写真展
第17回三木淳賞受賞作品展
阿部祐己写真展「新しき家」
(ニコンサロン)
Reported by 本誌:河野知佳(2015/12/30 00:00)
私の母方の実家は代々農業を生業としてきた。築83年になる母屋の建て替えが決まり、私は二つの家を撮影する機会に恵まれた。
標高950m、風が戸を叩き凍みいる平屋。農家は雪解けと共に家を出た。最初に家具が消えて空っぽになり、田植えの後には柄入りのガラス戸も消え、解体の神事を終えた後、平屋は昔の面影を見せた。
いつもと変わらず農家は畑に通い、傍らで新居の工事が進む。ハウスに絡む蔦のように骨組みに巻き付いたコードが血管にも見えて、次第に肉を付け人の住処になっていく。まだ人の匂いがしない家も年月と共に皺が刻み込まれ、在りし日の平屋のように柱も少しずつ曲がり、いつか歳を重ねた老人のような面影を見せる日が来るのだろう。
毎年繰り返されてきた農作。農家の住処であり続けた家。ずっと続くと思っていた景色も少しずつ変わり、いつか訪れる節目。畑が広くなり冬を越えて、また新しい年がくる。
私は家と人の一生を、どこか重ね合わせて撮影していた。(阿部祐己)
カラー30点。
会場・スケジュールなど
- ・会場:ニコンサロンbis新宿
- ・住所:東京都新宿区西新宿1-6-1新宿エルタワー28階
- ・会期:2015年12月1日火曜日~2015年12月7日月曜日
- ・時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
- ・休館:会期中無休
- ・入場:無料
- ・会場:ニコンサロンbis大阪(追記)
- ・住所:大阪市北区梅田2-2-2ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー13階
- ・会期:2016年1月5日火曜日~2016年1月13日水曜日
- ・時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
- ・休館:会期中無休
- ・入場:無料
作者プロフィール
1984年生まれ。2011年日本写真芸術専門学校卒業。同年写真新世紀において 作品「ボイジャー」佳作入選。12年同「HALO」佳作入選。13年キヤノンフォトグラファーズセッションにおいてファイナリストに。14年三菱商事アートゲートプログラム入選。