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[2009/02/20]

【第7回】ジャンクカメラで作るレンズバリア内蔵キャップ
[2009/01/26]


2008年

【第7回】ジャンクカメラで作るレンズバリア内蔵キャップ


一眼レフカメラ用交換レンズには、なぜレンズバリアが内蔵されないのか?

完成した「レンズバリア内蔵キャップ」を装着したZUIKO DIGITAL 25mm F2.8+E-420の全体像。我ながら、なかなかオシャレでカワイイ感じになったと思う
 本連載の【第4回】E-420+パンケーキレンズを準標準レンズにするでは、「ZUIKO DIGITAL 25mm F2.8」に各種ワイコンを装着する実験をしたが、今回は同じレンズを別の方向で切り貼り(ブリコラージュ)してみたいと思う。

 この薄型パンケーキレンズには、イマドキ珍しい金属製のねじ込み式レンズキャップ「LC-43B」が付属している。これはなかなかの高品質で、かつ薄型で携行性が高い。しかしねじ込み式のレンズキャップは取り外しに時間がかかり、急なシャッターチャンスを逃してしまう。持ち運びに便利ですばやく撮影できるのが特徴のレンズで、これは本末転倒のような気がする。

 しかし改めて考えてると、一眼レフカメラ用の交換レンズはなぜ「レンズキャップ式」なのかが疑問である。いくらワンタッチで付け外しが可能だとしても、撮影前に「キャップを外してそれをポケットにしまう」という動作の分、シャッターチャンスが遅れてしまうではないか。

 また、外したキャップをどこのポケットにしまったか忘れてしまい、ゴソゴソ探し回ることもしばしばで、非常に煩わしい。プロカメラマンの中には、シャッターチャンスを優先するため、レンズキャップをまったく使わない人もいるくらいだ。

 一方コンパクトデジタルカメラは、レンズキャップではなく「レンズバリア」を内蔵しているのが、もはや当たり前となっている。一部の機種を除く大半のコンパクトデジタルカメラは、「キャップの付け外し」の呪縛からすっかり解放されている。

 しかし一眼レフカメラ用交換レンズでは、レンズバリアを採用した製品は現在一つも見当たらない。コンパクトデジタルカメラの普及でレンズバリアの利便性は周知のはずなのに、これはまったく不思議である。

 などということを、ぼくはグチグチと考えていたのだが、ある時ふと「ひょっとしてZUIKO DIGITAL 25mm F2.8だったら、レンズバリアを組み込む改造が出来るかも?」という事に気が付いてしまった。

 ZUIKO DIGITAL 25mm F2.8は、レンズそのものの口径が20mm足らずとコンパクトデジタルカメラ並に小さい。それでいてフィルター径は43mmなので、レンズ周囲にドーナツ状のスペースがあり、このスペースを生かせば何らかのギミックを組み込むことができそうだ。

 しかし、精密機器であるレンズそのものに改造を施すのは、どうしても気が引けてしまう。そこでレンズキャップにレンズバリアを内蔵できないかを考えてみることにした。つまり「レンズバリア内蔵キャップ」を製作するのだ。


 まず検討したのは、本連載で取り外した「Caplio R7」のレンズバリアユニットを、移植する方法である。このユニットは精密かつ頑丈に作られていて、その技術に感心してしまう。しかしバリアの開閉がカメラの内部機構とリンクしており、これを外部から手動で開閉できるよう改造するのはけっこう大変そうだ。

 しかし記憶を遡ると、フィルムコンパクトカメラにレンズバリアが採用された当初は、どの機種も「手動開閉式」だった。日本製のライカ判(35mm判)のコンパクトカメラにレンズバリアが搭載されたのは、1978年発売の「オリンパスXA」が最初だ。XAのレンズバリアはいわゆる「手動スライド式」で、現在のコンパクトデジタルカメラでは富士フイルムの「FinePix Zシリーズ」や、ソニーの「サイバーショットTシリーズ」など一部の機種に受け継がれている。

 XAの数年後に登場しはじめたのが、丸いレンズ鏡筒の先端にバリアを内蔵するタイプで、この方式は現在のコンパクトデジタルカメラの主流として引き継がれている。しかし今でこそ自動開閉式が当たり前のレンズバリアだが、それが登場した当初はどれも手動開閉式だった。つまりそのような時代の手動開閉式のレンズバリアだったら、どうにかして改造できるかもしれない。

 そのような時代、と言うのは1980年代の半ばから90年代初頭までだろうか? そのころ大量に売り出されたフィルムコンパクトカメラは、中古市場では値が付かないようで、扱いとしてはジャンクカメラになる。なので、折を見ては中古カメラ店のジャンクコーナーをチェックしていたのだが、手動開閉式バリア内蔵のカメラはもはや貴重品のようで、なかなか見つからずにちょっとあせってしまった。

 しかしやっと適合しそうなカメラが手に入ったので、さっそく改造……の前に、せっかくなのでどんなカメラなのかちょっと観察してみようと思う。カメラをじっくり観察することで先人の工夫に学び、また分解手順などを類推するのである。

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分解する前のカメラを観察してみる

セレクトしたのはご覧のキヤノン「オートボーイ ズーム デート」。レンズ鏡筒先端に「手動開閉式」のレンズバリアを内蔵しているのがポイントだ。今からちょうど20年前の1988年発売で、発売時価格は5万6,800円。キヤノン製コンパクトカメラとして、初めてズームレンズを内蔵した機種でもある。レンズバリア開閉レバーは電源スイッチを兼ねているが、これはジャンク品なので作動不能。その代わり100円で購入できた このカメラは基本的に全自動だが、35〜70mmのズームリングの操作だけは手動式だ。しっとりした操作感のズームリングに連動して、カメラ内部のファインダーレンズはもちろん、ストロボ用コンデンサーレンズも前後に動くので面白い。ズームレンズと連動して内蔵ストロボの照射角が変わる機構は、現在のデジタルカメラでは省略されてしまっている

フィルムカメラなので、当然の事ながら裏蓋がパッカンと開く。レンズ後玉が大口径なのが印象的で、前玉が小口径なのとは対照的だ。これは、一眼レフ用のレトロフォーカスレンズを前後逆にした、「逆レトロフォーカス」という設計手法が採用されている為だろう。レンズをボディ内にコンパクトに収めるための手法で、これもオリンパスXAが元祖である。こんな風にカメラの機構が見た目で類推できるのも、フィルムカメラならではの楽しみである E-420と並べてみたが、オートボーイ ズーム デートは結構デカイ。昔の多機能コンパクトカメラは、当時も「コンパクトとは呼べないくらいにデカイ」と揶揄されていた。しかしカメラはこれくらい存在感があるほうが、「撮るぞ」という気になるし、撮られる方も「ちゃんと写らなきゃ」という気構えになるかもしれない。ちなみに「オートボーイ」はキヤノンのフィルムコンパクトカメラのブランドだが、デジタルカメラにその名が引き継がれることは無かった

レンズバリアユニットの摘出

カメラの観察も十分にしたことだし、次はいよいよ分解作業に掛かる。カメラの分解はどこから始めるかがキモになるが、これは経験と勘によるしかない。まずはズームリングのゴムを外してみた すると側面を止めるネジが見えてきたので、これを外すことにする

プラスチックの先端カバーが外れ、バリアの可動機構が姿を現す。そしてさらにネジを外してゆく
バリアの内部機構が完全にむき出しになった。ベアリングなども使われているが、こういう部品がばらけても元通りに組み立てられるよう、記録写真を撮るのは大切だ。電気接点が見えるのは、レンズバリアの開閉が電源スイッチと連動しているため。しかしまだ部品がレンズ鏡筒に固定されているので、さらにネジを外す

ようやくカメラからレンズバリア周辺のパーツを全て取り外すことができた。レンズバリアを構成するユニットは、手前に並べた3つに分かれている レンズバリアのユニットだけを、ネジ止めして組み立ててみた。この状態で、バリア開閉機構が問題なく作動することも確認する

レンズバリアユニットを裏から見たところ。このユニットはカメラ本体と電源スイッチのリード線がつながっていたが、これはニッパーでカットした。このパーツを、レンズキャップにどう加工するかが問題である

レンズバリアユニットの組み込み工作

いろいろ考えた結果、49mmフィルターのガラスを外した枠(左)をレンズキャップの外枠として流用することにした。フィルターのブランドがPENTAXなのは、ねじ込み枠が深く改造に適しているため。さらに43mm→49mmのステップアップリング(右)を組み合わせ、レンズに装着することにした 試しにはめ込んでみたところ、レンズバリアユニットの外径がフィルター枠内径よりほんの少し大きく、きっちり収まらないことが判明した

そこでレンズバリアユニット外周の出っ張りを、カッターナイフで削り落とすことにした。作業はあわてず丁寧に、怪我をしないようなカッターの持ち方を工夫しながら行なう さらにフィルターリング内側の一部を、丸ヤスリで微妙に削る。この部品に、レンズバリアユニットの一部が干渉してしまうのだ

パーツを調整した結果、今度はレンズキャップユニットがフィルター枠にキチンと収まった 裏返して見ると、フィルター枠に部品がちょうどピッタリはまっているのが分かる

さらに43mm→49mmのステップアップリングを取り付けると、いよいよレンズに装着可能となる レンズに装着すると、とりあえずこんな感じに。部品同士はまだ接着していないが、仮組みとしてはひとまず完成。なかなかコンパクトでスマートに収まった。しかし、オリンパスのレンズなのに「CANON」や「ASAHI PENTAX」などの文字が入ったままなのはどうも気になる

そこで再びレンズバリアユニットをばらし、前カバーのパーツをつや消しブラックで塗装してみた。塗料はプラモデル用の缶スプレーを使用。塗装の際、部品を両面テープで割り箸に固定するのは模型工作での基本だ。黒一色だと寂しい気がしたので、レンズ開閉レバーを赤で塗装した。赤塗料は透明度が高いので、下地に白を塗ると発色が良くなる 塗装したパーツを再び組み立てるとこんな感じに。フィルター枠の「ASAHI PENTAX」などの彫刻文字にはブラック塗料を流し込み、目立たなくさせた。一方、シルバーの彫刻ラインには開閉レバーと同じ赤塗料を流し込み、アクセントとした。レンズバリアユニットをフィルター枠にエポキシ系接着剤でしっかり固定すると「レンズバリア内蔵キャップ」の完成である

完成したレンズバリア内蔵キャップをレンズに装着してみる。仮組みのときに気になった余計な文字がなくなりだいぶスッキリした。バリア開閉レバーの赤も、レンズ指標の赤と上手くマッチしたようだ レンズバリアを開いたところ。バリアはレバー操作のワンタッチで開閉し、迅速な撮影が可能である。バリアユニットの前カバーは、レンズフードとしての効果も期待できそうだ

レンズバリア開閉の様子。小気味良いクリック感で、確実に作動する。こんなアクセサリーが売っていたら、自分はぜひ買いたいと思うだろう(笑)

まとめ

 今回ふとした思い付きで作った「レンズバリア内蔵キャップ」だが、想像以上に便利で軽快な撮影が楽しめた。やはり一眼レフカメラ用のレンズと言えど、レンズバリアは内蔵されるべきだと、改めて感じた。

 実は、レンズバリアを内蔵した一眼レフカメラ用レンズは、過去に製品化されたことがある。それが1988年にミノルタから発売されたαマウントの「AF Zoom 35-80mm F4-5.6」と「AF Zoom 80-200mm F4.5-5.6」である。

 このレンズが発売されたのはなんとなく記憶にあるが、当時のぼくは初心者向けのギミックだと思い気にも留めなかった。これは世間も同じだったようで、程なくこのレンズは生産中止となり、その後レンズバリアを内蔵した交換レンズは、どのメーカーからも発売されていないと思う。

 しかし今はもう時代が違う。一眼レフもフィルムからデジタルへと大きな進歩を遂げた。レンズ技術も進歩して、過去には考えられなかった超高倍率ズームや、超広角ズームなども実現した。それなのに、レンズキャップだけが過去の呪縛に捉われたかのような「取り外し式」なのは、どうにも釈然としない。

 実際、コンパクトデジタルカメラのレンズバリアは、今回改造に使用した20年前のものより格段に進歩している。今の技術だったら、大口径の交換レンズにも、さりげなく目立たないようバリアを仕込むことだってできるかもしれない。

 実は、今回製作した「レンズバリア内蔵キャップ」に対する人々の反応を見てみようと、これを装着したE-420を肩から提げ、カメラマンなど業界関係者が集う某パーティーに参加してみた。

 そうしたところ結構な注目を浴び、皆さんに「面白い!」、「欲しい!」などと羨ましがられてしまった。だからそれなりにオシャレでスマートに仕上げれば、「レンズバリア内蔵キャップ」、もしくは「レンズバリア内蔵レンズ」は結構売れると思うのだ。

 その際レンズバリアの作動は「手動操作」で十分であり、むしろデジタル全盛の時代だからこそ、手動操作のギミックがことさら心地よく感じられるのだ。

 今のところ、この利便性はぼくひとりが享受しているのだが、それでは忍びないのでぜひ皆さんにも味わっていただきたい。だからこの記事をきっかけに、どこかのメーカーから同様のギミックを仕込んだ製品が発売されると、本望である。


作例

 おニューのカメラを持って撮影に出るのはワクワクするが、これがお手製の改造品だとまた格別である。今回の改造は写りそのものに違いはないが、より気軽に撮影できるという「気分」が違うのだ。今回は東京都立川市の街を、散策しながら撮影してみた。

※サムネイルをクリックすると、長辺1,024ピクセルにリサイズした画像を表示します


駐車場の空きスペースを示す、手作り感あふれる看板。イーゼルに掛けられたデッサンのように作られているのがカワイイ 同じ駐車場にあった別の看板。材料の板が足りなかったためか、こちらの文字は紙に書いてある。こうした工作もまた切り貼り(ブリコラージュ)である

分別しない3人が書類送検されてゆく……女の子もかなりションボリした様子 立川競輪場の塀の前に、ゴミ集積所が設置されていたのだ。壁画に描かれた3人の親子には、何の罪もないのである

「火気厳禁」と書かれたすぐ後ろに、真っ赤なカキがせまる。危険なようでのどかな風景 建物の隙間が、看板のリサイクル品でふさがれている。元の看板の文字は……「バスガスバクハツ」?

呼び鈴ボタンに手のイラスト、インターホンの周囲には模様が描かれている。こういう生活の中に生まれるアートの心が、妙に愛おしく感じられる 左のインターホンの周囲を引きで撮影してみたが、全体に何となくアートな雰囲気が漂っている

かなり年代ものと思われるキャラクターの2人。現代の「萌え」とは異なり、アブラギッシュでクドイ感じ 少年の自転車のかごには「イナズマン」の頭が……これでだいたいの年代が特定できるだろう

ブリキにペンキで書かれた看板だが、長年の時を経て何とも言えない深い色合いに変化している。このアンティークな看板をお店に持ち込んだら、高価買入してくれるだろうか? 文字の一部が蒸発して意味不明になった看板。もう何年もずっと、ここから先もずっと毎日が「本日交通」

※訂正(1月27日13時):記事初出時、「AF Zoom 35-80mm F4-5.6」の発売年を1989年と記載しておりましたが、正しくは1988年でした。また、レンズバリア内蔵レンズとして「AF Zoom 80-200mm F4.5-5.6」を本文に追加しました。



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  http://dc.watch.impress.co.jp/cda/labo_backnumber/



糸崎公朗
1965年生まれ。東京造形大学卒業。美術家・写真家。「非人称芸術」というコンセプトのもと、独自の写真技法により作品制作する。主な受賞にキリンアートア ワード1999優秀賞、2000年度コニカ ミノルタフォト・プレミオ大賞、第19回東川賞新人作家賞など。主な著作に「フォトモの街角」「東京昆虫デジワイド」 (共にアートン)など。 ホームページはhttp://www.itozaki.com/

2009/01/26 12:09
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