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【特別企画】津軽色彩紀行

パナソニック LUMIX DMC-L1で津軽を撮る
Photo by 中里和人

 青森県津軽地方。広々とした水田やりんご畑、青々とした森を従え、その中心にそびえるのが、富士山を少しスリムにしたような岩木山である。稲穂が揺れだし、りんごが色づき出す夏の終わりに、津軽のシンボル岩木山周辺をぐるりと回ってみることにした。

 津軽には今までにも数回来ていて、その時目にした集落や地蔵さんの目醒めるような原色が気になっていて、今回はじっくり味わってみたいと思っていた。その撮影に同行してくれたカメラが、デジタル一眼のパナソニック LUMIX DMC-L1である。注目のライカDバリオエルマリートレンズ14~50mmを装着したカメラは、一緒に持っていった銀塩一眼レフカメラに比べ軽くて、すぐに軽やかなスナップモードに入っていけた。

 今回の撮影レポートではぶらり旅に出て、コンパクトカメラのように気軽な撮影ができるのかという点に重点をおいてみた。そのため、プログラムAE、JPEG、スーパーファインモードでの撮影にして、カメラが旅の写真日記であるような使い方にした。

 大きな町である弘前や五所川原には、どうも原色のイメージが弱く、町中は足早に素通りして、岩木山を右手に見ながら日本海方面、鯵ヶ沢を目指した。細い山道へと車を走らせると、木々の隙間からカラフルな集落が現れた。

※画像のリンク先は撮影した画像をリネームしたものです。
※すべてプログラムAE/3,136×2,352ピクセル/ISO100/AWBで撮影しています。
※画像下のデータはシャッター速度/絞り/露出補正値/実焦点距離です。


家々の屋根や壁には、赤、青、緑など色とりどりのトタンやペンキが施されていて、どこか遠い異国にやってきたようなトリップ感に襲われた。緑の山に赤や青の家々の色彩描写が美しく、肉眼視した時のイメージに近いものになっていた
1/160秒 / F8 / -0.33EV / 33mm

 さらに森の中を進んで行くと、山に囲まれた中に収穫を控えた水田が、少し黄味がかって現れた。ずっと森ばかり続く風景だったので、集落と水田の景色にほっとなった。しかし、よくよく風景を眺めていると、水田の輝きの中には何本もの電柱が立っていて、自然景に人工物が混入したミスマッチな光景でもあった。


遠くのほうに点景のように立つ電柱だったが、稲穂の中に埋没することなく、人工的な質感の違いを際立たせるデリケートな再現になっていた
1/80秒 / F5.6 / -0.33EV / 44mm

 さらに山の奥へ入っていくが、ほとんど森だらけでまったく人の気配がない。どこまで森が続くのかと思っていたら、突然、目の前に全村水色の屋根の集落が出現した。二十軒ほどの家々が全て水色で構成されていて、まるでお伽の国の景色のようだった。

 まるで絵本のなかに出てきそうな光景に出会い、津軽の森がこの集落を水色に純粋培養してきたのかもしれないと思った。


この日は天候が悪く、雨が降ったり止んだりの日だったが、撮った写真の描写を見てみると、やわらかさの中にクリアーなキレがあり、微妙な水色、青色の違いも出ていて、ライカレンズの特性がよく出ていた
1/80秒 / F5.6 / -0.33EV / 44mm

 後日、五所川原の飲み屋の主人に、鯵ヶ沢の山で水色の集落に出会った話をしたところ、「山の方に住む人は海がないから、海の色に憧れているんだな。山の中には青い色はないからさ」と、さらりと言われ、その明解さに妙にうなずいてしまった。

 岩木山を一周して、青に次いで多い原色は赤系だった。赤系には朱色、あずき色、紅色などがあるが、森や畑の緑に栄えた色彩は実に生命力に溢れている。冬になって雪の中に埋没しないように、家に派手な色を塗ると言っていた津軽の人がいたが、確かに白銀世界の中で赤い屋根を見たなら元気が出てきそうな気がする。


岩木山からはかなり東、青森市の南に位置する浪岡で出会った赤い家。青森津軽の家々はたいがいそうであるが、母屋が赤なら小屋も蔵も赤で統一されていてる。曇りの日だったが色彩は淀まずに、空のどんより感といいバランスで写されていた
1/80秒 / F5.6 / -0.33EV / 44mm

 色の集落につい目が行きがちであるが、目線をやや下に向けてみると、お地蔵さんの多いことに気づいた。鯵ヶ沢の村はずれで見かけた地蔵堂は、まさに原色天国模様。津軽の足下には、堂内には身近な極楽が溢れていた。


地蔵堂の中は暗めだったが、さまざまな極彩色の世界。総ての色の見本市状態であったが、天井から床の外光の強弱も描写しながら、実にデリケートな色と明暗の再現がなされていた
1/15秒 / F2.8 / -0.33EV / 14mm

 ここからは、町の片隅で見かけた小さな景色をいくつか紹介してみる。


岩木山の裾野にある岩木山神社の狛犬。初めて見る垂直な動きに思わずシャッターを切った。グレイの石の硬質な質感が鮮明に写されていた
1/100秒 / F6.3 / -0.33EV / 28mm

岩木山のふもとには、あちこちにりんご畑が広がっている。秋の収穫が近づき、早稲のりんごが色付き始めていた。曇天の逆光の写真だったが、補正もせずオートのままできれいに捉えことができた
1/60秒 / F4.5 / -1EV / 50mm

岩木山サービスエリアにあった看板絵。どこかマットでフラットな描写に惹かれ撮影してみた。ちょうど絵や印刷物の複写と同じで、少し色褪せた看板絵の質感もきれいに出ていた
1/80秒 / F5.0 / -1EV / 38mm

五所川原の町外れに咲いていた朝顔軍団。電柱を駆け上る花の群れは巨大アサガオオブジェになっていた。やや淡い色彩の朝顔だったが、そのやわらかい色調がよく描写されていた
1/125秒 / F7.1 / -1EV / 29mm

 長い山道の撮影行を抜けると、鯵ヶ沢の町に入った。日本海に続く浜辺で日没を迎えた。テトラポットにはたくさんの海鳥が群れをなし、その群れからはぐれた2羽の鳥が浜にいた。


ほとんど薄暗くなった浜辺で、手ブレを恐れずにシャッターを切って、手ブレ補正がどこまで効くかを試してみた。肉眼でもかなり薄暗い中、かつてならほとんど失敗したはずの撮影が3割ほどの成功をおさめた。もちろん、暗いなかでの手持ち撮影の限界はあるが、手ブレ補正機能が効いたのも事実である
1/60秒 / F5 / -0.33EV / 50mm

 一面の雲間から西陽が差し出した。鯵ヶ沢の海に光の筋が立って、神々しい風景が展開されていく。


露出が非常に難しい景色だったが、雲と光と海とのバランスもよく、ほとんど体感したイメージに近い描写が得られた
1/160秒 / F8 / -1EV / 50mm

 津軽の原色を求める旅のクライマックスにはでき過ぎの景色である。巡り歩いた赤、水色、群青など原色の家々や地蔵、田畑や森、そして今目の前に広がる空と海を眺めていると、ねぶたや棟方志功の色が混じりだし、津軽カラーとなって立ち上ってくるのだった。



URL
  パナソニック
  http://panasonic.jp/
  製品情報
  http://panasonic.jp/dc/l1/

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中里 和人
(なかざと かつひと)1956年三重県生まれ。法政大学卒業後、1984年よりフリーランスカメラマン。会場探し、会場作りを自ら手掛け、町工場跡や市場、洞穴などでのユニークな写真展を精力的に開催。写真集「湾岸原野」(六興出版)、「小屋の肖像」(メディアファクトリー)、第15回写真の会賞受賞作「キリコの街」(ワイズ出版)、「逢魔が時」、「長屋迷路」(ピエブックス・文/中野純)、相模原写真新人賞受賞作「路地」(清流出版)、最新刊「夜旅」(河出書房新社・文/中野純)他

2006/10/19 01:15
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