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【伊達淳一のデジタルでいこう!】1/1.8型クラスの高感度画質を比較する

〜320万画素から1,240万画素まで新旧6機種を取り比べ
Reported by 伊達 淳一

2007年は、コンパクトデジタルカメラがオーバー1,200万画素に。写真は1,240万画素のサイバーショットDSC-W200
 デジタルカメラの画素数競争はいったいいつまで続くのだろうか? 画素数が多ければ多いほど、写真を構成する点(ピクセル)の数が増えるので、(レンズの光学性能が伴っていれば)より多くの情報を記録することができ、被写体の細かい部分まで描写できるようになるし、ポスターサイズに伸ばしても高精細なプリントに仕上げられる。そんな大判出力ができるプリンタを持っていない場合でも、トリミング(デジタルズーム)できる余裕が出てくる。だから、画質的に失うものがなければ、画素数は多ければ多いほどイイ。

 しかし残念ながら、撮像素子サイズを変えずに画素数を増やすと、画質的に得るものもあれば失うものもある。同じ面積の撮像素子により多くの画素を配置すれば、当然のことながら画素ひとつあたりの面積は狭くなり、ひとつの画素で光を受け止める力が弱くなってしまうので、感度やダイナミックレンジは低下してしまう。つまり、ポスターサイズまで伸ばせる細部描写力と引き替えに、感度やダイナミックレンジを失ってしまうというわけだ。

 ただ、それはあくまで撮像素子の製造技術や信号処理が同じ水準で作れば……という話で、現実には撮像素子の製造技術や信号処理は日進月歩で進化を続けている。たとえば、“画素ピッチ”という言葉を聞いたことがあると思うが、これは画素と画素の間隔のこと。画素ピッチが広ければ、画素の面積も大きくなるわけだが、勘違いしてはいけないのは、光を受け止められるのは画素そのものではなく、フォトダイオードと呼ばれる画素の一部分だけ。


 つまり、画素ピッチが同じでも、フォトダイオードの面積が広ければ、より微弱な光も受け止めることができるわけだ。そのため、ほとんどの撮像素子は、フォトダイオードにより多くの光を導くため、ひとつひとつの画素の前に“マイクロレンズ”と呼ばれる集光レンズを配置しているのだが、このマイクロレンズとマイクロレンズの隙間(ギャップ)を狭めてマイクロレンズを大口径化したり、色分解のためのカラーフィルターを薄膜化して透過率を高めることで、フォトダイオードに入る光のロスを極力減らし、画素ピッチが狭くなったことによる感度の低下を防いでいる。

 また、マイクロレンズの配置をずらしたり、マイクロレンズとフォトダイオードの間隔を狭めることで、斜めから入射した光もしっかり受け止められるように工夫されている。さらに、アナログ信号段階で混入するノイズを極力減らすと同時に、信号処理でノイズを低減する技術(ノイズリダクション)も飛躍的に発達してきた。こうしたさまざまな技術の積み重ねで、画素の極小化による弊害を抑えつつ、高画素化を果たしてきた(と言われている)。

 だが、本当に画素数が増えて、高画質になったのだろうか? もちろん、レンズさえまともなら、低感度で細部描写力がイイのは当たり前。問題は高感度の画質だ。最近はISO1600、3200といったデジイチ(デジタル一眼レフ)も顔負けの最高感度を謳うコンパクトデジカメも増えてきているが、果たして真の意味での高感度高画質を達成しているのだろうか?

 ちなみに、現在のコンパクトデジカメは、撮像素子サイズが1/1.8型クラスと1/2.5型クラスに大別でき、1/1.8型クラスは作画機能や画質を重視した製品、1/2.5型クラスは携帯性やデザイン、ズーム倍率、コストパフォーマンスを重視した製品が多い。画素数やレンズの解像力が同じなら、撮像素子サイズが大きいほうが画質的には有利だが、その分、レンズが大きくなってしまうからだ。そのため、売れ筋のコンパクトデジカメは、1/2.5型クラスが主流ではあるが、今回は、画質を最重要視するという観点から、1/1.8型クラスの新旧コンパクトデジカメの高感度画質を比較してみることにしよう。比較対象に選んだのは、次の6機種だ。


キヤノンPowerShot S30(2001年発売)
320万画素:1/1.8型CCD(第2世代)
富士フイルムFinePix F31fd(2006年発売)
630万画素 1/1.7型スーパーCCDハニカムHR

キヤノンPowerShot G6(2004年発売)
710万画素:1/1.8型CCD
ソニーサイバーショット DSC-W7(2005年発売)
710万画素:1/1.8型CCD

キヤノンPowerShot G7(2006年発売)
1000万画素:1/1.8型CCD
ソニーサイバーショットDSC-W200(2007年発売)
1,240万画素:1/1.7型CCD

 キヤノンPowerShot S30は、第2世代の1/1.8型320万画素CCDを搭載していて、黎明期のデジカメのなかでももっとも高感度に強い、と評判の機種だ。画素ピッチに余裕があり、今なお、この1/1.8型320万画素CCD(第2世代)がコンパクトデジカメの画質のピークだったと信じる極小画素否定論者もいるくらいだ。

 その後、1/1.8型CCDは、400万画素、500万画素、600万画素と年を追うごとにジリジリと画素数を増やしていったが、基本感度は低下する一方で、高感度ノイズをノイズリダクションで抑え込もうとしたものの、画素数アップによる細部描写力の向上をノイズリダクションの副作用で、すべて失ってしまっていたように思う。

 歴代1/1.8型CCDのなかで、個人的に高評価なのは710万画素。画素数アップによる細部描写力向上と、高感度画質のバランスがまずまず取れていて、ノイズリダクションによるディテール喪失がさほど目立たないように感じる。その後、800万画素になってノイズが急増、そんなときに時代に逆行する大英断を下したのが、1/1.7型630万画素のスーパーCCDハニカムを搭載した富士フイルムのFinePix F10。ISO400が常用になる高感度高画質を実現し、他機種を圧倒。今回採り上げたFinePix F31fdは、F10の(もしかしたら最後の)正常進化形だ。

 時代はしばらく800万画素で足踏みしていたが、ここにきて1,000万画素、1,200万画素と一気に高画素化が進み始めた。もはやデジイチも真っ青な高画素化である。果たしてこれでどれほどの画質が得られるのか、本当に画素数が増えて高画質になったのか、ぜひ自分の目で判断して、必要ならば同サイズにプリントして見比べて欲しい。


高感度画質のチェックポイントはココ!

 高感度撮影で重視されるのはノイズの少なさだ。通常撮影時のノイズには、輝度ノイズ(粒状ノイズ)とカラーノイズ(色ノイズ)があるが、どちらも適切なノイズリダクションをかけることで、ノイズを目立たなくすることができる。しかし、ノイズリダクションには副作用がある。輝度ノイズを強引に除去しようとすると、低コントラスト部分のディテールが溶けたように喪失してしまったり、輝度ノイズの輪郭がボヤッと大きくボケて、ざらつき感は低減しても、粒子が伸ばしボケでまだらになったような不自然きわまりない状態に陥ってしまう。いっぽう、カラーノイズを除去しても解像感は低下しないが、シャドー部の彩度が低下して、墨っぽくなってしまうこともある。

 いくつかのカメラ雑誌では、単色のチャート部分のノイズのバラツキで、高感度ノイズの良し悪しを論じているが、テクスチャーのない単色部分(ベタ部分)のノイズを減らすのは一番簡単なこと。ノイズリダクションを強めにかければ、ザラザラのノイズもつるんとなめらかに修正できるが、前述したように、低コントラスト部分のディテールが喪失したり、シャドー部の彩度が失われたり、中途半端なノイズの残骸でかえってデジタル臭い描写に陥ったりする。単にベタ部分のノイズの多い/少ないだけでなく、ノイズリダクションの副作用で本来の画質が損なわれていないかも、重要なチェックポイントだ。


サンプル画像のチェックポイント
 本連載では、感度別比較でグレーバックに布製のぬいぐるみを写すことが多いが、それにはちゃんとした理由がある。具体的には、背景の濃いめのグレー(A)で輝度ノイズやカラーノイズをチェック。また、マクベスカラーチャートの紫や青、赤、深緑など濃い色(B)にカラーノイズが浮いていないかをチェックする。また、ぬいぐるみ人形を置いているのは、人形の顔の布目(C)がどれだけくっきり解像しているかをチェックするためだ。

 ISO100など低感度で撮影したカットと見比べて、高感度のカットでどれだけ解像感が違うかで、高感度画質の優劣を判断している。特に髪の毛の影が落ちている部分やあごのあたりで布目がどれだけ解像しているかが注目ポイントだ。毛糸でできた髪の毛の質感も、解像感が喪失しているとかなり不自然に見えるはずだ。もし、人形の服や帽子の布目が喪失しているようであれば、もう論外の画質だ。


ISO感度別サンプル


・キヤノンPowerShot S30 320万画素 1/1.8型CCD(第2世代)


ISO50
ISO100
ISO200

ISO400
ISO800

・富士フイルムFinePix F31fd 630万画素 1/1.7型スーパーCCDハニカムHR


ISO100
ISO200
ISO400

ISO800
ISO1600
ISO3200

・キヤノンPowerShot G6 710万画素 1/1.8型CCD


ISO50
ISO100
ISO200

ISO400

・ソニーサイバーショットW7 710万画素 1/1.8型CCD


ISO100
ISO200
ISO400

・キヤノンPowerShot G7 1,000万画素 1/1.8型CCD


ISO80
ISO100
ISO200

ISO400
ISO800
ISO1600

・ソニーサイバーショットDSC-W200 1,240万画素 1/1.7型CCD


ISO100 ISO200 ISO400

ISO800
ISO1600
ISO3200

 画素数アップによる高感度画質の変化をどう感じただろう? おそらく評価は人それぞれだろう。キヤノンのようにノイズが目立っても細部描写力がしっかり残っている機種を好む人もいれば、ソニーサイバーショットDSC-W200のようにノイズリダクションをしっかりとかけてノイズを目立たなくした(背景のグレーのまだらが惜しいが……)機種をキレイだと感じる人もいるだろう。

 個人的に、高感度のノイズと細部描写力のバランスがいいと思うのは、富士フイルムのFinePix F31fdで、ISO400までは文句なしの画質だ。スーパーCCDハニカム特有の乱視傾向(斜め方向の解像が弱く、微細な部分が妙なツブレ方をする)はあるものの、ノイズの少なさと解像感はやはり群を抜いている。ISO800になると、多少解像感の喪失が乱れ、キレがなくなってくるものの、他機種のISO800に比べれば十分実用範囲内の画質だと思う。ただ、さすがにISO1600以上の画質は、その感度でなければ撮れないときの緊急用といった感じだ。

 ちょっと驚いたのは、キヤノンPowerShot S30のISO800の画質だ。カラーノイズはかなり目立っているし、画素数も少ないので細部描写力もたいしたことはないのだが、人形の顔の布目や髪の毛の質感が、他の高画素機に負けないくらいしっかりと出ていること。高画素機ではノイズリダクションでつぶれてしまった顔の布目パターンが、解像ギリギリではあるが、しっかりと感じられるのだ。


なんのための高画素化か?

 そもそも、より大きく伸ばすことができる、といってもA3ノビプリンタを持っている人はかなり少ないだろうし、A2以上の大判プリンターまで持っている人となると、プロカメラマンでもごくごく一部だ。となると、高画素化によるユーザーメリットは、トリミングの余裕ができることだ。ピクセル等倍で鑑賞するのはナンセンスだという意見もあるが、トリミング(もしくはデジタルズーム)すれば、いずれはピクセル等倍で見たのと同じ描写を目にすることになる。

 ノイズリダクションをかけた描写が不自然に見えるのは、解像感が不均一だからだ。コントラストの強い周波数の高い被写体は、輪郭強調で必要以上にシャープに再現されるのに対し、コントラストが低くフワッとした被写体は、ローパスフィルターでボカされ、ノイズリダクションでディテールが喪失し、輪郭強調でも救えないので、まるでピンぼけのようなボケボケ描写になってしまう。同じような細かさの被写体なのに、一方はくっきりとシャープで、一方はボケボケという不均一な解像感こそ、不自然な描写に見える最大の原因だ。

 高画素化によって均一に解像感がアップするのならともかく、瞬間最大風速的にある部分だけが飛躍的に解像し、低コントラスト部分はボケボケといった解像感の格差は広がる一方だ。PowerShot S30の高感度画質が自然に見えるのは、もともとの解像感がそこそこしかなく、しかも強いノイズリダクションもかかっていないのでディテール喪失が少ないため、コントラストの高い部分と低い部分で解像感に差がないためではないだろうか?


 断っておくが、ボクは極小画素否定論者ではない。失うモノがなければ、画素数は多ければ多いほどイイと思っている。ただ、得るモノと失うモノを秤にかけたとき、現実はあまりに失うモノが多いように思う。以前、1/1.8型CCDが800万画素で足踏みしていたとき、とあるメーカーの技術者にどこまで高画素化できそうか、と聞いたことがある。そのとき、1,000万画素あたりで厳しくなってくるでしょうね、と弱気な答えが返ってきたので、「高画素化というパンドラの箱を開いてしまった以上、少なくとも1,200万画素は達成してもらわなければ困る」と言ったことがある。

 おそらく現在の技術で1/1.8型300万画素CCDを作って、現在の技術で信号処理すれば、ISO1600が常用できる高感度画質が実現できるに違いない。しかし、画素数が少ないデジカメが安値でしか売れないという現状がある以上、300万画素のデジカメを作って、とは言えないし、ボクも買わないだろう。ならば、残る選択肢はひとつ。低感度では最高の細部描写力が得られ、高感度撮影時には複数の画素からの情報を組み合わせ、最高の解像感と低ノイズ、豊かな色情報を持った300万画素の描写が得られるようにすることだ。

 サイバーショットDSC-W200にも、画素加算によるEX高感度モードは備わっているが、残念ながら1,200万画素の情報から300万画素の画像を生成したとは思えないほどの解像感で、シグマSD10のようなキレの良さは感じられない。単純な画素加算ではなく、もっと高度なアルゴリズムの信号処理で極上の3M高感度、高解像力出力を実現してほしいと思う。そのときこそ、第2世代の1/1.8型320万画素CCDの呪縛から解き放たれるに違いない。



URL
  キヤノン、スタイリッシュな「PowerShot S40/S30」(PC Watch)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/20011002/canon.htm
  キヤノン、フルモデルチェンジした「PowerShot G6」(PC Watch)
  http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0820/canon3.htm

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伊達 淳一
1962年生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒業。写真、ビデオカメラ、パソコン誌で カメラマンとして活動する一方、その専門知識を活かし、ライターとしても活躍。黎 明期からデジタルカメラを専門にし、カメラマンよりもライター業が多くなる。自ら も身銭を切ってデジカメを数多く購入しているヒトバシラーだ。ただし、鳥撮りに関 してはまだ3か月のド・初心者。飛びモノが撮れるように日々精進中なり

2007/08/07 00:01
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