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【新製品レビュー】アドビ Photoshop CS3(その3:CS3本体編)

~強力な新機能で作業効率が格段に向上
Reported by 野下義光

Photoshop CS3日本語版。価格は通常版が10万円
 さてBridge CS3編、Camera RAW編に引き続き、いよいよPhotoshop CS3本体のレビューをお送りします。

 Photoshop CS3(以下CS3)で設けられた新機能を中心に、筆者が日常の業務で使用するにあたって気になったポイントをレビューしてみます。

 なお試用した環境は、Ahtlon 64 X2 Dual Core Processor 5200+ 1.8GHz、DDR2-SDRAMメモリ4GB、SATA7,200rpmの3.5インチHDD、OSはWindows XPです。


高速な起動と処理速度

 CS3の起動時間は、Photoshop CS2(以下CS2)と比較して劇的に速くなりました。大雑把な計測ですが、筆者の環境ではCS2の約10秒に対し、CS3はその半分以下の約4秒。筆者は画像データを複数のHDDに保存しており、使用する際に開きたい画像を保存したHDDを起動させているので、新たに起動したHDDをPhotoshopに認識させるには、その都度再起動させる必要があります。しかしCS3は起動時間が非常に短いので、あれこれとHDDを繋ぎかえてもてきぱきと作業が進められます。

 また各種のツールを使用した際の処理速度も全体的にアップしています。筆者の環境ではCS2でも特に不満のない処理速度でしたが、CS3ではどのツールを用いても明らかに体感できるほどレスポンスが良くなりました。とはいえ人間とは贅沢なのもので、しばらく使っているとこの速度も普通に感じてしまいます。でもCS3に慣れた後にCS2を使ってみると、処理速度の差をはっきり感じることができるでしょう。一度CS3の処理速度に慣れてしまうともう後戻りはできません。


ワークスペースを初期設定にして画像を開いた状態。各種のツールのレイアウトがすっきりしている
画像を全画面表示にしても画像の上にツールパレットが重なることがなく、画像の隅も作業がやりやすくなった

メニューでは、CS3で新たに設けられた機能を水色で表示できる。新機能を積極的に試してみたくなる

プリセットが付いた「トーンカーブ」

 お馴染みのトーンカーブですが、今回新たにプリセットが設けられました。初心者にはとっつきにくいトーンカーブですが、プリセットを用いれば、例えば画像の明暗、コントラストの強弱などがワンタッチで行なえます。またそのとき現れるカーブを参考にしながらより細かい調整を行えば、試行錯誤しなくても自分好みの画像に手早く仕上げられるでしょう。またベテランや上級者であっても、プリセットをいくつか施せば、作業の効率化が計れます。

 もちろん、従来通りに独自にカーブを作って画像を仕上げることも可能です。


トーンカーブのプリセットは9種類。さらに自分で作ったカーブを登録させるカスタムもある プリセットの「明るく」で画像を明るくした。単純なカーブだが、筆者の独学と試行錯誤ではこのカーブに辿り着くまで遠い道のりだった

プリセットの「コントラスト強く」を用いた。各種プリセットの状態からさらに自分でカーブを微調整できる

作業効率が向上する「クイック選択ツール」

 画像を部分的に処理する場合、何らかのツールで処理したい部分のみを選択しなければなりません。しかし従来のツールでは、境界が複雑だったり曖昧な画像だと大変手間がかかりました。CS3の新機能「クイック選択ツール」は、「従来の手間は何だったのか!?」と思わせるほど簡単に希望した選択が行なえます。

 使い方は至って簡単で、選択したい部分をこのツールでなぞっていくだけです。まるで人間が画像を見て判断しているかの如く、自分の欲する部分が選択されていきます。

 ただ境界が複雑な部分は、さすがに一発では思い通りに定まらないので、画像を拡大して微調整する必要があります。とはいえ、いずれにしても従来のツールよりは格段にスピーディーに作業が行なえるようになりました。下に示した画像の場合、背景だけを選択するのに要した時間は、微調整を含めて約1分でした。従来のツールではこの何倍もの時間を要したことでしょう。


背景だけを選択したい場合、背景をなぞるようにカーソルを動かしていくと、自動的に背景だけが選択される
画像を拡大して微調整を行なう。はみ出した部分は(-)のツールで、足りない部分は(+)のツールでなぞる

微調整を行ない、選択を終えた状態。およそ1分で完了した

違和感ない仕上げに追い込める「境界線の調整」

 例えば背景だけをより鮮やかにしようとした場合、背景とモデルとの境目がはっきりし過ぎていると、いかにも合成写真っぽい感じになってしまいます。そこで、わざわざぼかしツールでその境界を滑らかにしたりしていました。CS3では、新機能の「境界線の調整」を用いることで、背景とモデルとの境界を違和感なく仕上げることができます。また、境界線をボカした場合、そのボカし具合が視覚的にわかりやすくなりました。

 全体的に処理速度の速いCS3ですが、この処理は少々時間がかかり(筆者の環境では10秒ほど)それだけ内部では高度な処理が行なわれていることがうかがい知れます。


選択した背景の彩度を上げる予定ですが、モデルとの境界がはっきりすると合成写真っぽくなるので、境界線を「滑らかに」を最大、「ぼかし」を3.0に設定しました。選択していない部分については、5種類の表示方法が選べます

境界線未処理のまま選択した背景を処理した画像。特に向かって右の肩や腕の部分が合成っぽくなった
境界線を調整して選択した背景を処理した画像。境界線未処理よりはずっと違和感なく仕上げることができた

瞳の周りとそれ以外とでシャープネスのかけかたを変えるためなげなわツールで選択
境界線のぼかし具合を確認しながら調整を行なう

境界線未処理のまま選択した瞳の周りにシャープネスをかけた画像。瞳にかかった前髪にシャープネスの境界がはっきりわかる
境界線を処理して瞳の周りにシャープネスをかけた画像。シャープネスの境界は見受けられない

人に優しいソフトへ

 従来、プリントの設定を行なうプリントプレビューとプリントを実行させるダイアログが別個に分かれていましたが、CS3ではプリントメニューだけで、カラーマネージメント、拡大率、プリンタの設定などを一括して行なえるようになりました。

 機能そのものは変わりはありませんが、ツールが別個に別れていて煩雑だった設定がまとめて行なえる分効率よく作業できます

 また、プリントダイアログに限らず、いくつかのダイアログやテキストボックスなどが改良されています。使っていて助かるのが、ツールに簡単な説明が加わったことです。Photoshopの各種ツールには専門用語があふれています。また同じ機能でもいろいろな方式を選択できるツールもあります。従来は専門用語がわからなければいちいちヘルプを参照するなどしなければなりませんでしたが、CS3は初心者には使いやすくベテランにも今一度正確な知識を得るきっかけになると思います。


プリントのツールからプリンタ(キヤノンPIXUS iP8600)のプロパティを開いた画面
画像解像度の縮小・拡大方式に説明書きが加わった。作業内容に応じてどれが最適なのかすぐにわかる

まとめ

 撮影後のレタッチまでを業務範囲とする筆者ですが、Photoshop歴はまだまだ浅く、初めて使ったのが「Photosohop 6.0」。その後すぐ「Photoshop 7.0」にバージョンアップして、CS、CS2とその都度最新バージョンへと移行してきました。

 個人的な感想としては、フルモデルチェンジしたPhotoshop 7.0からPhotoshop CSへのバージョンアップに匹敵する変化がCS2とCS3にはあります。CSからCS2へはマイナーチェンジという感じで、CS2からCSにダウンしてもそれほど困ることはありませんが、CS3からCS2へは後戻りできません。

 筆者の業務内ではCS2でもほとんどの作業が行なえますが、CS3は新機能や処理速度、全体的な使い勝手の向上により、作業効率が格段に上がっています。そのため、作業時間を大きく短縮することができるようになりました。

 Bridge CS3、Camera RAW、Photoshop CS3本体が巧みに連携しあい、高品質高効率を高次元でバランスさせたまさにプロのツールと言えます。新規で購入予定の方はもちろん、現在CSやCS2をお使いの方々にも是非ともCS3へのバージョンアップをお勧めします。

モデル:日美野梓(オフィス福笑所属)
http://www.office-fukue.com/home/
写真協力:BOMB.TV
http://www.bomb.tv/



URL
  アドビ
  http://www.adobe.com/jp/
  製品情報
  http://www.adobe.com/jp/products/photoshop/pscs3/

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野下義光
(のしたよしみつ)熊本県生まれ、千葉県育ち。国立木更津工業高等専門学校機械工学科卒業後、エンジニアとして大手コンピューター会社に5年勤務。その後、夢を捨てきれず写真界へ身を投じる。現在ジュニアアイドルを中心にWeb、DVDジャケ写などで活躍中。フルデジタルの写真集も多数手がけている。趣味はネットオークション(笑)

2007/07/04 00:06
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