デジカメ Watch
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タムロンの最新ズームレンズをフォーサーズで試す
[2009/02/20]

【第7回】ジャンクカメラで作るレンズバリア内蔵キャップ
[2009/01/26]


2008年

【第3回】史上初!? 思い付きで生まれた「セミ魚眼付きコンパクトデジカメ」


 冒頭から告知で何なのだが、ぼくは今、金沢21世紀美術館デザインギャラリーで「金沢をブリコラージュする。糸崎公朗写真展」という個展を開催している(7月13日まで)。この「ブリコラージュ」という言葉の意味は、連載第1回目でも解説したとおり「既製品の断片を寄せ集め、新たな機能を持つ道具を生み出す素人工作」」というような意味のフランス語で、それがこの連載のタイトルの「切り貼り」という言葉にもかかっている。

 ブリコラージュの名手というのは写真界にも少なからずおられるが、その中でぼくが影響を受けた一人が昆虫写真家の海野和男さんだ。海野さんの代表作は何といってもチョウの飛翔の瞬間を捉えたシリーズで、市販の魚眼レンズとクリップオンストロボを組み合わせて撮影されているのが特徴だ。

 魚眼レンズはもともと風景撮影用として売られていたもので、それを「昆虫の接写」に使った人は海野さんが初めてだ。またクリップオンストロボは魚眼レンズの180度の画角をカバーすることはできないから、これらの組み合わせはタブーとされていた。

 つまり、海野さんは既製品の本来の用途に縛られず、オリジナルな組み合わせにより、まったく新たな映像世界を開拓したわけで、これぞまさにブリコラージュの見本なのだ。このほかにも海野さんは、昆虫撮影に適したように、市販のカメラやレンズ、ストロボなどにさまざまなブリコラージュを行ない、ぼくも多大な影響を受けた。

 その海野さんが、ご自身のWebサイト「小諸日記」で面白いブリコラージュを発表したことがある。それは「一眼レフ用の安い標準ズームの前玉を力任せにひねったら外れてしまい、そうしたら高倍率マクロレンズになった」というものだ( http://eco.goo.ne.jp/nature/unno/diary/200512/1134884951.html )。

 まさに大胆な改造だが、リンク先を読めばブリコラージュがどのような思考の流れで生じるかが良くわかると思う。それはエンジニアリング的な理論の積み重ねとは異なる、いわば「思い付きの連鎖」だ。そこで、ぼくは海野さんの思い付きの連鎖に続き、「ではコンパクトデジカメで同じことをやったらどうなるだろう?」と考えてしまったのだ。


 しかしイキナリちゃんとしたデジカメを改造するのは怖いので、まずはジャンク品で試してみたい……と思っていたところ、幸いにもと言ってはなんだが、ぼくの使っていたリコーCaplio R6が故障してしまった。内部の「レンズスライディングシステム」が作動不能のようで、スイッチオンでレンズはせり出すものの、ピントが合わない。まずはこのR6のジャンク品で「レンズの前玉の外し方」を研究することにした。

 その結果、「ある方法」によってCaplio R6のレンズ前玉だけをきれいに外すことに成功した。しかし、元が故障してピントの合わないデジカメだから、レンズ前玉のみを外した結果がわからない。

 そこで、「デジカメWatchの記事にする」という使命もあることだし、断腸の思いで五体満足なCaplio R7に同じ改造をし、その効果を確認することにした。Caplio R7はCaplio R6の後継機で、レンズの構造はほぼ同一と思われる。以下、その改造方法の詳細を順を追ってお見せしようと思う。

 ここで断っておきたいのだが、今回紹介するのは一度改造したら元の状態に戻せない「不可逆改造」なので、もちろん工作に自信のない大人も絶対に手を出すべきではないだろう。まぁ、「面白い読み物」と思って以下ご覧いただければ幸いである。

■注意■

  • この記事を読んで行なった行為によって、生じた損害はデジカメWatch編集部、糸崎公朗および、メーカー、購入店もその責を負いません。
  • デジカメWatch編集部および糸崎公朗は、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。


工作

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まず用意した道具はコピー用紙の束と、レザーソー(薄刃の金鋸)。なんとなく「マッドサイエンティストの手術道具」といった雰囲気が……? R7は、ズームを最大望遠にセットしたまま電池を抜く。そしてコピー用紙の束を3層に重ねた手術台……じゃなくて工作台に乗せる。加工時にレンズに付加に負荷をかけないための工夫だ
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そしてズーム先端の段の基部にノコギリを当て…… ゴリゴリゴリッと切る! 精密機械にノコギリはいかにも乱暴だが、ここは文字通り「断腸の思い」で作業を開始するのだ。スローシャッターのため高速で歯を動かしてしてるように見えるが、実際は慎重にゆっくり作業を進める
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とりあえずはこんな風に切れ目が入った。完全に切り落とそうとせず、ノコギリの角度を変えながら浅い切れ目を入れてゆく。銀色の鏡筒は金属のようだが、実は塗装されたプラスティック素材だ 今度はカメラを縦にして、鏡筒の右手側に切れ目を入れる。レンズがテーブルからちょっと浮き上がるので、一番下の段のコピー用紙を足して工作台を厚くしている。この後さらにカメラを90度回転させて逆さにし、鏡筒の下側に切れ目を入れる

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そして鏡筒の左手側にも切れ目を入れるのだが、その前にレンズの位置に合わせ工作台をさら高くするため、コピー用紙の束を重ねる そしてカット。これで鏡筒の全周に切れ目が入ったが、まだレンズは切り離されてはいない
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今度はカメラを逆順に回転させながら、鏡筒を完全に切断してゆく あとちょっとで切れる……
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切れた! レンズの中からビヨーンとバネが出てきてちょっとビックリ。この前玉はバネで抑えられることで、ぐらつきによる誤差を吸収する仕組みのようだ 前玉を取り去ったレンズ鏡筒にはレザーソーの切粉(きりこ)がたくさん付いているので、それをブロワーで吹き飛ばす

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さらに切断面のバリをカッターでカットしてゆく キレイになったレンズの内側。この後電池を入れて、おもむろにスイッチオンしてみる


試写

※サムネールをクリックすると等倍の画像を開きます。

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さて、さっそくの試写なのだが……まずは望遠端ではどうやってもピントが合わない! 近距離はもちろん遠距離にもピントが合わず、「高倍率マクロとして使用する」というプランは早速挫折することに…… 次に広角側にセット……これもピントが合わず……ちょっと冷や汗が出てくる
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しかしマクロモードにしたらピントが来た! しかもずいぶんと広角で、魚眼レンズのようだ おまけにレンズ前1cmでもピントが合う! これはまったくの想定外の、かなり面白いカメラになった予感……


追加工作

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ここで最後の追加工作。鏡筒内部のこの突起物を、ニッパーで切り取る。ちなみにカットするのは写真右に見える「長い突起物」だけで、左の「短い突起物」はカットする必要はない(ぼくは間違えて両方カットしてしまった) こんな感じに。(もう1度言うが、写真左に見える「短い突起」はカットする必要はない)
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「長い突起」をカットしたのは、内部メカやレンズを保護するためのフィルターを付けるため。突起をカットしないとフィルターのガラスと干渉して取り付けられないのだ しかしズームを望遠にすると、内部メカと干渉したフィルターが浮き上がってしまう。フィルターを付けたままズームを望遠にすると、レンズに負荷がかかり壊れてしまうだろう
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そこで、ズームが不用意に望遠にならないよう、Caplio R7のMENUボタンを押し、セットアップ画面に入り「ステップズーム」に設定する ステップズームはズーム位置を35mm判換算で28mm、35mm、50mm、80mm、135mm、200mm相当のステップで停止させるモードで、もともとCaplio R7に備わっている

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フィルターはエポキシなどでしっかりキレイに接着したいところだが、今後何か不具合があるといけないので、とりあえずセロテープを巻いて固定した 無改造のR7との比較。電源OFF時の改造品は内部レンズがずいぶん奥に引っ込むが、フィルター枠の分だけ厚みがある
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電源ON時の比較。改造品とは思えないくらいさり気ないのが良い レンズキャップは34mm径が市販されていないようで、あっても取り外しが面倒そうなので、ケースに出し入れして使うことにした。フィルターの分厚みが増したため純正のケースは使えないが、GRデジタル用のケースがぴったりだ


テスト撮影

 いつものように「金網チャート」でテスト撮影を行なった。プログラムAEなので、絞りを変えたテストは行なっていない。そのかわり市販の魚眼レンズや超広角レンズと撮影範囲の比較を行なってみた。

※サムネールをクリックすると等倍の画像を開きます。

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まずは今回の改造デジカメ「前玉を外したCaplio R7」で撮影した画像。魚眼レンズのように直線が歪んでいる。画面中心は非常にシャープで、手前の金網から遠景までが被写界深度に入っている。しかし画面の周辺に行くに従いピントが大きくボケる。ここは改造レンズなので仕方のないところ。市販品では許されない性能だろう 市販の魚眼レンズとの比較として、オリンパスE-410にシグマ8mm F3.5 Fisheye(ニコンマウント)を、アダプタを介して装着し撮影してみた。「前玉外しのCaplio R7」は180度の魚眼レンズよりはだいぶ画角が狭いことがわかる
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次に、シグマ8mm F3.5 Fisheyeに、フォーサーズマウントのテレコンEC-14を装着し撮影してみた。「前玉を外したCaplio R7」はこれよりちょっとだけ画角が狭いセミ魚眼レンズといったところだろう コンパクトデジカメの超広角レンズということで、GR DIGITAL IIにワイコンGW-1を装着して撮影した(21mm相当)。直線の歪みはないが「前玉を外したCaplio R7」とほぼ同じ撮影範囲といえる


実写撮影編(マクロ撮影)

 上記のテストの結果をまとめると、「前玉外しCaplio R7」はワイコンを装着したGR DIGITAL IIとほぼ同じ画角のセミフィッシュアイレンズになり、元のR7の28mm相当の画角に比べるとだいぶ広がったことになる。しかしその描写は中心部はシャープだが周辺は大きくボケ、市販できるレンズの基準を大きく下回る。

 そこでまず、このカメラは「広角マクロ」専用として使ってみることにした。マクロ撮影で主題を画面中央に配置し背景をボカせば、画面周辺の画質の悪化も問題にならないだろう。もとよりぼくは、都市部に生息する昆虫をテーマにした「路上ネイチャー」と題するシリーズを撮影しているから、その用途にぴったりのカメラとも言える。

 今回の撮影は自宅の東京近郊ではなく、個展の準備で訪れた石川県金沢市とその周辺で行なった。金沢の春の訪れは東京よりちょっと遅いようで肌寒かったが、それでもけっこうな種類の虫がいた。また、金沢から東京の自宅への帰りがけ、思いもよらず長野県小諸市にある海野和男さんのアトリエを訪問することになり、その付近でも撮影することができた。

※サムネールをクリックすると、1,024×768ピクセルにリサイズした画像を別ウィンドウで開きます。

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金沢21世紀美術館のガラス壁とまっていたキイロホソガガンボ。場所が場所だけにアート作品にも見えてしまう(金沢市) 6cm近くもあるニホンカワトンボ。市内の住宅地で見つけたが、東京の街中ではまず見ないトンボだ(金沢市)
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市内の繁華街で見つけたヤニサシガメ。セミ魚眼レンズの効果で街の雰囲気も良く表現できている(金沢市) 美術館の近くで見つけたミノムシ(オオミノガ幼虫)。ミノを背負いながら、金属製フェンスをよじ登っている(金沢市)
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春だけに現れるウスバシロチョウ。街中ではまず見られないチョウで、これは郊外の自然公園を訪れた際に撮影した(金沢市) これも同じ自然公園で撮影した、トラフシジミ。背景に見えるのは移築保存されている古民家だ(金沢市)

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お城の形をした大型滑り台にいたゴミグモ。巣の中央に食べかすなどのゴミを集め、その中にクモがまぎれている(羽咋市) お寺の軒下で見つけた子グモの集団。触ると「クモの子を散らすように」逃げていくに違いない。金沢は古いお寺が多く、その周囲でいろいろな虫が見られる(金沢市)

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金沢の帰り、昆虫写真家の海野和男さんのアトリエを訪れた。バルコニーのテーブルに小さなイモムシが這っていた(小諸市) 海野さんに案内された草原は、キバネツノトンボの生息地だ。もちろん、東京では見られない昆虫だ(小諸市)
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交尾中のキバネツノトンボの飛翔の瞬間をキャッチ。このような飛翔写真はもちろん海野和男さんが元祖だ(小諸市) ノイバラの茎そっくりに擬態したシャクトリムシ(キエダシャクというガの幼虫)。昆虫の擬態も海野さんの撮影テーマのひとつ(小諸市)
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金沢でも見たウスバシロチョウの飛翔写真も撮影できた。我ながら、まるで海野さんの写真のようだ(笑)。この改造デジカメはマクロAFを解除してMFにすると画角が少し広がり、画面左上がフィルター枠でケラレることがある(小諸市)


実写撮影編(一般撮影)

 マクロ撮影専用に考えていた「前玉を外したCaplio R7」だが、セミ魚眼レンズの画角が一般撮影にも使いやすそうに思えたので、いろいろ撮ってみた。やはり周辺の描写は良くないが、それなりに面白い写真が撮れたのではないかと思う。

※サムネールをクリックすると、撮影画像を1,024×768ピクセルにリサイズした画像を別ウィンドウで開きます。

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駅前ロータリーを歩道橋から見下げて撮影。地方の新興住宅地の雰囲気が丸ごと画面に収まった感じだ(能美市) 遠景を撮影すると中央はシャープながら、画面周辺がボケてしまうのが欠点。ここはあくまで「改造デジカメ」なので仕方のないところ。しかし古い街並みの雰囲気も、自然と画面に収まる使い勝手の良い画角だ(加賀市)
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お城のデザインの立派なおもちゃ屋さん。このように大きな建物も無理なく画面に収めることができる(小松市) 同じくお城のデザインだが、こちらは滑り台。ここに上の作例で紹介したゴミグモが棲んでいる。この写真はデジカメのフォーカスポイントを移動し、画面周辺にピントを合わせている。その代わり中心は少しピンボケとなっている(羽咋市)
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そんな事言われても困ってしまう……というようなお寺の貼り紙。このような遠近感を生かした撮影にも適している(小松市) もちろん縦位置の写真も楽しめる。これは角がセメント細工の偽木に加工されたオシャレな建物(羽咋市)

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アーケードの一角の雰囲気も見事に捉えている。オシャレな感じがレトロなレコードやさんだが、廃業してしまったようだ(小松市) こちらは廃業した床屋さんのようだ。モダンが色あせたところに深い味わいがある(白山市)
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この建物は何かのお店に見えるが、実は1階がバス停留所なのだ(羽咋郡) バス停留所の内部は古い看板などが貼られ、くつろげるようになっている。寒い冬場は助かるかもしれない(羽咋郡)
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金沢からの帰りがけ、乗り換えの直江津駅前でちょっとだけ撮影。面白い看板を見つけたのでスローシンクロで撮ったが、なかなかいい雰囲気に写っている(上越市) 最後は、ぼくの個展「金沢をブリコラージュする。糸崎公朗写真展」の会場写真。このような記録にもなかなか便利な画角といえる


まとめ

 ふとした思い付きで断行した「Caplio R7のズームレンズの前玉を外したらどうなるか?」という実験だが、その結果「マクロに強いセミ魚眼レンズ付きコンパクトデジカメ」というまったく予想外のモノができてしまった。こんなデジカメはこれまでどのメーカーからも発売されてなかっただろう。

 現在、コンパクトデジカメでセミ魚眼撮影をするためのコンバージョンレンズが、いくつかのメーカーから発売されている。しかしこれらのコンバージョンレンズを装着すると、当然のことながら元のカメラより大型化してしまう。しかし今回はその逆に、レンズの一部を取り除く改造をしたため、セミ魚眼撮影が可能なカメラとしては他に例がないほど薄型コンパクトに仕上がった。

 このコンパクトさは実際に使うと非常に便利で、腰に下げたケースからサッと取り出し、気軽にさりげなく超広角撮影が楽しめる。また、マクロ撮影に限れば非常にシャープな写りで、自分の作品撮影用として十分な性能を持っていると言える。

 もちろん、この改造品が快適に使えて高画質なのは、元のCaplio R7の性能のおかげである。特にR7は操作性に優れたカメラで、「AFターゲット移動」、「マイセッティングモード」、「ジョイスティックを兼ねたアジャストボタン」などの便利な機能が、改造品でもそのまま使える。またR6はマクロ撮影時のAFやストロボ調光の精度が優秀で、それもこの改造品に反映されている。

 また自分として新発見だったのは、おおむね21mm相当のセミ魚眼レンズが、風景などの一般撮影にも非常に使いやすかったことだ。画角180度の魚眼は使いこなしが難しい特殊レンズだが、セミフィッシュアイは周囲を見渡した範囲の風景が自然に撮れる。直線はゆがんで写るのが欠点のようだが、誇張がなく不思議と自然に見えるのだ。


 それだけに、一般撮影時に画面周辺の画質が著しく劣ってしまうのが残念だ。他の欠点としては、元のR7の露出モードがプログラムAEのみなので、マクロ撮影時に背景が意に反してオーバーになってしまうことがある。また最小絞りがF5までなので、マクロ撮影時の被写界深度がいまひとつ浅いようにも感じられる。またこれも改造品なので仕方がないが、レンズバリアが内蔵されていない。

 しかし逆に言えば欠点はこれくらいで、レンズの描写性能を上げ、露出モードにマニュアルを加え、レンズバリアを装備して「セミ魚眼付きコンパクトデジカメ」として発売すれば、案外売れるんじゃないかと思ってしまう。いや「セミ魚眼付きコンパクトデジカメ」が量産の暁には、写真界に新たな表現の世界をもたらすに違いない(笑)。これはぜひ、商品企画としてメーカーに提案したいと思う。実際、昆虫撮影用のストロボや中間リングなどのアクセサリーには、写真家の改造品を元に製品化されたものが少なからず存在するのだ。

 今回の切り貼り=ブリコラージュは、結果が予想できない行き当たりばったりで断行したのが、偶然良い結果となった。だから当然、ほかのコンパクトデジカメで似たような改造を行ない、同じような好結果が得られる保証はまったくない。行き当たりばったりのブリコラージュは失敗するリスクも非常に大きく、言ってみればギャンブルのようなものだ。

 しかし考えてみれば、最近のデジカメはとにかくモデルチェンジが早く、新型デジカメの大半が数カ月で「型落ち」になってしまうのが現実だ。だから格安の型落ちや中古のデジカメを素材に「実験」するのも、デジタルならではのカメラの楽しみ方なのかもしれない。もちろん「ギャンブルは身を滅ぼす」から、自分でもそんな改造は滅多に試さないし、まして他人に薦められる事ではないけど(笑)



URL
  金沢21世紀美術館
  http://www.kanazawa21.jp/
  糸崎公朗写真展「金沢をブリコーラジュする。」(7月13日まで開催)
  http://www.kanazawa21.jp/designgallery/kimioitozaki.html



糸崎公朗
1965年生まれ。東京造形大学卒業。美術家・写真家。「非人称芸術」というコンセプトのもと、独自の写真技法により作品制作する。主な受賞にキリンアートア ワード1999優秀賞、2000年度コニカ ミノルタフォト・プレミオ大賞、第19回東川賞新人作家賞など。主な著作に「フォトモの街角」「東京昆虫デジワイド」 (共にアートン)など。 ホームページはhttp://www.itozaki.com/

2008/06/20 16:18
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