、スマートフォン向けのカメラアプリを加えて、新しい使い方を提案しています。この2つが大きなトピックですが、さらにプラスαで、ハッセルブラッドとの提携を発表させていただきました」


フルサイズ機のα99、サイバーショットDSC-RX1、NEX-VG900を一挙に投入してきたソニーブース

--- フルサイズセンサーのラインナップが拡大しています。ソニー自身も3機種を発表したわけですが、他にもペンタックスがフルサイズセンサーを搭載したカメラの開発について口にしていますね。このトレンドをソニーとしてはどう分析していますか?

「確かにそうした傾向は見られますが、実はソニーとしては、市場がフルサイズへと傾倒しているという意識はありません。我々は昨年、ミドルクラスにα77とNEX-7という2つの製品を発売し、NEX-VG10、NEX-VG20とビデオ撮影用のNEXカメラを出しました。これらがいわばAPSセンサーを用いたトリオだったので、じゃぁ次はフルサイズセンサーの新しいものができ上がるから、これを使って別のトリオを組もうと考えたのです。今後、レンズ交換式カメラに使われるセンサーのサイズトレンドがフルサイズになっていくかというと、それぞれに使い分けが進むのでは」

--- それだけユーザーが増えて、利用シーンも多様化しているということでしょうか?

「趣味性の高さといった視点で見ると、レンズ交換式ではありませんが、既発売のRX100も好評で、引き続き大きな支援を消費者の皆様にいただいています。コンパクトデジタルカメラは、スマートフォンのカメラ機能が向上することで、きっとなくなってしまうと言われていましたが、むしろ逆の現象が起きていると思います。スマートフォンで写真の愉しさを知り、撮影する機会が増えたことで、趣味として写真やムービーを撮影する人が確実に増えているんですよ」

「確かに、ごく初期のエントリーユーザーは、スマートフォンに浸食されています。しかし、見方を変えるとスマートフォンが、写真好きな人たちを探し出し、写真好きであることを気付かせてくれているという面ではプラスだと思います。これは、単に“そういう感覚”というだけではなく、さまざまな調査をかけていく中で、スマートフォンで写真系のアプリに慣れ親しんでいる人ほど、カメラをよく買っていただけているという結果が出ています。たとえばInstagramやPintarestを通して美しい写真に触れ、自分もそうした写真を撮ってみたい。そう思うところからカメラ生活がスタートしている方が多いのです」

--- スマートフォンがライバルではなく、カメラへの入口と捉えるようになったことで、製品戦略に変化は生まれましたか?

「スマートフォンでカメラの愉しさを知った人たちが、実際に手にして欲しいと思うカメラとはなんだろう? というところを考えています。ひとつの切り口としては、スマートフォンでは絶対に得られない画質、到達できない使いやすさや機能のカメラを作ることですよね。様々な切り口で、“スマートフォンにはできない”要素が存在しますが、画質面で言うと、その最終地点にあるのがフルサイズセンサー、とは言えます。もちろん、そこまでユーザーが到達するには、いくつものステップが必要でしょう。しかし、すこしづつ階段を登っていく道筋を作っていくことで、お客様の要望に応えていこう、カメラを極めていくという気持ちで製品ラインを整えています」


新しいフェーズを見据えたα99。α900後継の予定はなし

--- α900というカメラは、そのファインダーの見え味や同時期に用意されたレンズ群など、魅力的なハイエンドカメラになっていましたが、勝本さんも言っていたように、伝統的なカメラ文化に対し、ソニーがきちんとその世界にコミットしたのだ、という証のような製品でしたよね。しかし、α99はガラリと変わってトランスルーセントテクノロジ採用。ミドルクラスまでならともかく、ハイエンドもとなると、やや抵抗感を感じる既存ユーザーはいるのでは?


トランスルーセントミラーテクノロジーを採用するフルサイズ機「α99」。10月26日発売。店頭予想価格は30万円前後の見込み

「α900では、光学ファインダーを用いた一眼レフというカメラのスタイルを追求することでした。そして、そこから発展させて、一眼レフカメラを新しいフェーズに持ち込もうということで、トランスルーセントテクノロジをフルサイズに適用させています」

「実はフルサイズセンサーでトランスルーセントテクノロジを採用するとなると、処理能力などの問題以上に、光学的な面でハードルはたくさんありましたが、それを越えることで動画撮影中のオートフォーカスや、ビューファインダーの映像をブラックアウトさせずに連写するといった、新しい機能性を備えることができます。もちろん、光学ファインダーが好きだ、という人は根強くいらっしゃるのですが、一方でα55、α77とやってきて、“撮影される画”をファインダー内でで見ながら作品作りができる点を気に入ってくださっている方もたくさんいらっしゃいます」

「うちがフルサイズに新機種を開発するならば、そうした独自性、新たな価値を追求する方向へとシンプルに突き進むのがいいと判断しました」

--- 実際に仕上がったα99を見てどのようにお感じでしょう?

「光学ファインダーで写真を撮ってきた方々にも、十分に満足できる見え味のファインダーを作れたと自負しています。もちろん、ムービー撮影はトランスルーセントテクノロジの得意とするところですし、オートフォーカスも、撮像面に位相差センサーを搭載した上で、従来の位相差センサーも併用する、ダブル位相差フォーカスで、より柔軟で高速かつ正確なオートフォーカスを実現できています。かなり良い仕上がりになったと思います」

--- ということは、α900の後継機種は予定がないということでしょうか?

「現時点で後継機種開発の予定はありません。トランスルーセントテクノロジで得られる、カメラとしてのパフォーマンスが圧倒的なので、ここから光学ファインダーに戻るのではなく、トランスルーセントテクノロジを磨き込む方向に行く方が有益だと考えているからです」

--- トランスルーセントテクノロジは、EVFが持つ将来への可能性と、一眼レフカメラが持つ速射性や応答性の高さといったものが結合しているとは思いますが、一方で万能ではないとも感じるのですが、”圧倒的”とするトランスルーセントのパフォーマンス、魅力はどこにあるとお考えですか?

「前述したように、ファインダー内で見ている画像と、実際に撮られる画像が同じ、というの点が光学ファインダーとは全く異なる点です。撮影できる画が見えれば、撮影できる写真を予測しながら、様々な撮影パラメータを使いこなすことができます。私自身、当初は光学ファインダーに慣れていたため、EVFに違和感を感じるところはありました。しかし、繰り返し使っているうちに手放せなくなる、今ではEVFの方が使いやすくなっています。色の調整や露出調整がそのまま反映されるとうのは、トランスルーセントが達成しているもっとも素晴らしい利点です」

「常時オートフォーカスや合焦速度も優れています。動画撮影している人にとっては、動画撮影時に動きモノの被写体を追いかけて撮影できないことが一番の不満なので、そこが解決できるのは大きい」

「ファインダーに関しては、光学ファインダーだけだった従来の一眼レフが持つ概念、先入観があって、EVFはダメという風潮がありますが、それぞれに利点と弱点があります。確かに、優秀な光学ファインダーが持つウットリするような像の美しさや没入感は、まだトランスルーセントテクノロジのEVFにはありません。しかし、この部分はまだまだこれから上げていけるところです」

--- フルサイズトリオに採用しているセンサーは、すべて同じものでしょうか?

「実はRX1だけが異なります。これはRX1の場合、撮像面に位相差センサーを埋め込む必要がないためです。RX1の場合、コントラストAFのままでも高速なオートフォーカスが行えますから。しかし、センサーの性能はどれも同じでと考えていただいて構いません。α900の世代からくらべると、実効感度はかなり上がっています。今、イメージセンサーの技術、特性はものすごい勢いで進歩していますから、その性能に驚いていただけると思います」

--- ハンディカムのVGシリーズにもフルサイズセンサーを採用しましたが、動画用で“フルサイズ”というと、通常は35mmフィルムの縦走りで撮影させるときのサイズ(Super 35相当)を言いますよね? VG900は映画撮影用のデジタルシネマカメラよりも、センサーが大きいことになります

「単板か3板かという違いがありますし、さらに上の4Kカメラに比べるとまた別の切り口での違いはありますが、一眼レフの形状で動画性能が上がったといっても、その形は嫌いだという制作者の方も多く、思い切ってフルサイズセンサーを使った動画カメラを作って見ました」

「コンシューマ向けのシステムカメラを使って、仕事用の動画を撮影するというトレンドが、映像製作の業界に生まれており、ここからキヤノンを筆頭に、一眼レフカメラで映画やドラマを撮る時代へと入って来ました。エントリーレベルならば、20万円ぐらい出せば、作品作りに使える動画カメラを使うことができるんです。しかし、動画撮影に元々取り組んできた人たちにとって、一眼レフカメラの形や機能性、ボタン配置などで動画撮影するのは、なかなか大変なんですね。できれば、ムービーカメラらしい操作性のハードウェアで撮影したいという声は少なくないんです」

「本格的なプロ向けのカメラとしては、NXCAMのFS700(Super35サイズのCMOSセンサーを搭載したEマウント互換のビデオカメラ)がすでに準備できていますから、それ以上の使い方はそちらを案内することになるでしょう。こちらは近いうちに正式に案内を出します」


明快なコンセプトのDSC-RX1。レンズ性能にも自信あり

--- フォトキナが始まる前からRX1が話題になっていましたが、”まさかフルサイズ?”と思っていた方もいると思います。これは1インチセンサーを採用したRX100と一緒に開発をしていたのでしょうか?


サイバーショットDSC-RX1。発売は11月16日。店頭予想価格は25万円前後の見込み

「はい、RXシリーズは2機種とも同時に開発をスタートさせています。いわゆる高級コンパクトを作ろうとしたときに、RX100のような持っていて嬉しい、しかし実用性が高く日常で使う道具として手に馴染むものがひとつ必要になりますよね。他にも、写真を撮影していないときであっても、見ているだけで、あるいは触っているだけで十分に満足できるモノとしての魅力に長けた製品も考えられます。RX1はさらにもうひとつ、デジタル一眼レフは持っているし、写真のクオリティはベストなものを求めたいけど、いかんせんシステムサイズが大きすぎる、という人のためのカメラです」

--- 実物を見るまでは、もっとサイズが大きいと思っていたのですが、手に取ってみるとフルサイズとは思えないコンパクトさ(ボディ部は取材に用いていたDSC-GX1よりも薄く、幅は少し狭く、高さは同等)で、重さも軽量でした。とはいえ、単焦点レンズで25万円のコンパクトデジタルカメラ。かなり思い切った印象ですね

「もちろん、これが大量に売れるとは考えていません。しかし、せっかくフルサイズセンサーを使うのですから、これぐらい極端な、コンセプト明快なカメラの方がいいと考えました。高画素・高画質ですし、デジタルズームでは超解像処理も行うので、出力画素を少し小さめにすれば、デジタルズームがかなり使えると思います。カスタムボタンに拡大率を設定して、ワンタッチで望遠に切り替えるといった設定も可能なので、以外に単焦点でも使い方の幅は広いと思います」

「画質に関してはフルサイズセンサーの採用とともに、レンズ性能にも自信があります。恐ろしく解像度が高いとのフィードバックもいただいていて、これから製品が仕上がってくるのが私自身、とても楽しみです。たくさん売れないでしょうが、そこそこは売れますし、一眼レフカメラに拘る方が使いたいコンパクトデジタルカメラとして、存在感を示してくれればいいと考えています」


Eマウントでハッセルブラッドと提携

--- 前回のフォトキナ2010では、Eマウントのオープン化を検討という話があり、翌年の春にフォーマットのオープン化を発表しました。フォトキナ2012でもっとも驚きだったのは、ハッセルブラッドがEマウントのライセンサーとして、対応ボディを出すという発表でした。


ハッセルブラッドブースに展示されていたEマウント機のプロトタイプ

「昨年のCP+でEマウントのライセンサー応募を始めました。その後、タムロンさんに発売していただき、カールツァイスも3本を発表し、うち2本を発売、ハッセルブラッドがボディをということで、かなりトントン拍子でライセンスプログラムが進んでいます。先方(ハッセルブラッド)から、一緒にやりませんかと提案が来て、ならばどんなことができるかを一緒に考えようということになりました」

--- スペックなどを見るとNEX-7と同じ要素が多いのですが、ソニーはどんな部分をハッセルブラッドに提供しているのでしょう。

「必要とされる、あらゆるキーデバイス、キーテクノロジをハッセルブラッドに供給しています。センサー、バッテリー、LSIなど、望まれるものは全てです。生産もソニーが部分的に受託しています」

--- ハッセルブラッドがボディを販売することで、NEXとEマウントを巡る環境には変化が現れるでしょうか?

「確実にEマウントへの見方は変わってくると思います。これまでも、タムロンとカールツァイスにEマウントを支持いただいていましたが、ハッセルブラッドが発売となれば、彼らの中判用レンズなども使えるようになるでしょう。グリップの握りやすさやサイズもバランスなどで、よりしっかりとした作りになっているのは、そうしたレンズへの対応という意味もあるのでは」


AマウントとEマウント、力の入れ具合は平等に

--- 今後、AマウントのシステムとNEX、どのような棲み分けを行っていくつもりですか? 両方のマウントでフルサイズとAPS-Cサイズがのセンサーがあり、部分的には想定ユーザー層も重なっているように見えます。

「レンズ開発という意味では、AマウントとEマウント、力の入れ方の比率は平等です。現時点でEマウント向けレンズが足りないため、新しいレンズはEマウント対応のものが多いのですが、これがすなわちEマウント偏重というわけではありません」

「一方で、ボディ販売の伸び率という面では、NEXの方が圧倒的に多きいことも事実です。ミラーレス機の中での世界シェアは、NEXが41%でトップです。こうした数字を活かして、Aマウント、Eマウント合わせて世界シェア15%を目指したいと考えています」

「また、フルサイズセンサーのような上位モデルをシッカリと作り込むと、下位モデルも売れる傾向があります。だからこそ、上も下も、あらゆるラインナップのモデルをしっかり作り込み、レンズシステムを充実させていきます」

「さらには、RX1をはじめ、若干やり過ぎと言われようとも“エクストリームな体験”が得られるカメラを提供し、顧客が望む製品を製品化しつつ、それらを熟成させていきます。NEXは楽しさの追求。αは常識、限界を超越したパフォーマンスと機能、そしてRXシリーズはエキサイティングで惚れてしまうような製品、そんなコンセプトで今後も商品を作っていきます。期待してください」


2012年9月22日:「NEXCAM」を「NXCAM」に改めました。


(本田雅一)

2012/9/22 20:35