デジカメ Watch

【特別企画】デジタル一眼でフォーミュラ・ニッポンを撮る

~サーキットでの撮影術

マニュアル露出 / 1/3,200秒 / F2.8 / ISO200 / 0EV / 分割測光 / AF-S
Nikkor 400mm F2.8 G ED VR / 400mm

 デジタル一眼レフがその性能を遺憾なく発揮するシーンといえば、スポーツ撮影があげられる。なかでもモータースポーツはその華やかさ、迫力で、1度は撮ってみたいと思わせられる分野だ。

 だがモータースポーツ撮影は、被写体が高速で動く、プロの職人芸が必要な世界だ。よい写真を撮るには、さまざまなお約束やコツを習得しておく必要がある。ここでは自身がモータースポーツに参加した経験を持ち、撮影もするカメラマンの塙真一氏が、フォーミュラ・ニッポンを例に、モータースポーツ撮影のコツを伝授する。

※作例は、サムネールをクリックすると、等倍の画像を開きます。
※すべてカメラはD300、画像解像度は4,288×2,848ピクセル、ホワイトバランスは晴天です。
※画像下のデータは露出モード/シャッター速度/絞り/感度/露出補正値/測光方式/レンズ/焦点距離です。


サーキットを走るマシンを撮るなら望遠レンズを用意

今回はD300を使用した
 サーキットを走行するレーシングマシンを撮るなら、少しでも大きく写せる望遠レンズを用意したい。最低でも300mm。できれば400mm以上の望遠を使いたいところだ。

 モータースポーツを撮影するプロのカメラマンは、マシンが走るすぐそばのコースサイドから撮ることができるが、一般のアマチュアカメラマンはコースからある程度離れた観客席から撮らなければならないため、マシンを大きく写したいならプロカメラマン以上の望遠が必要となるのだ。

 とはいえ、モータースポーツ専門のプロカメラマンが使うような500mmや600mmといった超望遠レンズは、レンズだけで100万円以上もしてしまう。そこまでの投資ができないという場合には、可能な限りの望遠レンズで撮っておいて、あとからトリミングなどでマシンを大写しにするしかないだろう。

 また、デジタル一眼レフの場合、35mm判フルサイズセンサーを搭載するものよりも、APS-Cサイズのセンサーを搭載するもののほうが、マシンを大きく捉えやすい。APS-Cサイズのセンサーを持つカメラなら、300mmのレンズを装着しても、450mm相当の撮影が可能となるからだ。今回はAPS-CサイズとなるニコンDXフォーマットを採用するD300を撮影機材としてチョイスした。


今回使用したレンズは「AF-S Nikkor 400mm F2.8 G ED VR」(左)と「AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6 G」。レース以外の場面ではAF-S DX Zoom-Nikkor ED 17-55mm F2.8 GやAF-S DX Zoom-Nikkor ED 12-24mm F4 Gも使用した

撮影場所を選ぶ

 サーキットによっても違うが、コースと観客席とが近い場所と遠い場所があるのが一般的。撮影に行く前に、あらかじめどのコーナーが近くて、どのコーナーが撮影しやすいのかなどを調べておくと良いだろう。

 ちなみにレースのスタートとゴールが見られるメインスタンドと呼ばれる場所があるが、ここはレーシングマシンが高速で直線を駆け抜けていくだけの場所。のんびりレースの成り行きを見守るにはよいが、撮影にはあまり向かない場所といえる。

 初めてのサーキット撮影に向いている場所というのは、ヘアピンコーナーなど、カーブが大きく回り込んだ場所。マシンの動きもつかみやすいし、何よりも速度が落ちるため流し撮りなどもやりやすい。


富士スピードウェイのヘアピンコーナー メインスタンドは撮影には向かない

ヘアピンは比較的低速で曲がるコーナーのため、マシンを捉えやすい。また、コーナーが回り込んでいるため、速度が落ちている時間が長いのも特徴だ。写真はF3のマシンだが、より高性能なフォーミュラ・ニッポンのマシンでもかなり速度が落ちるため、ファインダー越しにもはっきりとマシンを捉えることができる
マニュアル露出 / 1/1,600秒 / F4.5 / ISO200 / 0EV / 分割測光 / AF-S Nikkor 400mm F2.8 G ED VR / 400mm



速度が落ちたヘアピンなら連写の成功率もアップする。ただし、コーナーを抜けきる手前あたりから加速体勢に入るので、それに合わせてカメラを振ってあげる必要がある。もちろん、AFモードはAF-Cに合わせておくこと
マニュアル露出 / 1/1,250秒 / F4 / ISO200 / 0EV / 分割測光 / AF-S Nikkor 400mm F2.8 G ED VR / 400mm

コースと観客席を隔てるフェンスに注意

 コースと観客が観戦できる場所には必ずフェンス(金網)がある。危険防止のためなので仕方がないことなのだが、このフェンスが撮影の邪魔になるのだ。特に今回取材を行なった富士スピードウェイには、このフェンスが二重に設置されているのだ。このため、低い位置から撮影すると二重のフェンスが写り込んでしまう。望遠レンズを使えば多少はボケてくれるのだが、それでもフェンスを完全に写らないようにするのは難しい。

 このフェンスを根本的にクリアする方法は1つしかない。それは、フェンスよりも高い位置から撮影すること。コース脇の観戦スペースには、土手になっているところがあったり、フェンスよりも高いところまでスタンドが設置されているところもある。こういう高い場所に登ってフェンスを避けるのである。ただし、この方法の難点は、コースからかなり離れてしまうこと。このため、300mm以上の望遠レンズがないと、コースを走るマシンがかなり小さくなってしまう。

 フェンスをクリアする方法としてサーキットでよく見られるのが、脚立の使用だ。高さを稼げる大型の脚立を持って行けば、かなり撮影の自由度がアップする。ただし、サーキットでの撮影というのは基本的に徒歩での移動となり、決勝日などはかなりの人出があるため、あまり大型の脚立を持ち歩くのは現実的とはいえない。そこで、小型の踏み台をおすすめしたい。小型の踏み台とはいえ、通常より30~40cm高くなるだけで、ずいぶんと撮影ポジションが変わってくるものだ。撮影しないときにはイス代わりにもなるし、重量もそれほど重くないので持ち歩きにもそれほど不便は感じないだろう。

 また、どうしてもフェンス越しに撮影をしなければならないときは、少しでもフェンスが目立たないように、なるべく絞りを開けめにして撮るとよい。


小型の脚立でも、撮影の自由度が上がる フェンス越しに撮影するときは、絞りを開けてフェンスをボカす

少しでもマシンを大きく写そうと、フェンス近くまで寄ってみたが、金網の模様がハッキリと写ってしまった。とくに、開放F値の暗い望遠レンズや、明るいレンズでも絞り込んだ撮影では金網の写りが目立ってしまう
マニュアル露出 / 1/250秒 / F11 / ISO200 / -0.67EV / 分割測光 / AF-S Nikkor 400mm F2.8 G ED VR / 400mm
絞りを開放値にすることで、被写界深度を浅くして金網を目立たないようにして撮影した。ただし、その分シャッター速度を速くせざるを得ないため、スピード感のある流し撮りはできない
マニュアル露出 / 1/5,000秒 / F2.8 / ISO200 / -0.67EV / 分割測光 / AF-S Nikkor 400mm F2.8 G ED VR / 400mm

観戦スタンドのない場所だが、ちょうど高台のような土手になっている場所があったため、そこからコーナーを立ち上がるマシンを撮影した。写真の下部に金網がギリギリかかっているが、マシン自体はクリアに撮れた
マニュアル露出 / 1/500秒 / F6.3 / ISO200 / 0EV / スポット測光 / AF-S Nikkor 400mm F2.8 G ED VR / 400mm
同じコーナーだが、踏み台を使って少しでも高いポジションから撮影してみた。カメラの高さにするとわずか40~50cmほどだが、それでも踏み台がない状態よりは金網が気にならなくなった。「わずかでも高い位置から撮りたい」という場面では小さな踏み台でもかなり有効
マニュアル露出 / 1/250秒 / F7.1 / ISO200 / 0EV / スポット測光 / AF-S Nikkor 400mm F2.8 G ED VR / 400mm

一脚をうまく使う

一脚
 望遠レンズを使って流し撮りをするなら、一脚を使いたい。一脚は、三脚の脚(あし)が1本しかないものだ。脚が1本なのでそれだけで自立することはできないが、重たいレンズとボディを支える腕の疲れは格段に少なくなる。一脚なしで1日中撮影していると、腕が疲れて手ブレが増えてしまうので、できれば一脚を用意しておきたい。

 一脚を使いこなすには少々コツがいる。一脚とカメラをどう繋げるかなのだが、一般的には雲台を使わずにカメラと一脚をダイレクトにねじで固定する。雲台を使わないほうがカメラをしっかりと固定でき、安定感が高い。だが、流し撮りの際には、一脚の脚の地面に着いた先端部を軸にしてカメラを回転させる必要があるため、うまく回転させるにはかなりの熟練が必要となるのだ。特にコーナーなどで縦方向にカメラを振る必要があるときは相当に難しい。もちろん、慣れてしまえばよいのだが、最初はなかなかうまくいかないと思っておいたほうがいいだろう。

 一脚に不慣れなら、自由雲台をかませると良いだろう。撮影前にカメラを支えるために一脚を使用するときには、自由雲台のネジを締めておいてカメラがふらつかないようにする。そして撮影を開始するときに雲台をフリーにしてあげればよい。雲台なしでダイレクトに接続する場合に比べれば、若干安定感には欠けるが、流し撮りの最中にカメラを自由に動かすことができるはずだ。自由雲台を使用する場合の注意点は、あくまでも重さをサポートするだけのツールだと念頭に置いておくこと。くれぐれも雲台がフリーになっている状態で一脚だけを持ったりしないようにしたい。


雲台を使わず一脚のねじにダイレクトにカメラを装着する。一脚とカメラが完全に一体化するため、安定感は抜群。一脚を手で押さえているだけでも、カメラを落とすという心配はない。ただし、この状態で流し撮りをすると、意外にもマシンをフレームに捉え続けることが難しいことに気づかされる 一脚に自由雲台を装着し、その上にカメラを載せる。雲台のねじを締めることでカメラをしっかりと固定することができるが、望遠レンズなど重たいレンズをつけていると、ねじをきつく締めてもぐらついた感じになってしまう。だが、ねじをゆるめにしておけば、流し撮りの時に一脚がつっかえ棒になることはなく撮影はしやすい

シャッター速度を変えて、2種類の表現方法を撮り分ける

コーナーを立ち上がり、フル加速を開始するマシンを1/60秒で流し撮りしてみた。さすがにこのシャッター速度では完全にマシンを写し止めることは難しい
マニュアル露出 / 1/60秒 / F20 / ISO200 / 0EV / 分割測光 / AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6 G / 300mm
 走行中のマシンを撮るには主に2つの撮り方がある。まず1つは高速シャッターを使い、マシンの動きを写し止める手法。レーシングマシンの動きはとても速く、肉眼ではマシンの動きやドライバーの姿勢などを見ることはできないが、高速シャッターを使えばこれらを写真として記録することができるのだ。

 高速シャッターでマシンを写し止める場合のシャッター速度は、1/500秒から1/1,000秒程度を目安にすればよいだろう。もちろん、レーシングカーのカテゴリや撮影場所などによってもシャッター速度は変わってくる。そのため、一概にこのシャッター速度なら確実にマシンが止まるとは言い切れない。とにかく、可能な限り速いシャッター速度を選択するようにすればよいだろう。

 もしレンズの開放F値が暗めで、あまり速いシャッターを切れない場合は、感度をISO400程度までアップするなどして、シャッター速度を確保するようにしたい。この撮り方では、シャッター速度が速いため、手ブレや被写体ブレが起こりにくく、失敗写真が少ないのが特徴。モータースポーツ写真をはじめて撮る人は、まずはこの方法で撮ってみるとよいだろう。

 そしてもう1つの撮り方だが、これはシャッター速度を遅めにして、流し撮りする方法だ。流し撮りは、クルマの動きに合わせてカメラを振りながらシャッターを切る撮り方。シャッター速度を遅くすることで、レーシングマシンの背景をぶらし、マシンのスピード感を表現するという手法だ。こちらの場合も、最適なシャッター速度はマシンの速度によって変わってくる。

 今回撮影をしたフォーミュラニッポンの場合、1/250秒以下ならある程度動きのある写真が撮れるだろう。また、1/60秒程度のシャッター速度なら背景も大きくブレ、非常にスピード感のある写真に仕上げることができる。ただし、シャッター速度が遅くなる分、失敗すると背景だけでなく肝心のレーシングマシンまでブレブレになってしまう。シャッター速度を遅くするほどに迫力のある写真となり、シャッター速度を速くするほど失敗が減る。そのあたりのバランスを見極めながらシャッター速度を決めるようにしたい。


1/160秒での流し撮り。コーナーの立ち上がりで加速するマシンの動きに合わせてカメラを振った
マニュアル露出 / 1/160秒 / F13 / ISO200 / -0.67EV / 分割測光 / AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6 G / 300mm
1/160秒というシャッター速度だが、マシンの動きにカメラをリンクすることができずブレてしまった。しかも、横方向のブレに加え、縦のブレまで入ってしまった。流し撮りはとにかくシャッター速度を変えながら、一番いいところを探すのがコツだ
マニュアル露出 / 1/160秒 / F13 / ISO200 / -0.67EV / 分割測光 / AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6 G / 300mm

1/4,000秒という高速シャッターを使い、マシンを写し止めた。マシンの動きに合わせてカメラを振りながらシャッターを切れば、このシャッター速度ならマシンを完全に止めることができる。ただし、タイヤまでが完全に止まっているため、走っているという感じがなくなってしまう
マニュアル露出 / 1/4,000秒 / F2.8 / ISO200 / 0EV / 分割測光 / AF-S Nikkor 400mm F2.8 G ED VR / 400mm
こちらは1/500秒で流し撮り。失敗することもあるが、かなりの確率でブレのない写真を撮ることができる。マシンは止まっているが、タイヤが回転していることが分かるので、走っている感じはギリギリ出せる
マニュアル露出 / 1/500秒 / F6.3 / ISO200 / 0EV / スポット測光 / AF-S Nikkor 400mm F2.8 G ED VR / 400mm

露出モードはマニュアル露出がおすすめ

レースが始まる前に、撮ろうと思う位置にカメラを向けて、カメラの露出計で露出を測る。露出は好みの問題だが、少しアンダー目にセットしておいたほうが、マシンの重厚感を表わしやすいと感じる
 走っているレーシングカーを撮るのにもっとも適した撮影モードは何だろうか。シャッター速度を調整することでマシンを写し止めたり、スピード感を表現したりするため、シャッター速度優先AEを使うのが一番便利そうだなのだが、決してそういうわけではない。シャッター速度優先AEの場合、それに対応する絞り値があることを露出計で確認しながら撮影しなければならない。

 一般的なデジタル一眼レフの場合、シャッター速度の設定範囲よりも絞り値の設定範囲のほうが狭いため、シャッター速度があまり速すぎたり、遅すぎたりするとそれに絞りが対応できず、露出アンダーやオーバーになってしまうこともあるからだ。

 また、シャッター速度優先AEや絞り優先AE、プログラムAEの場合、マシンの色にカメラの露出計が引っ張られ、明るさが一定にならないことも多い。白いマシンを撮ると暗めに、黒いマシンを撮ると明るめに仕上がってしまうのである。

 これを防ぐためにも、サーキットを走行するマシンを撮るときには、マニュアル露出モードをおすすめしたい。マニュアル露出というと少し難しい印象を受けるかもしれないが、決してそんなことはない。走行中のマシンを撮影する前にまず、サーキットの路面にカメラを向け露出を決定すればよいのだ。サーキットの舗装は基本的にグレー。舗装面が標準露出となるに絞りとシャッターを調整しておけばよい。そして、実際に走行するマシンを撮りながら、若干の露出調整をすればよいのだ。何枚か撮ってみて、マシンが明るすぎると感じればマイナス方向に、暗いと感じればプラス方向に微調整する。レーシングマシンを格好良く撮るコツは、少し暗めの露出にすることだ。こうすることで、太陽などの光を反射する部分がキラリと光り、マシンを精悍に見せることができるのだ。



露出をマニュアルにしておけば、マシンの色やデザインが変わっても、写真全体の明るさは同じになる。あとは、撮りながら液晶モニターの表示やヒストグラムを見ながら微調整してあげればよい
マニュアル露出 / 1/5,000秒 / F2.8 / ISO200 / -0.67EV / 分割測光 / AF-S Nikkor 400mm F2.8 G ED VR / 400mm

横位置だけでなく、縦位置や斜めでも撮ってみる。

コーナーの外側が下になるようにカメラを傾けた。こうすることで、遠心力と戦うマシンの不安定な感じを表現してみた
マニュアル露出 / 1/4,000秒 / F2.8 / ISO200 / -0.67EV / 分割測光 / AF-S Nikkor 400mm F2.8 G ED VR / 400mm
 レーシングマシンは横長の被写体のため、カメラを横位置で構える方が画面の収まりがよい。だが、コースのレイアウトによっては縦位置で撮影してみたり、時にはカメラを斜めに構えることでレーシングマシンの躍動感を表現することができる。ファインダーを覗きながら、カメラを傾けてみてもなかなかイメージがつかみにくいので、いろいろな角度に傾けて撮ってみながら、どの程度の傾きが格好良く見えるかを判断するとよいだろう。


同じようにカメラを傾けているが、傾ける方向によってコースのアスファルトをどの程度写すかをコントロールすることもできる。この写真では進行方向側のアスファルト面を少し多めに入れてみた
マニュアル露出 / 1/2,500秒 / F4.5 / ISO200 / 0EV / 分割測光 / AF-S Nikkor 400mm F2.8 G ED VR / 400mm
コースのレイアウト上から、奥から手前へとマシンが走ってくるシチュエーション。こういう場合は、あえて縦位置で撮ることで、多くのマシンが連なっているのを表現することもできる。本当はもっと望遠レンズでグッとアップにしたいところだったが、観客席から300mmまで望遠ズームではこれが限界だった
マニュアル露出 / 1/400秒 / F10 / ISO200 / 0EV / 分割測光 / AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6 G / 300mm

逆光でマシンの反射を狙う

 朝の早い時間帯や夕方は太陽の向きが傾いてきて、撮影場所によってはマシンが逆光となることがある。そんなときは、マシンの動きをよく観察しながら、逆光で太陽の光をキラリと反射する位置を見つけると面白い。少し露出を絞り気味にして、マシンがキラリと光る瞬間を捉えるようにする。マニュアル露出モードを使っていれば、明るさの調整も自由自在だ。


マシンが通過する際、逆光の太陽をキラリと反射する一瞬があることが分かったので、そこにターゲットを合わせてシャッターを切った。ちょうどリアウイングに太陽が当たって、きらめいてくれた
マニュアル露出 / 1/1,250秒 / F8 / ISO200 / -0.67EV / 分割測光 / AF-S Nikkor 400mm F2.8 G ED VR / 400mm
逆光ではなかったが、露出を絞り目にしてマシンに反射する光を強調するように撮影した。凹凸の多いレーシングマシンだけに、光を反射する部分をうまく捉えるとかっこいい写真に仕上がる
マニュアル露出 / 1/8,000秒 / F4 / ISO200 / 0EV / 分割測光 / AF-S Nikkor 400mm F2.8 G ED VR / 400mm

状況に応じてフォーカスモードを切り替える

 フォーカスモードは、基本的に動いている被写体に追従するコンティニュアスAFモードが良いだろう。だが、使用するレンズなどによってはレーシングマシンの速度にAFの追従が間に合わずピンボケを多発してしまうこともある。そんなときは、フォーカスモードをMFに切り替え、あらかじめマシンが通過する場所にピントを合わせておく「置きピン」を使うのが良いだろう。

 また、今回使用したニコンのD300には被写体を51点のAFエリア全体で捉える3D-トラッキングAFが搭載されている。AFエリア1点でピント合わせを続けるよりはピンボケの確率も低くなるので、こういったAFシステムを利用するというのも手と言えるだろう。


フレームの中央など1点のAFエリアを使ってピントを合わせるなら、AFモードをAF-CのシングルエリアAFにセットしておくとよい
マニュアル露出 / 1/400秒 / F7.1 / ISO200 / 0EV / スポット測光 / AF-S Nikkor 400mm F2.8 G ED VR / 400mm
あらかじめ設定したAFエリアが常に点灯しているため、ヘルメットなどに狙いを定めてフレーミングし続けることが容易
マニュアル露出 / 1/200秒 / F8 / ISO200 / 0EV / スポット測光 / AF-S Nikkor 400mm F2.8 G ED VR / 400mm

マシンが速すぎて、1点のAFエリアではマシンを追い続けにくい場面だったので、51点ダイナミックAFにセットして撮影した。多少フレーミングがずれてもマシンのどこかにピントを合わせ続けてくれるため、大きなピンぼけにはなりにくいのが特徴だ
マニュアル露出 / 1/800秒 / F6.3 / ISO200 / 0EV / 分割測光 / AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6 G / 300mm

基本は連写モードにセット

 AFをコンティニュアスAFモードにしたら、連写と単写の切り替えも連写モードにしておきたい。レーシングマシンがコーナーなどに進入するところからシャッターを押しはじめ、コーナーを抜けきるまでの一連の動きを押さえるようにすればよいだろう。

 とはいえ、むやみやたらとシャッターボタンを押し続けて連写するのは控えたい。理由は、連写しすぎるとやはりメモリーカードの書き込み待ちが発生してしまうからだ。レース中はいつどこでどんなシャッターチャンスが訪れるかわからない。目の前でレーシングマシンがスピンするかもしれないし、連写し終えた次のマシンが追い抜きなどのバトルを演じるかもしれない。このため、できるだけバッファフルの状態はさけ、いつでもシャッターを切れるようにしておきたいものだ。

 そのためにも、メモリーカードはできるだけ高速タイプをチョイスしたいし、メモリーカードの容量にも余裕を持っておきたいものだ。




連写モードにセットして、一度ピントのあったマシンを連写で撮影した。マシンまでの距離があるため、AFエリアを外さなければピントは追従してくれる。ただし、あまり連写し続けると、さすがにメモリーカードへの書き込み待ちが発生してしまう
マニュアル露出 / 1/400秒 / F7.1 / ISO200 / 0EV / スポット測光 / AF-S Nikkor 400mm F2.8 G ED VR / 400mm

レースシーンだけでなく、ピットウォークも撮ろう

ピットウォークではレースシーンとはまた違った写真を撮れる
 レース中のレーシングマシンには当然近づくこともできないし、ドライバーの表情を見ることもできない。せっかくサーキットに行ったのだから、レーシングマシンも近くで見たいし、ドライバーの顔も見てみたい。

 そこでおすすめなのがピットウォークと呼ばれるイベントだ。ピットウォークは、レースや予選の開始前に一般のお客さんにマシンを見せたり、ドライバーがサインをしたりするファンサービスの一環なのだ。ピットウォークでは止まっているマシンの写真を撮ることもできるし、ドライバーやキャンギャルを撮ることもできる。ピットウォークは別料金となるが、1,000円程度の料金でレースシーンとは違った写真を撮ることできるのだ。


ピットロードに置かれたサインボード。レース中はこのボードを使って、ドライバーに順位やラップタイムなどを知らせる。こういうツールが無造作に置かれているところを撮れるのも、ピットウォークならでは
プログラムAE / 1/250秒 / F18 / ISO200 / 0EV / 分割測光 / AF-S DX Zoom-Nikkor ED 12-24mm F4 G / 12mm / ストロボ使用
モータースポーツの華ともいえるキャンギャル。ピットウォークの時間は、ほとんどのチームがピット前にキャンギャルを立たせているので、彼女たちを撮るのも楽しい。大勢がカメラを向けているが、声をかければちゃんと目線をくれる
絞り優先AE / 1/800秒 / F2.8 / ISO200 / 0.67EV / 分割測光 / AF-S DX Zoom-Nikkor ED 17-55mm F2.8 G / 55mm

ピットレーンの入り口付近に置かれたセーフティーカー。こういうクルマを撮るのもレース写真の彩りとして大切。さすがにここには人も少なく、思う存分撮影できた(笑)
絞り優先AE / 1/5,000秒 / F2.8 / ISO400 / 0EV / 分割測光 / AF-S DX Zoom-Nikkor ED 17-55mm F2.8 G / 17mm / ストロボ使用
正面はすごい人集りだったので、横からキャンギャルのお仕事風景をスナップ。横からでも声をかければ笑顔で振り向いてくれるが、他の撮影者に気を遣ってちょっと遠慮した
プログラムAE / 1/200秒 / F7.1 / ISO400 / -0.33EV / 分割測光 / AF-S VR Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4.5-5.6 G / 180mm

ピットウォークの時間は、キャンギャルだけでなくドライバーがサインなどをしてくれることもある。土屋武士選手を見つけたので、サインの合間を見て目線をもらって撮影した
絞り優先AE / 1/4,000秒 / F2.8 / ISO400 / 0EV / 分割測光 / AF-S DX Zoom-Nikkor ED 17-55mm F2.8 G / 45mm / ストロボ使用
ピットウォーク中といえども、フォーミュラ・ニッポンのレースカーはピットの中に入っていて、望遠レンズでしか撮ることができない。だが、F3などのサポートレースのマシンは比較的近くまで寄ることができて、大きく写すことができる
プログラムAE / 1/60秒 / F5 / ISO200 / -0.33EV / 分割測光 / AF-S DX Zoom-Nikkor ED 17-55mm F2.8 G / 55mm / ストロボ使用



塙 真一
(はなわ しんいち)スナップや風景写真、ペット、人物撮影のほかに、最近ではグラビアアイドルのDVDパッケージ写真やカレンダー撮影も精力的にこなす。ほとんどすべてのデジカメをテストする強者テスターというキャラクターでカメラ雑誌に好評連載を持つほか、パソコンやレタッチソフトなどの造詣も深くパソコン誌などの各誌にも連載を持つ。カメラ好きが高じて購入したデジカメの数は数十機にも登る。

2008/07/03 00:02
デジカメ Watch ホームページ
・記事の情報は執筆時または掲載時のものであり、現状では異なる可能性があります。
・記事の内容につき、個別にご回答することはいたしかねます。
・記事、写真、図表などの著作権は著作者に帰属します。無断転用・転載は著作権法違反となります。必要な場合はこのページ自身にリンクをお張りください。業務関係でご利用の場合は別途お問い合わせください。

Copyright (c) 2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.