オールドデジカメの凱旋
ソニーサイバーショットDSC-P5(2001年)
懐かしの横長スタイル。メディア入手に苦戦
Reported by 吉森信哉(2014/11/4 07:00)
前々回の「ニコンCOOLPIX 5000」は違うけど、最近このコーナーで取り上げるカメラは“少々古くても機能や写りは十分”という点に注目してモデル選択をすることが多い。…だけど、その古さ具合が微妙だと、懐かしさや個性よりも“現行モデルとの性能差”の方が気になってしまう。そこで、今回は“機能や写りよりも懐かしさ”を優先した選択を行いたいと思う。でも、そういう懐かしさを感じるモデルって、意識した時ほど見つからないモンなんだよねぇ…。
案の定、いろいろ中古カメラ店を巡っても、さほど懐かしさを感じるモデルは見つからなかった。まあ、キーワードが「懐かしさ」だけって、あまりにも漠然とし過ぎだろう(苦笑)。…しかし、前々回のニコンCOOLPIX 5000を見つけた古い家電製品を扱う店で、またもや何かを見つけた!
そのカメラは「ソニー サイバーショットDSC-P5」。今は無きPシリーズの、比較的初期の3メガモデルである。発売時の価格は、オープンプライスで7万円前後だった。わ~、懐かしいわぁ、Pシリーズ。正面から見た際の“右端寄りのレンズと、それに合わせた丸みを帯びた側面”がイイ感じっ! カメラ本体の状態は、レンズ鏡筒の周囲(リング部)複数の小さいキズがあったりして、お世辞にも「良好」とは言えないが、機能的な問題はなさそうである。あ、レンズ部とかはキレイだわ。
元箱や必要な備品もある程度は残っているが、取扱説明書、2枚のCD-ROM、8MBのメモリースティック、リストストラップ、ピクチャーパラダイスクラブVol.2(プレイステーション2に画像を取り込めるというソフト)、などは欠品している。で、この状態で「7,500円」で販売されていた。ええ、もちろん迷わず買いましたよ。
ソニーのコンパクトデジタルカメラ「サイバーショット」は、1996年に初代モデル「サイバーショットDSC-F1」を発売以降、いくつかのシリーズが展開されていく。DSC-F1から始まる「Fシリーズ」には、レンズ部が回転するというギミックが特徴的だった。
そして、横長ボディでレンズが端寄りの「Pシリーズ」は、初期のサイバーショットを代表するシリーズ。2000年10月発売の初代Pシリーズ「サイバーショットDSC-P1」などは、その独特でスタイリッシュなフォルムやハイスペックで人気を博したモデルである。
今回見つけて購入した「サイバーショットDSC-P5」は、その人気モデルの後継機。発売は2001年10月で、新たに開発された“インフォリチウム”Cタイプバッテリーの採用や、この新バッテリーや二段沈胴式レンズの採用によるさらなる小型軽量化、などが特徴となっている。ただし、DSC-P1もDSC-P5も、撮像素子のサイズや画素数、ズームレンズの倍率・画角などの基本仕様は、ほぼ同じである(微妙な違いはあるが)。なお、DSC-P5と同時発売のDSC-P3は、36mm相当の単焦点レンズを搭載する廉価版のモデルであった(P5より2万円くらい安い)。
それでは、サイバーショットDSC-P5のスペックを紹介しよう。撮像素子は有効約321万画素の1/1.8型CCDセンサー。レンズは39-117mm相当の3倍ズームで、F2.8-5.6。露出モードはプログラムAEのみ。露出補正は±2段まで(1/3段ステップ)。ISO感度は、ISO100、200、400、オート。ファインダーは、実像式ズームファインダー。液晶モニターは、1.5型・12.3万ドットのTFT液晶。記録媒体はメモリースティック。記録フォーマットは、静止画はJPEG、TIFF、GIF(テキストモードとクリップモーション時)。動画はMPEG1。ボディの大きさと重さは、112.5×53.8×36.2mm(幅×高さ×奥行き)・本体のみ約180g(185gという表記もあるが)。
サイバーショット DSC-P5が発売された時期(2001年の後半)、他社はどんなコンデジを発売していたのかナ? 目ぼしいモデルに絞って、ちょっと調べてみた。なお、発売日に関しては、発表後に変更される事も多々あるので、もしかしたら多少違うかも…。
まず、精力的に新製品を出していたのはオリンパス。7月には、CAMEDIA C-4040 ZOOM(画素数:4メガ、レンズ:35-105mm相当、価格:11万5,000円前後)。9月には、CAMEDIA C-40 ZOOM(画素数:4メガ、レンズ:35-98mm相当、価格:10万円前後)。11月には、CAMEDIA E-20(画素数:5メガ、レンズ:35-140mm相当、価格:22万円前後)と、CAMEDIA C-3100 ZOOM(画素数:3メガ、レンズ:32-96mm相当、価格:6万3,000円前後)…このように次々と発売している。
パナソニックのLUMIXシリーズがデビューしたのが、実はこの頃である。10月に、LUMIX DCM-LC5(画素数:4メガ、レンズ:33-100mm相当、価格:9万円前後)と、LUMIX DCM-F7(画素数:2メガ、レンズ:35-70mm相当、価格:5万円前後)を発売している。ちなみに、レンズ交換式のLUMIX Lシリーズ(フォーサーズ)が登場するのは2006年である。
キヤノンは、10月にPowerShot S40(画素数:4メガ、レンズ:35-105mm相当、価格:10万円前後)を、12月には下位モデルのPowerShot S30(画素数:3メガ、レンズ:35-105mm相当、価格:9万円前後)を発売している。
ニコンからは、12月に前出のCOOLPIX 5000(画素数:5メガ、レンズ:28-85mm相当、価格:15万円前後)が発売されている。
そして、ソニーからは、6月にサイバーショット DSC-S85(画素数:4メガ、レンズ:34-102mm相当、価格:9万円前後)、10月にサイバーショット DSC-F707(画素数:5メガ、レンズ:38-190mm相当、価格:12万円前後)、などが発売されている。
他のメーカーでは、11月にサンヨー DSC-AZ1(画素数:4メガ、レンズ:35-98mm相当、価格:10万円前後)、ペンタックス オプティオ430(画素数:4メガ、レンズ:37.5-112.5mm相当、価格:10万5,000円前後)…といったモデルが発売された。
こうやって同時期(2001年後半)に発売されたモデルをチェックしてみると、DSC-P5のような3メガ機よりも、さらに高画素な4メガや5メガのモデルが多い事に気づく。この時期は、このあたりのモデルが“デジカメ好きのツボ”だったみたい(コンデジの中で)。そして、3メガや2メガあたりのモデルは“実用に徹した記録ツール”として注目されていたのだろう。ボク自身、前年の2000年には3メガ機のニコンCOOLPIX 990を買って、2001年には5メガ機のニコンCOOLPIX 5000を買ってるからね。
さて、そんな十数年前のデジカメ事情を懐かしみつつ、購入したサイバーショットDSC-P5の実写に取りかかるとしよう。…だが、ここで問題が浮び上がった。記録メディアの“メモリースティック”がナイのである。
前述のとおり、カメラ付属の8MBのメモリースティックは欠品状態で、ボク自身もメモリースティックは所有していない(以前は所有していたが)。小型のメモリースティックPRO Duoは所有していて、メモリースティックのアダプターも持ってる。でも、これはDSC-P5のような古いモデルには使用できない。挿入して電源を入れてもエラー表示が出るだけ。そして、今はメモリースティックを販売している店も見当たらず、中古品とかもナイ。う~ん、以前は中古カメラ店で中古のメモリーカードも扱ってたんだけどねぇ(東京在住のボクが知っている範囲のカメラ店事情)。…さあ、困ったよ。
しばらく困った状態が続いたが、いろいろネットで検索してみたところ、64MBのメモリースティック(ハギワラシスコム製)を1,000円弱で販売している業者を見つけた。ええ、もちろん注文して買いましたとも。でもなあ~、昔はメモリーカードの容量不足で困ったモノだが、まさか“メモリーカード不在”で困る事態が訪れようとはねぇ。…注文から数日後、待望の“メモリースティックの入手”を果たし、ようやく撮影準備が完了。ああ、長かった(笑)。
モードダイヤル横のPOWERボタンを深く押し込むと、少し間を置いてレンズ鏡筒が“じんわり”と繰り出してくる。う~ん、この起動のゆっくり感や長く尾を引く作動音が、何とも時代を感じさせるねぇ。36.2mmもあるボディの厚みも時代を感じさせる要因だが、このDSC-P5(Pシリーズ全般)の場合、高さが低く抑えてあって手にした際の収まりが良いため、その厚みはあまり嫌な感じはしなかった。また、前面と背面の右手(指)が当たる部分には、ドット状に小さな突起が設けてあり、これがボディのホールド感を高めている気がする。液晶モニターのサイズは1.5型で、このあたりも「2000年代初頭のモデルよのお」と感じさせる部分。あー、うー、老眼が進んだ身にはツライわ。
モードダイヤルに目を移すと「画像再生/編集」や「SET UP」のモードが見受けられる。このあたりも時代を感じさせる仕様である。最近のモデルだと、独立した再生ボタンが設けてあるし、SET UPはメニュー内に組み込まれてる事が多いからね。また、モードダイヤル脇の仰々しい「内蔵マイク」の穴(穴がいっぱい!)や、液晶モニター上の液晶表示の「表示窓」なども、最近のモデルには見られない独特な部分である。
露出モードは、基本的に“プログラムAEのみ”という仕様だが、実際には静止画モード(カメラのアイコン)と夜景モード(月のアイコン)を使い分ける事になる。普通に考えると、静止画モードだけでも良さそうなモノだが、このDSC-P5の場合、静止画モードだと低速側のシャッター速度が1/30秒止まりとなってしまう。まあ、手ブレ補正機構が搭載されない時代のカメラだから、これ以下のシャッター速度は実用的ではないが、低速限界速度が1/30秒ってどうなのよコレ? 実写しながら少し呆れ気味(笑)。ということで、少し暗くなってきたら(夜景以前のレベルでも)静止画モードから夜景モードに切り換える必要がある。
…しかし、3メガ機のDSC-P5でも、64MBのメモリースティック1枚(1本?)だと、やっぱ容量的にツライわな。画像サイズ:2,048×1,536ピクセル(最大)・画質:ファインの設定で「約40枚」だもんねぇ。こりゃあ、付属の8MBのメモリースティックがあったとしても“焼石に水”状態だったわ。画質をファインからスタンダードに落とせば枚数は2倍近くに増えるけど、その方法はできれば避けたいし。もちろん、現在このカメラでガシガシ撮る事はないけど、もしガシガシ撮るつもりなら、128MBのメモリースティックが5、6枚は欲しいところだ。
シャッターボタン半押しでのAF合焦までの“ゆっくり感”や、レリーズ直後に表示される「記録中」の赤文字。こういった、古さと言うよりも“当時のテイスト”を味わいつつサイバーショットDSC-P5の実写を楽しむ。今の感覚(基準)だとあり得ない「39mm相当」という広角端の光学3倍ズームも、表示文字の識別に苦労する1.5型モニターも、ISO感度設定の上限が「ISO400」と低いのも、何もかもみな懐かしい…。
でもって、その実写結果を自宅の24インチワイドのPCモニターでチェックする。ええ、カメラの1.5型液晶モニターじゃあ細部描写はサッパリわからんですから。そのチェックの結果は…普通でしたわ(笑)。まあ、3メガ程度の画像だと、100%に拡大しても“細部をチェックする”という感覚はあまりない。ただし、全体的に見て画像の乱れはあまり感じないし(フォーカス不良、周辺部の像のボケや流、片ボケ、など)、オートホワイトバランスによる色調も意外と素直でイイ感じだった。また、4種類のピクチャーエフェクト(PFX)も、思った以上に使用した。なかでも、ソラリとネガアートの“伸るか反るか”感が楽しいかも(笑)。
サイバーショットのPシリーズは、2000年10月発売のDSC-P1から、2005年6月発売のDSC-P200まで、およそ4年半ほど展開したシリーズだが、その“右端寄りレンズと丸みを帯びた側面の横長ボディ”というスタイルは終始一貫していた(廉価版のDSC-P31やDSC-P32やDSC-P43などはビミョーだが)。そのあたりのデザインのポリシーというか統一感があったからこそ、ボクのような非Pシリーズユーザーにも“印象に残るシリーズ”として記憶に刻まれたのかもしれない。
ISO感度比較
最高感度のISO400でも、ノイズ感はあまり気にならない。この時代のコンデジだと、ISO200くらいでもノイズ感が気になる機種が多かった。そう考えると、このDSC-P5の描写は優秀かも。