イベントレポート

生成AIで広がる、新たな鉄道写真の楽しみ方

アドビとローカル鉄道がコラボ 安全な撮影とマナー向上を提案

参加者が乗車した「TOKIトレイン」

アドビとえちごトキめき鉄道は10月12日(月)、イベント「楽しく撮り鉄!生成AIで鉄道写真がもっと簡単に!」を開催した。

鉄道ファンの一部におけるマナーが問題となっているなか、アドビのAI技術を使った画像編集を通じて鉄道撮影のマナー向上や新しい鉄道写真の楽しみ方を提案するイベントとなっている。

事前に募集した参加者がえちごトキめき鉄道に乗車し、車内や駅で撮影を実施。その写真を写真編集アプリ「Adobe Lightroom」や生成AI「Adobe Firefly」で加工することで、安全な撮影かつ見栄えのする作品づくりを行うという趣旨だ。

参加者と講師(直江津駅で撮影)

「残念な写真も加工してお気に入りの1枚に」

参加者は20名で8歳から86歳までと幅広い層が参加。当日は直江津学びの交流館に集合し、オリエンテーションが行われた。

直江津学びの交流館

講師は、アドビ Creative Cloudコミュニティ&プロダクト マーケティングマネージャーの岩本崇さんと、もじ鉄アーティストでグラフィックデザイナーの石川祐基さん。

岩本崇さん(右)と石川祐基さん(左)

岩本さんは、「撮った写真はそのままで終わりではなく、今は楽しく加工ができる時代。構図は完璧なのに不要なものが写っていて残念だと思った写真も、加工して気に入った1枚に仕上げてほしい」と話し、写真に映り込んでしまった不要な人物や電線をLightroomで簡単に消せることなどを説明した。

オリエンテーションの様子。この写真も背景を入れ替える加工をしている

石川さんは全国を周って鉄道の文字やデザインを研究し、本にもまとめている。えちごトキめき鉄道の見どころの1つとして駅名標のデザインを挙げ、「景色が良い場所なので、妙高はねうまラインは山で、日本海ひすいラインは海の風景をイメージしたイラストが使われているのもポイントです」と紹介した。

昭和生まれの「TOKIトレイン」に乗車

今回乗車するのはえちごトキめき鉄道の日本海ひすいラインを走る観光列車「TOKIトレイン」(ホリデーライナー)。直江津駅から市振駅の快速運転を土日祝に行っている。3両編成のうちイベントのために1両を貸し切るという大盤振る舞いだ。

日本海ひすいラインの直江津-市振間を往復するコースだ

TOKIトレインは昭和時代に作られ、新製時からは50〜60年が経っている歴史ある車両。特に糸魚川方面先頭車のクハ455は現役で稼働する唯一の同型車両という貴重なものだ。

オリエンテーションの後は直江津駅に移動
乗車するTOKIトレインが停車していた
TOKIトレインオリジナルのヘッドマークを掲げている

発車してまもなく日本海が見えると、参加者は盛んにシャッターを切った。TOKIトレインは絶景ポイントでは速度を落として走るので撮影もしやすい。

秋の穏やかな日本海が見えた
ほどなく、駅舎から海が見える有間川駅に到着。同ラインで一番の絶景ポイントとのこと
能生駅では駅弁「かに釜めし」が振る舞われた
ボックス席もある車両ということで、各自ゆったりとしながら撮影できたようだ
アプリの使い方などアドビのスタッフから直接聞くこともできた

終点の市振駅ではヘッドマークを交換しての撮影タイムが設けられた。通常行っていないもので、本イベントのための特別な計らいだった。

市振駅で過ごす参加者ら。駅名標には日本海をイメージしたイラストが入っている
交換用のヘッドマークが車内に積まれていた
ヘッドマーク交換作業の様子
ヘッドマークの撮影をしながら、えちごトキめき鉄道添乗員の解説もあった
交換したヘッドマーク
こちらは「マリンビーチ日本海」のタイプ
特別にヘッドマーク無しのパターンも撮影できた
帰路ではえちごトキめき鉄道の添乗員による解説や交流会が行われた
乗車記念証も配られた

直江津駅に戻ると、えちごトキめき鉄道の平井隆志社長の出迎えがあり、ホームにある0キロポスト(距離標)について説明した。また、1886年に直江津-関山間に新潟県で最初に鉄道が開業したことから、直江津駅が「新潟県鉄道発祥の地」であることも社長がアピールした。

0キロポストについて説明する平井隆志社長。場所は階段を登らずにホームを進むとある

オリジナルグッズの制作にも生成AIが

参加者は直江津学びの交流館に戻り、撮影した写真を加工して仕上げるワークショップに取り掛かった。

ワークショップの様子

石川さんはさっそく撮影した写真をもとに加工の実例を披露した。映り込んでしまった人物などはLightroomを使うと瞬時に消すことができる。

元写真。「これはこれで味のある写真ですが……」と石川さん
人物をなぞるだけで消すことができた

また石川さんは加工を使った遊び方の一例として、駅名標の文字を消して、別のソフトで別の文字を入れるといったテクニックも解説し、会場を沸かせていた。

元写真
別の文字に置き換えたところ
石川さんはLightroomでモノクロにして、さらに粒子感を追加しレトロ調にする加工も見せてくれた

参加者も自前のスマホやPCで実践に取り掛かった。簡単に不要なものが消せることに驚いた参加者を多く見受けられた。また、車両の窓の反射を消すことで見た目に近い写真にできたという参加者も。

そのほか、やりたかった加工を直接スタッフに聞けたことや、取っ掛かりができたのでこれから使い倒してみたいといった声も聞かれ、参加者の満足度は高かったようだ。

スマホ版のLightroomで手前の柵の消去にチャレンジする参加者
別の参加者はPC版のLightroomで昔の写真風に加工した作品を見せてくれた

各自の作品は提出してもらい、石川さんや平井社長の審査を経て特別賞を決定。選ばれた作品はTOKIトレインの中吊りとして年末に展示される予定となっている。

ワークショップでは作品づくりが間に合った一部参加者の作品を投影して講評会も行われた。

講評会の作品(元写真)
人物や架線柱、建物などをすっかりきれいにしていた
別の参加者の元写真
Fireflyを使って人物を加えた

参加特典としてTOKIトレインのヘッドマークをFireflyで加工して、オリジナル缶バッジにする企画も実施された。特別にTOKIトレインのヘッドマークが提供され、プロンプトによって様々なヘッドマークを各自が作った。

Fireflyでヘッドマークを加工しているところ
でき上がった缶バッジ

AI技術で楽しい鉄道写真に

平井社長は鉄道撮影のマナーの問題にも触れ、「ほとんどの皆様はマナーを守っていただいていますが、ほんの一部の方によって鉄道写真が楽しめなくなるのは本望ではありません。それを訴える場として、アドビさんと協力してこのイベントを開催できたのは光栄です」と挨拶した。

えちごトキめき鉄道の平井隆志社長

またAIについては、「AIを使うと個性がなくなるのかなと思っていましたが、こういうツールを使うとそれぞれ皆様の個性を活かすことに繋がるのかなという思いで、AIというものへの見方が少し変わったと感じています。どれだけの素晴らしい作品が見られるのか楽しみにしています」と作品への期待を述べた。

最後に石川さんは「アドビのAI技術を使えば、いらないものを自然に消すこともできる。こうしたものを活用すれば鉄道好きな人たちがみんなで楽しく写真を撮っていけると思います。1枚の写真からいろいろな世界ができる楽しさを皆さんぜひ試していただけたらと思います」と結んだ。

1981年生まれ。2006年からインプレスのニュースサイト「デジカメ Watch」の編集者として、カメラ・写真業界の取材や機材レビューの執筆などを行う。2018年からフリー。