キヤノンEOS Kiss X4【第2回】

RAW派には恐怖の1,800万画素なのだ

Reported by 北村智史


新しくゲットしたEF 24mm F2.8。とりたてて画質がすごいというわけではないが、花形フード&金属マウントだし、EOS Kiss X4とのマッチングもいい

 EOS Kiss X4で困ることといえば、これはもうファイルサイズの大きさに尽きると思う。なにしろ有効1,800万画素である。JPEGオンリーの人ならどうってことはないが、RAW派にはつらい14bit記録のおまけ付きだ。公称のファイルサイズは24.5MB。JPEGのラージ/ファインとの同時記録にしたりなんかすると、1画像当たり30.9MBにもなる。エントリーモデルなのに。

 さらに筆者が困っているのは、SD系メディアを使うデジタル一眼レフカメラを所有するのは初めてなので、あまり大容量のカードを持っていないこと。手持ちのは4GBのSDHCメモリーカードが速いの遅いのとりまぜて4枚と2GBのSDメモリーカードが2枚。合計で20GBである。コンパクトデジカメのレビューとかなら楽勝だし、いままでもレンズ交換式モデルのRAW+JPEG同時記録でも、そこそこなんとかなっていた。

 でも、EOS Kiss X4だと厳しすぎる。4GBのSDHCカードのフォーマット直後の撮影可能枚数表示がISO100で118コマ。36枚撮りフィルムで3本分ちょっとにしかならないのである(こういう表現使うの、すんごい久しぶりな気がする)。たいていは表示よりも多めに撮れるが、それでもだいたい130コマくらいでいっぱいになる。ちょっと物足りない数字である。

 ちなみに、手もとにあるカメラの4GBカード装填時の撮影可能枚数表示はというと、ニコンD700(14bitロスレス圧縮RAW+JPEGラージ/ファイン)が121コマ、オリンパスE-620(RAW+JPEGラージ/スーパーファイン)は161コマである。パッと見はたいして変わらないが、撮れる枚数はかなり違う。

 ニコンとオリンパスの撮影可能枚数表示は基本的に当てにならなくて、D700は230コマくらい、E-620でも200コマくらい撮れる。E-620もJPEGの画質をファインにすると、やっぱり230コマくらい。表示上は118対121ないし161だが、実際のところは130対230なのである。


書き込み速度を測ってみる

恐怖のファイルサイズに対抗するためのRAW派必須アイテムがこれ。速くていっぱい撮れる大容量SDHCカードだ

 さて、4GBで130コマ。20GBあれば平気そうな気もするが、SDメモリーカードは万一のとき用の予備で、実質は16GB。一応、500コマくらいは撮れる計算だが、頑張ると1日で使い切ってしまうかもしれない。頑張らなくても動画(1分当たり330MB)を撮ったらちょっとピンチ。これはやっぱりまずいです。CFが買えなくてマイクロドライブ使ってたEOS D60のころならいざ知らず、今どき容量切れで撮影続行不可能なんてのは恥ずかしい。

 なので、16GBのSDHCメモリーカードを手に入れた。これで撮影可能枚数表示は470にアップ。じゃんじゃん撮ってもまず安心な数字になった。ついでに、中古カメラ店でEF 24mm F2.8も手に入れた。

 さて、ファイルサイズが大きくなって出てくる問題といえば、連写できるコマ数が少なくなること。EOS Kiss X4のようなエントリークラスのカメラは、画素数が増えたからといってバッファメモリーを増やしてもらえないことも多いので、特に深刻だったりする。まあ、EOS Kiss X4でそれほど連写するようなことはないと思うが、連写して止まったあとの書き込み待ちがどれくらいなのかも気になるところだ。

 連写できるコマ数は、スペック表によると、RAWのみで6コマ、RAW+JPEGラージ/ファインだとたったの3コマになってしまう。先代のEOS Kiss X3もRAWのみで9コマ、同時記録で4コマと威張れる数字ではないが、それよりも減っているのだから、かなり貧弱といわざるをえない。ただ、3.7コマ/秒のカメラで連写をやる意味もあまりないし、書き込みさえある程度速ければ大きな問題にはならないだろう。

 というわけで、連写後の書き込み終了までの時間を計ってみることにした。RAW+JPEGラージ/ファインで1コマ目の撮影開始から3コマ連写後にアクセスランプが消えるまで。レンズはEF-S 60mm F2.8 Macro USMでMFのマニュアル露出(絞り開放、1/250秒)。ファイルサイズは平均でRAWが19.4MB、JPEGが3.8MBという条件だ(一般撮影の平均値よりはやや小さめ)。使用カードは新しく買い足したサンディスクのExtreme SDHC(30MB/秒スペックのClass 10バージョン)の16GBである。

 12回計って一番速いのと一番遅いのを抜いた10回の平均値が4.55秒という結果。3コマ撮るのに約0.81秒かかる分を差し引くと、待ち時間は3.74秒になる。同じようにRAWのみの6コマ連写でも試してみたところ、こちらは平均6.63秒。待ち時間は5.01秒だった。いつでも連写、どこでもオートブラケットとかだと書き込み待ちでストレスを感じるかもしれないが、そういうのをやらなければ、まあ平気そうな感じである。

 一応、JPEGのラージ/ファインのみというのも試してみたが、こちらは測定不能。公称値は34コマだが、やってみたら50コマ撮っても60コマ撮っても止まらない。シャッターボタンから指を離したとたんにアクセスランプが消灯するくらいなので、たぶん容量いっぱいまで連写できるのではないかと思う。

 あとの問題は(こっちのほうが大きいかもしれないけど)、HDDの空き容量ががしがし減っていくこと。なんたって1画像当たり約30MBである。1回の撮影で500カット撮ることはあまりないにしても10GB以上というのはありえる数字だ。1年で1TBなんてことも可能性としては十分にある(3万3,000カットくらいかな)。まあ、今どきの1TBは、内蔵用のバルク品なら安いお店を探せば1万円は軽く切るからそんなに青ざめたりはしないけれど、それでもやっぱりめげそうになる数字である。


オマケというか、EF 24mm F2.8の感想

 EF 24mm F2.8は今まで使ったことがなかったレンズで、発売は1988年10月。かなり設計の古いレンズである。X4での画質は正直なところ、もうちょっとかなぁ、という感じ。設計が古いことを差し引いて考えれば、けして悪くはないが、キットレンズのEF-S 18-55mm F3.5-5.6 ISの24mm域に比べても勝ってる感があまりないのはたしかである。そのうえ、USM(超音波モーター)ではないのでフルタイムMFは使えないし、MFの操作性も操作感もいまいちだ。

フードの着脱って面倒。なので付けっぱなし。でも、そうするとキャップの着脱が面倒。今どき端っこツマミ式ってのもねぇおいおい、キヤノンのレンズにニコンのキャップかよ、って突っ込まれそうだけど、真ん中ツマミ式の便利さには勝てません

 使い勝手なら、EF 28mm F1.8 USMのほうがはるかに上だが、もう少し広めの画角が欲しかった(わりと35mm近辺の画角が好みである)のと、中古だとなかなかにお手ごろ価格で手に入れられる(程度をあまり気にしなければ2万円台前半で買える)のが決め手である。

 ただ、AF作動音がけっこうかしましいのと(超音波モーターの静かさに慣れてることもあってすごく耳障り)、AIサーボAFで頻繁にハンチングが起きること(筆者は“親指AIサーボAF”で使っている)とかは難点といえるが、リアフォーカス方式なのでピント合わせで前枠が動かないとか、フードが花形で見映えがするとかはいいところ。あと、金属マウントっていうのもうれしい。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します。

・EF 24mm F2.8

F2.8
5,184×3,456 / 1/3,200秒 / ISO100 / WB:太陽光
F4
5,184×3,456 / 1/1,600秒 / ISO100 / WB:太陽光
F5.6
5,184×3,456 / 1/800秒 / ISO100 / WB:太陽光
F8
5,184×3,456 / 1/400秒 / ISO100 / WB:太陽光
F11
5,184×3,456 / 1/200秒 / ISO100 / WB:太陽光
 

・EF-S 18-55mm F3.5-5.6 IS(キットレンズ)※焦点距離24mmで撮影

F4
5,184×3,456 / 1/1600秒 / ISO100 / WB:太陽光
F5.6
5,184×3,456 / 1/800秒 / ISO100 / WB:太陽光
F8
5,184×3,456 / 1/400秒 / ISO100 / WB:太陽光
F11
5,184×3,456 / 1/200秒 / ISO100 / WB:太陽光
  

・そのほか

今まで撮った中で一番ファイルサイズが大きい画像。JPEGが15.9MB、RAWは36.4MB。合計52.3MBはちょっと怖いです
EF 24mm F2.8 / 5,184×3,456 / 1/160秒 / F8 / +1.0EV / ISO200 / WB:太陽光
F8まで絞れば四隅までそれなりにシャープに仕上がってくれる。少し倍率色収差は出ているが、気にしなくてもよさそうなレベル
EF 24mm F2.8 / 5,184×3,456 / 1/800秒 / F8 / -1EV / ISO100 / WB:太陽光
ちょうどこの石にだけ木漏れ日が当たっていて、それがおもしろくて撮ってみた
EF 24mm F2.8 / 5,184×3,456 / 1/25秒 / F5.6 / ISO200 / WB:太陽光
岩の割れ目に草が生えていた。そのうちに根っこの力でこの岩が真っ二つに割れる日が来るかもしれない
EF 24mm F2.8 / 5,184×3,456 / 1/160秒 / F8 / ISO200 / WB:太陽光
露出補正が面倒になるとマニュアル露出で撮ったりする。電子ダイヤルを回すだけで露出調整ができるから慣れると案外に快適なのだ
EF 24mm F2.8 / 5,184×3,456 / 1/30秒 / F5.6 / ISO100 / WB:太陽光
ピクセル等倍で見ると、もっと解像力が欲しいなぁと思えるが、50%縮小で見ると悪くない描写。投資金額からすれば上々の結果だ
EF 24mm F2.8 / 5,184×3,456 / 1/30秒 / F5.6 / -1.3EV / ISO100 / WB:太陽光
絞り開放はアマさが目立つけど、1段絞るとピントの芯が出てくる。それにしても画面全体真っ赤っかである
EF 24mm F2.8 / 5,184×3,456 / 1/50秒 / F6.3 / -0.3EV / ISO100 / WB:太陽光
最短撮影距離は0.25mで、このクラスとしては……と思って調べたら、現行品はキヤノンとニコン(ちなみに0.3m)だけだった
EF 24mm F2.8 / 5,184×3,456 / 1/50秒 / F5.6 / +1.0EV / ISO100 / WB:太陽光


北村智史
北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら

2010/4/27 00:00