写真とAI
“ペンダント型AIデバイス”として使える「Insta360 Go Ultra」を試す
2026年10月22日 07:00
Insta360には様々なカメラがありますが、その中に超小型のウェアラブルカメラ「Insta360 Go」シリーズがあります。この「常に装着しているカメラ」に、AIアシスタント機能が搭載され、なかなか新しい体験を提供してくれるというので、試してみました。
生成AIでカメラを操る?
AI機能を搭載したのは「Insta360 Go Ultra」。従来のGoシリーズに比べてボディは多少大型化していますが、それでも4.5cm角ほどの小型のボディで、胸元や帽子などにマグネットやクリップで常時装着しておけるアクションカメラです。少ない操作ですぐに撮影を開始できるというウェアラブルカメラ、ライフログカメラともいうべき製品です。
ポイントは、常時装着することを前提としているという点です。即撮影できるように常時装着しているからこそ、同時にAIアシスタントの用途にも使えるというわけです。
起動するAIアシスタントはオリジナルの「Kira」。ベースはGeminiとされています。音声や1ボタンで即座にAIアシスタントが使えるのはなかなか便利です。
これは確かに、スマートフォンよりもAIが使いやすいデバイスと言えるかもしれません。ちなみに同じような立ち位置にあるのがスマートグラスで、メガネとして装着しておけば、いつでも音声や1ボタンでAIを呼び出して利用できます。
スマートグラスと同様に、Go UltraでAIを使う場合もネット接続が必要なのでスマートフォンとはBluetooth接続している必要があります。
ただし、最初にスマートフォンアプリと接続しておけば、次からはアプリを起動していなくても、Go Ultra側からBluetooth経由でアプリを起動してAI利用ができるようです。
起動はボタン長押しや音声で
実際の使い方は、Go Ultra本体の撮影ボタンを長押しするか、「Hey Kira」と呼びかけます。Hey Kiraは自分の音声をあらかじめ登録しておくため、他の人の声と混じりにくいという工夫もされているようです。とはいえ、ボタンを押す方が反応は確実です。
Go Ultra本体の撮影ボタンは、標準では1回で動画、2回で写真の撮影ができますが、Kiraの起動は長押し。さらにディスプレイやシャッターボタンを備えた「アクションポッド」に装着している場合は、側面のQボタンを長押しするとKiraが起動します。
Kiraが起動したら後は話しかけるだけです。質問にはネット経由で回答してくれるので、例えば「明日の天気は?」「東京タワーは何年に建った?」といった質問に対して音声で聞いて、音声で回答してくれます。このあたりは一般的な音声による生成AIとのチャットという感じです。
日本語に関しては少し発音が怪しかったり、微妙な読み間違いをしたりします。インターネット経由で情報を取得しているので、「昨日のニュースは?」といった最新情報もカバーしているので、街歩きをしながら、気になった情報を調べるといった使い方もできます。
とはいえ、音声でのやりとりになるため、対話内容はすべて周囲に筒抜けです。「Hey Kira、音量を下げて」と言って音量を下げた上で耳を寄せて対話すればある程度は軽減できますが、基本的には音声が気にならない、かつ迷惑にならない状況で使うといいでしょう。
カメラだからできる即時検索
ここでポイントなのは、当たり前ですが「Go Ultraはカメラである」という点です。
付属のマグネット式ネックレスを使えば、服の上からGo Ultraを装着できます。こうしておくと、いつでも好きなタイミングで本体のボタンを押して撮影でき、自分視点の映像をハンズフリーで撮影できます。
つまり、常にカメラが目の前を向いたAI端末になるというわけです。「Hey Kira、あの建物は何?」「Hey Kira、この花は何?」といった質問がすぐにできるわけです。
スマートフォンだと、いちいち取り出してAIアシスタントを起動してカメラを向ける必要があります。メガネ型のスマートグラスだとメガネとして装着しておく必要があり、カメラ性能もそれほど高くはありません。Go Ultraは、高いカメラ性能に加えて、周辺情報を素早く手軽に取得できるAIアシスタントでもあるのです。
こうした方向性の製品はこれまでもありました。成功例はほとんどないのですが、大手プラットフォーマーによる「ペンダント型AIデバイス」開発中という噂もあります。いち早く「ペンダント型AIデバイス」を実現したのがこのInsta360というわけです。
カメラとしては次のステップで、撮影機能をさらに音声コントロールできれば便利そうです。特に本体だけだと画面がなくボタンも限られるGo Ultraだと、音声操作と親和性は高いでしょう。
現状、Go Ultraにも音声操作機能は搭載されていますが、例えば「夜の星の動きを撮影したい」と言えば「スターラプス」を設定してくれて、「タイマーは何秒にしますか?」といった設定のやりとりもできると便利そうです。
カメラとAIの新たな関係性
カメラとAIとの関係性で言えば、「生成AIで画像を改変する」「AIでノイズを処理する」「AIが被写体を解析して最適な撮影設定にする」「AIが写真を分類して探しやすくする」などの活用がありえますが、まだあまりないのが「AIがカメラを簡単に使えるようにする」というものです。その点で、今回のGo Ultraにもそこまでの機能は搭載されていません。
音声操作機能自体は実装されており、「Hey Kira、動画を撮影して」と言えば、静止画モードにしていても動画撮影してくれます。「写真を撮影して」にも対応していますが、「インターバル写真を撮って」「タイムシフトを撮って」といったその他のモード切替はできないようでした。
このあたり、本体には画面がないGo Ultraには便利な機能なはず。さらにいうと高機能化著しいカメラにも同様の機能があっても利便性が高そうです。
「Sモードにしてシャッタースピードを2段速く、露出補正を-0.3EVに、被写体モードは鳥で、連写モードはHi、RAW/JPEGモードにして」ぐらいになると、音声で設定した方が速そうです。「どんな風に撮ればいい?」と聞いたら構図のアドバイスをくれる、というのも面白いかもしれません。
さらに進展すると、次はAIエージェントの出番です。ペンダント型で装着して歩いていると、AIエージェントがユーザーのニーズに応じて自動撮影するわけです。
花、動物、観光地、街角スナップ……さまざまな撮影シーンでエージェントがカメラを自動操作して撮影する。AIエージェントが先回りして撮影(もしくは常時撮影した中から自動抽出)するという世界はありえるかもしれませんが、危険性も高いので実現は難しいでしょう。
ただまあ、カメラを向けて被写体を検出したら、AIエージェントが構図やシャッターチャンスを自律的に判断して、誰も目を閉じていない笑顔の瞬間にばっちりシャッターを切る、というぐらいはできそうです。
Go UltraのAI機能は、ペンダント型AIデバイスとしてはまだまだ物足りない面はありますし、カメラを操作するAI機能としても不十分ですが、未来を感じさせることは間違いなく、今後のさらなる発展を期待したいところです。







