女子のための動きモノ写真教室〜ブルーインパルスを撮ろう!準備編〜

ブルーインパルスとは、宮城県松島基地の第4航空団に所属する第11飛行隊のアクロバットチームで、航空自衛隊の顔とも言われています。航空祭や国民的なイベントなどでは、大空をキャンバスに、青と白の6機の機体で接触するのではないかというようなダイナミックな演技や、美しい白いスモークの軌跡を描いて地上に感動を届けてくれます。

雄大な大空を華麗に飛び回るブルーインパルス。飛行機に興味がない人も間近でアクロバットな飛行を見れば虜になること間違いなし!

空を素早く飛び回るので撮影するのは難しいと思われるかも知れませんが、演目や飛び方、どこで技が出されるかなどは決まっているので、それらを頭に入れておけば意外と簡単に迫力のある写真を撮ることができます。実は、動きモノ初心者さんにオススメの被写体といえるのです。

カメラを手に入れてすぐは「オート」や「プログラムオート」で撮影していて、次の段階として「絞り優先AE」で撮影に慣れる……という方は多いと思います。特に女性の方は、動きモノの撮影が苦手な方がよく見られます。そこで、数回に分けて「シャッタースピード優先AE」を使いこなせるようになるためのお話をしたいと思います。まずは動きモノの代表、飛行機の撮影方法としてブルーインパルスの撮り方について解説しますが、ここはまだ準備編。あまり苦手意識を持たずにさらっと読んでくださいね!

ブルーインパルス撮影にオススメの機材

ショーセンターで行われるアクロバットなシーンは望遠レンズで寄って撮影したいですね。

撮影機材ですが、ニコンを例としてあげますと、私がブルーインパルスの撮影に行くときは「D4S」に「AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR」を着けたものをメインとして、「D610」に「AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR」を着けたものをサブとして使用しています。

ブルーインパルスの演目内には、400mmのズームでなるべく寄って撮影したい演目と、大空にハートを描くような広角でないと撮れない演目が混ざっています。レンズ交換する時間はありませんのでボディは2台用意しましょう。

ブルーインパルスといえば大空に描く大きなハート! 意外と近いところでとても大きく描かれるので広角レンズ必須です。

とはいっても、いきなりそんな機材用意できないよ!……ですよね、当たり前です(笑)。 まず、D4Sに関しては敷居が高いと思います。秒間約11コマの連写性能はとてもありがたいのですが女性の腕には重いのも確かです。そんな方は、「D750」や「D610」など軽めの中級機がオススメです。もしくは「D7100」のような連写性能の高いAPS-C機も、初めて動きモノを撮る方には扱いやすいのでオススメです。

レンズは「AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR」が一本あればブルーインパルスの撮影にはほぼ問題はありません。ですが、こちらも価格的に敷居が高ければ200mmくらいの望遠レンズでも構いません。航空祭ではショーセンターといわれるアクロバットが行われることが多い中央近くの位置にいれば、200mmでも6機がはみ出してしまうほど近くを飛びます(※開催される会場やその日の天候によって変動はあります)。

逆にもっと寄りたいとなれば、500mmのレンズを手に入れましょう。会場は三脚禁止のことが多いので、それ以上のサイズだと身体的に限界が早く来ます(笑)。

いずれは手に入れて欲しい望遠ズームレンズですが、まずは手に入れやすい機材からという方も多いでしょう。その場合は「D7100」などのAPS-C機に、中古でもいいので望遠レンズを付けて35mm判換算で400mmになるようにしてみましょう。レンズはレビューや口コミ、周りの方のアドバイスなどを参考にして、なるべくAF性能のいいものにしてください。

さて、ここでまた敷居が上がるのが2台目のボディですが、こちらはコンデジでもOKです。ボディ2台を持ち運ぶのは腕力の敷居も高いですからね。もっと敷居を下げるとiPhoneでもOKです。iPhoneのカメラは画角が広角なので、空はとても撮りやすいです。ですが、いつでも撮影できるように取り出しやすいポケットなどに入れておくことだけは忘れないでください。それと、広角側が足りなくてスモークが画面内に入りきらなかったらすっぱり諦めましょう! 広角側で撮影する演目は少ないですから、その他の演目に気持ちを切り替えるのが、いい写真を撮る最大の秘訣です!

展示飛行とは?

第1区分の曲技飛行では横転や宙返りの課目が多いので機体のすべての面を撮影することができます。

ブルーインパルスの展示スケジュールは航空自衛隊の公式サイト内で発表されます。ブルーインパルス展示飛行予定のページを確認して、実施団体や基地のサイトで詳細を確認してから出掛けましょう。

今年のスケジュールは執筆時現在ではまだ発表されていませんが、各基地の航空祭は夏頃から北の方から南下して行われます。ですが、それ以外でも民間のお祭りなどで展示飛行が行われることがありますので要チェックです!

上の機材紹介ではブルーインパルスの演技をわかりやすいように「演目」といいましたが、正式には「課目」といいます。また、ブルーインパルスのアクロバット飛行は「展示飛行」といいます。この展示飛行は大きく3つに分けられます。まず、宙返りや横転などいわゆる派手な課目を編隊やソロで行う「曲技飛行」。次に機体の傾きが90度以内の課目で行う「編隊連携機動飛行」。そして様々な隊形で会場上空を低空飛行する「航過飛行」です。

また、「曲技飛行」はさらに4つの区分に分けられます。どの区分が行われるかは、展示飛行当日の天候状態や空域の状況によって決定されます。簡単に言うと、雲の状況によって課目が変わります。雲が少なくて空域にドクターヘリなどのトラブルがなければ一番派手な第1区分、雲が多くて見通しが悪いような状況ですと水平方向のアクロバットが多い第3や第4区分に変更されます。これは課目途中でも変更されることがありますので、第1区分の課目をフルで見たことがある方はラッキーですね!

どの課目でもブルーインパルスのダイナミックさは体感できますが、イベントによっては展示飛行の開催に変更があることも……撮影日の天候チェックも怠りなく。

今回は機材とブルーインパルスについて少し解説させてもらいました。次回は、動きモノを撮るときに初心者さんにオススメの撮影設定についてお話したいと思います。

撮影機材:ニコンD4S、AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR、ニコンD610、AF-S NIKKOR 16-35mm f/4G ED VR

(2015/2/4)
(みさき なな)東京都出身。知り合いの写真家の作品撮りにモデルとして関わったことがきっかけで写真に興味が沸き独学で写真の勉強をし、作品を持ち込んだ出版社に編集として入社。2010年独立。現在はカメラ雑誌の編集やWebでのカメラレビュー、写真講座の講師として活動中。「Pentax+」でも記事を連載。 Twitter:@cosaruruブログ:http://misakinana.com