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【特別企画】キヤノン EOS 5Dで雪夜を撮る


 まだ冬の厳しさが残る2月末、新千歳空港に降りたった。雲間からは陽射しが洩れて絶好のドライブ日和だ。レンタカーを借りるとすぐ、真っ白な北の大地へと移動を開始した。

 今回の企画は、前回EOS 5Dで捉えた夜景、闇景の北海道編として旅に出かけたのだった。実際に北海道を旅してみると、予想以上に内容が濃くて、夜の「雪夜を撮る」に加え、昼の「雪の町を撮る」を追加して2回に渡る掲載にしてみた。なおレンズはすべてEF 24-105mm F4L IS USMを使用している。

 まずは夜の世界へ。


室蘭
どこか北方の軍事施設のようなゴルフ練習場。山や海や雪の自然とネットや電柱や照明の人工とがブレンドされて、恐くて美しい静けさにつつまれ夜景だ。グリーンネットや白い雪がクリアに描写されていて、この夜景の持つクールな味をよくひき出している
2秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / 45mm / WB:オート

 今まで冬の北海道へは訪れたことがあったが、その時は撮影対象のはっきりした取材で、雪国を味わうゆとりなどはまったくなかった。それにひきかえ、今回はまったくフリーな撮影行であり、3泊4日と短い期間であったが、太平洋と日本海ふたつの海を巡るという超欲張りな日程にしてみた。

 スタートは、太平洋沿いに室蘭へ南下することから始めた。道央自動車道白老インターを下りて一般国道36号に出ると、左手太平洋側に小さな漁村が点在している。思っていたほど雪はなくて、家と家の隙間や道路脇に2、30cm積もっているだけである。見渡すがどこにも人の気配はなく、オープンセットの村にさ迷い込んだようだった。

 そんな漁村をぶらぶらしていると、珍しく遠くに人影が現れた。若いおとうさんと幼稚園くらいの娘が犬の散歩をしていた。軽く会釈をすると、「何撮ってるの?」ときかれたので「漁村の景色です」と答えた。すると「おばあちゃんたちが、何してのかって心配してるからさ」と苦笑いしながら去っていった。

 もう一度集落の方を振り向くと、遠くの家の窓越しに老婆の視線があった。

 室蘭の街に入った頃には、すっかり日が暮れていた。製鉄の町として栄えてきただけあって、起伏に富む町のあちこちに工場や社宅や団地が見える。今では鉄鋼業の衰退に連られ、町の活気が薄れたという。

 その中では、山の頂きにライトアップされた放送塔が町のランドマークとして異彩を放っている。その放送塔の光に案内されるように港まで行ってみた。小さな岩山を回りこむと、港と山に挟まれるようにしてゴルフ練習場が忽然と現れた(冒頭の写真)。

 翌日は室蘭を出て、一気に小樽まで北上した。札幌に近づくとようやく積雪量も増え、冬の北海道に来た実感が強まってきた。小樽に着くとすっかり夜になっていた。街には室蘭の何倍もの雪があり、車の運転も慎重になっていく。何本目かの路地を曲った時、異国の教会のような建物が現れた。

 そばに行ってみると古い市場らしい。ここまで来たら、もうロシアは近い。国境を接した島がサハリンであり、異国情緒がやってきても何の不思議はない。


小樽
妙見市場。黒いアスファルトの道や雪、市場外壁のモルタルが、冬の外気の中でデリケートなデジタル描写として捉えられている。道を挟み同じ意匠の建物が並んでいて、中には魚屋、総菜屋、衣料品店等が入っていた。翌日この市場の総菜屋で買った草餅は絶品だった
15秒 / F9 / 0EV / ISO400 / 28mm / WB:オート
小樽
店の看板が点る直前、街灯に照らし出される飲み屋街。何種類もの街灯が混じり合い、白い雪が様々なグラデーションになっている。そのハイライト部からシャドー部までの発色は、実になめらかな夜の光と闇のトーンになっている
10秒 / F9 / 0EV / ISO400 / 32mm / WB:オート

 翌日は積丹を目指しさらに北上を続けた。この日はあいにく、北海道に来て初めての吹雪で、豪雪地帯へと入っていく運転に、ハンドルを握る手にも力が入っていく。ただ、雪のシーンが目当ての自分にとっては、吹雪きも豪雪も味方にしていくだけだ。
 余市を過ぎ古平の町まで来ると、吹雪きもおさまり辺りは白一色。白銀の世界が街の明かりに輝いていた。


積丹半島 古平
雪に埋もれるようにして建つ家々。積もった雪の表層の質感が、光量の少ない夜の中で非常に濃密に描写されている。5Dの描写力には驚く。
8秒 / F9 / 0EV / ISO400 / 24mm / WB:オート

 宿のある美国(びくに)の町に着いたのは夜の8時近かった。夜景撮影しながらの旅なので宿は素泊まりである。急いで近くの寿司屋に飛び込んだ。そこで、店の玄関先にいたのが雪の動物だった。

 寿司を食べて元気が出たので、また夜の撮影に出かけてみた。小さなトンネルを抜けた所に旧道があり、雪につぶされそうな漁師小屋を見つけた時は、夢の中にトリップしていくような開放感が訪れた。


積丹半島 美国
寿司屋の店先の木に降り積もった雪の造形。そこには白いイタチやテンがいるようで、一瞬ビクッとなった。雪のハイライトからシャドーまでも美しい
1/4秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / 65mm / WB:オート
積丹半島 美国
トンネル脇のオレンジ街灯と小屋の街灯の緑とが、雪の上で混じり合い幻想雪国を創り出している
1.3秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / 24mm / WB:オート

 この小屋との出会いに気を良くして、さらに美国のナイトウォークを続けた。最後に行ったのは美国港だった。荒々しくサイハテ感漂う岩山を見たとたん、行ったことないのに「アイスランド!」と思わず叫んでしまった。

 今回も、非常に難しい雪夜の撮影に、EOS 5Dが活躍してくれたのだった。


積丹半島 美国港
5秒 / F5.6 / 0EV / ISO400 / 58mm / WB:オート

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中里 和人
(なかざと かつひと)1956年三重県生まれ。法政大学卒業後、1984年よりフリーランスカメラマン。会場探し、会場作りを自ら手掛け、町工場跡や市場、洞穴などでのユニークな写真展を精力的に開催。写真集「湾岸原野」(六興出版)、「小屋の肖像」(メディアファクトリー)、第15回写真の会賞受賞作「キリコの街」(ワイズ出版)、「逢魔が時」、「長屋迷路」(ピエブックス・文/中野純)、相模原写真新人賞受賞作「路地」(清流出版)、最新刊「夜旅」(河出書房新社・文/中野純)他

2006/04/27 01:03
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